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レヴオル・シオン  作者: 群青
第五部 「現世界の章」
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第267話 第3魔王 ~召喚・後編~


大気叛整(エア・フォース)・第4階位級 火炎魔術『皇炎』ラヴィス・レイム併用!

 業火旋風・フレアトルネィド!!」


 リズのギフト併用魔術業火旋風(フレアトルネィド)がマリア=ルージュを飲み込んだ!

 ……てか熱い!熱い! 私に近すぎる!

 彼女は私を助けてくれるつもりらしいが、決して私の味方じゃ無いらしい……


 炎の竜巻はマリア=ルージュを巻き込みながら少しずつ私から離れて行ってる、一応気は使ってくれてるらしいが、たぶん私が巻き込まれても構わないと思って使ったんだろう。


 ……当然か、魔王は倒すべき存在と教えられてきたんだから…… そしてそれを指示したのは私自身だ。

 コレが身から出た錆ってやつか……

 教育方針間違えたなぁ……


 その時、炎の竜巻の移動が突然止まった。

 炎と風の勢いはあっという間に小さくなり、ものの数秒で消滅、マリア=ルージュは全くの無傷で姿を現した。


「無傷…… 焦げ跡一つ無いとはね……」

「当然だろう? 今お前の眼の前にいるのは第3魔王だぞ?」


 やはりコレはおかしい…… 霧化した妖魔族(ミスティカ)は太陽光か“(コア)”を叩く以外に弱点は無い。

 だが熱に対する耐性は決して高く無いハズだ。

 霧化した身体が高熱により膨張する事は確認済みだ、もちろん相当な熱量が必要だろうが、業火旋風(フレアトルネィド)なら十分その条件を満たしていたハズ……


 考えられるのはコレこそが『深紅血(ディープレッド)』の隠された能力……

 勇者の雷神剣を無効化したり、輝槍や氷槍を無効化したり、業火旋風を無効化したり…… 魔術の無効化能力?

 でもそれだけじゃ無い気がする…… 大体それじゃ勇者のくたばれ勇者(ダイ・ブレイブ)が機能停止した説明が付かない。

 たまたま壊れただけ……ってコトは無いだろう、だって新品だし。


 とにかくダメだ、このままじゃリズまで犠牲になる。


「逃げなさいリズ…… 出来るだけ遠くへ…… アイツの能力射程圏内に居る限り、誰もアイツには勝てな……」


 その時唐突に胸の内側に痛みが走った!


「ッ!!? うああぁあぁああぁぁ!!!!」


 未だに体を貫いている蛇の牙が体内で枝分かれしたのだ。

 ご丁寧に心臓だけは避けてくれている……


「お前は黙っていろ」

「ハァッ ハァッ ハァッ」


 肺に穴が開いたのかも知れない…… 呼吸が…… 声を出す余裕なんて無い。

 血液変数(バリアブラッド)で体内の血液を操作して牙を除去しないと、それと同時に体内器官の修復も…… あのS女は今はリズに意識を集中している、この隙になんとか……


 いや、ダメだ、魔力がどんどん抜けていく、自分の傷は後回しでもいいから対策を取らないと。


「いい機会だ、冥土の土産にお前にも見せてやろう」

「?」


 マリア=ルージュがリズを見ながら私に話し掛けてきた。


「強制的に使徒を作る方法を」

「ナニ……言ってるの?」


 強制的に使徒を作る? 生物……厳密には人型種族を使徒に変える場合は、対象の了承が絶対条件になっている、私も昔試したことがあるから間違いない。

 相手をボコボコに叩きのめして無理矢理従わせるという方法もあるけど、完全に心を屈服させることは難しい。

 でもカミナなら出来そう…… 人の心を折るの得意そうだし……

 まぁ心を折られた上に使徒になることを受け入れる奴なんて普通は居ないか。


「お前が作り上げた対魔王戦力が、魔王の眷属に変わる所をそこで見ていろ」

「そんな……こと……」


 それだけ言うとマリア=ルージュはリズの方へ身体を向ける。

 リズもリズよ、律儀に待って無くていいから不意打ちでもすればいいのに…… カミナだったら絶対やってた、マジメ過ぎるのも考えものね……



妖魔族(ミスティカ)の霧化は熱に弱いんじゃ無かったの?」

「さて…… どうだったかな?」

「………… まぁいいわ、だったら妖魔族(ミスティカ)のもう一つの弱点を突かせてもらう」

「もう一つ?」

「光よ! 妖魔族(ミスティカ)は強烈な光に弱い! でも私の使える光輝魔術では、たかが知れてる……

 ただ幸いなことにココには強烈な光の光源がある」


 それはさっきリズを助ける為に使った第2階位級 光輝魔術『神剣・日輪閃光』だった。

 確かにマリア=ルージュは血液の膜を張り、自分に当たる光を弱めている、致命傷には至らなくとも苦手としている事は間違いない。


「ふむ、なるほど…… それでどうやってその光を我に当てるつもりだ?」

「そうやって笑っていられるのも今の内よ!!

 大気叛整(エア・フォース)・第4階位級 氷雪魔術『氷槍』フリージングランス併用!

 銀盤乱舞・アイシクルダンス!!」


 リズがギフト併用魔術を使用すると、周囲を取り囲むように小さな氷の板が高速で飛び交い始めた。


「? これは?」


 マリア=ルージュが訝しんだ瞬間、その背後に強烈な光の線が走った!


 ジュッ!!


 それは正にレーザービーム!

 目標を僅かに逸れ、マリア=ルージュのドレスの一部を切り裂いた!


「チッ! 外したか!」

「コレは驚いたな、大気操作のギフトをココまで繊細に操作できるとは…… 大したモノだ、ますます欲しくなったぞ?」


 今の攻撃は光を収束させたんだ、周りを漂っている氷の板は鏡とレンズの役割を果たしている。

 『神剣・日輪閃光』の光を束ねて強力な攻撃手段に昇華させたんだ。


 こんな事を即興で出来るとは…… さすが私が見込んだだけのことはある!


「次は外さないわ! 如何に魔王と言えど、光の速さで攻撃されれば回避は不可能!

 本物の太陽光では無いから致命傷にはならないでしょうけど、全方位から光線を放ち一気に体を切り裂いて“(コア)”を露出させてあげる!

 運が良ければ…… いえ、貴女にとって運が悪ければ次の攻撃で“(コア)”に直撃するかもしれないわね?」


「さて…… そう上手くいくかな?」


 マリア=ルージュは余裕を崩さない。

 しかし高出力のレーザー攻撃を避けられるのは私の知る限りではこの世にルカ以外には存在しない。

 何でアイツはあんなに余裕を保っていられるの?


「光の雨に撃たれろ!」


 先程のリズの宣言通り全方位からレーザーが隙間なく放たれた、発射から着弾までのタイムラグはほぼゼロ。

 予知能力者でもない限り回避は不可能だった……


 ……が。


「う……うそ」


 マリア=ルージュは無傷だった、何事もなかったかのようにその場に佇んでいる。

 避けたんじゃない、何らかの方法で防いだんだ。

 その方法はやはり……


「そ…そんな! あり得ない!」

「狙いは悪くない、だが手が単純すぎる。もう一度…… 敢えて言おう。

 今お前の眼の前にいるのは第3魔王だぞ?」


 甘く見ているつもりはなかった、だがココまで何も通用しないとは思わなかった。


「古代魔術『闇遊び(ハイド・アンド・シーク)』」


 リズがショックを受けている隙にマリア=ルージュは次の行動に移る、攻守交代だ。

 使用した魔法は目眩まし系の古代魔術…… あ、マズイ!


 周囲に黒い霧が漂い、あらゆる光を遮った。

 その効果範囲は広く、まばゆい光を放っている『神剣・日輪閃光』すら目視できなくなってしまった。


大気叛整(エア・フォース)・第5階位級 風域魔術『乱流』ダウンストーム併用!

 超下降気流(フォールダウンバースト)!!」


 リズは強烈な下降気流を発生させて黒い霧を吹き飛ばそうとしている、しかし霧は決して晴れる事は無い。

 光を完全に塞き止める古代魔術…… こんなのがあったなんて……


「理解ったか? 我は本来太陽の元でも問題無く活動できる、ただ唯一の懸念である反魔術(アンチマジック)があったから、今までそれをして来なかっただけの事、我にとって太陽光は弱点たり得ない」

「どっ…! 何処に!!?」


「お前のすぐ後ろだよ」


 ビリッ!! ブシュッ!!


 何かが破れる音と、何かが肉に突き刺さるような音が聞こえた。

 次第に霧が晴れてくる…… そこには……


「がっ……ぁあ……っ!!」


 マリア=ルージュはリズの服を破り、その首筋に噛みついていた。


 ス―― ドサッ!


 マリア=ルージュが首筋から口を離すと、リズはそのままその場に倒れ込んだ。

 瞳孔は開きピクリとも動かない…… まさか……!


「妖魔の血には相手の精神を殺し言いなりの人形に変える毒がある。

 本来はこの状態の相手の魂に術式を刻み込むことにより人狼を作り出す。

 我の場合は血を与え使途に変えるのだ」


 そう言うとマリア=ルージュは自分の指先を自らの鋭い爪で小さく切った。

 そこからわずかな血が染み出し、小さな玉を作り出した。


「さあ、我が血を受けるがいい! 今この瞬間からお前は我の新たな眷属となるだ!」


 リズは光を失った目で起き上がると、マリア=ルージュの前に跪き、その手を取って魔王の血を自らの口へ運ぶ……


 マズイ! このままじゃリズが!

 リズが使途になったら真っ先にやる事は、私を拷問させるに決まってる。

 冗談じゃ無い!!

 無理矢理腕を伸ばし、使途化の儀式を止める、多少の犠牲は覚悟の上で……


「第7階位級 火炎魔術『炎弾』ファイア・ブリッド」


「?」


 ドゥン!!


 炎弾は見事に直撃、大した威力では無いがそれでも数メートル吹っ飛ぶ、なんとか使途化の儀式を止めることに成功した。

 ちなみに炎弾が直撃したのはマリア=ルージュではなく、リズの方だ。


「酷い事をする女だな、コイツは言ってみればお前の眷属の様なモノだろ?」


 うるさい! 私だってこんな事はしたくなかった、でも他に方法が思いつかなかった。

 アンタに魔術を撃ってもどうせ無効化されるに決まってる。


「まぁいい、エリザベスは後回しだ、お前の実験を先に行おう」

「……くっ!」



 ヴヴゥゥゥン―――



「ん?」

「!」


 その時突然、独特の音が響いた……

 何度も聞いたこの音…… やった、間に合った!


「上か?」


 音の発生源は私達の真上、そこには夜の闇よりもなお暗い穴がポッカリ空いていた。

 その穴から一人の男が吐き出される様に出てくる、男は右手に身の丈ほどもある大剣を持っていたが、現れると同時にそれを投げつけてきた。


「フンッ!!」

「……チッ」


 ガキン!


 大剣はマリア=ルージュの立っていた場所に突き立てられる、今回はちゃんと回避したな…… 何でだろう?

 そして男は私とマリア=ルージュの間に降り立った。


「ここは…… デルフィラか……」

「カ……カミナ……」

「リリス…… お前お守りに魔法陣仕込みやがったな? お前のアンダー……ゲフンゲフン! 有り難がって損した」

「ゴ……ゴメン、それより状況分かってる?」

「あぁ、大方は……な」


 現れた男は第11魔王 霧島神那だった。




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