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レヴオル・シオン  作者: 群青
第五部 「現世界の章」
243/375

第237話 有栖川家の姉妹3 ~ニヤケ編~


---有栖川静香 視点---


 最近ウチの末っ子の様子がおかしい……

 ミカ姉が過剰なまでに心配してたが、アレは心配し過ぎ。

 様子がおかしいと言っても、別に体調不良とかそういう訳では無い。むしろ私の目には逆に見える……


 琉架の様子に異変が生じたのは、先日の2泊3日で出かけた任務後からだ。

 現在、国際連合は機能しておらず、各国が自前の戦力で防衛に当たっている。


 ウチの妹はああ見えても世界最強クラスの魔術師、世界に9人しかいないS級魔術師の一人だ。

 まだ学生だけど、大和最強の戦力だ…… いや、序列は彼氏クンの方が上だったかな? 確か神那クンと言ったか?

 ……琉架の上に立つとはいい度胸だ、何か不祥事でもでっち上げて引き摺り下ろそうか?

 いや…… 琉架より強いのなら琉架より危険な仕事を任されるハズ、神那クンが琉架の代わりに危険な事をしてくれるなら悪いコトじゃ無い。

 見た目もやしっ子なのに強いんだよね、彼って……


 話が逸れたわね。

 とにかく現在の大和で最も役に立つ人材の琉架に、仕事の依頼が来るのも当然だろう。

 平時なら断る所だが、今はそんな事を言っていられる状況じゃ無い。


 先日も重要な仕事があるという事で出かけて行った…… 残念ながら私たちはその仕事の内容を知らない。

 機能して無いとはいえ、琉架は国際連合直属テリブル対策武装集団・ガーディアン『ダインスレイヴ』に所属している。

 もうテリブルなんか出てこないけど、一応国際連合に所属している。

 その任務にも守秘義務が発生して誰にも話せないのだ。


 家族にも話せない任務…… でも分かる事もある。


 今回の任務は神那クンと一緒だった、見れば分かる。

 不安そうにしてたけど、ちょっと嬉しそうだった。間違い無い!


 そしてその任務の後、琉架の様子がおかしくなった…… これだけ条件が揃っていればすぐに分かる。

 旅先で何かあったんだ……と。

 相思相愛の若い二人が一緒に旅行…… ナニも起こらない筈が無い。

 任務である以上、二人っきりだったとは思えないけど確実に何かがあった。


 琉架の顔を見れば分かる!

 だって暇さえあればニマニマしてるんだもん!


 やはり止められなかった…… 恋する若い娘を遠くから止めるなんて どだい無理な話なんだ。


 大体あの二人は運命の赤い糸で結ばれてる、間違いなく。

 4回も一緒に神隠しに遭うなんて、運命の糸どころか物理的に繋がって無きゃ不可能だろ?


 ………… ハァァァ~~~

 やっちゃったかな? さすがにそれは無いと思うけど…… ハァァァ~~~。






---有栖川琉架 視点---


「はふぅ……」


 お風呂に入りながら一息つく……


 任務が終わり家に戻ってきた。

 気掛かりだったシルヴィア先生も無事だったし、取りあえず一段落ついた。

 でもまだ何も解決して無い、デクス世界の混乱は第3魔王マリア=ルージュをどうにかしなきゃ収まらない。

 オリジン機関の襲撃だってそうだ、先生こそ無事だったが何千人もの犠牲者が出ている。


 マリア=ルージュとはリリスさんが戦うと言っていた…… そもそもまともに戦えるのが世界中で神那とリリスさんの二人しかいないらしい。

 何となくだけど、神那がその戦いに巻き込まれそうな気がする……

 もし神那が戦うなら私も彼の助けになりたいと思うのだが、今回ばかりは何も出来そうにない。

 マリア=ルージュの視界に入った生物はその時点で生殺与奪権を握られるようなモノ…… 何も出来ない、最悪人質にされてしまう。


 いや…… 『時由時在(フリーダイム)』の未来予知があれば攻撃を察知することも出来る。

 時間停止を使えば攻撃を避ける事だってできる。


 でも、死角が無い相手では攻撃手段が無いのも事実…… 神那に相談すれば何かいいアイディアを出してくれるかな?

 神那は私以上に私の力の使い方を知ってるから、うん、神那は私のコト何でも知ってる!


「…………神那」


 ニヘ~


「お嬢様、顔に出てますよ?」

「ハッ!?」


 一緒にお風呂に入ってたミカヅキさんに指摘された、そうだった…… 一人じゃなかったんだった。

 また顔に出てた、こんなだらしないニヤケ顔を他人に見せる訳にはいかない!

 (※とっくに家中の者に目撃されてる。)


「どうやら余程イイことがあったようですね?」

「うぅ…… えっと、それは……///」

「確かマスターとお嬢様の師匠……でしたか? 無事が確認できた方は」

「そ、そうです、師匠が無事だったんです。

 シルヴィア先生には色んな意味で感謝です」

「感謝? お嬢様が感謝する立場なんですか?」


 そう、先生の何気ない一言のおかげとも言える……

 ……フヘヘ……♪


「お嬢様…… また顔に出てますよ?」

「ハッ!?///」


 私は何でこんなに顔に出やすいんだろう?

 恥ずかしいな……


 ペチペチ


 ほっぺたを叩いてニヤケ顔をリセットする。

 よし! ニヤニヤするのはお布団の中だけ!


「お嬢様、もしかしてマスターと何かイイコトありましたか?」

「!!?///」ビクッ


 バ……バレてる?


「な… なっ…… なんでそう思うんでしゅか??///」

「お嬢様がそんな感じの時は、大体マスター絡みですからね」


 私ってそんなに分かりやすいのかな?

 そう言えば昔からお姉様たちには考えてることをよく見透かされてたな……


 ………… どうしよう、物凄く話したい、物凄く自慢したい。

 でもそれは出来ない、私を思い留まらせるものは一つ……


 『は~れむ協定』の存在だ!


 私の行いは『は~れむ協定』の禁止事項に抵触するのではないだろうか?

 裏切り者には死を…… そんな鉄の掟を私は破ってしまったのでは無いだろうか?


 言い訳をさせてもらえば、私は協定の内容を知らない、どういった行いが禁止事項に当たるのかも分からない。

 さらに言えば血判状に署名・捺印もしてない。

 いや、言ってくれれば幾らでもするんだけどね?

 何故か私は無視されてる…… 何でだろ?


 そもそも自慢なんて出来ない、恥ずかしいのもあるけど、みんなにそれを聞かせるのって残酷……だよね?

 みんな神那のコト好きって言ってたし、もし私が逆の立場だったらそんな話を聞かされても切なくなるだけだ。


 やはりこのコトは心の内に留めておこう、それが最善だよね?

 夜な夜な思い出してお布団の中でニヤニヤすればいい。

 うん、思い出すとどうしても顔に出ちゃうみたいだし……


 …………ふへ♪


「お嬢様…… 顔、顔」

「はぅっ!!?///」


 一秒前に気をつけようと思ったのにこのザマだ……


「ゴメンナサイ」

「いえ、お嬢様が幸せそうで何よりです」


 ハァ…… 私ってホントにバカだなぁ……



---


--


-



 お風呂から上がりミカヅキさんにお休みなさいして別れる。


 その直後、拉致された……


 え? え? え?


「あの……」

「しっ! 黙ってついてくるのよ!」


 ついてくと言うより、引きずられてる……

 私を拉致したのは小姉様だ。

 普通に呼ばれればついて行くのに、なんで引きずられてるんだろう?


 そのまま連れてかれたのはお姉様の部屋だった。

 ? なんでお姉様の部屋? 小姉様の部屋じゃなくって?


「入って!」

「はぁ…… はい」


 そのまま部屋の中に放り込まれる。

 中は電気がついておらず真っ暗だ、でもお姉様のオーラが見える。

 なんだろう? そろそろ寒くなってきたから、いつもみたいに抱きマクラにされるのかな?

 出来れば一人ずつのほうが助かるんですけど、二人同時に抱きしめられるとちょっと苦しいし、少し暑いから……


「こんばんは琉架」

「え? はい、こんばんは」

「まぁとにかく座って?」

「……はい、失礼します」


 何故かベッドに座らされる、お姉様もしかしてお酒飲んでるのかな? いつもと雰囲気が違う……


「さて琉架さん」

「はい?」

「何か私たちに話したい事は無いですか?」

「え? え~と……」


 どうしたんだろう? 何が聞きたいんだろう? う~ん……?


「みか姉…… ちょっと回りくど過ぎるよ」

「だって怖いじゃない! 私の琉架がイケない事してるのかも知れないのよ!?」

「みか姉ちょっと飲み過ぎ、てか心配し過ぎ。ウチの琉架に限ってそんな事あるハズ無いでしょ?」

「そんなの分からないでしょ!? 琉架を手に入れるってコトは世界を手中に収めるのと同義なんだから!

 世界征服を企む悪の組織とかが近づいて来るかも知れない! そんな奴らから私が琉架を守らなきゃ!!」

「あぁ……もう! こんなに酒癖悪かったっけ? 相当悪酔いしてる」


 えぇっと…… 何の話をしてるんだろう? 悪の組織?


「あの…… コレは一体?」

「ゴメンね琉架、みか姉は貴女の事が心配な余り暴走気味なの、ちょっと待ってて」


 そう言うと小姉様がお姉様を介抱している、いつもと立場が逆だ……

 こんなお姉様、初めて見た…… それでも私のコトを心配してくれているのはすごく伝わってきた。



---



「うぅ…… 頭イタイ……」

「大丈夫ですか?」

「えぇ…… ごめんなさい、さっきのことは忘れて」

「はい…… お姉様が忘れろと言うなら……」

「お願い……」


 一体どうしたんだろう? お姉様がこんなに取り乱すなんて…… 何か良くないことでも…… 特に思い当たらないけど。


「さて…… それでは繰り返しになるけど、琉架、何か報告することはないですか?」

「報告? あ、師匠の無事が確認されました!

 半年以上も魔族に囲まれてたのに生き延びていたんです! スゴイです!」

「そう、それは良かったわね?

 でもそういう報告ではなくって……」

「??」


「みか姉…… だから回りくどいって、琉架は素直だから言葉の別の意味とか通じないよ」

「あぁ…… そうだったわね」


 ? あれ? もしかして今バカにされなかった?

 それとも褒められたのかな?

 私バカだから前者かな?


「それでは単刀直入に聞きます」

「はい、どうぞ」

「コホン…… 琉架…… あなたは神那クンとの仲が進展しましたね?」

「ッ!!!??///」ビクッ


 バ……バレてる!? きっと私のニヤケ顔をどこかで見られたんだ、うぅ、気を付けてたつもりだったのに3日も持たなかったなぁ……

 (※帰宅当日に目撃されていた)


 頬が熱い…… きっと真っ赤になってる、それだけでYESとと答えたようなモノだよね……

 あれ? 別にいいのか?

 お姉様たちになら話しても問題無い? ………… うん、問題無い。






---有栖川美影 視点---


 琉架の顔が一瞬で赤くなった、本当に顔に出やすい子…… そんな所も可愛い。

 あぁ…… でもそんな可愛い琉架が大人の階段を上ってしまった! まだ15歳! 幾らなんでも早すぎる!


「こ……この間の仕事の時に……っ、か……神那に……///」


 こんな幸せそうな顔をされたら神那クンを暗殺するワケにもいかない…… 琉架が不幸になる様なことは出来ない。

 やはりお爺様の考えが正しかったのかしら? 琉架に群がる虫は近付いた段階で殺処分する方針……

 神那クンも鈍そうだったから大丈夫だと思ったけど、こんな事なら去年の夏に処分しておけば良かったかな?


 今更悔やんでも後の祭り……か。


「神那にっ! す…好きって言われちゃいました!///」キャー


「……………………

 ……………………

 ……………………

 ……………………は?」


「そ…それにそれに! 私も大好きですって言っちゃいました!///」キャー


 ………………遅ッ!?

 今頃その段階なの!? 私の想像をマントルまでメリ込む勢いで下回った!


 コレは琉架だけの問題じゃ無い、神那クン…… あの子も琉架に負けず劣らず浮世離れしてるわ。

 このまま彼に任せていたら、琉架…… 一生お嫁に行けないんじゃないかな?


 取りあえず琉架が不良になって無くて安心した、何と言うか…… すごく微笑ましい。

 でも別の問題が浮上してきた…… もしかして…… もっとガンガン行かせた方が良いのかな?


「そんな事だろうと思った」ボソ


 幸せそうにその時の事を話している琉架を見ながら、静香がそんな事を呟いた……

 私どれだけ取り乱してたんだろう? 姉として恥ずかしい…… そうよね? だって琉架だもんね?


 琉架にもう少しイロイロ教えるべきね……

 二人はあまりにもお子様過ぎた。




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