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レヴオル・シオン  作者: 群青
第五部 「現世界の章」
277/375

第271話 第3魔王 ~対峙~


 アルスメリア・デルフィラ



 寒い…… 俺は一体どうなったんだ?

 俺の名はブレイド、49代目勇者ブレイド・アッシュ・キース・アグエイアス。

 生涯DTを貫く者だ。


 第3魔王マリア=ルージュ・ブラッドレッドとの生死を掛けた最終決戦の最中だったハズだ……

 俺は今どうなっている? 身体が動かない…… 倒れているのだろうか? 目が明かない…… まぶたに接着剤でも付けられたのだろうか?

 そんなことするヤツ居ない……とは思うのだが、ヤリそうなヤツに心当たりがある為 否定しきれない。


 何が起こったんだ? 頭に靄が掛かったようにうまく思い出せない…… 確か…… そう、マリア=ルージュとの戦いで、アイツの攻撃を何とか凌いで…… その直後……


 そうだ、卑怯にも背後からの攻撃を受けたんだ!


 クッソー!! 1対1の戦いで背後から攻撃を加えるとは! なんて卑怯な奴……!

 いや…… 卑怯じゃ無い、コレは生死を掛けた戦い、生き残るためにはどんな手段を使うことも許される。

 油断した俺が悪いのだ…… いや、だって…… 背後から攻撃してくるなんて思わないじゃん?


 そうか…… 俺は負けたのか…… 今度ばかりはお終いかな?

 第3魔王マリア=ルージュが勇者を生かしておくとは思えない、いつも後からやって来て美味しい所を奪っていく男も今は遥か彼方、南極の地に居るという…… つまり助けは無い。

 そもそもこれ以上アイツに助けられたら俺は屈辱で死んでしまう!


 勇者として何も成す事ができなかった……

 勇者の評判回復…… そして何より魔王討伐!

 そう…… 勇者最大の仕事、魔王討伐を俺は成し遂げられなかった。


 今現在、全12魔王の内、半数近く…… 五人の魔王が討たれている、残っている魔王も殆んどが穏健派、つまり第3魔王マリア=ルージュが最後の討つべき魔王といっても過言では無い。

 そんな最後のチャンスも生かせなかったのか……


 そうだな、俺みたいな役立たずは戦場の片隅でゴミみたいに打ち捨てられて死んでいくのがお似合いだ。

 いいさいいさ、勇者としての役割を果たせなかった俺なんか、無縁仏にでもなればいい、次代の50代目勇者には悪いが、勇者はデクス世界でも役立たずだと歴史に刻まれる事だろう。


 …………フッ


 もうどうとでもなれ! 死んだ後のコトなど知らん! マリア=ルージュが俺の死体をオモチャにしたって構うモノか!


 …………ん?

 今何か思い出しかけたぞ? マリア=ルージュにオモチャにされたモノの末路を…… 俺はどこかでその話を聞いた事がある。

 アレは確か…… そう、ユリアが何故かお姫様をやっていたアルカーシャ王国だ、キリシマ・カミナの所為で腕を切り落とし…… いや違う、そこじゃ無い!

 確か魔宮の最下層、あそこに居た王骸龍…… アイツは確か魔王マリア=ルージュに魂を焼かれ、永遠に苦しみ続けていたとか何とか……


 …………


 え?


 もしかして俺ってあんな風にされるの!? 白骨死体にされて燃え盛る魂をそこに封じ込められて、魔王城の門番とかさせられるの?

 そんでもって次世代の勇者たちに「この勇者の恥さらしが!!」とか罵られて戦わされるの?


 ヤバイ! そんな事になるくらいなら素直に死んだ方が遥かにマシなんじゃないか!?

 イヤイヤ、死にたくも無い!!


 ヤバイ! ヤバイ! ヤバイ!

 死にたくない!! 死にたくない!! 死にたくない!!


 だっ… 誰か助けて!!



「ここは…… デルフィラか……」



 ん? 今何か…… 凄く聞き覚えのある声が聞こえた……

 いや、気のせいだ、そんな事あるハズが無い、アイツは遥か彼方、南極の地に居るハズだ……

 いや待てよ? そう言えば俺自身も唐突にここへ呼び出されてきたんだった……


 まさか……な?



「カ……カミナ……」



 ………… 今のはアレだ…… え~と…… 幻聴だ。



「リリス…… お前お守りに魔法陣仕込みやがったな? お前のアンダー……ゲフンゲフン! 有り難がって損した」



 ………… 今のはアレだ…… え~と…… 空耳だ、アワーだ。



「ゴ……ゴメン、それより状況分かってる?」

「あぁ、大方は……な」



 ………… こ…声のよく似ているヒト……


 もうダメだ! 否定しきれない!

 いつものパターンからすればアイツが現れるのはもはや必然!!

 コレで助かるかもって思っちゃった自分自身が心底情けない!!





---霧島神那 視点---


 くそうっ! 嫌な予感が的中した!

 最も恐れていた事態だ! こうなる予感はしていたが、だが実際対峙してみると非常に由々しき事態だ!

 何がって? そんなの決まってるだろ!


 美人だよ!


 どっからどう見ても、掛け値なしの美人さんだよ! 魔王マリア=ルージュはそれはそれは、とてもとぉーってもお美しい……


 アレか? 女魔王ってのは美人か可愛い子しか採用してないのか?

 有名大学卒より、見て呉れの良いモデルの方が内定もらえる感じの?

 なんの偶然か、新世代魔王の女の子たちもみんな可愛いしなぁ…… 俺が人事担当だったら即決で採用だな、明日から来てくださいって感じだ。


 それに比べて男魔王の酷いコト酷いコト、チビだったり、ブサイク大魔王だったり、プロメテウスに至っては脳ミソすらなかった。

 あんな奴ら今回はご縁が無かったという事で、お断りの手紙一通で終了だ。


 確かに美人魔王との戦いは、魔王ミューズ戦で経験済みだ、しかしあの時はミラがいたからぶっ殺すコトに大した抵抗は無かった。

 それに引き換え今回は、ただでさえ戦いたくないと思っていた相手だ!


 更に美人だ!


 アイツが今までしてきたことを考えれば殺す以外の選択肢は無い!


 でも美人だ!


 こうして目の前で対峙してしまった以上、もはや逃げる事も不可能だ、だったら自身の生存の為にも戦いは避けられない!


 だがくどい様だが美人だ!


 なんでお前は美人に生まれついた?

 第3魔王も男だったら葛藤しないで済んだのに。


「カ……カミナ……」

「ん?」


 リリスが不安げな表情を浮かべている。

 大丈夫大丈夫、お前もどっから見ても美人だから自信を持て。


「保険って何? 高天は大丈夫なの?」


 あぁ、そっちか。


「こんな時の為の“同盟”だろ?」

「同盟…… そ…そうか」

「何かあった時の為に声を掛けておいた、きっと大丈夫だ」


 アーリィ=フォレストの活躍次第では何か報酬を与えなければならないかも知れないな。

 まさか奴隷待遇とか望まないだろうな?


 さて、それはそれとして、まずは……


「リリス、先に言っておくがコレはセクハラでは無い、治療だからな」

「? 何の話?」


 リリスの問いかけを無視し、彼女の胸に触れる…… うむ、相変わらず柔らかい…… いやいや、そうじゃ無くってね。

 彼女の胸を貫いているトゲ状の血に触れる、如何にマリア=ルージュのギフト『深紅血(ディープレッド)』といえど、さすがに直接触れれば支配権を奪えるハズ……


「ちょっ!? カミ……!」

「騒ぐな、暴れるな」


 パシャッ


 トゲ状の血は元の血液に戻り、リリスの胸を赤く染めた。

 ついでにその血を使って傷口の応急処置も行っておく、腹の方の傷も同様だ。

 俺の嫁候補の美しい肌に傷跡など残したくないからな、だから礼は不要だ。


「あ…… アリガト///」


 頬を染めるな、エロじゃ無く治療だと念を押しただろ、絶対に訴えるなよ?

 リリスの手を掴み立たせるが……


「あぅっ」


 足に力が入らず膝から崩れ落ちる、ここまで消耗しているのか、これでは先に逃げろって訳にはいかないな。

 だったら二人で一緒に逃げるか? 本当はそうしたい。



「キリシマ・カミナ……か、久しいな、以前とは随分変わったようだ」

「おい止めろ、その言い方だと以前から知り合いだったみたいに聞こえるだろ! 直接顔を合わせたのは今この瞬間が初めてなんだからな」


 そう言うちょっとした誤解が、少しずつ積もり積もって裏切り者認定されるんだ。


「いずれこの日が来るとは思っておったが…… その姿になったか、そう言えばもう一人いたな、女の方…… アリスガワ・ルカはどうした?」

「お前みたいな危険人物に琉架を会わせられるか」


 そう言えばコイツのカラーリング、白い肌と黒い髪…… 琉架とかぶってるな、何かムカつく。

 しかしまぁ、美しさで言えば俺の女神の圧勝だな。

 お前ってなんか目が濁ってるし。


「そうか、それは残念だ、二人まとめて私が取り込んでやろうと思っていたのだがな……

 まぁいい、今回はお前だけでも充分だ」

「取り込む……か」


 それはつまり俺を殺して第11魔王の力を継承するってコトだよな?


「我と同系統の能力…… 血液操作能力を持つ者など2400年の時の中でも我とお前意外には存在しないだろう。

 ただの人族(ヒウマ)から能力を奪う事は出来ないが、今のお前なら我が物に出来る」


 ぐは! やっぱり目を付けられてたのか!

 まさかデクス世界侵攻の真の目的は俺じゃ無いだろうな? 俺のせいでこんな事になったとか言われたらとても困る。

 ……あれ? 何でコイツは俺の能力を知ってるんだ? 赤木キャプテンが教えたってワケでも無いよな? 俺と琉架が創世十二使になった時には既にアイツはデクス世界に居なかったんだから。


 あの時遠くから見られていたけど、それだけで詳細を把握したとでも言うのか?

 同系統の能力を持っているからこそ……か。

 そうだな…… 見られていたってコトは、コイツの能力射程圏内に居たってコトだ、あの時は気付かなかったが何かされてたのかも知れない……

 うぇ~~~


「カミナの事だけじゃ無く、ルカの事まで知ってるの?」


 そうリリスが呟いた…… あ~…… そう言えば伝言があったんだった。


「裏切り者が俺達の情報を流してたんだよ」

「う……裏切り者?」

「元・創世十二使、序列一位 赤木錐哉だ、キリヤ・レッドウッドとか名乗ってたがな」

「なっ!!?」


 絶句してる、想像もしてなかったのだろう。


「その赤木錐哉からリリスに伝言だ。

 『先に裏切ったのはお前だ、信じる者に裏切られた気持ちはどうだ? ザマーミロ』……だってさ」

「そんな…… まさか……」


 そんなにショックか?

 きっとあの狂人の素顔を知らなかったんだろう、いや、恐らく誰も知らなかった……

 それだけアイツは他人の信頼を得るのが上手かったんだ。


「キリシマ・カミナよ、お前がここに来たという事はキリヤを殺したのか?」

「ハァ…… お前の側近のキリヤ・レッドウッドは自殺しやがったぞ、生け捕りにしようと思ったのに」

「フッ、あいつもよく分からん男だったな、我とリリスをぶつけて相討ちにしようと企んでいた様だが、本当にそんな事ができると思っていたのだろうか?」


 確かに…… 現状を見る限りマリア=ルージュの強さは圧倒的だ。

 だが俺には理解る、アイツは狂ってたからな、常人に狂人の考えなど理解できるハズが無い。


「カ……カミナァ……」


 リリスがさっきより更に情けない顔をしている……

 そんなに裏切られた事がショックだったのか? まったく世話の焼ける2400歳児だ。


「リリス、俺がアイツを倒したら、お前への絶対命令権を貰うからな」

「っ! う…うん、その…… お手柔らかに……」


 絶対命令権…… つまり何を命令してもイイってワケだ、実にゲスな要求だ。

 だがこれくらいゲスな要求の方が死亡フラグが立たない気がする。


 よし、コレで無理矢理モチベを上げよう。

 確実に勝てる保証はないが……




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