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レヴオル・シオン  作者: 群青
第五部 「現世界の章」
248/375

第242話 能力値


 我ら魔王同盟+αが向かったオリジン機関 大和支部で待っていた者は……


「きっ…貴様はキリシマ・カミナ!

 何故ここにいる!?」


 勇者だった……

 何故ここにいるはこっちのセリフだ。

 ちなみにいたのは勇者だけではない、その仲間のエルリアや性悪妖精とオッサン炭鉱族(ドワーフ)もいる。


 今日ここはD.E.M. の貸し切りのハズ…… つまりコレは不法侵入ってことか? そうだ、不法侵入だ、国際機関であるオリジン機関支部の施設に不法に入り込むのは重罪だ、国際連合の戦闘員である俺には侵入者をブッ殺捕獲する義務がある。

 よし、取りあえず見せしめとして赤髪青鎧のバカをフルボッコにして他の奴らの戦意を削ぐことにするか。

 大丈夫、相手が犯罪者なら死なない範囲で痛めつけてもイイって法律をどっかで聞いた気がする。(※そんな法律はない)


「ハッ!! ル…ルカさん!!」


 一方勇者は禁域王・霧島神那から目を離すと女神・有栖川琉架に向かって突進を初めた。

 魔王にも格ってものがある、より上位の魔王に惹かれるのも勇者の宿命か、だったら第3魔王の方に突っ込んでけよ、真っ直ぐ南に向かって泳いで行けばいつかは辿り着ける。


「ヒィッ!?」


 そんな琉架はミカヅキの後ろに隠れる。



「…………」

「!!」


 琉架を庇うように立ちはだかるミカヅキを見た勇者は身体をビクッと震わせ硬直する。

 それにより突進に急ブレーキが掛かる。


 ギギギ……ッ


「とっとっとっ……!」


 勇者はミカヅキの間合いの一歩手前で何とか踏み留まった。


「……ちっ、あと一歩踏み込んでいれば首から上を蹴り飛ばして差し上げたものを」

「……ッ!!?」ゾク


 惜しい……

 あと少しでバカ勇者を始末できたのに……

 この世界には女の子を怯えさせた変態は殺しても罪に問われないという法律をどっかで聞いた気がする。(※そんな法律はない)


 ミカヅキは以前、ハイキックで琉架に襲いかかった変態勇者をふっ飛ばしたそうだ。

 魔王となった今なら確かに首を刈れそうだ、あぁ~、実験したかったなぁ~。


「き……霧島クン、あなた達はどうしてココに?」


 エルリアが勇者の代わりに質問してきた。

 勇者にはこの状況を疑問に思う知能がない、「何故ここに!?」とは聞かれたけど、どんな答えをしても怒り出すに決まってる。


「俺達は仕事の報酬で今日一日この施設を使える許可を貰ったんだよ、むしろ何でお前らがココにいるんだよ?」

「え……いえ、私達もココで待て……とだけ言われたもので……」


 ダブルブッキング?

 い~や、そんな筈はない、これはあの暗躍好きの魔王の仕込みだ。

 一体何が目的だ? 魔王にとっての邪魔者である勇者を俺に始末させるつもりか?

 罪に問われないなら殺ってもいいけど……



 プルルルル― プルルルル―



 随分いいタイミングで壁に掛かっている電話が鳴った……

 十中八九、事件の真犯人からだ。


 ガチャ


「もしもし……」

『もしも~し、カミナ?』

「おい、お前一体どういうつもりだ? 俺に何か怨みでもあるのか? お前俺の敵なのか?」

『怨みがないって言ったら嘘になるかな? 思いっ切り乙女の胸を揉まれたし……』

「どうもスミマセンでした」


 このネタいつまで言われるんだろう?

 まだ対価を払ってないからなぁ、払い終わるまで言われそうだ。


「で? なんでコイツ等がここにいる? お前だって知ってるだろ? この役立たずは俺のことを敵視してるからめんどくせーんだ」


「だっ… 誰が役立たずだぁー!!」


 外野がウルサイ…… 電話中は静かにしろ、シニス世界にも電話的システムはあったのに、そんな常識すら知らないとは…… コレだからカボチャ村出身の田舎者は……

 だいたい誰とは限定してないのに反応する所を見ると、役立たずって事に少なからず自覚があるのか……

 全く自覚してないと思ってた、で無ければあの空気の読めなさは異常だ。


『ちょっとカミナにお願いがあるんだ』

「はあ?」

『勇者クンは今のままじゃ役立たずみたいだから、装備を整えてあげたいのよ。

 ブルーロザリオはボロボロ、ブレイブ・ブレイドも失われてるみたいだし、このままじゃ囮にもならない、きっと瞬殺される』


 だろうな…… 俺もそう思う。


『だから装備の調整をカミナにやって欲しいの、他の娘達のもするんでしょ? そのついでに……』

「何で俺が…… お前が直にやればいいだろ」

『そのつもりだったんだけど、ちょっと緊急事態で……』

「緊急事態?」


 そう言えば昨日もそんなこと言ってたな?


『うん、第3魔王の…… と、言うよりアリアの情報が入りそうなの』

「なんだと? どういう事だ?」

『悪いけどまだ話せない、って言うよりコレから情報を聞き出すからまだ何も分からないの』


 情報を聞き出す? 情報提供者でも現れたのか?

 にわかには信じがたいが確かに緊急事態だ。

 だからと言って勇者の世話をこっちに丸投げされて、ハイ分かりましたと納得できるモノじゃ無い。


「なんか図々しくなってきたぞ? 何で俺がそんな事を聞かなけりゃならない?」

『お願いよ~、聞いてくれたら大金庫から持ち出したアーティファクトについては見逃すから』


 今度は脅迫か…… チッ、こんな事なら地下都市をぶっ壊して証拠隠滅しておくんだった。


「ハァ…… 分かったよ、今回だけだからな?」

『ウンウン♪ ニンゲン素直が一番、アリガトね♪』


 心底面倒臭い面持ちで勇者を眺める…… アイツが俺からの施しを受けるだろうか? 無駄に高いプライドが邪魔しそうだが……

 そう言えば愚か成り勇者よ(フーリッシュ・ブレイブ)を欲しがってたな…… あのボロボロ装備じゃまともに戦えない事くらい本人も分かっている……か。


『勇者クンの装備はもう準備してあるからそれを調整してあげてね? 他のはあげちゃダメよ? 折角の仕込が無駄になるから』

「何を仕込んだ?」

『ちょっと特別な魔法陣を刻み込んであるの、マリア=ルージュと戦う時に役に立つ感じの』


 それってアレだろ? 裏技に使う魔力停滞魔法陣、勇者を強制的に召喚できるヤツ……

 やっぱりタダじゃ無いよな、リリスはホントに俺に似てる。


『それじゃヨロシクね~♪』プツッ


 面倒事を押し付けて、リリスはさっさと電話を切った。

 ハァ~…… 本当に面倒だ。


 さて……


「勇者様に朗報です、とある富豪が貴方に支援したいと申し出ました」

「なに? 支援? お…俺にか!?」


 あ~、取り乱してる、そうだろうそうだろう、勇者に支援したいなんて酔狂な奴、どっちの世界にも存在しえないんだから。


「ほ……本当に……? 富豪?」

「えぇ、富豪も富豪、デクス世界一の大富豪、レイフォード財団の現会長です」

「レ…レイフォード財団!?」

「エ……エル、知ってるのか?」

「知ってるも何も…… 彼の言った通りレイフォード財団はこの世界で最も規模の大きな財団で、その会長はデクス世界で一番の権力者です」


 あ、口角が上がってる、ニヤニヤしたいのを我慢してる感じだ、我慢なんてしなくていいのに、お前は利用されてるだけなんだから……


「そ……そんな人物が俺に……!」


 嬉しそうだなぁ…… 今まで他人に期待された事すら殆んど無かった男だからなぁ……

 そんな初めて期待してくれる相手が、勇者の不倶戴天の敵である魔王だと知ったらどう思うだろう?

 なんか可哀相になってきた、あまりにも憐れで……


「なんと既に勇者様の専用装備も用意してるそうです、俺はその調整を頼まれたんですが…… どうします?」

「お……俺専用の装備!? ……ッ」


 なんか勇者がプルプル震えてるぞ…… あれは歓喜の震えか、今にも泣きだしそうだ。


「分か……った、世話に……なろう……っう!」


 勇者はとうとう声を殺して泣き出した、憐れだ……



---



 装備調整を行う前に全員の検査を行う。

 別にスリーサイズを測る訳では無い、計測するのは能力値だ。

 魔導器はこの能力値に応じて出力を調整する必要がある、ベストな調整を行えば威力向上や省エネ効果も見込め、結果的に継戦能力にも影響する。


 ちなみに俺の現在の能力値は112000…… いつの間にか少し増えてた。


 ココで我がギルドD.E.M. の能力値ランキングを発表する。


 1位はもちろん有栖川琉架、能力値は280000…… この数値には一瞬目を疑った、物凄く増えてる! 10万を超える能力値を世界級と呼ぶのだが、20万台とか…… もはや神の領域、神格級と呼称しよう。

 しかし解せない、ここ半年ほど俺と琉架は『両用時流(リバーシブル)』を使っていない、つまり肉体的には成長して無いんだ、にも拘らず能力値が増える…… 謎だ。


 などと思っていたら、もう一人神格級が居た……

 2位のミラ・オリヴィエだ、能力値は220000…… 俺の倍近い、琉架には及ばないがそれでも桁違いだ。


 さすがに神格級はここまで、3位は如月白で能力値195000。

 やはり新世代魔王は能力値が高くなる傾向にあるようだ、元々本人が持っていた魔力に魔王の魔力がプラスされた結果か……

 単純な足し算では無い様だが……


 ちなみに112000の俺が4位で、5位が108000のミカヅキだ。

 3位と4位の間には超えられない壁があるな……


 俺の能力値が低いのは、元々保有していた魔力が一般に比べて低かったことと、元来能力値が低い傾向にある男だからかもしれない。

 ミカヅキが他の子たちより能力値が低いのは元々魔力を持っていなかった鬼族(オーガ)出身だからだろう。

 それでもしっかり世界級だけど。


 ここから下位は割とどうでもイイんだけど、伊吹が77000で6位。

 ジークが予想外に高く69000の7位…… 無駄能力値…… いや、腐っても賢王、それくらい無ければ称号詐称だ。

 そして最後は先輩の68000…… 惜しくも筋肉に届かずOPグランプリに引き続き二つ目の最下位だった。

 まぁ先輩はあくまで一般人、魔王やギフトユーザーや呪われし筋肉と比べる方が可哀相というモノだ。


 俺達が倒した旧世代魔王がどれ程の能力値だったか分からないが、やはり魔王は代替わりすると能力値が跳ね上がる気がする。

 白の能力値が想像以上に高かったのも、白が全12魔王の中で唯一の三代目魔王だからかもしれない。


 俺と琉架だけに限らず全員能力値が上がっている…… 当然、魔王全員 身体的成長はしていない。

 コレは予想だが魔王の力が安定化すると能力値が増えるのではないだろうか? コレなら新世代魔王が軒並み能力値上昇している説明が付く。


 あぁそうそう、忘れる所だった、第12魔王から期待を寄せられている勇者だが、その能力値は71500…… 何と言うか可もなく不可も無くって感じだ。

 同年代の男性平均に比べればかなり高い方だけど、勇者の肩書の割には大したこと無かった。

 むしろ勇者に負ける賢王の方が問題だ、もう転職させよっかな? ボディービルダーとかに……




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