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レヴオル・シオン  作者: 群青
第六部 「神の章」
291/375

第285話 神の封印


「それで? 結局お前は俺達に何をさせたいんだ?

 その“運命の刻”とやらに」

「あ~、いや、特に何をして欲しいってワケじゃないの、ただ何というか……」


 何となくお茶を濁そうとしている雰囲気を感じる……

 そっちがその気なら……


「つまり俺達はその時が来ても無視してればいいんだな?

 それを聞いて安心した、例え外の世界が滅びようともティマイオスに引きこもってる」


「わぁぁ! ゴメンナサイ!! 手伝って! その時が来たら手伝ってよ!!」


 リリスがアッサリ泣き言をいう。

 言葉を濁して言い逃れようとするからこうなるんだ。


「なんだよ手伝うって?

 まさかまたラスボスと戦えって言うんじゃないだろうな?」

「……カミナ…… 目が怖い」


 そりゃ怖くもなるわ、雑魚掃除の予定がいつの間にか最恐最悪最凶のアイツ討伐になってたんだからな。

 そんな難易度に天と地ほどの差がある任務をやらされたら誰だってキレる、非暴力主義者でも助走つけて殴るレベルだ。


「た……戦うのは大丈夫、ちゃんと準備もしてるから」

「本当か?」


 ハッキリ言ってアテにならない。


「グリムが1200年前から準備してるから」


 あぁ、そう言えばそんなような事を言ってた気がするな、だから俺達に魔王を倒せって依頼してきたんだ。

 そう言えばマリア=ルージュ討伐分の報酬って貰えないかな? あの時は依頼を受けなかったけど、結果的にはクライアントの希望通り倒したんだし……

 魔王グリムは器が大きそうだし、何かくれるかもしれないな……

 例えばジークを引き取ってもらうとか…… 何ならこっちが引取料払ってもいいぞ?


「しかし第2魔王様が戦いの準備をしてるなら、俺達に出る幕は無いだろ? まさかみんなで取り囲んで袋叩きにしろってのか?」

「正直、何が起こるかは分からないから覚悟だけしておいて欲しいの」


 また嫌な感じの言葉だな、それは最悪「ラスボスと戦う覚悟」って意味じゃないのか?

 しかし神殺しの実績がある第2魔王だ、少なくとも前回のマリア=ルージュ戦でのリリスよりは安心感がある。


「つまり今は覚悟しておくだけで、特にする事は無いんだな?」

「まぁ…… そう……ね」


 そうか、ならばしばらくは嫁達とまったりとラブラブな生活を送る事ができそうだな。


「あ…… 一つお願いしたい事が……」

「…………」


 コイツ…… ちょっと調子乗り過ぎじゃね? 俺は便利屋じゃないんだぞ?


「保険としてエネ・イヴ様を捜しておきたいんだけど…… それに約束もあるし」

「約束?」

「ほら、呪い解除方法を見つけるってヤツ」


 そんな約束どこでした? 関係無い事に俺達を巻き込むなよ。


「忘れちゃった? ベルタとの約束よ」

「ベルタって誰?」

「うわ…… 本気で忘れてるんだ……」


 ?? 俺の知り合いにそんな奴居たっけ?


「神那、神那、妖魔族(ミスティカ)の情報提供者さんの事だよ」

「あぁ~」


 琉架がこっそり教えてくれた、そういえば居たなそんな奴。

 思い出した、呪われし坊ちゃまを助ける為にリリスの下僕になった奴だ……

 え? あの約束守るつもりなの? てっきり反故にするつもりだとばかり思ってた。


「ん? その約束と終焉の子捜索に何か関係があるのか? 二つは別物だろ?」

「そうでも無いわ、さっきも言ったけどエネ・イヴ様の封印は魔王スサノオがしたのよ、つまり封印場所を知るのも、封印を解けるのも魔王スサノオだけってワケ」


 …………?


 なんだろう? 今ナニかを思い出し掛けた、大切なナニかを忘れてる気がする……

 う~ん…… 魔王スサノオ絡みか?


「それじゃ第4領域・ヘルムガルドに行くのか? 確か魔王スサノオは他種族が第4領域に足を踏み入れるのを許さないって聞いたぞ?」


 それでマリア=ルージュとガチでやり合う奴だ、正直関わり合いになりたくない。

 いや、第2魔王は交渉してるみたいなこと言ってたか? ならばアポイントを取れば無差別に襲ってくることは無いってコトか……

 しかし新参者にはアポイントメントの取り方など解らんし、相手を知らずに交渉など出来るモノか。



「グリムに頼めば許可は取れるハズよ」

「魔王グリムと魔王スサノオは仲良しなのか?」


 だったら第2魔王にやらせるべきだ、俺達が行っても意味が無い。

 …………

 とは思うんだが、第2魔王は第4魔王との交渉が上手くいってなかった様な事を言ってた気がする。


「仲良しってことは無いと思うけど…… でもそれにね? 敵対するつもりが無いのなら一度くらい挨拶しておいた方がいい気がするんだ」


 う~ん…… 言いたい事は分からなくもない。

 確かに敵対しないなら挨拶くらいはしておいても良いと思う……

 そうすることによって不意の遭遇戦を避けられる。

 ただしそれは相手が“普通の魔王”だった場合に限られる。


 相手は第4領域に引きこもっていて、そこに立ち入らない限り無害な魔王、ティマイオスを第4領域に近付けなければそれでいい、こちらが気を付けていれば敵対関係になることも無い。

 そもそもティマイオスが結界に隠れていたら、多分見つからない。


 だいたい引きこもり相手に挨拶なんて必要か? 引きこもりってのは他人に会いたくないから引きこもってるんだろ?

 そんな所にわざわざ出向いていったら物投げつけられるのがオチだ。

 物ならまだ良い、最悪の場合、呪いが飛んでくる、冗談じゃ無い!

 ウチの息子まで引きこもりになったらどうするんだ? 俺には複数の嫁がいるというのに!


 …………


 呪い?

 何だろう? また何かが脳裏を過ぎった……


「カミナ?」

「何か忘れてる気がするんだが……」


 呪い…… 呪い……

 呪いと言えばウチの筋肉の化身が掛かった不老不死と男性機能停止の呪いだ。

 あれ? そう言えば呪いってのは第4魔王のギフト『呪い移し(カースシャッター)』によって作られるんだったよな?

 ……と言うことは、ジークは魔王スサノオに会ったことがある? って事になるよな……

 いや…… 呪われし坊ちゃまみたいにどこかで呪魂を手に入れた可能性もあるが……

 確か自分から呪われに行ったみたいなことを言っていた気が……

 ジークってもしかして……


 いや、ジークの事なんかどうでもいい。

 俺の脳細胞を筋肉質男の過去の為に割くのはあまりにも勿体無い!


「なあリリス、その終焉の子の封印ってどういったモノなんだ?」

「随分とアバウトな質問ね? 私も詳細を知ってる訳じゃないけど、魔術的封印ではないハズよ。

 魔力探知で誰にも探せないようにするためだったんだから……

 恐らくだけど…… 何かしらの呪いを施したのよ」


 呪い…… やはり呪いか。

 終焉の子は呪いによって封印されている……


 …………

 ………………

 ……………………んん?


「リリス…… 幾つか確認したいことがあるんだが……」

「うん? なんでも聞いて」


「それじゃ…… 終焉の子の恩恵『進化神化(ディヴァイアス)』によって魔王が誕生した。

 その直後……かどうかは分からないが、古代神族(レオ・ディヴァイア)に不遜な空気を感じたリリスが終焉の子封印計画を立案・実行に移した」

「えぇ…… まぁ…… そうね」


「魔王誕生と終焉の子封印の間にどれだけの時間があったのかは分からない、だがそんなに長い時間じゃないだろ?」

「えぇ、ほんの数日よ、急がなければ手遅れになると思った。

 古代神族(レオ・ディヴァイア)新代神族(ネオ・ディヴァイア)だけを警戒していたから、味方陣営だった私たちは比較的簡単にエネ・イヴ様の誘拐に成功した」


「そのすぐ後に魔王スサノオは終焉の子を呪いにより封印した……」

「そこは予想だけれどね……」


「つ……つまり、終焉の子は…… 世界で初めて魔王スサノオの呪いを受けた人物……ってことかな?」

「まぁ…… 多分……ね? それがどうかしたの?」


 世界で最初の呪いを受けた人物…… このフレーズに俺は心当たりがある……

 そう…… アレはD.E.M. の新メンバーを求めて霧の迷宮に…… 地下迷宮(ラビリンス)に赴いた時だ……


「お……おい、カミナよ……」

「シャラップ!! チョット黙ってろ!!」


 どうやらジークも気付いたらしい。

 そう、あの時ジークは言っていた…… 確か……


 『彼女はおよそ2400年前、世界で初めて呪いをその身に受けた、古代神族の生き残りだ』


 ……と。


 それってつまり…… そのまんまの意味だよね?




 俺の女神像は『終焉の子エネ・イヴ』だ。




 …………


 やっべぇーーー!!

 超オカズにしちゃったよ!!

 それも女神像の目の前で!!


 大丈夫だよね? あの呪いの封印はコールドスリープみたいなもの! 俺が女神像の前で披露したアクロバティックなソロプレーの数々は認識されてないよね?


 もし認識されていたら…… 俺の人生は終わる。


 …………


 いや、何と言っても相手は神だ、万が一ということもある。

 女神像はこのまま行方不明という事にしてしまった方が安全じゃないか?

 そうだよ…… 女神像の行方を知る者は俺とジークだけ……

 つまりジークを始末してしまえば、終焉の子エネ・イヴ行方不明事件は迷宮入りだ!





 もう殺るしかない





 ジーク…… お前は何も悪くない、ただ運が悪かっただけだ。

 今までありがとう、言う機会がなかったけどお前って結構役に立ったよ。

 だが…… ここ迄だ。


 俺達の路は今 分かれた。


 お前は(俺の)世界の為に犠牲になってもらう、尊い犠牲だ……

 だがお前の命一つで(俺の)世界は救われる。


 安心しろ……

 俺はお前の分も生きる!

 お前の分も幸せになる!

 お前が人生の大半で出来なかった子作りもしまくってやる!


 だから安心して逝ってくれ。

 今までありがとう…… そして……



 サヨナラ



「おいカミナ、殺気が漏れ出したと思ったら、なぜ今はそんな菩薩のような顔をしている?」

「いや、なんでもない…… それよりジーク、今夜何が食べたい?」

「何だその質問は?」


 決まってるだろ? 最後の晩餐だ、どんなものでも用意してやるぞ?


「そう言えば……」


 ん?


「ラビリンスの第1階層に2400年前に呪われた古代神族の伝承が記されていた気が……」

「!!」


 しまったぁー!! ミカヅキも例の碑文を知っていたのか!?


「そ…それ本当!!?」

「はい…… しかし最下層の宝物庫にもそれらしきモノは…… あ、もしかしてマスターが持ち帰った黒曜石の置物?」


 おかしいな? ミカヅキが習得したスキルの中に探偵術なんて無かった筈なのに、的確に言い当てられた。


「ヒトが封印できそうな大きさのモノはアレだけでしたし……」

「へ……へぇ~…… まさかあの置物にそんな秘密が」(棒)


 ジ~~~~~


 みんなの視線が突き刺さる。

 くそっ! 何でこんな事に!!


「あぁそうだよ、終焉の子エネ・イヴは確保済みだ」




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