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レヴオル・シオン  作者: 群青
第六部 「神の章」
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第289話 ラグナロク


「ただいま~」


 俺達はティマイオスに戻ってきた…… 招かれざる客を連れて……


「お帰りなさいませマスター、お嬢様…… それとネフィリム様……でしたか?」

「ご無沙汰しています」


 キョロキョロ


 ネフィリムの視線が落ち着かない…… 何を探しているのかは想像するまでも無い。


「ミカヅキ、済まないが皆を集めてくれないか? 急だがコレからラグナロクへ向かう事になった」

「畏まりましたマスター、少々お待ちを」


 そう言うとミカヅキは分身を三体だした、そしてそれぞれ別方向へと歩いて行った。

 ネフィリムはその状況を見てギョッとしてる…… 初めて見ればそんな感じになるよな?


「そういえば…… あなたは第10魔王の能力を継承したのね? それが……」

「はい、それではネフィリム様はこちらへどうぞ、応接間へご案内いたします」


 この場に残ったミカヅキの本体がネフィリムを案内していった。

 俺は食料品を台所へ運び、琉架は準備の為に一度自室へと戻って行った。



---



 数分後、魔王城ハーレムパレスの応接間に、新世代魔王5人が集結していた。


 …………


 あれ? 筋肉の塊は?

 アイツは魔王じゃないけどネフィリムが一番会いたがってる人物だ。


「ミカヅキ、ジークは?」

「申し訳ございません、屋敷内をくまなく探したのですが見当たりませんでした」


 そうか居ないのか…… 普段なら別にイイか…って思うトコロだが、ネフィリムがあからさまに落ち込んでる。


「今、分身体を走らせティマイオス中を捜索しています。

 この空中庭園から落ちたとかじゃない限りどこかに居るハズですから」


 あの図体じゃかくれんぼしたってすぐに見つかる、落ちたとかじゃない限り……

 落ちてればいいんだが、さすがにそこまでアホじゃ無いだろう。


「では…… ジークが来るまで…… 少し…… 待ちましょう……」


 ネフィリムがスゴイ落ち込んでる…… お前らマジで結婚しろよ。




 20分後……


 汗まみれの筋肉が現れた……


「スマンな、待たせてしまったみたいで」

「いえ! ジークもお元気そうで何よりで……///」


 なんで汗まみれの筋肉を見てそんないい笑顔が出来るんだ? 俺は実に不愉快だ。

 てかドコに行ってたんだコイツは?


「テーブル大地の下の岩盤に指を刺して懸垂していました。落ちれば地上まで真っ逆さまだったのに…… 残念……」


 ミカヅキがジーク発見の現状を説明してくれた。

 本当にお元気すぎて何よりだよ……

 そんな光景を目撃したら、狙撃して叩き落としたくなったことだろう…… よく我慢したな、俺なら撃ってた。


 てかマジで何やってんのコイツ? そんな某国のクレイジーな若者みたいな真似…… お前ももういい年なんだからさ、自重しろよ……

 それとも何か? ぶら下がり健康器でも買ってやればそんな奇行はしなくなるのか?

 そんなモノをわざわざ買い与えるくらいならそのまま落ちて死ね、さすがに体が粉々になれば容易に復活も出来ないだろう。


「ネフィリムも変わり無いようだな」

「はい/// おかげさまで……」


 何のおかげだよ…… それよりもネフィリムさん、ソレ……臭くないの? 汗でテッカテカだよ?


 しかしネフィリムはそんな表情を微塵も見せない……

 これも乙女フィルターの威力か?

 確かに俺も嫁達が汗まみれになっていたとしても不快に思うコトは無いだろう…… 逆に興奮すると思う。


「ココに来るまでの間にミカヅキから大体の事情は聞いた、しかしこの格好で第2魔王にお目通りいただく訳にはいかんな、悪いが少しシャワーを浴びてくるから待っていてくれんか?」

「構いません! い…いえ、今日はもう遅いですし、一晩泊まってから明日向かいましょう!///」


 それで良いのか? 第2魔王様は既に待ってるって言ってなかったっけ?

 ご主人様を待ち惚けさせるとは…… 全く見事な忠誠心だな。

 これが巨人四天王の一角だってんだから、巨人族(ジャイアント)も優秀な人材が不足しているらしい。


「構いません……よね?」


 ネフィリムが一瞬こちらへ視線を送ってくる…… 一瞬だけ異常に鋭い視線だった、要望を受け入れなければ殺すぞ? と、言われた気分だった……


 そんなにか? そんなにジークと夜通し筋肉談議に花を咲かせ、二人で汗まみれになりたいのか?

 筋肉談議は嫌だけど、俺も二人で汗まみれはやってみたい…… もちろん相手は嫁とだがな。


 ジークと二人で汗まみれとか…… そんなので喜ぶのは腐海の連中だけだ。


 まぁ仕方ないか、恋する乙女だし…… よくよく考えればネフィリム自身も3日間ギルドセンター前で仁王立ちし続けたんだ、風呂くらい入りたいだろう。



 結局その日はティマイオスでご宿泊、翌日ラグナロクへ向かう事になった。



---



 ―― 遺跡都市 ――


 ラグナロクへ赴くため、我々はまたこの邪教徒が巣食ううち捨てられた都市へとやって来た……

 いや、何でわざわざココを経由するんだよ? そんなに俺達にラグナロクの場所を知られたくないのか? アノ浮遊大陸はティマイオスと違って不可視化して無いし、今更な気がするが……


「ラグナロクへ入るには転移する必要があります、ここを経由した方が手っ取り早いんです」


 いや…… 結界なんか一時的に解除すればいいだろ? 実際、以前解除してたろ?

 同格の魔王を招くのにその程度の手間を惜しむなよ。


「それでは行きましょう、以前同様、敵は私がすべて受け持ちます、皆様はただついて来て頂ければ良いですから」


 そう言ってネフィリムを先頭に歩き出す。

 面倒な雑魚掃除をしてくれるなら、おまかせするが……


「ハァァァァーーー♪」


 ズドン!! ドバッ!!


 随分と楽しそうだな、やっていることは虐殺だが……


 コイツ…… まさかとは思うがジークと少しでも長く一緒にいたいから遠回りしてるんじゃないだろうな?

 …………まさか……な?


 雑魚モンスター惨殺旅行の内容は前回とさほど変わらないので割愛させてもらう。



---



 転移魔法陣を使いラグナロクへとやって来た。


 以前と同じ巨大な城門が出迎えてくれる…… また正面玄関か…… 裏口ってないのかよ?

 しょっちゅう桃のお姫様をさらう魔王も自分の城にショートカットできる裏口を作ってくれたことがあった、それくらいのサービス精神はないのか?

 まぁもし俺が作るなら、嫌がらせ系のブービートラップをてんこ盛りで仕込んだ攻略不可能な裏口を作る。

 そして勇者辺りをおびき出し裏口から侵入させて、苦しみ藻掻く様を見てほくそ笑むがな。


 …………


 うん、素直に正面から行こう。


 ゴゴォン……


 巨大な門が開かれ中へ足を踏み入れる。


「……?」


 なにか…… 雰囲気が以前と違う……

 何となくだがピリピリした空気を感じる気がする……


「か…神那ぁ~」


 琉架が左腕に縋り付いてくる、ここまでは初潜入時と同じだ。

 だが今回は先輩も伊吹もいないから右側が少しさみしい……と、思っていたのだが……


「おに~ちゃん……」


 右側の指定席に白が収まる、コレこそが本来あるべき姿! 魔王霧島神那の禁域王(アルティメット)形態(フォーム)

 ここにミカヅキとミラが加われば完全無敵(インビンシブル)形態(フォーム)が誕生する。

 遠慮はいらない、どんと来い!


 …………


 しかし待てど暮らせど二人は来なかった…… ちょっとショック。

 元々シニス世界出身組は第2魔王に対して警戒感が薄かったからな。


 ただ獣人族(ビスト)出身の白だけはラグナロク内に漂う雰囲気の違いを感じ取ったんだ。

 獣人族(ビスト)ってのはそういうのに敏感なイメージがあるからな。



 城内での飛行許可は取ってある、なのでラグナロクの頂上付近まで一気に飛んでいく、ネフィリムが何か言いたげな目をしているが無視だ。

 お前に付き合って何時間も掛けて山登りする気はない。

 流石にココまでくれば文句も言わなくなる、だってご主人様が待ってるはずだからな。


 飛びながら城内を観察してみたが、物々しい……と言うほどではないが、やはりどこか緊張しているように見受けられる。


 魔王が5人もやって来たから…… って訳じゃないよな? 前にも来てるし……



---



 謁見の間へ辿り着く……


「はぁ……」


 扉を前にネフィリムが溜め息を付いた、なんて分かりやすい奴なんだ。


「それでは皆さん、くれぐれも粗相の無いようお願いします」


 皆さんと言いながら俺だけを見るな。

 まぁいきなり浮遊大陸を寄こせって要求したりしたからな、警戒されるのも仕方ない。



 ゴゴォォォン



 パワフルな女戦士(ビキニアーマー)のネフィリムがその扉を開ける。

 さあ第2魔王との再会だ、今回の交渉でなんとか呪われし筋肉を押し付けよう。

 そう意気込んでみたのだが……


「あれ?」


 玉座に魔王グリムの姿はなかった。

 おい、待ってねーじゃねーか。


「ネフィリム、随分と時間がかかりましたね?」


 かわりに待っていたのは四天王の一人、龍人族(ドラグニア)・第4龍ファフニールのヴァレリア・ドラグニアだった。


「連絡が取れずにガイアで4日程待たされる羽目になったので……」


 さらっと嘘つくな、お前がギルドセンターの営業妨害してたのは3日だろ、残りの1日はお前の恋愛テクニックの実践に費やしたんだろうが?


「はぁ…… ですから迎えは私がすると言ったんです、時間の無駄をしましたね」


 ヴァレリアさんが来る予定だったトコロを強引に掻っ攫ったのか、余計なコトを……

 ホントに仕事に私情を挟み過ぎだ!


「それで? 魔王グリムは?」

「実は予想外の来客がありまして、そちらに掛かりきりになっております。

 ですのでお話は私の方からさせて頂きます」


 予想外の来客?

 いや、そこには触れない方がいいな、厄介事(トラブル)の香りがプンプンする。

 ここは安定のスルー一択!


「先日、1200年ぶりにリリス様がお見えになりました。

 そう言えば皆様方は彼女と同盟関係を結んだそうですね?」

「えぇ、まぁ……」


 ハッキリとは宣言してないけど、一応俺の嫁候補だしな。


「彼女が言うには、貴方方を第4魔王 “鬼神” スサノオ様の元へ至れる様セッティングして欲しい……との事でしたが…… 間違いありませんか?」

「そう……ですね、事実です」


 無理矢理押し付けられたんだけどな、セッティングとか言われると彼女でも紹介してくれるのか?って気分になる。

 だが “鬼神” スサノオは男魔王だ、正直特別会いたいワケじゃ無い。


「リリス様と同盟関係にあるのでしたら、謁見の場を設けることも可能ですが、一つ条件があります」

「条件?」


 無理難題を言われるようなら辞退しよう、お使いイベントはダルい。


「ヘルムガルドに立ち入れる人数には制限があります、案内人を除いて3人まで、貴方方の中から3人選んでください。

 それが条件です」


 人数制限…… まぁ分からなくもない、他種族が自分の領域に足を踏み入れるのを許さない魔王だ、人数制限を掛けるのも自然だ。

 しかし3人か…… どうせなら1人にしておいてくれればジークに丸投げできたのに。


 さて…… 誰を派遣するか……

 あぁ…… イヤだなぁ…… なんだかんだで俺が行くハメになりそうで!




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