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レヴオル・シオン  作者: 群青
第五部 「現世界の章」
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第243話 魔導器


 今回の装備換装は間近に迫った第3魔王との戦いに備えてのモノだ。

 作戦の概要はまだ聞いていないが、ウチの娘達が最前線に出るコトは無い。

 如何に魔王といえどマリア=ルージュの前に直接立つのは危険すぎる。


 現状、マリア=ルージュと戦えるのは俺とリリスの二人だけ、後、全く期待できないけど勇者か……


 しかし作戦立案者がアノ暗躍好きの魔王だからなぁ…… 何かしらのトラブルは覚悟しておかないといけない、ただしさすがにマリア=ルージュと対峙させられることは無いだろう。


 そんなワケで俺のいない所でトラブルに見舞われた時の為の事前準備である。

 もっともみんな強いから、装備を強化する必要性があまりない。

 それでも各々の弱点くらいは改善しておきたい。


 この装備換装のメインはミカヅキだ。

 今まで魔力を持たず、魔道具や魔法の類が一切使えなかった彼女の装備を一新させる。

 あと皆の既存の装備の調整もしなきゃいけないな…… みんな能力値増えすぎ。



 まずは “女神” 有栖川琉架。

 琉架は装備を追加する必要は無いが、能力値が増えすぎたため今まで使っていた魔導器は琉架の大出力魔力に耐えられなくなってきた。

 そんなワケで装備を新型に入れ替える。

 チラッと見たが新型・対師団殲滅用(ギルバルド)補助魔導器(フォース)がエライ事になってた。

 これでもかってくらい砲塔がゴテゴテ乗っていて、その装備姿はフルアーマー琉架って感じだ。


 ちなみにこれと同型の物をミラにも持たせる。

 彼女が今まで使っていたのは琉架が以前使っていた魔導器だ。

 有り体に言ってしまえば中古みたいなモノだ…… 琉架が使ったモノならプレミアが付いてもおかしくない、きっとゴリラ辺りに売りつければ例えガラクタだったとしても幾らでも金を出すだろう。


 しかし今まで琉架が使っていたモノと比べると一世代前の型だ、オリジン機関終了後に支給されたモノと、その一年後に支給されたモノ、外見こそあまり変わっていないが、やはり出力が不足気味だ。

 実際ミラが使うと必ず壊れる。


 今までは琉架の『両用時流(リバーシブル)』で時間を巻き戻して直して使っていたが、せっかく神格級の能力値があるんだ、それに見合った性能の魔導器に更新する。


「私は今のままでも構わないのですが……」


 って、遠慮されてしまった。

 魔神器欲しさにノコノコとこんな所にやって来たどっかの先輩に見せつけてやりたいよ、この奥ゆかしさを!


 …………


 あ、隣で見てた。

 アクビしながら自分の番が来るのを待ってる…… 期待するだけ無駄だったな。


 遠慮されたが多少強引に装備を入れ替えておく、どうせ俺が金を払う訳じゃ無いんだからな。



 次は白だ。

 しかしここは悩みどころだ、白は近接攻撃力が高すぎる、『事象破壊(ジエンド)』では簡単に相手を殺せてしまう。

 つまり持たせる武器はおのずと手加減用の武器になってしまう。

 せっかく装備を新調するのになんかモッタイナイな……

 それに白は遠距離攻撃力が不足気味だ、そこらへんをまとめて補ってくれるモノだと尚良い。


 真っ先に思い付いたのが鞭なのだが…… 白に似合わない!

 俺の知り合いで鞭が似合いそうなのは師匠かエセセレブか…… 後はリルリットさんかな? 最後の一人は戦闘員では無いが一番似合いそうだ。

 とにかく悩んだ末に行き着いた答えが糸だった。


 魔器『妖蜘蛛の糸(アラクネシルク)

 鉄機兵とは関係ない。指輪型の魔器だ。


 マンガとかではよく糸使いが出てくるが、普通に考えて武器になるような代物では無い。

 そういった場合、やはり超常的な力で操るのがお約束だ。

 ウチも其のお約束に漏れず魔力操作できる魔糸になっている、厳密に言うと糸ですら無く『魔力で構成された糸状の魔力』と言ったトコロか。

 コレなら魔力を操作するだけで長さも強度も太さも切れ味も思いのままだ。

 エロ触手みたいに自由自在に動かせる!

 更に属性魔術の要領で、性質を変化させることも出来る、中近距離では非常に有効な武器になる。


 ただコレを扱うには能力値も去る事ながら、高度な魔力コントロール技術も必要になってくる。

 この条件が満たせるのは我がギルドでも俺と白だけだろう。


 いずれは悪人を吊るして糸を「ピンッ!」って弾く技を教えて上げよう。


「指輪?」

「あぁ、着けると指輪から自由に魔糸が出せるようになる」

「………… アリガト…… 大事にする……///」


 白が薄っすら頬を染めている、実に可愛い……

 あ……あれ? 何か前にもこんな様なことがあった気がする。

 あれはそう、砂漠での出来事だった…… 俺に初めて婚約者が出来た事件だ……


「……ロリコン」

「ちがっ…!!」


 先輩の容赦ない言葉の刃が突き刺さる、しかしもはや否定できない。

 俺が指輪を贈った女の子はウィンリーに続き二人目だ、そして二人とも幼女…… いや! 白は小さいけど実年齢的には少女で通用するハズだ!

 そうだよ、ウィンリーだって見た目は幼女だけど実際はロリBBAだ! 超年上だ! 誰憚ることも負い目を感じることもない!

 俺は禁域王らしく堂々と嫁宣言すればいいんだ!


 問題は実年齢より二人の見た目がロリっ娘って所なんだよな……


 はぁ…… 俺も勇者のことを言えないな…… まったく成長していない、気を付けていたつもりだったんだが油断した。


 まぁいいさ、何とでも思うがいい、白の為なら俺はいくらでもロリコンになろう!

 完全なる風評被害だが。


 さて……

 先輩と妹に変態を見る目をされたが、気を取り直していこう。



 次は俺のメイド・ミカヅキさん。

 彼女はギフトと緋色眼(ヴァーミリオン)制御が忙しく、未だに魔術未収得だ。

 それでも鬼族(オーガ)特有の“気”を用いた戦い方があるから戦闘力は十分ある。

 そんな彼女には何と二つの神器を用意した!


 一つは『偽ガルドラボーク』…… 魔導書の一種で偽物だけど神器だ。

 神代偽典と比べるとだいぶ劣るが特定魔術を行使できる、身体強化系と付与系魔術だ。コレを持たせることによりミカヅキの戦闘力を一気に底上げできる。


 ただしコレはミカヅキが魔術を習得するまでの繋ぎだ。魔術を覚えてしまえば何の価値も無くなる。

 まぁそれはだいぶ先の話だ、それまではこの神器で代用してもらう。


 コレは予想だが、魔力による身体強化と、気による身体強化を併用すれば師匠の『超人降臨(ブーステッド)』にだって勝てるんじゃないだろうか?

 いつの日か俺達の正体が師匠にばれた時、ミカヅキに師匠を暗殺してもらおう。そんな未来が来ない事を願っているが……


 そしてもう一つがコレ!


「………… またホウキですか?」


 俺が取り出したホウキを見て若干渋い顔をしている、以前ホウキをプレゼントした時も微妙な顔してたっけ……

 確かにホウキは武器じゃないからな、気持ちは分かるがガッカリするのはまだ早い。


「ただのホウキじゃ無い、コレは神器『魔女のホウキ(ウィッチブルーム)』だ」

「神器? コレが?」

「非常に多機能で空を飛ぶことにも使えるし、槍としても使える、魔術増幅の杖の代わりにもなるし、当然ホウキとしても使える一品だ」

「ホウキをホウキとして使うのはともかく…… 空を飛ぶ?」

魔女のホウキ(ウィッチブルーム)には反重力制御能力と空圧制御能力があって、それらを駆使する事により空を自在に飛ぶことができるんだ」


 とは言え、モノを軽くすることはできるが、その反対は出来ない。

 星の御力(アステル)の下位互換能力だ。


「反重力制御に空圧制御…… 色々なお掃除に役立ちそうですね」


 う~ん、喜んでくれたのかどうか解り難い…… ただ前回のタングステンコーティングのホウキよりはマシっぽいな。


 こんなトコロか……

 残りの三人、伊吹と先輩とジークには適当に低用量魔神器でも渡しておけば十分だろう。

 あ、伊吹には魔力微細制御棒(アマデウス)も用意しよう、コレを使えば第3階位級の合成魔術も使えるかも知れないからな。



---


--


-



 結局全員分の調整を行っていたら時間を喰ってしまった。

 もう夕方だ、昼飯も食べずにずっと作業してたからなぁ…… 腹減った。


「お疲れ様、帰りにどこかで何か食べていこうか?」

「それは神那クンの奢り?」

「先輩…… 金持ちですよね? まぁ、奢れって言うなら幾らでも奢りますけど……」

「神那クン、まだまだ若いね、例え幾らお金を持ってても、奢ってもらえるってのは嬉しいものなんだよ」

「はぁ…… そんなモノですかね?」


 まぁ判らなくもないか、可愛い嫁は何人いても嬉しいものだ……

 ちょっと不適切な例えだったな。


「それじゃ折角だから高級店で豪遊しますか」

「おぉう! 良いね良いね♪」

「では……」


「ちょっと待てぇーーーッ!!!!」


 ん?


「俺の装備はどうなった!!」


 あ、勇者…… 結構本気で忘れてた。


 …………


 なんかメンドクサクなってきたな……

 ようやく終わったと思ったところに延長戦が来たらモチベーションを維持するのも難しい。


 そもそもなんで魔王が勇者の装備を整えて上げなきゃいけないんだ?

 俺はゲームに出てくる魔王みたいに勇者のフラグ管理なんかしたくないぞ?

 低レベルなくせに魔王に挑んで死のうがどうでもいい。


 ハァ…… 面倒臭いなぁ……

 しかし頼まれた以上、ちゃんと調整してやらなければな……


「では…… まずそのボロっちぃ鎧を脱いでください」

「ぐっ……ボロ……! わかった……」

「あぁ、そのインナーも脱いでください……」

「あぁ」

「パンツは脱ぐな! 言われたことだけしてろ!」

「ちっ! わ……わかったよ!」


 この野郎、年頃の女の子がいっぱい居るこの場所で全裸になろうとしやがった、俺ですらまだその領域に達してないって言うのに…… そんな所だけ勇者だな。


 俺もいつかは女の子たちとジャグジーに入りながらシャンパンでも飲みたいものだ、チンピラ悪党っぽい感じで。

 その為には裸の付き合いに慣れておく必要があるな、琉架とか確実に気絶するし。

 やはりウィンリーや白のように混浴に抵抗の少ない小さい子から……


 …………


 違うよ!! ぼく悪いロリコンじゃないよ!!


「へっくしょーーぃい!!!!

 おい! 脱いだらどうするんだ!!」


 お、また勇者のこと忘れてた。


「では逆立ちをして部屋の前の廊下を10往復してきてください」

「よし! 分かった!」


 勇者は元気よく飛び出していった…… 逆立ちのまま。

 信じちゃったよ…… 恐るべし勇者……


「霧島クン…… あまり勇者様をからかわないで下さい、後で絡まれて大変な目に遭うのは自分なんですよ?

 そしてそれを押さえる役目はコッチに回ってくるんですから……」

「あ~~~ うん、ちょっとだけ控えめにしておくよ」


 大丈夫だと思うけどな…… デクス世界初心者のアイツには俺の言う事のおかしさなど解りっこない。

 うるさい奴が居ない間に準備しておこう。




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