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レヴオル・シオン  作者: 群青
第五部 「現世界の章」
254/375

第248話 2日前


 死刑執行まで…… 違った、第3魔王マリア=ルージュ・ブラッドレッドとの決戦まであと二日……

 やれる事はやっておかねば…… そう思ってみたのだが、やれる事は少ない。

 昨日はよく眠れなかった、こんな緊張は久しぶりだ。

 だいたい俺はマリア=ルージュと対峙する訳では無い、にも拘らずなぜこんなに緊張するのだろう?

 それは予感があるからだ…… 魔王マリア=ルージュとの戦いに何故か巻き込まれると……


 今まで6人の魔王と戦ってきた、その全ての戦いに俺は関与している。

 止めを刺した相手こそ最初の一人、魔王レイドだけだが、他の魔王とも多かれ少なかれ全て戦っている。


 以前の魔王討伐二連戦は、自分の評価ではかなり楽な戦いだった。


 一人は自殺願望があり、もう一人はただの鉄機兵の大軍だ、あれくらい簡単なら言うコト無しなんだが…… さすがに次はそうはいかないだろう。

 もちろん何事も無くリリスが勝ってくれれば問題は無いのだが…… もしリリスが負けたりしたら…… どうなるんだろう?


 リリスの『幻想追想(メメント・モリ)』が敵の手に渡るのだろうか?

 多分そうなるのだろう、ウォーリアスが俺を優先的に殺そうとしていたのも俺の力を奪う為だった。


 ………… それはかなりマズイ。


 唯でさえ最恐最悪最凶と呼ばれているあの女に、チートスキル『幻想追想(メメント・モリ)』を奪われたら世界の終りだ。

 ヤバそうだったら必ず逃げる様キツく言っておこう。


 勇者あたりを囮にして!



---



 本日の仕事は二つ、一つはベルタからの聞き取り調査。


 敵の兵力規模や配置、そしてγアリアの内部構造についてだ。

 γアリアを押さえる、それには浮遊大陸の心臓である聖遺物を押さえるコトが重要になる。

 ここを押さえておかなければ、たとえ魔族を全滅できてもアリアを落とされる、そうなったら確実に負けだ。


 ベルタは平民出身とはいえ軍人だ、本来身分が低いから中枢施設には入れなかったのだが、下っ端だから色々な所へ使い走りさせられていた。

 魔族などに任せる訳にはいかない重要書類を届ける仕事…… 要するにパシr……メッセンジャーだな。


 さすがに聖遺物が安置されてる玄室の場所までは分からなかったが、おおよその場所の当たりはつけられた。


 ……てか、なんで俺がこんな事調べてるんだろうな?

 くそぅ…… リリスめ、禁域王を秘書の様に使いやがってお前が自分でやれよ! 最近俺を頼り過ぎだ!


 ……と、思ったんだが、リリスはリリスで忙しいみたいだ、残り2日で国内は元より、周辺諸国からも可能な限りの戦力を集めなければならない。

 もっとも幾ら近くても、近隣諸国は海の向こう、海の魔物に邪魔されてほとんど集められないと思っていい。


 それでもやらない訳にはいかない、高天を潰される訳にはいかないからな。

 ただ前回のβアリア襲来と違い、今回は事前に襲来情報が得られた、今頃街では避難民でごった返しているだろう。



---



「今回は神那とは完全に別行動になっちゃうんだね…… 不安だなぁ…… 私たちだけで上手くできるかなぁ?」


 4人の女の子魔王に作戦指示書の内容を覚えてもらっている、もっとも今回の作戦はアドリブが多い、正確な地図さえ用意できないんだから仕方ないな。


 そんな作戦を目前にして琉架がナイーブになっている、あぁ、もしも許されるなら君をポケットに詰め込んでそのまま連れ去りたい……


 …………


 連れ去っちゃうか? 俺魔王だし、お姫様を誘拐する権利があると思うんだ。

 そしてお姫様を助けに来た勇者をぶっ殺して腸を引き摺り出し調理して犬の餌にでもしてやる権利もあると思う。


 まぁ冗談はさておき、不安なのは俺も一緒だ。

 むしろ琉架達よりずっとな…… 何せ俺は一人で敵魔王城に乗り込まなきゃいけないんだから。


 俺が二つ持っていると思われる魔王特性の一つ……

 魔王ハーレム特性…… コレを持つ俺が一人で敵魔王城へ潜入したらどうなるだろう?

 相手が男魔王なら問題ない、だがマリア=ルージュは女魔王だ……

 しのび込んだ先がアイツの寝室だったりしたら……

 もっと悪いのは浴室だったりしたら……

 俺のもう一つの特性、ラッキースケベ特性からすると後者を引き当てる可能性が高い。


 もし寝室だったら寝首を掻ける可能性が出てくる、リリスの出番はなくなるが、安全かつ簡単に物事が進むなら悪くは無い。

 だが…… もしマリア=ルージュが美人だったらどうする?

 無抵抗で安らかに眠る美女の心臓を刺せというのか? その場で数時間は葛藤しそうだな。

 どうせ殺すのなら少しくらいは……と、手がすべる可能性も捨てきれない。

 だって俺だし……


 その結果、目覚めたマリア=ルージュと目が合い叫ばれる。

 今度こそ俺は性犯罪者に成り下がってしまうワケだ。


 これが浴室だったら話はもっと簡単だ。

 その時点で性犯罪者確定だ。

 裸の女魔王の左ムネ目掛けて襲い掛かる禁域王…… 完全にOUTだ。

 裸を見られたマリア=ルージュが琉架みたいに動けなくなったり、気絶してくれれば良いんだが…… チャンス到来だ。

 どうせ殺すのなら少しくらいは……と、裸体を隅々までウォッチングするに決まってる。

 だって俺だし……


 そしてそんな時に限ってメイドとかが入ってくる、目撃者だ。その時は自らの罪を隠すためにアリアに暮らす全生命体を根絶やしにしなければならない…… まさに魔王の所業だ。


 なんてな……


 いろいろシミュレートしてみたが、さすがにこんな状況は起こらないだろう、てか、起こってもらっちゃ困る。

 こういう状況はラッキースケベとは言わん、完全にアンラッキースケベだ。

 大体、あの天上天下唯我独尊女が裸を見られたくらいでうろたえるだろうか?

 隠しもせずに堂々と攻撃してくるに決まってる。

 目のやり場に困って俺のほうがうろたえそうだ、これだからDTは……


 そんな事態にならない様、アリアの構造についてベルタにもう少し詳しく聞き取り調査をしておくべきか。


 はぁ…… せめてマリア=ルージュがブスならなぁ……

 もう美人を敵に回すのはいやだ。


「あのカミナ様…… 一つ質問が……」

「ん? ミラ、どこか分からなかったか?」

「分からないといいますか…… この作戦指示書では聖遺物の制御を私がすることになってるんですが……」

「あぁ、聖遺物は魔力を必要としないが、コントロール技術は必要になるんだ」

「コントロール技術でしたら白様の方が適任だと思うのですが……」

「確かにな…… ただ白じゃ聖遺物に近づけない可能性が高いんだ」

「?」

「聖遺物は人体の一部だ、手とか足とか胴体とか、白と琉架はそっちの耐性がないから無理だ、ミカヅキはコントロール技術がまだ足りない。

 ミラしかいないんだ」


 ミラは自分の生首レプリカを見てもちょっと引く程度だったし、自分の手で持てた。

 伊吹や先輩やジークが行くなら任せるところだが、今回は他に適任者がいない。


「そういう事でしたか…… 分かりました、あまり自信ないですが頑張ってみます」

「あぁ、頼む」


 恐らく世界で2番目に能力値の高いミラに頼むしかないとはな……

 大変だとは思うが頑張ってくれ。



---



「αアリア? あぁ、メディウムアリアの事ね?」


 ベルタからαアリアの構造について聞きだそうとしていたら聞きなれない単語が出てきた。


「メディウムアリア? それって南極にある一番大きなアリアの事だよな?」

「えぇ、妖魔族(ミスティカ)の間ではそう呼ばれているわ、中央って意味らしいけど」


 メディウム…… ミディアムの語源かな? まぁどうでもイイが……


「その中央アリアの構造について知りたい、ずばり魔王マリア=ルージュの居場所だ」

「………… 知ってどうするんですか?」

「当然倒す」


 リリスが……


「う~~~ん……」


 ベルタが渋い顔をしている、ナニ考えてるか大体理解る。

 お前みたいな子供に何ができるんだ? とか、命を粗末にするものじゃ無いとか、そんな感じだろう。


「それ教えちゃったら裏切り者がいるってバレるよね? 真っ先に疑われるのはサダルフィアス家の関係者、私と坊ちゃまの所に報復に来るんじゃ無いかな?」


 違った…… さすが妖魔族(ミスティカ)、下位種族の心配とかする奴じゃ無かったな。

 そもそも倒します宣言は無視だよ、俺達が勝てる可能性を全く考えてない、それだけあの魔王がヤバイって事なんだが……


「まぁいいわ、教えて上げる、どうせ私たちの居場所なんて簡単に分かるモノでも無いし」


 実に自分本位の考え方だ、坊ちゃまの身柄を解放したら絶対連れて逃げるぜコイツ。

 もし俺がマリア=ルージュに捕まったらお前が裏切った事と居場所を密告してやる! 死なば諸共だ!


「マリア=ルージュ様はアリアの中心に聳え立つ巨大な城、魔王城・ディグニティに居るわ」

「魔王城・ディグニティ……」

「あのお城はシニス世界で最も大きく、もっとも荘厳と言われているわ、マリア=ルージュ様はその城の最上階から常にアリア全域とアリアの影を見ているわ」


 魔王城・ディグニティ…… 噂には聞いた事がある、とにかく大きくてとにかく豪華だと、当然下位種族では足を踏み入れるどころかその姿を見た者すら殆んどいないだろう。

 妖魔族(ミスティカ)という種族の自己顕示欲の高さを如実に表してると思われる。

 そんな巨大な城のさらに最上階に居るとは…… 唯でさえ浮遊大陸という高地に建ってるのに、アレだな、何とかと煙は高い所が好きと言うからな…… いや、ちょっと待て!


「アリア全域とアリアの影を見てるって?」

「マリア=ルージュ様の目は特別製でね、普通の妖魔族(ミスティカ)とは見える範囲が大きく異なるの。

 そんな目を持ってるものだから、仕事をサボっていたり、魔王様批判をした者はその場で体の内側から爆発して死ぬわ」


 おい! そんな話聞いて無いぞ? マリア=ルージュは千里眼持ちなのか? しかも話を聞くに遮蔽物は無視される、創世十二使にも千里眼の能力者がいたが視覚範囲は及ばなくても、遥かに強力な能力じゃないか!


 これはかなりマズイ、俺は本当にアリアの全生命体を皆殺しにしないといけないかもしれないな、リリスが満月のタイミングで攻め込むと言った時はナニ考えてんだとも思ったが、敵魔王城が手薄な時に攻め込むのは正しい判断だったな。


 アイツが南極に引きこもってくれていてホントに良かったよ。

 下手に討伐隊を組んで乗り込んだら、アリアに足を踏み入れた瞬間に全滅だ……


 さすがは最恐最悪最凶の魔王…… ヤバすぎる。




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