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レヴオル・シオン  作者: 群青
第六部 「神の章」
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第278話 今後の方針


 マリア=ルージュとの最終決戦から10日程が経った。

 俺はようやく一人で歩ける程度に回復したので大和へ戻ってきた。


 とは言えまだ本調子では無い、身体の方はだいぶ良いが魔力の回復が思っていたより遅い気がする。

 特に純粋魔力だ、限界突破(オーバードライブ)状態で無理やり絞り出したが悪かったのか? 或いは他の理由だろうか?

 着実に回復しているのは間違いないが、全快するにはまだ少しかかりそうだ。

 そう言えば以前リリスも純粋魔力が枯渇して1週間寝込んだって言ってたな、アレかも知れないな。


 純粋魔力が使えないとなると門を開きし者(ゲートキーパー)も使えない。

 しかし幸いリリスにはそういった症状は出なかったので、彼女のゲートで帰還した。


 久しぶりの我が家……って程でもないか。


 コレから家族会議を開き長男が魔王になった事を話さなければならない。

 まぁ魔王と言っても俺自信が悪事を働いてるわけじゃない、むしろ英雄的働きをしてる、親不孝者と罵られることはないと思いたい。


 そしてこの世界を離れる事も…… その前にハードディスクの整理だ!

 必要なモノだけ回収したら全て破壊しよう、データサルベージとかされない様に……


「リリスはこの後どうするんだ?」


 隣に立つリリスに予定を聞く、彼女も一応ウチにホームステイしてたからな。


「私はオリジン機関に用事があるからそっちへ行くわ、何れ挨拶はしに来る」

「そうか、それじゃついでと言っては何だが、俺の魔神器の修理もしてきてくれ」


 そう言って壊れた魔神器を手渡す。


「え? 壊れてるの?」

「裏切り者の赤木キャプテンの強電磁波で壊された、EMP防御が役に立たなかったぞ」

「赤木錐哉…… そう言えば電磁波の能力者だったわね……」


 あ、リリスが落ち込んでしまった…… そんなにあの狂人に裏切られたのがショックだったのか?

 まぁ自分に人を見る目が無かったってコトだからな。


「まぁ気にするな、アイツは狂ってたんだから」

「ふ…… 狂ってる人間すら見極められないとは……」


 面倒くさい方向へ落ち込んでるなぁ…… まぁまだ事件から10日だ、すぐに切り替えられないのも仕方ないか。


「はぁ…… とにかく魔神器は預かるわ」

「あぁ、頼む」

「それとカミナ、何かあったらすぐに連絡してね? 朝ごはんはちゃんと食べること、夜は日付が変わる前に眠ること、トイレやお風呂で不便なことがあったら呼んで、駆けつけるから!」


 お前はママか? 何でそんなに過保護になった?

 あとトイレ・風呂関係でお前を呼ぶことはない、なんか怖いから。



---



 リリスと分かれて実家に入る。

 今から胃の痛くなるような話し合い……と思っていたが、家の中が妙に静かだ。

 てかオーラが見えない…… はっきり言って誰もいない。

 まだ避難先から戻ってないのか?


 この街に降りた魔物は全部アーリィ=フォレストが処理してくれたはず、危険なんかないだろ?

 いや、そう言えば山の向こうに落ちた突撃艇もあったらしいな、そこから出てきたのが近くにいる可能性も無きにしも非ず……か。


 だったらウチの筋肉ホームセキュリティはドコ行った?

 家族が不在の時に家を守るのがジークの仕事だろ?

 もっとも家に帰ってきて出迎えてくれるのが筋肉の塊だけなんてお断りだが。


 まぁいい、居ないなら後回しだ、まずは琉架と相談だな。

 しかし琉架の家は相談場所には向かないと思う。

 Lv.99の執事やメイドが居る家では相談内容が筒抜けになる恐れがある。

 相談の内容が内容なだけに、俺が琉架を誘拐しようとしてる……とか、駆け落ちしようとしてる……なんて誤解を与えかねない。

 それらに近いことをしようとしているのも事実だからな。



---



 近所の喫茶店に琉架を呼び出す。

 開いている喫茶店を見つけるのに苦労した……


 学院の研究室も今の状況では使えないだろう、当然大手コーヒーチェーンも却下だ、何故かって? 非リア充の俺には注文の仕方がわからないからだ。

 薄いノートパソコンも持ってないし……


 そんなワケで鄙びた感じの古い喫茶店をチョイスした、平日の昼間…… 客は俺以外誰もいない、密談には持って来いだな。

 優雅にコーヒーを飲みながら嫁を待つ…… 実に禁域王らしい振る舞いだ……


 …………


 苦ッ!! コーヒー超苦い!! 何だこれ? マンデリン? こんな苦いものを有難がって飲んでる奴の気が知れないネ?

 きっと魔王化に伴い味覚が変化したのだろう、決してガキだからじゃない。



 カロン♪ コロン♪


 その時、ドアに付けられたレトロな感じのベルが鳴る、客が来たんだ、こんな潰れかけの喫茶店に来る客なんて限られてる。


「いた! 神那!」


 女神が降臨なされた……

 それだけじゃ無い、その後ろから続々と嫁たちが入ってくる。


「神那ぁっ!!」


 タタタッ、バッ! ガシィ! ムニョン♪


 あぁ…… スバラシイ、何度味わっても…… そして何度でも味わいたい感触だ。

 コレだけで俺の中の純粋魔力がフルチャージされていく気分だ。


「おに~ちゃん……」

「マスター、ご無事で何よりです」

「カミナ様、お疲れ様でした」


 嫁たちが労ってくれる、あの天上天下唯我独尊女と死闘を繰り広げた甲斐ああるというものだ。


「やっぱり無事か、おにーちゃんっていっつも当たり前のように帰ってくるから心配するだけ無駄だよね」


 何故か伊吹が現れた、死地から帰還した兄に対する言葉がそれかね?

 つーか、琉架を呼び出して、何故お前がやってくる? 何が悲しくて妹同伴でデートしなきゃいけないんだよ?


 しかし考えてみれば簡単な理由だった。

 実家には両親も俺もミャー子も居ない、そんな家で呪われた筋肉と二人っきりで過ごせって拷問以外のナニモノでもない。

 文字通り呪われた魔王城だ。


 これ幸いにと琉架のお家へお泊りにでも行ってたんだろう……

 チッ! 俺だってまだ琉架の家にお泊りとかしたこと無いのに。

 琉架のじーさんの家には泊まらされたことはあったが、数々の嫌がらせを受けた……


 まぁ仕方ない、相手は不能の賢者、貞操の危機はないとはいえ、あんな暑っ苦しい筋肉の塊と一つ屋根の下、二人っきりで過ごせと言われたら俺だって逃げ出す。


 何か気に食わないけど伊吹の判断は間違っていな……


 カロン♪ コロン♪


「おお、カミナよ、無事であったか、まぁお前ならきっと大丈夫だと思っていたぞ」


 ジークが現れた…… え? なんで?

 まさか…… まさかとは思うんだが…… お前…… 琉架のウチにお泊りしてないだろうな?

 もしそうなら俺はお前を殺さなければならない。

 罪状は魔王の怒りに触れたからだ!

 Let's ブッコロ♪


「カミナよ、何故そんなに殺気を放っている?」

「あぁ、ジークさんはココに来る途中の公園でストレッチしてた所をたまたま会ったの」


 琉架からフォローが入った。

 フン、命拾いしたな?

 てか、公園で一人でストレッチしてたのか? お前みたいな巨人族(ジャイアント)並の威圧感を振りまく筋肉の塊が平和な公園に入ってきたら、子どもは泣き叫び、お年寄りは心臓が止まり、小動物が逃げ出すぞ?

 まったく迷惑な奴だ。



---



 全員を席に座らせ、飲み物が配られたところで何回目か忘れたがD.E.M. の定例会議を開催する。

 ちなみに最初は魔王会議を予定していたため6人掛けのテーブルに付いていた、ところが妹と筋肉がやって来たため席が足りない……

 この店にはコレより大きいテーブル席は無い…… だったら仕方ないよな?

 ジークを叩き出そう……と、思ったが、それよりもイイこと思いついた。


「…………」

「うにゅぅ……」


 白を俺の膝の上に載せる、白も嬉しそうだし俺も嬉しい、完璧な解決策だ、ジークもたまには役に立つな。


 そして余り物の二人であるジークと伊吹が並んで座っているが、ジークは当たり前のように椅子からはみ出す巨体持ち、伊吹のスペースを侵食している。

 そしてナゼか伊吹は俺を睨んでいる…… あの視線には色々な思いがこもっているな…… 『隣の筋肉をどうにかしろ!』とか『白ちゃんを私の膝に強制転送(アスポート)しろ』とか『おにーちゃん死ね!』とか…… まぁそんな所だろう。


 取り敢えず見て見ぬ振りをしておこう。



 ミラに俺達の会話が周囲に漏れない様にしてもらう。

 喫茶店のマスターに守秘義務があるかどうかは知らないが、コレからする話は一般人が聞くべきでは無い。


「さて…… 何から話せばイイか…… 取りあえず第3魔王 “紅血姫” マリア=ルージュ・ブラッドレッドの討伐は完了した。

 しかしそれと同時に少々厄介な問題が持ち上がった」

「厄介な問題?」

「あぁ、対マリア=ルージュ戦が映像として記録に残ってしまった、もちろんロングショットだし個人の特定は難しいだろう、しかし見る人が見れば一発で分かるレベルだ。

 今アルスメリアのネットはその話題で持ちきりだ、厄介な事に映っている人物が俺だと特定している書き込みまで存在する」

「それはつまり…… 神那はこれから英雄として奉られるってコト?」


 いや、美女殺しとして吊し上げられるってコトだ。


「問題なのは俺に魔王疑惑が掛けられているコトだ、もちろん証拠は無いしただの疑惑だが、真実でもある。

 何せ俺とマリア=ルージュには緋色眼(ヴァーミリオン)という共通点がある、ついでに言うと限界突破(オーバードライブ)もだ。

 そしてシニス世界からの帰還者や移住者の中には魔王を良く知る者も含まれているだろう……

 ここまで来るともはや英雄待遇とか言ってる場合じゃ無い」

「あ~…… うん、そうかも知れないね…… それじゃ神那はこれからどうするの?

 ミラさんの唄を世界中に流して記憶操作とかして貰う?」


 さすがに映像で記憶操作は無理だろ? そもそも視聴率100%なんて無理だし。


「俺はシニス世界への移住を考えてる、少なくともほとぼりが冷めるまではデクス世界を離れるべきだ。

 ただそれをするなら少なくとも両親には正体を明かし、事情を説明する必要がある……

 あ~…… 伊吹、悪いんだが説明しといてくれる?」

「はぁっ!? なんで私!? そういう大事なコトは自分でしなさいよ!!」

「いや、そのつもりだったんだけど、ウチの親がいつ帰ってくるか分からないし、正直ノンビリしている余裕は無い、まぁほとぼりが冷めたら戻ってきて自分の口で説明するから」


 わざわざ避難先まで訪ねて行って話そうとは思わない、打ち明けにくいし…… そもそも今生の別れじゃ無い、いくらでも帰ってこれるんだから。

 しかしこのプランを実行するにはもっと大きな問題がある。


 それはナニか? 決まってる。

 他の魔王達の動向だ。




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