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レヴオル・シオン  作者: 群青
第五部 「現世界の章」
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第275話 第3魔王 ~血戦~


 自分の腕を切り落とす……

 正直やりたくなかった、だってそうだろ? バカ勇者みたいじゃないか!

 もちろんあの馬鹿とは状況が違う、アイツは他人の話を聞かなかった上の蛮行だ、俺の場合はそれしか方法が無かったから苦肉の策だ。

 状況が全然違う。


 …………


 今気付いたんだが、この方法を使えば黒大根は片腕を失わずに済んだんじゃないだろうか?

 たぶん済んだな…… しかし当時この方法に気付いても実際に治療したかと聞かれると、否、である。

 唯でさえ魔王連戦中、そして何より男の為に俺が出血多量になるなど…… あり得ん。


 しかし参ったな…… 未だ有効なダメージは与えていないのに、すでにこっちは両腕を使い物になら無くされた……

 確かに油断はしていたが、侮っていたワケでは無い。

 今まで出会った敵の中で、紛れも無く最強……


「はぁ…… 犠牲を出さずに倒そうって考えが甘すぎたか」

「ふん、そんな事を考えていたのか? だとしたら認識不足だ、お前は確かに多くの魔王を屠って来た、だがそれらは所詮は下位種族出身の魔王、お前達とは次元が違うのだよ」


 妖魔族(ミスティカ)お得意の上から目線…… 以前なら勝手に咆えてろって思っていただろうが、コイツの強さは素直に納得できるほどの差を感じる、正しく次元が違う。


「あぁ、だからこそ如何なる犠牲を払おうともお前を倒すと決めた」

「ほぅ? まだ諦めていないのか、いや、実力の差が分からないのか?」

「あぁ! 分からないね! 犠牲を覚悟すれば倒せない相手じゃ無いんだからな!」

「面白い…… ならば見せてみろ! お前の…… 魔王キリシマ・カミナの真の実力を!」


 言ったな? じゃあ見せてやるよ! 俺の本当の実力を!


「カミナ…… まだやるの?」


 せっかく気合が入った所へやって来たリリスが消極的な事を言う、やらなきゃ困るのはお前だろ?


「いや、むしろ喜べよ、お前の仕事を肩代わりしてやってるんだから」

「でも…… これ以上カミナが傷つく所を見たくない……」


 あらヤダ、ちょっとキュンと来ちゃった、なんでそんな可愛いこと言うんだよ?


「心配するな、今から本気出すから、ただちょっと街が壊れるかも知れないが……」

「少しくらいならもう構わないわ、周辺には人も残ってないし…… それよりも……」


 少しくらいで済めばいいけどなぁ…… まぁいい、言質は取った、出来る限り被害が大きくならないよう気を付けよう。

 街が半壊するくらいは許容範囲内だよな?


「『弐拾四式血界術・拾参式『箒星』』」

「?」


 ほぼ真上に向かって血弾を打ち出す、その名の通り流星のように尾を引いて……普通の流星とは逆向きだが。


「コレがお前の奥の手か?」

「判断するのが早すぎる、ここからだよ」


 このソーロー魔王め! ……って、コイツ女魔王か。


「第2階位級 金属魔術『神剣・天叢雲剣』シンケン・アメノムラクモ」


 神剣を300分割してマリア=ルージュを囲むように配置する、キラキラ反射した光に顔を歪めている。


「カミナ…… それ、ダメだよ」

「は?」

「リズが同じことやってる、光を収束させてもアイツの血は突破できなかった」


 なんと、リズ先輩とアイデアが被ったか。

 だがナニもリズ先輩と同じ光源を使うつもりはない。


「マリア=ルージュ、一つ問題だ。

 妖魔族(ミスティカ)の弱点である太陽の光、お前は太陽の光が何か知っているか?」

「? 質問の意図が分からん」

「そうだな、今のは聞き方が悪かった、では…… 太陽がどうやって光を発しているか知ってるか?」

「?」

「簡単に言うと太陽の中では常に核融合反応が起こっている、この時非常に強烈な熱と光が発生する、太陽の光はこの光だ」


 マリア=ルージュが怪訝そうな表情を浮かべる。


「何が言いたい?」

「まだ分からないのか? つまり核融合反応を引き起こせれば、お前達の大嫌いな太陽の光をヒトの手で作り出す事ができるんだ」

「なに?」

「カ…カミナ…… まさか……!」


 その瞬間、デルフィラの遥か上空で核融合の最後の工程が開始された。

 当然これは能力の射程範囲外なので時限式スタートだ。


「限りなく本物に近い太陽光の収束を防げるかな?」

「チィッ!!」


 マリア=ルージュは自分をドーム状に覆う膜を作り出した、周囲に配置した神剣が光を反射し襲いかかって来る事は見抜かれてる…… リズ先輩のせいだ。

 うぉい! マリア=ルージュが非常に蠱惑的な格好になってる! ドレスは胸と腰を僅かに覆っているだけ、ほとんど裸状態だ!

 そこまでやるならもう一歩踏み出せよ! どこぞの淫乱糞ビッチなら喜んで裸になった事だろう……


 そしてそこがお前の判断の甘さだ。


 そうだ、折角だから一応言っておくか…… 師匠から無理矢理押し付けられた贈り物を。


「さあ焼かれろ! 『弐拾四式血界術・零式『創世光玉』』」


 次の瞬間! デルフィラの上空で核融合爆発が発生した!



 ドォォォォォォオオオオーーーーーン!!!!



 夜の闇を真っ白に染め、強烈な光が降り注ぐ!

 その光は神剣によって反射・収束され、四方八方からマリア=ルージュを照らし出した!


「うおおぉぉぉぉおおおっ!!!!」


 眩しくて直視できない…… ただ爆音に紛れてマリア=ルージュの声が聞こえた気がした。

 光の到達から少し遅れてやって来た衝撃波が周囲の建物の窓ガラスを片っ端から割る……


「キャアアァァァ!!」

「…………」


 光の渦の中に僅かにオーラが見える……


「カ……カミナ!」

「やっぱりコレじゃダメか……」

「やっぱりって…… 最初からダメだと思ってたの!?」


 当然だ、この程度で倒る奴なら「最恐最悪最凶」なんて呼ばれて無い。

 だからこそやる意味があったんだ。


「それじゃもう一発」

「え?」


「『弐拾四式血界術・零式『創世光玉』』」


 次の瞬間、先ほどとは比較にならないほどの衝撃が周囲を襲った!

 まるで直下型の大地震でも発生したかのように地面は大きく揺れ、近くの建物は脆くも崩れ去った。

 もちろん近くにいたら危険なのでリリスを連れて少し離れたビルの屋上まで瞬間移動で避難する。


 最後に見えたのは光の柱に飲み込まれるマリア=ルージュのオーラだった……



---


--


-




 目の前には直径200メートルほどのクレーターが出来ていた…… そこからは今もモウモウと爆炎交じりの煙が立ち上り街を照らしている……

 爆心地近くの建物は軒並み破壊され溶けているモノもある…… かなり威力を絞ったんだが多大な被害が出てしまった。

 う~ん…… 守るべき街を俺が破壊してしまったが、相手は第3魔王、この位は許容範囲内だろう?

 周辺に人も残っていなかったし人的被害は出てないはず……あ!

 リズ先輩! 大丈夫かな? 大水でうまい具合に流されてればいいんだが……


「カミナ…… 一体何をしたの?」

「ん? 言ったろ? 核融合反応を起こしたんだ」

「核融合…… レイド戦に使ったって報告があったアレ? あの報告ホントだったんだ」


 信じてなかったのかよ…… 確か禁呪の中には核融合の魔法があるってアーリィ=フォレストに教えてもらったことがあるが、彼女自身、未だに再現には成功して無いらしいしな。


「まぁ今回はどっちも可能な限り小規模な爆発に抑えたからな、全力だったらデルフィラは地図から消えてたぞ」

「…………? どっちも?」

「あぁ、一発目…… 上空の核融合は囮だ、マリア=ルージュの意識と『深紅血(ディープレッド)』を上に集中させるためのな。

 本命は二発目…… 地下に設置した核融合だ」

「地下……に?」

「アイツの大蛇を水に変えた時、二重水素と三重水素、あと少量の血を混ぜたものを水に紛れて地下に流しておいた」


 これによりアイツは上と横からの光に対処せざるをえなくなる、必然的に足元が無防備になり、防御に回す血も無くなる、そこへ本命の爆弾を叩き込んだのだ。


「………… カミナ…… ズルイ」

「ズルイ言うな、戦略と言え、戦略と」


 戦いとはどんなに卑怯な行いをしようとも、最終的に勝った者が正義なのだ。

 従ってどんな外道行為を行なおうとも構わない、勝ちさえすれば良いんだ!

 俺も本気を出すと宣言した以上、本気の戦略を披露したまでだ…… 実際には宣言する前から準備してたんだが。


「でもそれじゃぁ…… さすがにあの女でも核融合爆発の直撃を受けたのなら……」

「いや…… 多分生きてる」

「え?」


 魔王レイドだって核融合の直撃で心臓が焼け残ったんだ、上位種族・妖魔族(ミスティカ)のアイツなら絶対に“(コア)”が残っているハズだ。


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……


 その時、立ち昇る爆炎の中に異変が起きた。

 炎や煙や光がある一点に吸い寄せられたのだ……


「あ…… あれは……」

「あぁ、ここからが本番だ」




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