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レヴオル・シオン  作者: 群青
第六部 「神の章」
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第290話 転移魔方陣


 ヘルムガルドには入場制限が設けられている……

 先着3名様まで……だそうだ。


 さて…… 誰を派遣するか……


「ふむ、誰もいかないなら俺が立候補させてもらおう」


 案の定ジークが立候補してきた。

 そうだよ、なにも3名選ばなきゃならないワケじゃない、立候補者が一人なら一人だけ行かせればいいんだよ。

 ヘルムガルドツアー参加者はジークだけでいい、どうしても寂しいようなら魔王グリムに頼み込んでネフィリムを貸してもらえばいい。

 デートというより熟年カップルの小旅行って感じで行って来い、そしてキメてこい!

 健闘を祈る!


 …………あれ? ネフィリムは?


 つい今しがたすぐそこに居たはずなのに?

 アレだけデカイ図体のくせに音もなく消えるとは…… まぁ別にどうでもいいか。


「あの…… マスター」

「ん?」

「私も…… 行ってみたいです」


 おぉっと、ここでミカヅキの参戦表明…… これは状況が変わってきた。

 3名の内、2名がジークとミカヅキ、二人だけを派遣するのは論外だ、呪われた筋肉と二人っきりなんていくらなんでもミカヅキが可哀想だ。

 そして他の女の子を派遣するのも無い、俺のハーレムポジションをジークに譲るなどあり得ない!

 そしてもし呪い解除に成功したら、ジークはきっと暴走する……


 危険だ。


 500年の禁欲の呪縛から解き放たれた獣を止める術はない、下手すれば男の俺にすら襲い掛かってくる恐れがある。

 まさに性獣だ。


 超危険だ。


 更に問題はそれだけじゃない、それはミカヅキが琉架の護衛の任についているコトだ。

 ミカヅキは俺と琉架が一緒に居ない時に限り、常に琉架の傍に控えている。

 ゴリラに課せられた琉架護衛の任務だろう、それを律儀にもずっと守ってる。


 D.E.M. 最強の琉架に護衛が必要かどうか……

 琉架はたしかに強いけど心が弱い一面もある、常に誰かが支えられる場所にいるのが望ましい。

 もちろんそこまで過剰に過保護になる必要はないと思う。

 ここ数年で琉架の心もだいぶ逞しくなった気がする。

 今は周りに魔王仲間、魔王友達が多くいる。


 だが……

 しかし……

 う~ん……


「神那」

「う~…… ん?」

「私、大丈夫だよ」

「琉架……?」

「神那はミカヅキさんについて行ってあげて、行きたいんでしょ?」


 行きたいというか、ミカヅキと筋肉をセットにしたくないだけなんだが…… まぁそうだな、二人だけでは行かせられない。


「私達も里帰りしたんだし、ミカヅキさんもせっかくのチャンスなんだから行かせてあげたい」


 ふむ…… だったらジークを落選させて俺と琉架とミカヅキで行けば良いんじゃね?

 そうすれば何も問題ない、邪魔なのはあの肉壁だけ……


 さすがにそれは無理か、いくらなんでも可哀想すぎる。


「わかった、行くのは俺とミカヅキと…… あとオマケでジークの3人だ」

「はい、承りました、魔王カミナ様、魔王ミカヅキ様、それと賢王ジーク様の3名ですね……

 随分と因縁の深い方々になりましたね?」


 因縁? あぁ、まぁそうだな、追放された鬼族(オーガ)のミカヅキと、呪われし筋肉のジーク……

 因縁しか無いって感じだな。


 俺には因縁は愚か接点がないが……

 いや、終焉の子エネ・イヴの女神像 元所有者としての因縁があるな。


「それでは私についてきてください、転移魔法陣へ案内いたします」


 転移魔法陣? ヘルムガルドに直通の魔方陣があるのか?

 それで入国すれば怒られないの? ヘルムガルドに足を踏み入れた瞬間、呪い入りクラッカーで歓迎を受けるとか嫌だからな?



---



 魔王城ラグナロクの地下……というべきなのだろうか? 城内と表現するべきか……


 我々はヴァレリアに案内され長い階段をひたすら降りている。

 ちなみに階段は人間サイズだ、巨人サイズだったら登るのも降りるのも一苦労だったな。


 何百メートル下っただろうか?

 位置的には謁見の間の真下あたり、つまり浮遊大陸ラグナロクの中央付近、そこに奇妙な空間が広がっている。


 巨大な正四面体の部屋…… クレムリンの転移の間に似ている。

 ただ規模が違う、多分端から端まで2kmくらいあるんじゃないか? とにかく広い。

 きっとここがラグナロクの中枢、上の城など飾りにすぎない……そんな場所だろう…… たぶん。

 もしかして玄室か? それにしては広すぎる気もするが……


「ここは?」

「ここは…… そうですね、ラグナロク版 転移の間とでも言いましょうか。

 ただしクレムリンに存在する転移の間とは意味合いが異なりますが」


 確かに…… 壁や床にはクレムリン同様、多くの魔法陣によって埋め尽くされている、だがあまりにも大きな違いがある。


 透明な床の上には数多くの崩れかけた遺跡のようなものが置かれている。

 どれも古いものだが様式はバラバラだ、洋風のモノもあれば、和風チックなモノもある、ハッキリ言って神聖な空気が流れるこの部屋には不釣り合いだ、美観を損ねている。


「これらは世界各地の主要な場所へ繋がる転移魔法陣です。

 今の時代で僅かに生き残っている魔法陣の中でも特に重要性の高いモノだけが集められています」

「こんな物があったのか…… もしかして自力で遺跡を移設したのか?」

「えぇ、巨人族(ジャイアント)2400年の努力の結晶です」


「魔法陣の移設…… そんなことが可能なのか?

 たとえ可能な作業であったとしても容易ではあるまい」


 魔法陣の権威、ジーク博士が言うには……

 魔法陣…… 特に転移魔法陣は設置場所が重要だそうだ、なんでも地脈から魔力を吸収して起動するものが殆どで、少しでも動かせば二度と起動しなくなる。

 伝説ではココみたいに幾つもの転移魔法陣を集めた施設があったらしい、だがある日、震度1程度の地震で全ての魔法陣が全滅したらしい……

 それほど繊細なものなのだ。


 果たしてそれほどの労力を払ってまで行うべき事業だったのだろうか?

 俺やリリス、アーリィ=フォレストみたいにマーキングを設置するだけで自由に長距離転移が使える者からすると、無駄以外のナニモノでもない。


 まぁ…… なんというか…… お疲れ様です。


「それと案内役なのですが、皆様と面識があるネヴィルに頼んであります」


 ネヴィル…… 本物より本物っぽい偽勇者ネヴィルか、面識とか気にしなくてもいいのに……


「ヘルムガルドではネヴィルの指示に従ってください、あまり自由気ままに振る舞うと大変な目に会いますよ?」


 なぜ俺だけを見て言う? どいつもこいつも……

 俺ってそんなにアウトローに見えるか? 別に棘付き肩パットとか火炎放射器とか装備してないし、弱い者から水と食料を奪って荒野に置き去りにしたこともないぞ?


「あの奥にあるのがクラウゼヴィッツ要塞へ通じる転移魔法陣です」

「クラウゼヴィッツ要塞?」

「終末戦争時に使われていた要塞です、ヘルムガルドに一番近い転移魔法陣なんです」


 なるほど、ヘルムガルドに直接跳べる魔法陣は存在しないのか。

 まぁ他種族が自分の領域に足を踏み入れるのを絶対許さない魔王が転移魔法陣を放置しておくワケ無いな。


「あら?」

「ん?」


 転移魔法陣の脇で待っている人影…… それは偽勇者ネヴィルではなかった。

 ムキムキのカニ腹とビキニアーマーが織り成す不快感…… ネフィリムが待ち構えていた。


「ネフィリム、ここで何をしているのですか? ネヴィルはどうしたのです?」

「ネヴィルは急に激しい頭痛に見舞われたとかで医務室に運ばれました」

「ネヴィルが? ……ではヤクトはどうしたのです?」

「ヤクトも一緒に医務室へ行きました、看病でもしてるのではないでしょうか?」

「そうですか…… それは困りましたね、私はラグナロクを離れる訳にはいきませんし……」

「はい、ですので私がネヴィルの代わりに案内役をかって出るためやってきました!」


 おい、コイツまさか……


 俺は見逃さなかった、後ろ手に組んだネフィリムの拳から、一滴の血が滴り落ちたのを……!


 コイツ…… ヤりやがったな!


 ネヴィルの急で激しい頭痛の正体はコイツに血が出るほど殴られたことが原因だろう。

 そしてヤクトとかいう…… 確か四天王の一人だったか? そいつも看病のために医務室に行ったのではなく、自分も看病される立場で医務室に行ったんだ……


 最悪だ。


 コイツの辞書に平和的解決の文字は無い!

 同僚だろうが何だろうが邪魔者がいればその拳で道を切り開く!

 あとで問題になるとかそんなのは一切考えない、考えるだけの脳みそがない!

 コイツの頭のなかには恋愛のことしか詰まってない!

 恋愛脳筋もここまで極まれば害悪でしか無い!


「ネフィリムが……ですか、しかし貴女、ヘルムガルドへは数回しか行ったことがないでしょう?

 そんなことで案内など出来るのですか?」

「問題ありません! 私にはD.E.M. の皆さんを何度も案内してきた実績があります!」


 全く関係のない実績だぞ!? それもたったの3回だ、しかも迎えに来る度にギルドセンターの営業妨害してる!


 こんな奴にまともな案内ができるハズ無い!

 案内人の変更を要求します!


「ガイアからラグナロクまでの案内と、ヘルムガルドの案内は全くの別物です」


 おぉ! さすが竜神族(ドラグニア)のヴァレリアさん! 冷静で正しい判断だ、どっかの脳筋とはワケが違う!


「ヴァレリア、貴女の言い分もわかります、しかし私の他にヘルムガルドを案内できる者は貴女か…… 後は魔王グリム様しかいません」


 マジか? 予想以上にヘルムガルドへのツアーコーディネーターは貴重な存在だったらしい。

 そしてそんな貴重な人材を血祭りにあげてくるとは、考えなしにも程がある。

 あとで絶対問題になるぞ? 怖くないのか? どんだけ恋は盲目状態なんだ。

 つーか、マジでコイツに案内されるのは勘弁してほしい。


 この状態を打破する方法は一つだけだ…… つまり延期すればいい、ネヴィルなりヤクトなりの回復を待てばいいだけだ。


「あ~…… 我々は別に急いでな……」



 ギラァッ!!!!!



 スゲェ殺気を飛ばされた、俺が魔王じゃなかったらきっと漏らしてた……

 あの目を見て確信した、きっと時期を延ばしてもネヴィルとヤクトは医務室からは出てこないだろう。

 恐らくずっと昏睡状態だ。


 もちろん個人的には、四天王の二人が昏睡状態でも何一つ困らないんだが、このままでは永遠にヘルムガルドへ行く事は出来ないだろう。

 とは言え、こんな奴に案内などさせたらジークが誘拐されるんじゃないか?

 それはそれで、ありと言えばありだが、俺とミカヅキが道中行方不明にされそうで、ソッチのほうが怖い……


「ふむ、では案内を頼むぞネフィリムよ」

「はい……/// お任せください、ジーク……///」


 おい! 勝手に決めんな! 肉壁!

 もう、俺とミカヅキ、ジークとネフィリムで別行動にするか?

 案内役ならミカヅキでも十分な気がするし……




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