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レヴオル・シオン  作者: 群青
第五部 「現世界の章」
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第254話 第3魔王の側近・前編


「ようこそ、魔王 霧島神那」


 あらイヤだ、正体がバレてーら、コイツは殺しといた方が良いかな?

 しかしコイツ一人を殺してもなんの解決にもならないだろうけど…… 男子高生魔王生活もそろそろ限界かな?

 さすがに世間に正体(魔王)がバレたら今までみたいな生活は出来ないだろうな……


 別に今の生活に未練があるわけじゃない、むしろ正体がバレたらシニス世界に移住する、そして始まるのは禁域王宮(ハーレムパレス)での嫁たちとの甘々で18歳未満お断りの世界。


 …………


 なんだ、バレても全然困らないじゃないか、むしろ早くバレろ! パパラッチ何してんだ、仕事しろ!!


 おっといかん、決戦前に希望の未来を思い浮かべるのはよそう、変なフラグが立つ。


 気を取り直して……


「何者だ?」


 純粋な疑問をぶつけてみる、多分側近の類いだと思うが……


「失礼、俺の名はキリヤ・レッドウッド」

「キリヤ・レッドウッド……」


 ……それだけ?

 何者だと聞かれて名前だけしか答えないのか?

 アンタが有名人だったら「お…お前があのキリヤ・レッドウッドか?」って言えるけど、生憎とそんな名前に聞き覚えはない、俺に反応して欲しければせめて魔王くらいメジャーになって出直せ。


「マリア=ルージュ様の側近を務めさせて頂いている」


 そうそう、その情報が必要なんだよ、やはり側近か。


 あれ? 今気付いたがコイツ妖魔族(ミスティカ)じゃ無いぞ? 額に第三の目がない。

 この個性がないのが個性ですって感じの無個性フォルム、コイツ…… 人族(ヒウマ)……か?

 人族(ヒウマ)出身の使途が魔王の側近になれるのか…… 妖魔族(ミスティカ)出身の魔王なら種族差別もキツそうなんだがよくなれたな?

 いや、強力な能力持ちなら種族を問わず側近に抱え上げられるのも不思議はない。

 むしろ生まれ持った人族(ヒウマ)という種族(ハンデ)を乗り越えたからこそ、相当厄介な能力を持っている可能性がある。

 それほどの能力持ちでなければ人族(ヒウマ)がマリア=ルージュの側近になれるハズが無い。


 それはさておき……


「なぜ俺の名を知ってる?」

「知ってるのはお前だけじゃ無いぞ、有栖川琉架の事も知ってる」


 コイツ! 俺だけでなく琉架の事まで……

 それはつまり琉架も俺と一緒にシニス世界に移住しなければならない……ってコトだ。

 うん、願ったり叶ったりだ。


「フフッ…… しかしまさか3年と掛からずにここまで辿り着けるとはな、しかも魔王の力を得て……

 マリア=ルージュ様がおっしゃっていたのはこの事だったのか」

「………… なんの話だ?」

「我々は数年前からお前達を見ていた、恐らくお前たちがシニス世界に来てすぐの頃だろう」


 数年前…… 心当たりは……ある。


 一回目の神隠しの直後、アリアの雨を目撃した。

 あの時に見られてたってのか? なんちゅー視力だ、相当な距離があった筈だぞ?

 そういえばあの時、誰かに見られているような悪寒を感じた気がする。

 やはりアレはマリア=ルージュだったのか。


「それで俺たちをずっとストーキングしてたのか? どんだけ暇なんだよ?」

「お前たちを見ているのは退屈しなかったぞ? 仕事熱心にも次から次へと魔王を倒していったからな。

 よもやこれ程とは思わなかった」

「だったら今日俺がココへ来た理由も解るよな?

 第3魔王マリア=ルージュ・ブラッドレッドは何処に居る?」

「それに素直に答えると思うか?」


 はぁ…… 当然素直に教えてくれないか、ま、当たり前だな。

 マリア=ルージュが居ないなら白を連れてくれば良かった。

 白が居ればこんな無駄な時間が省ける上に、南極の寒さに震えることも無かった。


「側近なのに何でご主人様の側に控えてないんだよ? お前ホントに側近なのか?」

「俺は故あって南極を動けないから仕方無かった、まぁ、ここで待っていれば霧島神那と有栖川琉架に会えるかもしれないという思惑もあった。

 やって来たのはお前一人だったがな」


 お前はそんなにこの無礼な小僧魔王に会いたかったのか?

 美少女魔王に会いたいというなら理解できる、俺だって琉架に会うためならCD付き握手券100万枚だって買うぞ。

 間違えた、握手券付きCDだ…… あれ? 間違ってないかな?


「素直に教えてくれないなら身体に聞くしかないな、こう見えても俺は尋問には自信があるんだ」


 取りあえずお前も落ち武者にしてやる、それが嫌なら素直に吐けよ?


「フフッ…… さすがは魔王、大した自信だな? だがあまり油断しない方が良いぞ?」


 そう言ってキリヤは柱の影から一本の大剣を取り出した。

 身の丈ほどもある両刃の大剣、鍔は無く先に行くほど細くなっている、遠目ではランスっぽく見える。


「油断? するワケないだろ? 魔王が来るのを知っていながら一人で待っているような奴に……」


 そう、コイツは油断ならない、一人で俺と琉架の二人を相手取るつもりだったんだから、俺たちの事をストーキングしてたって話だし、こちらの能力も把握している可能性がある。


「さすがは魔王殺しを何度も成し遂げているだけはある、冷静な良い判断だ、では…… コチラから行くぞ!」


 パチッ!!


 キリヤから静電気の様なモノが飛んだ様に見えた。

 だがコチラから行くと言った割に全く動こうとしない、何か能力を使ったのか?

 その直後、自分の顔のすぐ横に言い知れぬ圧力を感じた!

 咄嗟に身をかがめ回避する!


 ビュオン!!


 頭上を何かが高速で通り過ぎた風切り音が聞こえた、気付けば前方に居たはずのキリヤはいつの間にか俺の横に移動し大剣を薙いでいた。


「チッ! よく避けれたな? 所見でこの攻撃を躱せたのはお前で二人目だ」

「それは光栄だね、アンタの戦歴がどれ程のモノか知らないけど……」


 ドキドキ 正直ビビった、警戒してたのに反応が遅れた、何だ今の攻撃は? 何をされたのか全く分からなかった。

 やはり厄介な能力持ちか?


「ほぅら、どんどん行くぞ!」

「っ!?」


 今度は正面から圧力を感じる、キリヤは数メートル離れた位置に居たはずなのに、気付けば目の前に居る。


「おぉっとぉ!!?」

「ふん、勘のイイ奴だな」


 何とかギリギリで回避する、アイツの言う通り殆んど勘で避けている様なモノだ、このまま受けに回っていたらいずれ限界が来る。

 認識できない攻撃、何とか見極めなければ……


 ゾクッ!


「真上ッ!!」


 ガキン!!


 バックステップでギリギリ回避する、今まで自分の立っていた場所に大剣が突き立てられる。

 脛の部分を僅かに斬られた、機動力が低下するほどのケガじゃ無いが、積み重なったらどうなるか分からない、取りあえず毒の心配はなさそうだが……

 どうするんだよコレ、認識できる気がしない、緋色眼(ヴァーミリオン)でも動きが追えない。

 とにかくこの距離はマズイ!


「第7階位級 金属魔術『散弾』リード・ショット!!」


 距離を取りつつ敵の回避し辛い散弾をカウンター気味にバラ撒いた! しかし命中する直前にキリヤの姿は消え横に回り込んでいた。

 ただし今回は攻撃してこなかった…… もしかしたらこの認識不能攻撃はタイミングが相当シビアなのかも知れない。

 だったら推理するまでだ、可能性があるのは瞬間移動か精神感応、だがどちらも違う気がする。


 瞬間移動ならとっくに勝負はついている、大体同じ転移能力者の俺にソレが解らないハズが無い。

 精神感応もそうだ、魔王の精神に干渉できるのは魔王と同格のレベルが必要だ。

 いくら相手が第3魔王の側近だとしても…… いくら俺が魔王同盟最弱の魔王だとしても……

 いくらなんでも使途に並ばれるほど弱っちくは無いハズだ!


 ならばもっと単純に幻を見せる能力とかなのだろうか? 大したこと無いように感じる能力だが、実際に攻撃を認識できないのは致命的だ。

 とにかくあの大剣を素手で受ける訳にはいかない、単純に肉体強度の上限を上回る攻撃だからな、心臓に貰ったら即死もあり得る。


 魔神器から魔器を取り出そうとした時だった……


 バチッ!!


「痛っ!?」


 何か電気が走った様な感覚、俺の魔神器は使えなくなっていた…… え? 壊れた?

 キリヤがその様子をニヤニヤしながら見ている…… アイツの仕業か? グレムリンかよ……


「お前の仕業か?」

「さて…… どうだろうな?」


 確実にアイツの仕業だ、しかし何をしやがった? アイツが先代・第11魔王なら分かるが魔神器はそう簡単に壊れるモノじゃ無いぞ? EMC対策だってしてあるし…… ん? EMC?

 もし耐性を上回る程の電磁波を操る能力者がいたら…… 光や電波も電磁波の一種、その能力を使えば他人の視界を操るなど容易い。

 いやちょっと待て! まさか……


 アイツさっきなんて言ってた? 確か「故あって南極を動けない」とか言ってたよな?

 動けない…… つまり何か理由があって動く訳にはいかないってコトだ。

 その理由って……


「世界中で確認されてる赤いオーロラ…… アレ、お前の仕業か?」

「!! 驚いたな、僅か数分でその答えに辿り着くとは……」


 世界中で電波を妨害していた発生源見っけ! コイツが電離層を使って怪電波を流してやがったのか、だから南極を動けなかった。

 何故マリア=ルージュが南極に留まっていたのかようやく理由が分かった、コイツが犯人だ!!


 しかしいくら電離層を利用しているとはいえ、南半球は愚か世界規模で電波障害を起こせるとはとんでもない能力者だ……

 あれ? ちょっと待てよ?

 電磁波を利用して世界の通信網を停止させるなんて発想、シニス世界出身者に出来るハズ無い。

 デクス世界出身者でも早々思いつくモノじゃ無い、余程自分の能力を理解していなければ…… つまり電波妨害の発案者はアイツ自身という事になるよな……?

 つまり人族(ヒウマ)を…… デクス世界を裏切って第3魔王に与する者……


 !!


「お……お前…… 名前…… なんてったっけ?」

「はぁ?」

「名前だよ名前!! さっき自分で自己紹介してただろ!! キリヤ……?」

「キリヤ・レッドウッドだ」


 キリヤ・レッドウッド…… レッドウッド…… 赤い木…… 赤木……


「お前!! 赤木キャプテンか!!!!」

「………… 赤木はいいとしてキャプテンって何のコトだ?」


 おぉう…… なんてこった…… 第3魔王マリア=ルージュ・ブラッドレッドの側近は、元創世十二使・序列一位の赤木錐哉だった。




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