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レヴオル・シオン  作者: 群青
第六部 「神の章」
287/375

第281話 その前に……


 数日後……


 俺達は……いや、俺と琉架は生まれ育った街を、生まれ育った国を出た。

 向かう先はシニス世界。


 まぁいつでも戻ってこれるんだから、いつもの神隠しみたいなモノだな。

 いざ俺のハーレムが待っている愛の国へ!!


 と、その前に…… デクス世界でやり残した事をやっておく。

 目的地変更、向かう先は南極、魔王城ディグニティだ。


 勘の良い者なら分かるだろう、そうだよ、泥棒だよ。

 いや違うな…… 俺は第3魔王マリア=ルージュ・ブラッドレッドを倒した、つまり第3魔王の城は俺の城、浮遊大陸アリアは俺の支配領域と言っていい。

 当然そこにあるモノの所有権は俺にある! つまり泥棒では無く相続したマリア=ルージュの遺品の整理だ。


 まだしばらく先の話だろうが、国際連合が復活すればココの調査も行われるだろう、その時に人の手に余る様な神器でも見つかれば、新たな戦争の火種になりかねない。

 更にそしてそうした物が魔王に向けられないとも限らない…… だから先に回収しておく。


 ちなみにココには平和主義者のクセに多種族を見下し、高圧的な態度を取る妖魔族(ミスティカ)が住み着いている事もレイフォード財団を通じて知らせてある。

 あんな奴ら滅ぼされても気にしないんだが、それでも一種族を絶滅させるのは気が引けるので放置する事にした、一応俺の支配領域に住んでるんだから俺が好きに扱ってもイイんだけど……

 それをすると俺の称号に「最恐最悪最凶+鬼畜」が追加されそうなので見逃してやる、そんな称号欲しくないから。



「うわ~~~、おっき~~~」

「…………すごい」

「これは…… メイドが100人くらい必要ですね…… いや、それでも足りないかも……」

「すごい…… こんなに大きなお城…… 初めて見ました……」

「なんと荘厳な…… コレが魔王城ディグニティ……」

妖魔族(ミスティカ)らしい成金趣味ね」


 ちなみに今のコメントは順番に琉架、白、ミカヅキ、ミラ、ジーク、リリスのモノだ。

 てかリリス、お前魔王城ディグニティ見たコト無かったのか?


「それではこれより危険物の捜索を始めます」


 お宝とは言わない。


「はーい、しつも~ん」

「はい琉架クン」

「危険物ってどういったモノですか?」

「イイ質問ですね、一言で危険物と言っても色々あります、例えば地球を破壊できる爆弾だったり、人類を滅ぼせるウィルス兵器だったり、人を捕食する事に特化した生物兵器だったり……

 小さな魔器がそういった危険な兵器の可能性もあります、我々が探すのはそういった危険物の保管庫ですね、さすがにそこら辺に転がしてるとは思えないから」

「保管庫…… なるほど」


 宝物庫……とも言うかも知れないがな。


「ただまぁ、見ての通りバカみたいにデカい城です、みんなで手分けをしてもどれだけ掛かるコトか……」


 我が方の人員は6人の魔王と1人の筋肉、圧倒的にマンパワーが不足している。


「それでは私が城の左側区画全域を受け持ちましょう」


 ん? ミラが無茶なコト言いだした。


「じゃあ白は右側区画……」


 あれ? 白も?


「では私が地下区画を担当しましょう」


 ミカヅキまで?

 確かにこの城は誰も居ないから安全といえば安全だ、あるのは裏切り者の黒焦げ死体一つくらいか……

 ヤル気になってくれるのは有難いんだが、いくらなんでも担当範囲が広すぎる。


「大丈夫です、私には『反響(エコー)』がありますから、一人でも問題ありません」


 反響(エコー)…… そうか、神曲歌姫(ディリーヴァ)の一能力か、やはりあったかエコーロケーション能力! 俺の推測通り人魚族(マーメイド)のあの豊満な胸は音響レンズだったんだ!

 いや、貧乳の人魚族(マーメイド)もいるんだけどね……


 あ、それじゃ……


「白も…… 『摂理の眼(プロビデンス)』があるから……」


 白が眼帯をずらしながら言った、そう言えば白の眼には透視や遠隔視の能力があったんだったな、しかし制御できるようになったのかな?

 自分で言いだすってコトはある程度の制御には成功してるって事だろう、ならば任せよう。


「地下はそれ程深くないようですので、私が手分けすれば問題無いでしょう」


 そうだ、ミカヅキは『鏡界転者(レプリカント)』で、一人で最大10人分の働きをできるんだ。


「ミカヅキは今どれくらい分身体を作れるんだ?」

「現在『八重奏(オクテット)』まで使えます」


 八重奏(オクテット)…… つまり分身7人と本体で8人分の仕事をこなせるってコトだ。

 いつの間にか随分と増えてる、成長したな……


 3人とも応用の効く良い能力だ、俺と琉架の能力は戦闘に特化し過ぎている、こういった探索では全く役に立たない。

 そう言えばココにはもう一人魔王が居る、リリスは何か探索系の能力を持ってないのか?

 そう思い見ると……


「え~と…… 『不確定未来(タイター)』使う?」

「役に立つのか? アレ……」

「仕方ないでしょ? 戦闘系スキルを中心に収集してきたんだから、探索とか殆んどした事ないし…… 他に使えそうなのは……」


 ま、戦力外だな、残りのメンバーは手分けして中央塔を調べよう。



---



 半日ほどで城の半分の探索を済ませた……

 その探索の九割は白、ミカヅキ、ミラの手によるモノだ、まぁ…… 仕方ないな。

 客間を見つけたので今日はそこにご宿泊する、しかしこの城に誰か尋ねてくることがあったのだろうか? 仮に訪ねて来たとして泊まっていく奴がいたのか?

 この城の中ではどこに居ようともあの女に見られているのと同じだ。

 風呂もトイレも自慰行為も全て筒抜け…… 俺なら宿泊はお断りだ。


「城の左側区画には保管庫は見当たりませんでしたが、代わりに書庫を見つけました。

 中身は確認して無いですけど、一応片っ端から魔神器へ入れてきました…… コレも収集されるんですか?」

「あぁ、ありがと、コレはアーリィ=フォレストへのお土産だ、高天防衛でずいぶん世話になったからな」


 本当は自分で読むのが面倒くさいから押しつけるだけ……ってのはナイショだ。


「右区画には宝物庫があった…… 小さい財宝は一通り持ってきたけど、大きいのは魔神器に入れられなかった……」

「あぁ、入れられる物の大きさに制限があるからな」


 明日一応確認するか、良さそうなモノだったらジークにでも運ばせればいい。

 この城の宝は全て頂いてしまえ! コレは泥棒じゃ無い、俺の城なんだからな。


「地下は武器庫や食料庫でした、兵站が準備されていた形跡がありましたが、ほぼ空っぽ状態です…… ただ一部屋だけ厳重に封印されておりましたので、先ほど白様にお願いして封印を破壊、中を調べてみました」

「封印? 一部屋だけ?」

「はい、中にこの様なモノが……」


 そう言ってミカヅキが差し出した物は、一振りの小さな剣だった。


「これは……」


 見た感じはレイピアに近い形状をしている、刃渡りは30cmも無く小さく細い、金と銀の細かな細工がされている…… 武器としての使い道はほぼ無い。

 妖魔族(ミスティカ)が好んで使っていた儀礼剣の更に格式を高めた感じか……

 どちらかと言うと(タクト)に近いか……


「白様に鑑定してもらった結果、どうやら神器である様です」

「神器?」

「はい、神器『神魔制剣(テオフィルス)』です」


 神器『神魔制剣(テオフィルス)』……だと!?


「まさか!! あの魔力微細制御棒(アマデウス)のモデルになったという伝説の神器!?」


 理論上、コレがあればどんな魔術でも使う事ができるという神器だ!

 魔導魔術はもちろん魔法魔術、古代魔術、更には知識さえあれば禁断魔術すら使えるという代物!


「ではコレはマスターがお納めください」

「え? い……いいのか?」

「はい、これは元々マリア=ルージュの所有物です、そのマリア=ルージュを倒したマスターに所有権があります、第一私たちにはまともに扱える代物では無いようですから」


 い……いいのかな? うん、いいよな?

 ミカヅキの言う通りマリア=ルージュを倒したらドロップしたようなモノだ。

 リリスが何か言いたそうな目で見てるけど、お前は大して働いてないんだから文句は言わせない!


 とうとう…… とうとう俺専用の武器を手に入れた!



 《霧島神那は “神器『神魔制剣(テオフィルス)』” を手に入れた!》



 ………… 長かった……

 俺専用武器を求めて3年弱…… ようやく…… ようやく専用武器を手に入れた!!


 …………


 ただ欲を言わせてもらえば遅すぎる、せめてマリア=ルージュ戦の前に手に入れたかった。

 もう主だった敵はいないし、使い所が無い…… あとは勇者が魔王討伐とか言ってやって来た時に返り討ちにするくらいにしか使い道が無い。

 せっかく手に入れたのに活躍の場が無いとは…… 勿体無いな。


 そう言えば勇者ってどうなったんだろう?

 アルスメリア軍に拘束されてたりするのだろうか? まさかとは思うが核融合に巻き込まれて消し飛んでたり、(エーテル)MBH(マイクロブラックホール)に飲み込まれて消滅とかしないよな?


 …………


 まぁアイツはしぶといから多分前者だろう、もし後者だったら…… うん、ゴメン。

 第3魔王を倒す為の尊い犠牲だったんだ、そんな噂を世界に流しておいてやろう、そうすればアイツもきっと浮かばれる。

 だから化けて出るなよ?


「でも何でだろうね?」

「ん?」


 琉架が不思議そうな顔をして『神魔制剣(テオフィルス)』を見ている。


「どした?」

「うん…… いや、なんでマリア=ルージュはこの神器『神魔制剣(テオフィルス)』を使わなかったんだろう……って思って」

「あ」


 言われてみればもっともだ、なんでアイツはこれを使わなかった?

 上位種族なんだ、死滅魔法のみならず古代魔術なんかにも精通していたはず、にも拘らず何故アイツはこれ程の逸品を置いて行ったのか?

 まぁアイツの能力なら魔術など必要なかったともいえるが……


 まさか…… 破格の性能を誇る一品には厄介な呪いが掛けられている…… なんてコトも有り得るが……

 例えば戦闘中に動けなくなるとか、4歩ごとにHPが1減るとか、常時混乱状態になり女の子に襲い掛かりまくるとか……

 最後の呪いは近い将来俺が掛かる予定の呪いだ、そんな呪われた日々が早く来ないかと密かに祈ってたりする。


 とにかくそんなデメリットがあったのなら、マリア=ルージュが厳重に封印していたのも頷ける。

 2回攻撃の武器と合体させて呪いを無効化させるとか出来ればいいんだが、世の中そんなに甘くない。

 念の為、白に確認してみる。


「使用者に何らかの不都合が起こるコトは…… 無い」


 ……だそうだ。

 ならば他の理由が有ったのか、ただ単純に必要なかっただけかも知れない。


 今更アイツに聞くコトなんか出来ないんだから、深く考えるのは止そう。




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