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レヴオル・シオン  作者: 群青
第一部 「異世界の章」
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第27話 勇者登場!・後編


― 勇者 ―

 シニス世界に25年周期で出現する全人型種(オールセトラ)の希望…………そう呼ばれて幾星霜。

 今現在の勇者に対する両世界共通認識は……「疫病神」

 そう、勇者に期待する者など一人も存在しない。


「49代目勇者ブレイド・アッシュ・キース・アグエイアスだ!!」


 しかしそれも当然だ。勇者とは自らを鍛えるために厄介事を引き寄せるのだ。近くにいれば当然巻き込まれる。

 役立たずのクセに厄を呼ぶ。そんな奴は嫌われて当たり前だろう。巨乳の女子アナに男の視線が吸い寄せられるのと同じ位、当然のことだ。


 つまりそういう事か、俺は勇者の厄介事……勇者を成長させるための糧として選ばれたのだ。まったく光栄なことだね、だからコイツは初対面から喧嘩腰だったんだ。

 見た所16~17歳、まだまだ発展途上の様だ。ならば俺のすることは一つだけだ。

 勇者を大きく成長させるために、心を鬼にしてコイツを叩き潰すだけだ。一回りも二回りも大きくなるために徹底的にだ。

 決して面白いオモチャが見つかったなどとは思っていない。


「俺は勇者としてはまだ駆け出しだ!  しかしいつの日か魔王を…………」


 ナニか暑く語ってる。コイツだって勇者が世間からどう思われているか知っている筈だ。にも拘らず、このポジティブシンキング。勇者とは余程の鈍感でなければ務まらない仕事らしい。

 俺の様な繊細な心を持つ少年には絶対に無理な仕事だ。

 ならば心をへし折る様な試練を与えてやるのがイイだろう。一番鍛えにくい箇所だからな。

 しかし、勇者を鍛えるための修行に付き合ってあげたいのは山々なんだが、生憎俺達はお使いの真っ最中だ。

 ここは激励の言葉でも掛けて別れよう、どうせまた現れるだろうし……


「そうですか、頑張ってください! そしていつの日か必ず第3魔王を倒してください!」

「え? だ……第3魔王?」


 一番厄介な魔王をさり気なく押し付けてその場を離れる。お主の活躍に期待しているぞ勇者よ!




 情報収集期間・第四週


 月曜日


 本日ついに魔王に関する書物を発見! 中身は魔王の生態について詳細に書かれていた。ここに来てようやくの大発見。苦労してきた甲斐が有ったというものだ。しかし記されていたのは第4魔王、よりにもよって例の「引きこもりの魔王」だ。それでもこの魔王の生態についての記載は期待できる!

 取りあえず一通り読み終えるが、どうにも違和感しか感じない……何故だ?


 ジークが興味を示しその書物を読みふける、そして本を閉じて一言……


「この本は偽物だな」


 俺も何となくそんな気がしていた……


「書かれている内容は嘘だらけ、正しい情報はこの『第4魔王“鬼神”スサノオ』の名前ぐらいか……」


 本は資料ではなく大昔の誰かが書いた創作小説だったようだ。

 何という時間の無駄遣いだ。……いや、まてよ……第4魔王は第4領域に引きこもってるんだよな、第4領域と言えば鬼族(オーガ)が暮らす土地だ…………鬼族(オーガ)といえばミカヅキだ。

 アイツは自分が追放されたと言っていた……もしかしたら第4魔王と会った事があるかもしれない。

 あまりにもの駄メイドっぷりに情報源としての利用価値は無いと思っていたが……ダメ元で聞いてみるか。

 もっとも最近、ミカヅキを見かけない。

 琉架曰く、秘密のメイド特訓だからだそうだ。焦ることは無い、どうせダメ元だ、今度会った時に聞いてみよう。



 同日・夕方


 今日も楽しいお買い物タイムだ。本日はいつもと趣を変えてみた。そのせいか白に落ち着きが無い、さっきからこちらをチラチラ見ている。

 ちょっと挙動不審だが、そんな所も年相応で可愛らしい。


 そして今日もいた。赤髪青鎧の勇者様だ。


 いつもの場所でいつもの様に通りを見下ろしている。しかしいつもと違い、目がギラついていて血走っているようだ。あの場所であの目をしていると人を見下している様にも感じる、勇者にあるまじき行為だな。

 残念勇者の癖に……


 どうやらこちらに気付いたようだ。まだだいぶ距離があるのに目敏いな。

 まぁ、これは想定の範囲内だ。何せ隣には白という美少女がいるんだから、目立ってしまうのも仕方ない。


「キリシマ・カミナァァァァァ!!!!」


 大声で人の名前を叫びながらこちらに迫ってくる。

 なんて近所迷惑な奴だ。選挙カーだってもう少しボリュームとスピードは抑えているのに……


「今日こそ!! 今日こそ貴様を殺………………アレ?」


 残念勇者急停止。ようやくいつもと違う事に気付いたらしい、注意力が足りないなコイツは。

 頭の良い女賢者を仲間にすることを進める。そしたらウチの賢者とトレードしようぜ?


「あれっ……おまっ……え? キリシマ……カミナじゃ……ない?」

「いったい何の話ですか?」


 そう、今の俺には狐耳と狐シッポが生えている。琉架に頼んで『擬態(ミミックヴェール)』を掛けて貰ったのだ。どこから見ても狐族だ。

 しかし『擬態(ミミックヴェール)』は擬態魔法であって変身魔法ではない、顔は変わってないのだ。加えていつもと同じ服装、隣にはいつもと同じ目立つ特徴のある狐族の少女。もちろんこれはワザとだ。

 十中八九間違いない、ヤツの探し求めるキリシマ・カミナだ。

 しかし…………種族が違う。ワザとらしく耳とシッポを動かし、本物アピールもする。


「僕たち兄妹はこれから買い物をしないといけないので、もう行きます」

「え? ちょ……まって……えぇ~?」


 白の肩を抱いてその場を去る……すると……


「兄…妹……おにぃ……ちゃん……」


 !! 小さい声だったが確かに聞こえた!! 白がおに~ちゃんと呼んでくれた!! いやっほ~~~い!!

 継母が初めて義理の子供に「おかあさん」と呼ばれるとうれし涙を流すというが、その気持ちが初めて分かった。

 今すぐ白を抱きしめてモフモフしたい!! しかしここは天下の往来、我慢しなければ! あぁ~モフりたい!!


 擬態作戦は大成功だったな。白に同種族の姿を見せ最後のトリガーを引かせる作戦だ!

 勇者対策? あぁ、そっちはついでだ。

 まだ遠くから「本当は……キリシマ・カミナなんだろ? なぁ……」と情けない声が聞こえてくる。もちろん安定の無視だ。大体アイツは甘すぎる、俺ならフルボッコにした後じっくり調べる。

 それが出来ない所が勇者の限界だな。




 情報収集期間・第五週


 月曜日


 本日、二つ目の魔王関連書物を発見! 今度こそはと読み始めて1秒で確信した。また偽物だ……と。

 何故なら一行目にはこう記されていた……

 『妖艶なる美女魔王、ウィンリー・ウィンリー・エアリアルのその悲しき(サガ)』と……

 いくらなんでもヒド過ぎる「妖艶なる美女」? 誰が? 「無垢なる幼女」なら納得できる。

 他の情報は無いかと我慢して読んでみる……そこには俺の知らない第5魔王の悲しき愛憎劇が綴られていた。

 もしこの本が世に出たら、出版社燃やされるぞ? きっと有翼族(ウィンディア) VS 人族(ヒウマ)で戦争が勃発する。有翼族のアイドルを誹謗中傷しているようなものだ……

 この本が禁書だったことが不幸中の幸いだな……いつか俺がもっと権力を手に入れたらこの本をこの世から消し去ることを誓う。

 そしてこの禁書庫の蔵書の信頼性が一気に下がった。ここには正しい情報は無いんじゃないか?

 未だに有力情報、一つも無し……



 同日・夕方


 今日は一段と疲れた……俺の大事な友人が一方的に貶められた気分だ。怒りよりも悲しみが湧く……


「おにぃ……ちゃん……ダイジョウブ?」


 あの本を見つけたのが今日で本当によかった。まだぎこちないがそれもまた良い、俺の傷ついた心を白が癒してくれる。ありがとうの代わりに白の頭を撫でておく。

 今日も狐族に擬態しているが、この姿だと周りからは兄妹に見られているのかな? やっぱり……

 白の「おに~ちゃん」が完全に定着するまでは、油断は禁物だ。まだギルドメンバーの前じゃ恥ずかしがって呼んでくれないからな。

 何かイベントを考えよう、白が吹っ切れるような……


 いつもの酒場が見えてくる、しかしいつもの場所に奴はいない。もう諦めてしまったのか? 少々難易度が高すぎたのかもしれない、積みゲーになってしまったか。

 と、思ったらいた。酒場の入り口前の階段に膝を抱えて座っている。

 あの傲岸不遜な勇者の姿は無く、打ちひしがれた子犬のようだ。う~んやり過ぎだったか?

 こちらに気付くと這うように近づいてくる、ホラー映画のようで気持ち悪い。


「なぁ……お前が、キリシマ・カミナなんだろ? そうなんだろ? ……頼むよ……」


 完全に牙が折れてる……涙声で語りかけてくるその姿は、憐れ以外に表現しようがない。

 いやはやまいったね、俺という乗り越えるべき壁は余りにも高すぎたらしい。自分の才能に恐怖するよ。

 しかしこれは、さすがに可哀相に…………


 ならないな。


 そもそもそっちから売ってきたケンカだ、ここで甘やかしたら彼は永久に勇者として成長できない。ここは笑いを堪え……じゃなくて、心を鬼にして追い打ちだ♪

 俺は勇者の肩に手を添え優しく語りかける。


「勇者様、物乞いの真似事をするなら富裕層の多いステーション近くが穴場ですよ?」


 炎上しかねない言葉を掛ける、これも勇者を育てるためだ。俺は悪くない!


「あ……あ……悪魔……か?…………ぐふ!」


 勇者は力尽きたように地面に倒れ伏した、ピクリとも動かない。

 おぉ勇者よ死んでしまうとは情けない!

 本来ならここで有り金の半分を頂いておく所だが、リアルでそれをすると犯罪なのでやめておいてやる。

 良かったな、ここが勇者に優しい世界で。


 白に引かれたか不安だったが大丈夫だった。弱った敵に追い打ちを掛けるのは常識だそうだ。さすが狩猟民族出身、安心した。




 情報収集期間・第六週


 月曜日(祝日)・夕方


 今日は何の日か知らないが祝日だ。図書館も閉まっているのでみんなで外食することにした。

 と、思ったがミカヅキがいない。なんでも今日は琉架のじーさんの所へ研修に行ってるらしい、そういえばあの家にもメイドが何人もいたな。一体どんなチューニングが施されているのか……完成が楽しみだ。

 今日は良いリフレッシュになった。また明日から頑張ろう。

 あれ? 何か忘れている気がする………………まぁ、いいか。

 思い出せないなら大した用事じゃないだろう。




 情報収集期間・第七週


 月曜日


 残りの蔵書もあと僅かになってきた本日、とうとう有益な情報を発見した。

 第11魔王の居城、通称「クレムリン」の地図だ。誰が名付けたのだろう、グレムリンと掛けたのか? 少々胡散臭い……また偽物かとも思ったが、デクス世界で教えられる居城の地下、ゲートまでのルートマップと完全に一致していた。これは信憑性が高い!

 魔王に関する記載は少なかったが、討伐作戦時にこの地図は大いに役立つ。地図をカメラに収め後で見取り図を起こしておこう。

 このかび臭い本に囲まれた、悪夢のような日々は無駄にならずに済んだようだ。安堵のため息が漏れた……



 同日・夕方


 今日は貴重な発見があったため俺の機嫌がイイ、それとは逆に白は緊張の面持ちだ。

 本日のイベントは白にも女優の役割を与えてある。もう一人ゲストも呼んである。バカ勇者は一体どう出るかな?

 いつもの様に白と恋人つなぎで酒場前の通りを歩くと、遠くからバカの声が聞こえた。


「キィリィシィマァ・カァミィナァァァ!!!!」


 あ~あ、やっちゃった、こんな街中で抜刀してるよあのバカ。周囲の人々が恐れおののき道の端に避ける、選挙カーなんてレベルじゃない、アレは完全に珍走団だ。ぱらりら~♪

 そのまま感情任せに斬りかかってくる。


「死ねぇぇーーー!!!! キリシマ・カミナァァァ!!!!」


 勇者にあるまじき言葉、残念。どうやら彼は暗黒面に落ちてしまったらしい。

 あの正義感が強そうだった青年が何故こんな事に……いったい誰のせいだ? …………あ、俺か


 俺は偶然(・・)持っていた鉄パイプで勇者の攻撃を防ぐ。


 ガキン!! 鉄パイプの内部を血糸で補強して無かったら鉄パイプごと斬られてたぞ!? あぶなっ!! 本気で殺しにきやがった!


「貴様だけは絶対に許さんぞぉぉ!!!!」


 怨嗟の声を撒き散らす彼の顔は涙で濡れていた。いくら追いつめられていてもそれは悪手だ。考えもナシに街中で剣を抜くとは…………やはり徹底的に教育する必要があるな。


 キン! 俺は鍔迫り合いを捌きお互いの位置を入れ替え、3メートルほど間合いをとって向きあう。


「俺はぁ……俺はぁ……お前の事がぁ…………」


 やめろ! ハァハァしながら言うな! ホモの別れ話みたいになるだろ!!


「お前を殺して俺も死ぬ!!!!」


 いやぁぁぁぁぁーーー!? 今になってようやく身の危険を感じる!! コイツヤバイ!!


 今にも斬りかかろうとする勇者の前に人影が滑り込む。

 そこには白が俺をかばう様に両手を広げて立ちふさがっていた。


「お……おにーちゃんは……絶対……殺させない!!」


 白にしては珍しく大きな声。はた目にも震えているのが分かる。


「白!! 馬鹿! お前は隠れてろ!!」


 俺はワザとらしく鉄パイプを放り投げ、白をかばう様に抱きしめる!


「ダメ! ダメ!! おにーちゃんが死んだら……白は……生きてけない!!」

「あぁ!! 白!!」


 互いが互いをかばい合う様に抱きしめ合う、美しい兄妹愛が繰り広げられる。そして…………

 …………周囲のゴミ虫を見るような視線が勇者に注がれる。


「あ…………ぁ…………」


 ようやく正気に戻ったらしい。自分が何をしようとしていたのか気付いた彼の顔色は見事に真っ青だ。

 そして周囲の人垣から……


「キャーーー!! アイツ人殺しよーーー!!」


 と、女性の叫び声が上がるのを合図に、一斉に勇者叩きが始まる。


「おい! 誰か警備隊……いや、国軍を呼んで来い!」

「アイツ! あの剣、あの鎧、勇者だぞ!!」

「勇者が武器を持たない兄妹を襲ってるぞ!!」

「疫病神め! みんなでアイツを取り押さえよう!!」


 勇者はその場で慌てふためくだけで何もできない、いやはや民衆の力、集団心理ってのは恐ろしいね、俺もこれだけは敵に回したくない。

 てか、勇者は何やってんだ? さっさと逃げればいいのに……仕方ない、白に止めを刺してもらおう。


「あ……あんたなんかに……おにーちゃんを殺させは……しないんだから!!

 この……この……『シンセーホーケーユウシャ』!!」



 静寂……


 真顔で立ち尽くす勇者を見て周囲の人々は思った「あぁ、真実なのか」……と

 白は真っ赤になって俺の胸に顔をうずめている、あぁ可愛いなぁ。

 当然、白は言葉の意味を知らない。「目口物言」でアイツが一番他人に隠しておきたい事実を暴露してやれと俺が指示したのだ。顔を赤くしているのは、人前で堂々と「おにーちゃん」と叫んだことを照れているのだ。さっき震えていたのもそれが理由だ。


「ぅわあああぁぁぁーーーーん!!!!」


 勇者は逃げ出した! ガチ泣きだ! 俺は魔王ではないので回り込んで袋叩きにはしない。今はただ俺の腕の中で真っ赤になって震えている白を愛でていたいのだ。

 周囲にいた男たちが勇者を追いかけていく中、一人の女性がこちらに歩み寄る。


「今のは一体……ナニ?」


 話しかけてきたのは先輩だ。民衆を扇動するために文字通りサクラになってもらった。一番最初に「アイツ人殺しよー」と叫んだのが先輩だ。


「勇者らしいですね、毎週絡まれて大変だったんですよ。仕方なく彼が勇者として成長できるように試練を与えていましたが」

「そういうことか、不思議だったんだよね。いつも疲れた顔の神那クンが週の初めだけ生き生きしてたのが」


 なんてこった! 顔に出ていたとは……しかし生き生きしていたのは勇者弄りではなく、白を愛でるのが原因だったと思う。アイツは俺の極秘計画のついでに過ぎないからな。


 その日は三人でお買い物をした。白はずっと顔を伏せていたが手だけは強く握られていた。より絆が深まった気がする……そんな秋の夕暮だった。




 情報収集期間・第八週


 月曜日・夕方


 本日、とうとう禁書庫の蔵書を改め終わった。シニス世界には詳しくなれたが結局、魔王に関する文献は殆ど発見できなかった。やはり別のアプローチを考えなければならない。


 きっと白が居なければ途中で投げ出していただろう……感謝しなければな。


「ん? どう……したの? ……おに~ちゃん?」


 今日も白と二人で買い物だ。あの兄妹愛劇場以降、白は普通に「おに~ちゃん」と呼んでくれる。感無量だな。


「そういえば……今日は……いない?」


 言われて初めて気づいた、ここは酒場前、いつもならとっくにバカが騒いでいる場所だ。先週の大騒ぎが嘘の様に平和だ。

 ……しかし、それも当然だろう。何故なら町中至る所に彼の手配書が張られている……彼はお尋ね者になってしまったのだ。


 頑張れ勇者!

 この経験を糧に強くなれ!

 そして第3魔王を倒すのだ!

 そうすればみんな認めてくれるさ!


 そこでふと思った。勇者とは困難を乗り越えて強くなるモノだ。しかし、挫折は乗り越えたと言えるのだろうか? ただの逃亡というのではないか? 今回の完全敗北を彼は糧にできるのだろうか? …………わからない。それは勇者次第と言った所か。

 まあいい、勇者として強くなれたかは分からないが、人間的には強くなれた筈だ。このまま引きこもりにでもなっていなければ……だが。


 彼がいつも待ち構えていた酒場の壁に貼られている手配書を見る。特徴の欄の一番最後に「真性包茎の勇者」と書かれていた。

 これはさすがに可哀相だ……初めて勇者に同情した。


 これから勇者が進む道は数々の苦難が待ち構えている事だろう。

 彼の行く末に幸多からん事を切に願う。




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