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レヴオル・シオン  作者: 群青
第五部 「現世界の章」
263/375

第257話 γアリア


---有栖川琉架 視点---


 南極で神那とキリヤの接触より数時間前、γアリアより北へ50km地点、上空。


「見えてきました、γアリアです!」


 ヘリのパイロットさんが報告してくれた。

 その言葉に促されヘリの進行方向へ目を向けると、遠くの空に巨大な岩塊が浮かんでいるのが見えた。


「あれがγアリア……」


 前にβアリアを見たせいかな? あまり感動がない、まぁ感動している場合じゃないんだけど……


「あ、お城が建ってる?」


 βアリアでは底側しか見れなかったから気付かなかったけど、γアリアの巨大岩塊の上には大きなお城が建っていた。

 でもお城だけなのかな? 街らしきものは見えない、妖魔族(ミスティカ)って全員がお城に住んでるのかな?


「それでルカ様、これからどうしますか?」

「え?え? わたし?」

「はい、ルカ様が私達のリーダーなんですよね?」


 え? いつの間にそんな事に?

 馬鹿な小娘の私にはリーダーとか荷が重いんですが……


「私達ではデクス世界の地理や常識にも疎いですし、やはりルカ様に率いて頂かなければ……」


 いや…… 戦場は浮遊大陸アリアなんだし、私じゃなくても……

 あぁ、そういえばアリアに行ったことのある人なんて一人も居ないんだ……


 そうだよね、ここはデクス世界、私が率先して前に出なきゃ!

 神那もリリスさんも前に出てるんだから!


 …………


 あぁ…… でも神那がいてくれたらなぁ……


「うぅん、すみませんパイロットさん、γアリアを魔力サーチできますか?」

「表面だけなら可能です、しかし内部まではさすがに……」

「表面だけで十分ですのでお願いします」

「了解しました」


 魔力サーチでγアリア表面の敵の数を調べてもらう。

 出来るだけ多くの敵が出ていると有難いんだけど……


「出ました、敵性生命体数およそ5000です、大軍ですね」


 5000か…… 確かに大軍だけどアリアの雨で降る魔物の数に比べたらホンの極僅かだ。


「大きい魔力反応はありますか?」

「いえ、どれも20000前後、C~D級程度です」


 やっぱり妖魔族(ミスティカ)は外にはいないか……

 よくよく考えれば今日は満月だ、現在日の光が射している外に妖魔族(ミスティカ)の人が出てるワケないよね? 確か日の光は致命傷になるって話だから……

 あれ? だったら何で夜攻めて来ないんだろう? 昼間じゃまともに外に出れないから妖魔族(ミスティカ)の人は戦力外になっちゃう……

 まぁ街の防衛にはその方が有難いけど、逆を言えばγアリア内に今回出張って来た全妖魔族(ミスティカ)が集結してると言える、こっちは大変な事になるかも知れないなぁ……


 ………… 大丈夫かな? みんな強いもんね。


「どうしましょうか? 着陸できるスペースは無さそうですが……」

「大丈夫です、私たちは…… え~と、風域魔術で、飛び降りても無事に着地できるので…… なのでこのままγアリアの上空へ進んでください」

「そ……そうなのですか? わかりました」


 ただこのまま何事も無く進む事は出来ないだろう、こんな大きな音を立てて飛ぶヘリが近づけば当然気付かれる。

 そうすれば空中戦力が出てくるだろうし、γアリアから迎撃の魔法が飛んでくることも予想できる。


 だから今の時点でγアリアの表面に出ている敵を一掃しておく必要がある。

 ただし敵を倒し過ぎるとγアリアは高天市に特攻攻撃する可能性がある、コレくらいの敵の数でちょうどイイのかも知れない。


「『対師団殲滅用(ギルバルド)補助魔導器(フォース)』展開」


 ヘリの周りに以前の物より鋭角なデザインになった砲塔が幾つも浮かび上がる、前面には半透明の魔力シールドも追加され、そこに敵の位置を教えてくれるマーカーが表示されてる、ずいぶん親切設計になったなぁ……

 シールドもヘリをギリギリガードできるほどの大きさがある。


「IFFオート、超長距離砲撃モード」


 以前よりも有効射程は伸び、更に新型対師団殲滅用(ギルバルド)補助魔導器(フォース)は威力、射程、弾速、それぞれに魔力を追加注入できる仕様になっている。

 私みたいに無駄に能力値が高い人は全部に魔力を盛ればいいからあまり意味の無い仕様だ。


「えぇっと…… どうしようか?」


 『閃光(レイ)』や『徹甲(アーマー・ピアシング)』はアリアを貫通しちゃうから使わない方がイイんだったよね?

 下手をすれば聖遺物を壊しちゃうかもしれないし、穴だらけになったアリアが崩壊するかもしれないから……

 火炎魔術だと大爆発を起こすかもしれないし……

 オリジン機関本部の時は氷雪魔術にしたんだっけ…… 今回は機械類の心配も無いし『雷撃(サンダーボルト)』で良いか、コレなら表面の敵だけを倒せそうな気がする。

 魔力増幅装置も新しくなってるし、チャージは10倍くらいで良いかな?


「第7階位級 雷撃魔術『雷撃』サンダーボルト チャージ10倍 アクティブホーミング!!」


 カッ!!!!


 目が眩みそうな光が溢れ、砲塔から何百という数の雷が放たれた!

 雷の束は広大なγアリアの上に、ほぼタイムラグ無しに着弾し、雷が落ちた時の様な轟音と、空気の震えは数十km離れた場所まで響き渡った!


 ガガアアアアァァァアアァァン!!!!


 当然近くを飛んでいた私たちのヘリは激しい揺れに見舞われた……


---

--

-


 うぅ…… 鼓膜が破れるかと思った……

 シールドのおかげで衝撃などはだいぶ緩和されてたが、下手すればヘリが墜落してたトコロだ……

 アリアが墜落しない様に配慮したつもりだが、自分たちに対する配慮が足りなかった。

 こういう所が私のダメな所だ。


「ルカ…… やるなら先に言って……」


 白ちゃんがヒト耳を押さえながら、涙を浮かべたジト目で見てきた。


「あぁ! ゴメンね白ちゃん!」


 白ちゃんの頭を抱きしめてケモ耳を撫でる……

 あ、柔らかいのにピンと跳ね返る様な感触が気持ちイイかも…… ふにふに♪


「こ……これがS級魔術師…… 圧倒的じゃないか……!」


 パイロットさんの見る目が変わった…… 強者を見る尊敬の眼差しだろうか? 化物を見る恐怖の眼差しだろうか?

 ゴーグルのせいで目は見えないんだけどね。


「このままアリアの上空へ飛びます」

「はい、お願いします」


 敵は粗方片付けた、空中戦力が出てくるのも暫く掛かるだろう。

 今のうちに侵入してしまおう!


 …………


 大丈夫かな? ドキドキ


「私達が降りたらヘリはすぐに引き返してください、全速力で、近くに留まっていたら的になっちゃいますので」

「りょ…了解!」


 すぅ~…… はぁ~……


 よ…よし! いよいよγアリアに乗り込みます!

 上空から飛び降りてなるべく浮遊島の中央付近に降りる。

 ベルタさんに貰った地図によると聖遺物の玄室は、正確な位置はわからないけど浮遊島の中心区画のドコかにあるらしい。

 もちろん中央区画と言ってもかなり広い。

 その広さに反して聖遺物は相当小さいらしい、神那の予想では大きくても1メートル以下だろうとのコトだ。

 そんな物がベッドの下とかに隠されてたら見つけるのは至難の業だ、でも浮遊大陸の動力源でもあり中枢でもある聖遺物には厳重な警備がつけられているハズ。


 要するに私達が堂々と乗り込むと敵が守りを固める、その守りが厚い方厚い方へと進んでいけば自ずと玄室に行き着くハズだ…… って神那が言ってた。


 もちろんこのプランは危険度が増す、アリアの中がどうなってるのか分からないけど、場合によっては狭い通路で敵に囲まれることがあるかもしれない。

 相手は性格が悪い妖魔族(ミスティカ)だ、きっと魔族を生きた盾にして遠距離から攻撃してくるに決まってる。

 ……とは言え、こちらは魔王が4人だ、その程度ならいくらでも対処できる。


 うん、大丈夫だ。


 …………


 あぁ、でも不安だなぁ…… 神那が居てくれればなぁ…… やっぱり私にリーダーとかムリ!


「お嬢様?」

「ひゃい!?」

「行かないんですか? 既にγアリアの上空ですよ?」

「え!? あっ!! い…行きましょう!」


 ミカヅキさんに言われてようやく気付いた、既に降下予定ポイントだ。

 ヘリの扉は開いている、そのまま勢いよく飛び出した……


「あ」


 みんなの着地の為の重力制御は私がするんだから、みんな一緒に飛び降りなければいけないんだった……

 一人でテンパって一人で飛び降りてしまった……



 みんなすぐに私に続いてくれたおかげで事なきを得た…… ゴメンナサイ。



---



 γアリア地表面


 そこには焼け焦げた…… いや、炭化した死体がそこら中に転がっていた……

 自分で作り出した光景なんだけど、別の魔術にしておけば良かったかな? 元の形が判らないだけまだマシかな?

 強い風でも吹けばバラバラになって飛んでいってしまいそうなんだけど、γアリア地表面は完全に無風だった。

 確か空圧領域とか呼ばれるモノに覆われているんだ、エアカーテンみたいなモノかな? それによってどんなスピードで動いても浮遊大陸の地表は無風状態が保たれるのだ。


 ちなみにこの空圧領域はアリアだけにしか存在しないそうだ、ラグナロクはもっと強固な結界で覆われていたし、ギルディアス・エデン・フライビにはそういったモノは無いそうだ。

 そういう意味では空中庭園ティマイオスはラグナロクに近い。


 でも完全に無風だと空気が淀みそうな気がする…… ティマイオスは精霊のおかげで空気が綺麗だったけど、アリアはどうなんだろう?


「ここが…… アリア……」

「最も恐れられた魔王の支配領域」

「シニス世界での恐怖の象徴……ですね」


 白ちゃん、ミカヅキさん、ミラさんが口々にアリア上陸の感想を述べる…… デクス世界で生まれ育った私よりもみんなの方がアリアの怖さを良く知っているのだろう。


 わ……私が皆を引っ張らなきゃ!


「それじゃ行きましょう、目指すは中央区画のどこかにある聖遺物の玄室です!」

「ねぇ…… ルカ、どこから…… 中に入るの?」

「え?」


 言われてみればそれらしき階段は見当たらない、剥き出しの岩肌と僅かな草が生えている荒地の様なγアリア…… そんな荒地の中に建つ不釣り合いな豪華なお城……


「やっぱり…… あのお城かな? たぶん妖魔族(ミスティカ)三大貴族の一つ、“右席”ルストナーダ家のお城」


「お伽噺に出て来そうな…… お城……」

「大きな城ですねぇ…… お掃除するのも大変そうです」

「本当に大きい…… 私の実家くらいありそうです」


 ルストナーダ家のお城を見たみんなの感想が面白い。

 そう言えばミラさんの実家って本物の魔王城なんだよね? 海の底にあるから私は見たコト無いけど……


 ……あれ? そう言えば私や神那の実家も魔王城って言えるのかな?

 ウチは塔とか無いから高さでは敵わないけど、建物の敷地面積では勝ってると思う!


 どうでもイイか、張り合うような事でも無いし、そもそもココは貴族のお城であって魔王城では無いんだから。


 …………


 みんな思ったより緊張して無いようだ。

 うん、これなら大丈夫そうだ。




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