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レヴオル・シオン  作者: 群青
第五部 「現世界の章」
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第236話 最高のお土産


「ほぅ? 自ら首を差し出すとは見上げた心意気です。

 その心意気に免じて鞭打ちは1000回にまけてあげます」

「え!? あの…ちょっと……!?」


 まけて1000回って元は何回打つつもりだったんだ? 鞭打ちって結構ヤバイんだぞ? 魔王の力で1000回も打ったら背中の肉が全部無くなりそうだ。

 いや、それ以前に土下座の意味が通じてない?

 シニス世界に土下座文化って無かったっけ? 勇者が土下座してたの見た事があるんだが…… あれは別に土下座してた訳じゃ無いのか……

 だとしたら…… ごめんリリス、お前にさせた土下座 無駄だったわ。


 どちらにしても止めないとホントにやりかねない。


「ちょっと待て、落ち着けアーリィ=フォレスト」

「カミナ君どいて! そいつ殺せない!」


 伝説に残る迷言やめろ! 魔女のラリアートで返り討ちに遭うぞ?


「リリスも反省してるからこそ自分の手で返却に来たんだ」


 実際はかなり強引に連れてきたんだが……


「それにお詫びの品も用意している、それを見ずに殺して良いのか?

 当然、デクス世界由来の品だぞ?」

「お詫びの品? デクス世界由来?」ピク


 喰い付いた! もう大丈夫だな。

 よっぽどクソみたいな物を差し出さない限り。


「1200年の損失に釣り合うかどうか分かりませんが、代償としてこちらを用意しました!」


 そう言ってリリスが差し出したモノは一枚のカードだった。

 ? ナニソレ? 魔神器じゃ無いよな?


「………… それは?」

「はい、デクス世界2000年の歴史全てを納めたO.A.O.図書館のマスターキーです」

「デクス世界2000年の歴史全て!?」


 アーリィ=フォレストが2度目の喰い付き、もう逃げられないな、完全にフィッシュオン!だ。

 それにしてもO.A.O.図書館なんて聞いた事が…… ん? O.A.O.図書館?


「お…おい、リリス! それってまさか“全知全能図書館”の事か?」

「さすがカミナ、O.A.O.図書館の存在を知ってたんだ?」

「知ってたっていうか…… 実在するのか? 都市伝説だと思ってた……」


「カミナ君も知ってるんですか?」

「あぁ…… 噂だけは聞いた事がある、全知全能図書館…… 確かオムニッセント アンド オムニポテント図書館だったか? 略して“O.A.O.図書館”。

 約2400年前から世界中のあらゆる記録を収集している伝説の図書館だ。

 デクス世界版・神代書回廊(エネ・ライブラリー)みたいなモノだな、もっとも全部手作業による収集だから意味はだいぶ違うが」

「おおぉぉぉ! そ…それは!!」


「実際には、2000年より前の記録は少ないんだけどね」


 それでも、リリスがデクス世界に来る以前の歴史が収められている。

 誰かさんが滅ぼしてしまった旧魔法文化、旧世界の情報だ。


 ヤバイ…… 俺も超見たい……

 そんなのあるなら教えろよ、俺が質問しなかったからいけないのか?

 融通の利かない…… まぁいい、アーリィ=フォレストの付き添いで俺も一緒にお邪魔しよう。


「おおおおおぉぉぉ♪」パシッ


 アーリィ=フォレストがリリスの手からカードを奪い去ると、それを天高く掲げた。


 《O.A.O.図書館のマスターキーを手に入れた》


 なんかファンファーレみたいな音が聞こえた気がした…… チャララチャチャチャ~ン♪


「コホン、リリス・リスティス…… あなたの犯した大罪は本来“死”に値するモノでしたが、今回だけは特別に許してあげます。

 ただし! 二度目は無いからね?」

「ははぁ~、ご厚情頂きありがとうございました」


 ふぅ…… 何とか丸く収まったか……

 まったく、世話の焼ける……


「それはそうとリリスは何でO.A.O.図書館のマスターキーなんて持ってるんだ?

 それって噂ではどっかの秘密結社が管理してるって話だったが?」

「それは私がその秘密結社トリニティの初代総帥だからよ」


 またか…… またお前の暗躍趣味の産物なのか?


「それだと計算が合わないぞ? リリスがデクス世界に来たのは1200年前だろ? O.A.O.図書館は2400年の歴史があるハズだ」

「もともとは旧世界の魔法ギルドのギルマスと、某宗教の教主と、一人の天使が管理してたのよ。

 それを1200年前に私が一つの組織に統一したの、だからトリニティって名付けたのよ」

「なに?」


 今、結構衝撃的な事をサラッと言ったぞ?


「天使って…… 有翼族(ウィンディア)か?」

「えぇそうよ」


 こいつ、歴史的新事実をどれだけ内包してるんだ?

 今度、布団叩きでホコリを全部叩き出してみるかな? もしかしたら世界七不思議とか、大統領暗殺事件の真相とか、3億EN事件の犯人とか、全部解決できるんじゃねーか?


「ちなみに場所は?」

「………… 言っちゃいけない決まりなんだけど…… 長靴の中とだけ言っておくわ」


 なるほど、某宗教とやらの総本山にあるのか。


「一回は私のゲートで連れて行く、そこでマーキングすればあとは自由に出入りできるでしょ?

 そのマスターキーがあれば全ての情報にアクセスできるわ」


 正確な場所が分からなくても、マーキングさえしてあればゲートで跳べるのか……


「デクス世界の図書館…… 今すぐにでも完全版・門を開きし者(ゲートキーパー)を習得しなければ!!

 カ……カミナ君も勉強していきますか?」

「もちろん」


 当然そのつもりだ、今日はその為にここまでやって来たと言っても良いくらいだ。

 リリスの連行こそついでだ。



---



 キング・クリムゾン 応接室


 完全版・門を開きし者(ゲートキーパー)を記憶書から読み出し、統一言語に翻訳し教科書を作る。

 これらの作業は神代書回廊(エネ・ライブラリー)に付けられた出力用端末が自動でやってくれる、その魔道具もアーリィ=フォレストが昔創ったモノらしい。

 さすがは『魔道具創造(クラフトクリエイター)』の能力者だ。


 教科書が出来るまでの時間を利用して、リリスに門を開きし者(ゲートキーパー)のコトを質問してみる。

 今回は講師もいるから習得もスムーズに行くだろう。


「リリスに質問なんだが」

「ん?」

門を開きし者(ゲートキーパー)のマーキングってのは、どこにでも設置できるモノなのか?

 例えば人に設置できたりするのか?」

「人……と言うより、生物にマーキングを施すことは出来ないわ。

 マーキングとはその名の通り印を付けること、動物がオシッコかけたり自分の匂いを付けることを、自分の魔力で行なうの。

 対象が生物の場合、その生物が持つ魔力と干渉してすぐにマーキングが消えてしまう、例外もあるけど基本的には無理と思っていい」


 そうか…… 人間にマーキングを施すことは出来ないのか……

 つまり勇者の頭に金ダライを落としたり、ヒマ潰しに氷水を掛けたり、オナラを送り届けることは出来ないのか…… 残念だ。


「マーキングは基本的に『物』に施すものね、何もない空中に設置することも出来るけど、すぐに拡散して消えてしまうからオススメしない」

「ふむ…… 物なら動いててもいいのか? 船や飛行機や或いは…… スカイキングダムとか?」

「スカイキングダムは…… ちょっと分からないわね、あそこって全体が異次元空間内にあるから、私も試したこと無いし。

 船や飛行機も問題ないけど、相手があまりにも速く動いていた場合…… つまり相対速度が違いすぎるとワープアウト時の座標がズレることがある、その場合はキャンセルされるかもしれない」

「それじゃ浮遊大陸は? 結構な速度で動いているアリアや、結界でスッポリ覆われてるラグナロクは?」

「ん~~~…… アリアのあれくらいの速度なら問題ないと思う、浮遊大陸には空圧領域があるから強風で吹き飛ばされることもないし、ラグナロクも問題ないわ、昔ゲートで行ったことがあるから」


 結界は素通りできるけど、異次元空間は不明か……

 ただ聞いた話ではティマイオスへ直接飛ぶことは出来そうだ、これは有難い。

 俺もよく利用しそうな場所にいくつかマーキングを設置しておこう。


「一つ注意点なんだけど……」

「ん?」

「さっきも言った通りマーキングは他の人の魔力に干渉され易いの、だからヒトが多い場所…… 要するに街に設置する時は気をつけてね?

 時間が立てば立つほどマーキングは消えやすくなるから」


 まぁそれも当然か、ミャー子も定期的に俺の部屋にマーキングしてくからな…… それで何度 猫リセット喰らった事か…… レアアイテムがドロップした時に限ってやって来るんだアイツ……


「それじゃ今日リリスが開いたゲートはどこにマーキングしてたんだ? ガイアに繋がってたアレは?」

「アレはさっき話した唯一の例外、使途に施したマーキングを使ったのよ」


 そう言えばギルドセンターに使途が一人いるんだっけ。ゲートを制御できる使途だけは例外って事か。

 それはつまり勇者の頭に鉄アレイを落としたり、暇潰しに熱湯を飛ばしたり、シュールストレミングを送り届けることも可能なのか…… でもアイツが俺の使途になる可能性はゼロだからやっぱり不可能か。


「ただし裏技を使えば、一時的に人にマーキングを施すことも出来るわ」

「裏技とは?」

「マーキング専用の魔法陣を使うのよ、魔力停滞魔法陣、コレを使う事により1ヵ月くらいならマーキングを維持できる」


 魔力停滞魔法陣…… クレムリンの転移の間にあったヤツだな。


「もっとも使える相手にも限界があるわ、たぶんカミナでギリギリね」

「? どういう事だ?」

「さっきも言ったけどマーキングの魔力は拡散しやすいのよ、対象が世界級の能力値を誇っていると身体から漏れ出す魔力と混ざって感知できないの」

「なるほど、能力値10万程度が限界って事か……」

「そう言うコト、上手く感知できたとしてもカミナをゲートで召喚できる確率は30%ってトコロかな」


 確率自体も低いのか、つまり俺の嫁達を好きな時に召喚して愛でる事は出来ないワケだ、琉架、ミラ、白に限らず、俺と同等の能力値のミカヅキでも難しそうだ。


 まぁ裏技のコトはともかく、ガイアのどっかに部屋でも借りてそこにマーキングしておくか、人が近づかない場所なら直ぐに消えることも無いハズだ。

 それにこのマーキング技術を完全に理解できれば『超躍衣装(ハイ・ジャンパー)』に組み込むことも出来るハズだ、そうすれば門を開きし者(ゲートキーパー)より遥かに低コストな超長距離ジャンプが出来る様になる。

 夢が膨らむ! さすがに異世界間移動は無理だろうが。



 ザザッ――



「ん?」

『カミナ君、準備整いました♪ 地下修練場までお越しください♪』

「おぉ、準備完了か、じゃ、行くか」

「………… ねぇカミナ、私からも一つ質問が……」

「あん?」

「カミナって…… アーリィのご主人様なの?」


 …………


 まぁ、そう見えるだろうなぁ……


「断じて違う! ……が、とある精霊の策略により、アーリィ=フォレストは自分のコトを奴隷だと思い込んでる、彼女はある意味純粋だから一度思い込んだらなかなか修正出来ない」

「つまり実質的にはご主人様ってワケね」


 だから違うって、でも実質的にはそうかもしれない。


「やはりココは勝ち馬に乗っておくべきか……」ポツリ


 リリスが何か小声で溢した。


「なんだって?」

「いえ、なんでも…… 行きましょう」


 馬が何とかって…… またロクでもない事を考えてるのかな?

 何だっていいけど、俺をコマ扱いしないでくれよ?



「あ、そうだ、忘れる所だった」

「? ナニ?」

「リリスの使途がギルドセンターに居るんよな?」

「それがどうかした?」

「第3魔王の情報を伝えといてくれないか? 行方不明になったアイツがデクス世界に現れたって」

「あ~…… そっか」


 今伝えれば、次のゲート開放にギリギリ間に合うと思う、神隠し被害者はそれでも帰って来るかも知れないが、移住者は一気に減るだろう。

 こっちはようやく戦争も終わり平和になったんだ、わざわざ最強最悪最凶のアイツが居る世界に来るものか。

 それでも来るっていうのなら覚悟だけはしておいて貰わないとな。


「分かった、伝えておく」

「あぁ、頼む」






 俺は後にこの指示を後悔する事になる……

 この時はコレが最善だと思っていた…… しかし俺は判断を間違えた、こんな事頼むんじゃ無かった……と。




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