第283話 探索
「第3・第11兼任魔王…… なんか長いよね?」
琉架の率直な意見だ、俺もそう思う。
「だったら略して第3魔王でイイよね? そっちの方がスッキリするし」
「え?」
第3魔王 霧島神那? う~ん…… 確かにスッキリするけどイメージが悪い。
何と言っても第3魔王と言ったら最恐最悪最凶で天上天下唯我独尊だ。
「白も…… その方がいいと思う」
「そうですね、その方がマスターに相応しいかと……」
「確かに11より3の方が纏まりがイイですね」
嫁達が第3魔王案に賛成してる…… もはや俺に拒否権は無い。
確かに魔王同盟の盟主たる俺が一番序列が高いほうがシックリくる…… あ、もしかしてみんなそれが理由で賛成したのかな?
まぁ第11魔王より第3魔王の方が上位っぽく感じるのは確かだ、だが実際には魔王の序列は種族序列がそのまま適応されてるだけだから、魔王の実力には関係ないんだよな。
魔王同盟内最強は、やっぱり琉架かな?
俺もだいぶパワーアップはしたと思う、だが俺のパワーアップは外的要因によるところが大きい。
この外的要因パワーアップってのは個人的にあまり印象が良くない……
俺が愛読していた龍玉のマンガ、そのマンガの世代交代に失敗した二代目主人公がこんな感じだった。
最初はしっかり修行してたけど、次第にどっかの長老に潜在能力を引き出して貰ったり、ブチギレパワーアップで調子に乗ったり、どっかの神様に超絶パワーアップさせてもらって舐めプしたり…… そして主役の座は父親の先代主人公に戻って行った。
今の俺もそんな感じだ、たなぼたパワーアップ…… いや、散々苦労した挙句だから全く同じってワケじゃ無いが……
気を付けよう…… でないと劇場版で復活した敵相手に醜態を晒すハメになる。
そんなワケで俺はこれから第3魔王を名乗ることになりそうだ、イメージ回復には数百年単位の時間が掛かるだろう……
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翌日、魔王城ディグニティ探索の続きをする。
お宝や俺専用武器が手に入ったから後はどうでもいいんだが、やはり一通り調べておくべきだろう。
例えばマリア=ルージュの寝室……とか? アイツの残した遺産とかの所有権も俺にある、いや、いらないけどね?
しかし何と言っても第3魔王の居城だ、探せば賢者の石の一つや二つ見つかってもおかしくない。
あとやはり玄室かな? 聖遺物は調べておきたい、できれば誰も干渉できないよう封印しておきたい。
本当は別荘にでもしたいところなのだが、浮遊大陸は別荘にするにはデカすぎる。
ついでにアリアがどうやってデクス世界にやってきたか分かればいいんだが……
本日の探索はふた手に分かれて行う、死体が転がってる上層階から降りていく形で俺とミラとリリスが、下から登っていく形で琉架と白とミカヅキが……
ん? ジーク? いつものスタンドプレーだ、アイツはいらん、外で遊んで遊んでるんじゃないか?
魔王城・ディグニティ 最上層階
― 魔王の居室 ―
およそ2週間ぶりに戻ってきた魔王の居室…… そこには黒焦げの遺体がほったらかしにされている。
あの時は急にリリスに召喚された為、埋葬してやる暇が無かった…… 仮にそんな余裕があったとしてもこの裏切り者を埋葬する気にはならなかったがな。
骨の髄まで炭化しているこのご遺体では裏切り者の証拠としては使えないだろう、とは言えココに放置しておくのもどうだろう?
国連がこの城を調査しに来るのは早くても数か月先の話、さすがにちょっと憐れかな?
「赤木……錐哉……」
リリスが忌々しいモノを見る目で黒焦げ遺体を睨んでる、確かにコイツの裏切りによる最大の被害者……とも言えないことも無い。
だがお前だって創世十二使を…… デクス世界の住民全てをコマ扱いしてたんだから、あまり人のコトは言えないぞ?
しかしリリスがこの遺体を足蹴にしようが自由だ、俺は止めない、コイツの行ないの所為で多くの人が犠牲になったのは紛れもない事実だ。
さあ、好きなだけストンピングするがいい。
「ハァ…… 私の育て方が悪かったのかな? なんでこんな風に育っちゃったのか、教育方針間違えたかな?」
落ち込んでる…… 怒りより自己嫌悪の方が強いのか?
あまり気にするな、育てたのはオリジン機関の講師だ、もしかしたら師匠かも知れない…… だったら狂人が生まれるのも納得だ。
「取りあえず埋葬…… いや、持ち上げたら崩れそうだし風域魔術で吹き飛ばして浮遊大陸に散骨してやるか」
せめてもの手向けとして…… 方法は間違っていたが本人は人類を救おうとしていたんだからな。
「第4階位級 風域魔術『風爆』エアロバースト」
魔力量を操作して、かなり弱めの風爆でキリヤの身体を吹き飛ばす……
炭化した身体はバラバラになり、風に乗って南極の空へと消えていった……
お、魔神器が残ってる、ラッキー……って、当然壊れてるか。
「カミナ様、この後はどうされますか?」
「取りあえず最上階に行ってみよう、そこから下りながら調べていこう」
「畏まりました、では」
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魔王城ディグニティ・中央塔屋上
そこはサッカーコートが丸まる収まるほど広い…… しかし何か違和感を感じる、城の屋上って急勾配の屋根とか付いてるイメージがある。
なのに平面…… ビルの屋上みたいだ、いや、ビルの屋上だって何かしら置いてある、しかしココには何も無い……
おかしい…… ココは魔王城ディグニティ、壁の彫刻から足ふきマットに至るまで ありとあらゆる物が装飾された城だ。
ウォシュレットのノズルが金のドラゴンヘッドだったんだぜ? 火を吹くんじゃないかってドキドキしたよ。
そんな城の屋上がこんなシンプルなのだろうか? どう考えたって不釣り合いだ。
なんだろう? ドラゴンでも飼ってたのかな? 妖魔族ってデカいドラゴンが好きだからなぁ。
「何か変わったお城ですね、ローレライならこの位置にお母様の私室があったんですが……」
「あぁ~、エンブリオでもこの位置は私の私室にしてたなぁ…… 改装しちゃったけど」
やっぱりそうだよな? リアル魔王城暮らしが長い二人が言うなら間違いない。
つまりココにはマリア=ルージュの私室があったハズなんだ、それが綺麗サッパリ消えている。
まさかとは思うがマリア=ルージュも決戦前に身の回りの整理とかしてたのか? 俺がハードディスクの整理をした様に…… つまり人には見せられないようなモノがあった……
見たかったなぁ、アイツの秘密、薄い本とか持ってたのかな? しかし片付け方がダイナミックだな、部屋ごと片付けるなんて。
「ココには何も無いようですし、予定通り調べながら下りますね?」
「あぁ、頼む」
探索はミラの『反響』にお任せする。
俺はその隣で人魚族の神秘の探索をさせてもらおう。
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塔の中央付近で琉架達と合流、玄室はそこより少し下の階にあったそうだ、よりにもよって琉架と白が居るチームが見つけてしまったか……
近くにちょうど良く議場があったので、そこで報告会議を開く。
「右胸から右ひじ辺りまででしたね」
「ん?」
「聖遺物です、肺の一部が覗いてました」
うげ、内臓が見えてたのか。
報告してくれたのはミカヅキ、たぶん琉架と白は見てないな。
「上は特にめぼしいモノは無かった」
風呂すら見つからなかった、やはり屋上の更に上にはマリア=ルージュの私室があったのだろう。
「こちらも特に何も見つからなかったぞ」
「…………」
いつの間にかジークが戻って来ていた、そもそもお前は何処を探索してたんだ? チッ! 外で氷漬けにでもなってればよかったのに……
「さて、これで魔王城ディグニティの探索は終わった、玄室は後で俺が埋めて封印しておく、それが終わり次第、明日にでもシニス世界に移動しようと思う」
そして始まる俺のハーレム生活♪ うはっ♪ 楽しみで今夜は眠れそうにない♪
「あの……! その前に一つイイですか?」
リリスが挙手する、何だ? ナニか不満でもあるのか?
「え~と…… 今更なんですけど、私リリス・リスティスは正式に魔王同盟に参加したい……なって思って……」
あぁ、そう言えば正式に参加はしてなかったな……
リリスは美人だ、それだけで参加条件を満たしている…… だがその前に。
「それでは面接を行います」
「へ? 面接?」
そもそもこいつは何故今更こんな事を言いだしたのか?
既に敵対魔王は存在しない、まぁ恒久平和には程遠い世界情勢ではあるが、少なくとも魔王の命を脅かすような存在は無い。
49代目勇者は脅威じゃないからな。
魔王同盟=俺のハーレム……って意味ならウェルカムだ。
だがこの暗躍好きの魔王には何か他の理由がありそうだ。
それを確認せずに迎え入れるのは危険だ、それに気になっている事もある。
「えっと、志望動機とか話せばイイのかな?」
「志望動機と言うより全部話せ、隠してること全部」
「あ~……」
リリスの眼が泳いでる…… やっぱり何か隠してるな、まぁいい。
「リリス覚えてるか? お前への質問権が残っているのを」
「質問権? あぁ、そう言えばあったね」
今更こんな権利必要ないんだけどな…… 何と言っても俺はリリスに対して絶対命令権を持ってるから。
例えばオッパイ揉ませろって言えばアイツは拒否できない…… フッ…… フフフ♪
まぁそんな命令しないけどね? 俺、紳士だから、女の子が嫌がることとかしない、俺は嫁を大切にする男なのだ。
ただし今回ばかりは洗いざらい吐いてもらう、例え嫌がろうとも拒否は認めん。
あの時は何か忘れてる気がして質問権を一つ残したのだが、ようやく思い出せた。
良い機会なのでコレを聞いておこう。
「それで? カミナは何が聞きたいの?」
「あぁ…… お前の二つ名についてだ……」
「………… え?」
「第12魔王 “原罪” リリス・リスティス」
原罪…… 一体何をすればこんな暗黒臭い二つ名がつくのか…… ハーレム王と名付けられた身としては是非とも教えて欲しい。
「……………………」
リリスは目を閉じ沈黙を守っている。
てっきり頬を染め羞恥に耐えてるのかと思ったが、そんな感じには見受けられない。
やはりよっぽどの事をしでかしたのか?
そうでなきゃ “原罪” なんて呼ばれないだろうからな。
「ふぅー…… カミナ…… キミって子は本当に…… 私の1/100も生きて無いのに、絶対に敵に回したくないタイプよね?
今まであなたが倒してきた魔王達もきっと今頃そう思っているハズよ」
「う~ん…… まぁ褒め言葉として受け取っておこう」
「いいわ、教えて上げる、結論から言うと私が古代神族を滅ぼしたからよ」
「…………は?」




