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レヴオル・シオン  作者: 群青
第六部 「神の章」
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第288話 三度現れる


 ゴリラの異世界追放作戦が終わった……

 その時デクス世界にゴリラの鳴き声がこだました…… うおォン! うおォン! って火力発電所みたいに泣き喚いた、お婆様が押さえてくれなければ琉架は囚われのお姫様みたいに監禁されていただろう。

 そんなゴリラは放っておいて、琉架を連れてさっさとシニス世界に帰ってきた。


 あの調子だと琉架の里帰りの度に、同じようなコトが繰り返されそうな予感がする……

 全く迷惑なヤツだ。


 しかしこれでシニス世界に平和が訪れる……

 コレで堂々と琉架と手を繋いでデートだって出来る! 今までは何処にゴリラの目があるか分からなかったから出来なかったけど、これからはそんな甘酸っぱい思い出も作り放題だ!


 折角なのでガイアでデートをしていこう。

 正確には夕食の買い出しとも言うが……


「神那は今夜のお夕飯、ナニが食べたい?」

「琉架の作るものだったら何でも良いよ」

「もう! そういうのが一番困るんだよ?」

「大丈夫、琉架の手作りなら例え消し炭でもテトロドトキシンでも暗黒物質でも完食してみせる!」

「う… 神那じゃないんだからそんなの作れないよ…… もう!」


 甘ったるいなぁ~…… 恋人のデートというより新婚夫婦みたいな会話だ。

 あまり相応しくない単語も含まれてるけど。

 まぁ消し炭はともかく、テトロドトキシンや暗黒物質を簡単に作り出せるのは俺だけだからな。


 そんな感じでイチャイチャしながら歩いていると、妙な空気を感じ取った。

 周囲に何か緊張感のようなものが漂っている…… 町中でこんな雰囲気を感じることなど普通はあり得ない。

 もしかしてゴリラか? ゴリラが俺たちを監視するために生霊になって戻ってきたのか?

 まったく、アイツは孫娘の幸せを考えられんのか? 迷惑な奴め……


「ギルドセンターの方が混んでるね、何かあるのかな?」

「ギルドセンター?」


 言われてみればギルドセンター方面に進むにつれ道が混み合っていく。


「もしかしてアレかな? リリスの使徒がマリア=ルージュが討伐されたことを報告してるのかも」

「あ、それかも! それならこの混雑も納得だよ!」


 納得…… 出来るだろうか?


 何となく嫌な予感がするのは俺だけだろうか?

 何か良くないモノの気配を感じるというか、なんというか……


 自分で言っといてなんだけど、明るい話題じゃない気がする。

 ここは確認せずにスルーするのがベストだな。

 現実から目を背けるなって? イヤだね、俺は辛い現実を直視するくらいなら幸福な妄想の中に生きる。


「神那、行ってみよ?」

「え? あぁ…… うん……」


 でも女神様には逆らえない……



---



 ギルドセンター前には人垣ができていた、中心に居るナニかから距離を取って見ているって感じだ。

 何だよ、魔物でも入り込んだのか? まさか腹ペコ魔王が空から落ちて来たんじゃ無いだろうな?


 人垣をかき分けて前へ進む、しかし進めば進むほど他人の密度が上がっていき、隙間が見当たらない……

 邪魔だなコイツ等、面倒臭くなってきた…… もういっそ俺の『神血(ディヴァイレッド)』で全員コンパクトに折り畳んでやろうか?


 …………


 本当に出来そうだな…… やっぱ止め、気持ち悪そうだから。


「う~ん…… 全然進めないね?」

「しかしここまで来てしまったら、戻ることも出来ないな」


 もう周り中人だらけ、おいコラ! オッサン! 汚い手で琉架に触るんじゃねぇ!

 こうなったら仕方ない、人生で一度はやってみたかったアレを実践しよう。


 琉架を後ろから抱きしめてみる。


「ひゃっ!!? か…か……か、神那!!??///」


 満員電車で彼女を守るためにスペースを作る胸キュン行動だ。

 ただ壁が無いからスペースが作れない…… 抱き締めた状態で二人一緒に潰されるだけに終わった。

 しかし密着度は過去最高レベルで上がった、これは良いモノだ、しばらくこの状態を堪能させてもらおう、そして機会があったらまたやらせてもらおう。


「ぁ…… ぁぅぅ~///」プシュ~


 琉架の頭から湯気が上がってるように見える…… 前みたいに気絶しちゃうかな? 大丈夫! 俺がついてる! 眠っちゃった女の子はお持ち帰りしてもイイってルールがあるらしい。

 まぁ持ち帰るっていうか、嫁達の待つ自宅に連れて帰るだけだけど。


 とは言え、いつまでもこんな所でイチャコラしてても埒が明かない…… 個人的にはずっとこうしていたいんだが、琉架が茹で上がってしまう。

 仕方ないので周囲の人間にリサーチしてみる。


「スミマセン、この人混みは一体何なんですか?」

「あ? あぁ、なんかスッゴイのが来てるらしいんだ」


 凄いの? 何だよそれ? 勇者が全裸で磔にされてるのか? だったら魚屋へ行ってウニを仕入れて来ないと。

 もちろん夕飯用じゃ無い、投げつける用だ。


「噂じゃ前にも1~2回現れた事があったらしいんだが、今回は3日程前から微動だにせず立ち尽くしてるらしいんだ」

「?? モンスターか何かか?」

「いいや女だ、置き物みたいに動かないが生きている女だ」


 ほう…… 女か…… 美人なら一目見てみたいトコロだが、しかしこの扱いはまるで珍獣だ。

 もしかして魔王? ……は、あり得ないか、俺の会ったことの無い魔王は残り二人、どちらも男魔王だ。


 う~ん、やはり嫌な予感がする、ここは琉架を引きずったまま後ずさり撤退しよう。

 しかし邪魔くさいなコイツら、こう接触してたら超躍衣装(ハイ・ジャンパー)も使えない。


 少しずつ後退する、はーい、通りますよ、道を開けてください。



 ムニョン♪



 ん? 後頭部から首筋辺りに素晴らしい感触、なんだ?


「見つけた、やっぱりいた」

「?」


 何か聞き覚えのある声が背後から聞こえる…… この声は……


「あ゛ リルリットさん……」

「案の定、お早いお帰りですね? カミナ君、それとルカちゃん」

「え? リルリットさん?///」


 そこに居たのは「ほ~らね? やっぱり」って顔をしたリルリットさんだった。

 彼女は俺達がすぐに戻ってくると予想していた…… その通りだった…… 何となく負けた気分だ、くそぅ!


「お二人は公衆の面前で何をイチャついてるんですか?」

「こっ…これは神那が……っ!! ぁぅぅ~///」

「リルリットさん、そう思うなら邪魔しないで下さいよ」

「生憎とそういうワケにも行かないんです、こっちもお二人を探していたんですから」

「探してた?」


 物凄く嫌な予感がする…… 今すぐ琉架をつれて逃げ出したい! が、後頭部から首筋に感じる柔らかい拘束が俺を逃がしてくれない……

 あぁ…… 素晴らしい感触だ、この枕なら快眠が約束される。

 膝枕、抱き枕の次はオッパイ枕の時代が来るんじゃ無いか? 誰かそんな商品開発してくれ。


「彼女が現れた時にあなた達の帰還を確信して、目撃情報を集める依頼を各ギルドに出しておいたんです。

 思った通りでしたね」

「彼女?」


 あぁ、例の置物女か…… え? 俺達の知り合い?


「さぁ行きますよ?」


 リルリットさんにそのままの体勢で押し出される、おぉ! 埋まる埋まる! いやチョット待て。


「行くってドコに? ちょっ……!」

「わわわっ!」

「皆さん道を空けて下さい、ギルドセンターの者です」


 そう言ってもあまり道は開けない、当然だ、ギチギチに詰まってるんだからな。

 周辺の人々を押し出すように進む、このままでは琉架が潰れてしまう、仕方ない…… 『神血(ディヴァイレッド)』で前にいるオッサンを操作して琉架の身代わりになってもらおう。

 てかリルリットさん、なんでそんなにパワフルなの? 身体強化使ってるだろ?


 身体強化魔法を使っても、胸は柔らかいままなのか…… うん、勉強になった。


 そして無理矢理押し出されて人垣の外へ、ギルドセンター前の広場へと出た……

 あぁ…… なんか見覚えのあるのがいるぞ?


「……………………」


 そこに居たのは肩幅に足を広げ、腕を組み、微動だにせずギルドセンターの正面玄関を睨みつけている女性……


「はれ? ネフィリムしゃん?///」


 若干ろれつが回って無い琉架が小声で彼女の名を呼んだ。

 そう、巨人を圧縮して造った女版偉丈夫ネフィリム・G・アースブールだ!


「…………」


 ネフィリムは琉架の小声をしっかり聞き取り、こちらに向かってきた。

 この喧騒の中で大した耳をお持ちだ、これも圧縮されて聴覚が10倍になってるからかな?


「主の命によりお迎えに上がりました」


 ネフィリムはそう言って俺達の前に膝を付き、頭を垂れた……

 あの…… 超目立つんですけど…… ヤメテよ。


 てか、なんでココに来た? お前ら俺達の引っ越し先 知ってるだろ?

 いや、今のティマイオスは不可視化状態だから探すの大変なのか…… だからってココで待ってても俺達がやって来るとは限らなかったんだが……

 やはり脳筋か……


 つーかリリスめ! こんな時だけ仕事が早い、女子高生やってた時、全力でダラダラしてたのが嘘みたいだ。


「私と一緒に来ていただきます、主は既にお待ちです」


 有無も言わさず強制連行、以前と何も変わってない、この女の頭の中には拒否権という言葉は存在しない。

 ただ今回はこちらからアポを取った形だから拒否する訳にもいかないし、これ以上待たせる訳にもいかない。


「それでジー……他の皆様は?」


 慌てて取り繕ってはいるが、ジークに焦がれているのは一目瞭然だ、そう言えばコイツ恋愛脳筋だったっけ。


「呼ばれてるのは全員なのか? 俺と琉架だけじゃダメなのか?」

「ダメに決まって……!! ……います」


 ちょっと意地悪な質問したら怒鳴られた…… お前、仕事に私情はさみ過ぎだ。

 ちなみに今放たれた怒気で周囲の人間が数名倒れた、どんだけジークに会いたいんだよ? あの呪われた筋肉に…… 全く理解できん!


 しかし我がギルドには現在、お笑い担当とリアル妹はいないんだが…… この反応を見る限り全員じゃ無くても良さそうだ。


「分かった、行くよ、ちゃんとジークも連れてくから心配するな」

「ハァァ♪ ……ハッ! ぜ……全員だ!///」


 今、すごく良い笑顔を見せた…… そしてテレ顔も…… 俺……それ……要らないから、ジークにだけ向けてやってくれ。


 この脳筋の所為でD.E.M. の帰還を周知されるハメになった。




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