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レヴオル・シオン  作者: 群青
第五部 「現世界の章」
256/375

第250話 ミッションスタート


 レイフォード財団・大和支部


 とうとうこの日がやって来た…… てか、準備期間短すぎだろ?

 まぁミューズ・ミュースの時と比べればまだマシか……


 レイフォード財団・大和支部の会議室にギルドD.E.M. のメンバーと魔王リリス・リスティスが集まっている。

 この後、みんなそれぞれの持ち場に付くコトになる。


 俺は敵魔王城に一人で特攻。

 琉架、白、ミカヅキ、ミラはγアリアを制圧するため乗り込む。

 先輩とジークと伊吹は第三魔導学院周辺の防衛に付く。

 そしてリリスは俺からの連絡が来るまで優雅に待っている……と。


 俺だけ負担が大きすぎる気が…… いや、考えるな、最初から分かっていた事だ。


「神那ぁ~…… ホントに一人で大丈夫?」

「おに~ちゃん……」

「マスター……」

「カミナ様……」


 嫁達が俺の身を案じてくれている、きっと他の連中は俺の心配なんてしてくれないからな。

 あぁ、後ろ髪引かれる…… もうさ、露払いとかよくね? リリスが一人で行って一人で片付けてこいよ。

 ……って、言ってやりたいトコロだが、それを言うとその瞬間、俺は性犯罪者にされてしまう。

 行くしかない、他に選択肢は無いんだ。


「カミナ、最後のお別れは済んだ?」


 おい止めろ! 最後とか言うな! マリア=ルージュと戦うのはお前の役目だろうが!


「それじゃ今からカミナを私の城、エンブリオに跳ばすわ」

「あのさぁ、リリス……」

「ん? なぁに?」

「魔王城エンブリオってのは南極の地下に埋まってるんだよな?」

「えぇ、そうよ」

「αアリアは南極の上空に浮かんでるんだよな?」

「えぇ、そうね」

「どうやって潜入するんだ?」


「…………」

「…………」


「まぁカミナは自力で飛べるし、瞬間移動も使えるから問題無いでしょ?」


 はぁ…… まったく、行き当たりバッタリな計画たてやがって、俺じゃ無ければ潜入もままならないじゃねーか。


「コホン、転移可能範囲で一番上層部へ送るからエンブリオに着いたらそのまま上を目指して、50メートルも登れば地表に出れるわ、氷はカミナが何とかしてね」


 また人任せかよ、まぁここ半年以上はアリアが上空に留まっているおかげで雪も積もってないだろうし、何とかなるか…… 最悪テレポートだな。


「その後アリアに潜入、アイツの“武器”になりそうなヤツは全部排除して」


 武器……ねぇ……


「後は打ち合わせ通り、マリア=ルージュの取り巻きを排除できたら『量子双子(ジェミニ)』で連絡して?

 私が駆けつけるから、状況に応じて勇者を投入する。

 カミナは…… 近くで見ててくれると心強い……なぁ?」チラチラ


 げ、嫌なフラグを立てるな、そんな事をすれば120%の確率で対マリア=ルージュ戦に巻き込まれる。

 それは契約に無い、残念だがお前のオッパイ一揉みでは対価として釣り合わない、そうだな…… もし俺をマリア=ルージュと戦わせたいなら、お前のオッパイを好きな時に好きなだけ揉める権利でもくれないと……


 こんな事を口に出したら本当にその権利をくれそうだな。


「それでカミナのハーレムメンバーは……」


 そのくくり止めろ、何一つ間違ってないけど口に出すな! ほら見ろ! 先輩と伊吹から軽蔑の目で見られたじゃねーか!


「4人はコレからγアリアに乗り込んでもらう、ヘリを出すけど流石にアリアに着陸させることは出来ないから……」

「近くまで行ったら私の重力制御で飛び降ります」

「うん、それじゃルカよろしくね?」


「それで残りのメンバーには高天市の防衛に当たってもらいます、一応迎撃ミサイルや高射砲を集められるだけ集めたから魔族も簡単には侵入できないと思うけど、γアリア制圧が遅れたらアリアの雨が降る…… そうなったら流石に止められないから覚悟しておいてね」


「…………」

「…………」

「ふむ、そうなったら終わり……と言う事だな」


 おいコラ! 俺の嫁達にプレッシャーをかけるんじゃない! 責任感じちゃったらどうするんだ?


 どうもコイツの建てる計画は道筋だけで、細かい所が人任せ過ぎる。

 敵がこちらの思惑通りに動いてくれるとは限らないんだ、例えマリア=ルージュを倒せても高天が壊滅したら意味が無い……

 突撃艇が一機でも弾幕を抜けたら大変な被害が出かねない。

 せめて保険が上手いコト機能してくれることを願うしかないな、もちろん保険が動く必要が無ければそれが一番なんだが。


「それじゃ改めて…… カミナ、準備はいい?」

「…………あぁ」

「あ、そうだ、ちゃんとお守り持った?」


 お守り? あぁ、リリスのアンダーヘアか、大丈夫、ちゃんと宝物のように肌身離さず大事に持ってる。

 性なる加護があらん事を…… 間違えた、聖なるだった。


「それじゃ送るから」


「神那ぁ、気を付けてねぇ」

「おに~ちゃん…… 気を付けて……」

「マスターの帰還をお待ちしております」

「カミナ様に無事を祈っています」

「ああそうだ、神那クン、終わったらすぐに帰ってきて防衛の手伝いヨロシクね」

「おにーちゃん最速でね、寄り道とかしないように」

「ふむ、まぁお前なら大丈夫だろう」


 前半と後半でずいぶん温度差を感じる激励だな、マジで俺の心配をしてくれるのって嫁達だけなんだな……


門を開きし者(ゲートキーパー)


 リリスがゲートを発生させると目の前が真っ暗になった……



---


--


-



 ……………………

 目を開けるとそこには嫁達の姿は無い……

 もうここは南極の地下なんだ。


「ここがリリスの魔王城・エンブリオ……か」


 今まで見てきた魔王城とはだいぶ印象が違う、何と例えればいいのか……

 壁にはまるで宇宙船の内部の様な計器類やレーダーっぽいディスプレイが大量に配置されてる。

 機械の発する光で薄ら明るい、何となくワザとらしい印象だ。


「そう言えばここでテリブルを創ってたんだよな…… 取りあえずドコも壊されて無いようだ」


 マリア=ルージュが半年以上もこの上に居座っているからとっくに制圧されてる可能性も考えてたが、リリスの言う通りココには手を出していない様だ。

 もしかしてこの城の存在に気付いてないのだろうか?

 その可能性は低いな、マリア=ルージュには千里眼能力がある、その目を通せば地下の城など直ぐに見つかる、ならばなぜ放置されてるんだ?

 オリジン機関本部の様に荒らされた形跡も無い…… 謎の行動が多すぎて目的が見えてこない。


 マリア=ルージュの目的は本当にデクス世界の支配なのだろうか? そこは間違いないと思うんだが……


 そう言えば、もう既にアイツの能力の射程圏内に入っているかも知れないんだ、いきなり体の内部から爆発させられない様に警戒だけはしておかなければ。

 自分の体内の血液を全て自分の能力の支配下に置く…… よくよく考えたらこんな能力の使い方は初めてだな。

 そちらに神経を集中させると周囲への警戒が疎かになる、やはり一筋縄ではいかない様だ。


「とにかく上を目指すか……」


 ちょっとこの城を探索してみたい気分だ、魔王城と言えば伝説の武器とかが転がってるのがお約束だ、もしかしたら俺が探し求めた専用武器とかが見つかるかも知れない。

 もしかしたらリリスの乙女の秘密が垣間見れるかも、先輩の部屋の本棚の奥みたいなヤツが……


 …………


 やっぱり探すのは止そう、そんな事をしている暇は無い、ミッションを進めるか…… 一応マーキングだけは残して。


 リリスの指示通り上を目指す、長い螺旋状の階段をひたすら上る……

 緋色眼(ヴァーミリオン)で先を見通せない所からすると、この城はヴァリア鋼を大量に使用して造られてるのかもしれない。

 構造的に恐らく尖塔の様な場所だろう。


 …………


 ひたすら無言で登り続ける…… 一人は寂しいなぁ……

 かつては一人でいる事がカッコイイと思っていた時期が僕にもありました。


「お! 終点だ」


 孤独に苛まれつつ階段を上り続けること数分、尖塔の天井部分へ到達した、そこには内開きの扉が設置されていた。

 やたら硬いその扉を開けてみるとその先には…… 案の定 氷で塞がれていた。

 だが氷なら緋色眼(ヴァーミリオン)で先を見通せる。


 …………


 地表が果てしなく遠い…… 見誤った、何百メートルあるんだよこの氷…… 数メートル程度なら融かして外に出ようかと思ってたが、この氷の厚さでそんな事をしたら城の中が水浸しになりそうだ。

 仕方ないので『超躍衣装(ハイ・ジャンパー)』で脱出、地表へ出た。


 初めて訪れた南極大陸、そこは暗黒の世界だった。


「暗いな…… 少しくらいは太陽の光が射してるかと思ったんだが…… あ、そう言えば南半球は夏か、太陽の角度が高いんだ、その所為で周辺がアリアの影に入ってるんだ」


 周囲には魔物もいなければペンギンもいない、ただ強い風が吹き付ける暗くてクッソ寒い世界だった。

 無性に白が恋しい…… 今すぐ白をモフモフしたい! 一瞬だけ帰って白を思う存分モフってこようかな? そんな気分になって来るほど寒い!


「そう言えばココは南極のどの辺りなんだ? やっぱり南極点近くかな?」


 コンパス持ってくれば良かったか…… いや、別にどうでもいいか、コンパスじゃ南極点までの距離が分かるワケじゃ無いし……


「さて……」


 真っ暗な空を見上げる…… 右眼では何も見えないけどそこには確かに浮遊大陸が存在している。

 そして左眼では浮遊大陸の岩塊が放つオーラが僅かに見える……

 高さは…… 1000メートル位だろうか? この位置からでは浮遊大陸内の空洞は確認できない。


 ここからジャンプすればきっと岩の中に跳ぶことになる…… それはちょっとヤダな。


 どうしたモノか…… この強風の中で重力制御無しに空を飛ぶのは危険だな、ウィンリーの羽根を使ったら文字通り羽根の様に強風で飛ばされてしまう。

 かといって箒星で血糸アンカーを撃ち込むにしても遠すぎだ、血の無駄遣いになるだけだ。


 仕方ない、テレポートで300メートルずつ移動し、その都度 内部構造を確認しながら登るか…… 魔力の無駄遣いだな、リリスがきちんと手段を用意しておいてくれればこの無駄は排除できたのに……

 任せっきりにしたのが間違いだった。


「よっと」


 一度目のジャンプ…… 空洞は見えず……

 二度目のジャンプ…… 未だ空洞は見えない。


 アリア底厚いな? まさか空洞が存在しないなんてことないよな? もしそうなら外側から大きく回り込まなければいけない。

 それは幾らなんでも面倒臭い……


 三度目のジャンプ…… アリアの船底のすぐ近くまで来てようやく空洞を確認した。

 しかし今は空中で停止している状態、既に落下が始まっている、スピードが付くと運動エネルギー無効化ジャンプを使わなければならない為じっくり観察しているヒマが無い。

 安全確認を省いて空洞内へジャンプした。


「っとぉ! うっ! まぶしっ!?」


 暗闇に慣れていた所為で目が眩む……

 そこは光が溢れる空間だった、変質化した岩石が放つ光にしては今までにないほど強い光だ。


「ここは……?」


 そこは広大な空間の中に大きな城が幾つも立ち並ぶ城の街だった。




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