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レヴオル・シオン  作者: 群青
第五部 「現世界の章」
241/375

第235話 DoGeZa


 オリジン機関本部・上層地下15階

 そこまで登った所でようやく救助隊と合流できた。


 リリスから指示を受けた使途リーマンが手配したのだ、ヘリ一台出すのも渋っていた防衛軍にしては非常に迅速な対応だ。

 ま、生き残りが居たと聞けば救助隊を出さない訳にはいかないよな。


 そんな救助隊にはトリスタン先輩が含まれてた。

 防衛の要であるこの人がわざわざ出てくるとは…… 守りは大丈夫なのか?

 救助隊に大人数割けないなら実力者を派遣するのも当然と言えば当然か。


 しかしコレは困った事になった…… 俺と琉架は創世十二使の天才美少年と超絶美少女とは別人という事になってる。

 今後、創世十二使の会合とかあってもバックレる気満々だったから、そういう事にして押し通した。


 しかし生存者が居たためこうして再び会う事になってしまった……

 嘘がバレる…… 確実に!

 どうしようかと思っていたら……


 トリスタン先輩が師匠に怒られてた。


 生存者の確認もせず、救助隊すら出さないとは何事だ! ……とか何とか。

 いや、言いたい事は分かるけど、コレは普通の災害とは違う、安否確認だって簡単に出来る事じゃ無い。

 押し寄せる魔物を食い止めながら、爆心地の生存者捜索なんてできるハズ無い……

 実際師匠だって半年以上、禁層から脱出する事ができなかったんだから。


 そんな理不尽な怒りをぶつけられても反論すら許されない、口答えしようモノなら鉄拳制裁! 何度も言うがシルヴィア・グランデとはそういう女だ。

 どうやらトリスタン先輩も師匠の教え子らしい…… 下手に歯向かえば殴られる事を知ってるようだ。


 師匠の説教は生き残りがリスパに到着するまで続いた……

 おかげでトリスタン先輩と言葉を交わさずに済んだ。


 ヘリが着陸したらさり気なく物陰に隠れ、大和に帰らせてもらった。

 師匠から俺達の正体はバレるだろうが放置する、下手に絡むと俺まで師匠のお説教に巻き込まれるからな。

 出来ればもう二度と会いたくない人達だ。


 こうして俺達は短いけどやたら長く感じる旅を終え、大和へと帰ったのだった……



---


--


-



 翌日――

 再び旅へ出る、謝罪の旅だ。


 もちろん俺の謝罪では無い、リリスの謝罪だ。


「ね、ねぇカミナ…… ホントに行かなきゃダメ?」

「ダメ」

「カミナから返却しといてくれてもイイと思うんだけど?」

「ダメ」

「だって私が行ったら殺されるかも知れないんだよ!?」

「その時は諦めろ」

「諦められるワケ無いでしょ!!」


 リリスはさっきからずっとこの調子だ。

 今回の旅は1200年前にリリスが『神代書回廊(エネ・ライブラリー)』から盗んだ『門を開きし者(ゲートキーパー)』の記憶書を返還する為の旅だ。

 むしろ俺が付き添ってやるだけでも有難いと思え。


 本来ならリリスのゲートで直接キング・クリムゾンに行けるのに、本人がグダグダいうから仕方なくガイアを経由する。

 手土産を買うためだ、だったらデクス世界で用意した方が早いだろ……

 一人で行かせたら絶対逃亡する、だから俺が付き添う事になった。後ついでにアルテナも。

 嫌なことから逃げたがる性分…… こんな所はホントに俺に似てる。


 まぁ、リリスの生け捕りは依頼されてたし、オリジナル門を開きし者(ゲートキーパー)も習得したいからな。


 そんな訳で久し振りのガイアだ。

 とは言えあまり人に見られる訳にもいかない、D.E.M. はデクス世界に渡ったことになっている、特にリルリットさんに見つかるのがマズイ、彼女に見つかったら「ほらやっぱりすぐに戻ってきた」とか言われるに決まってる。

 彼女の予想通りだっただけに少々癪だ。


 サングラスと帽子で変装…… 芸能人気取りとか言うな!


 洋菓子店クラシックスでケーキセットを購入、ここのケーキは第5魔王様にも好評だった。

 ただ1時間も並ばされたが……


「そ……そうだ! お昼食べてから行きましょう!」

「別に構わないがその場合は昼食後にゲートを開いてもらってキング・クリムゾンまで一気に移動してもらうぞ?」

「何か買って食べながら行きましょう……」


 往生際の悪いヤツめ。



 その後、テイクアウトのハンバーガーを食べながら空の旅と洒落込む。

 雲の上のランチとはなかなか乙なものだ、以前はアーリィ=フォレストとホープでカップ麺を啜ったっけ……


 リリスが何かブツブツ言ってるが無視する。


 数時間後……

 目的地のキング・クリムゾンに到着した。


---

--

-


「あぁ…… とうとう着いてしまった…… ねぇカミナ」

「ん?」

「私にもしもの事があった場合は、私の代わりにマリア=ルージュをぶっ殺してね?」


 げ、嫌な遺言とフラグを建てるな!

 絶対イヤだぞ? リリスには是が非でも生きて帰ってもらわないとな、もともと死なす気はないが。


「大丈夫だから、ほら、行くぞ?」

「あ! 私ちょっとトイレ……」

「トイレは塔の中だ、周囲には廃墟の町しか無いんだぞ?

 そこら辺でお花摘みとか勘弁してくれ」


 俺は女の子の風呂を覗く願望はあるが、トイレを覗く趣味はない。


「いい加減、覚悟を決めろ」

「カミナには分かんないんだよ! 私の気持ちは!!」


 分かる訳ねーだろ、これは完全な自業自得、身から出た錆だ。

 1200年前の悪事のツケを払う時が来たんだよ。


『ご無沙汰しております、カミナ様』

「ヒッ!?」


 唐突に声をかけられ、リリスが俺の陰に隠れる。

 なんだかアーリィ=フォレストに似てきたぞ?


「おぉ、ドリュアス、久し振り…… って程でもないか」

『そうかも知れないですね…… それで今日は……』チラ


 ドリュアスの視線がリリスを捉える。


『窃盗犯を連行してきてくれたんですね?』

「うっ!」


 おや? ドリュアス怒ってる? 普段、主以外には丁寧な対応をするドリュアスの言葉に隠しきれない怒りが見える。

 それもそうか、アーリィ=フォレストが引きこもる原因になり、そしてそんな引きこもりを1000年近く世話するハメになったんだ。

 そのすべての元凶が目の前にいると言っても過言じゃない。


 うん、2~3発殴っても良いんじゃないかな? まぁミニサイズの精霊が殴っても頬っぺたツンツン程度だけど…… お茶に雑巾のしぼり汁使うくらいは許容範囲だな。

 間違えて俺に出したりしないでくれよ?


「それでアーリィ=フォレストは?」

『はい、既に準備しています』


 ほう、珍しく迅速な動きだ、いつもなら客を中に通してからやっと準備を始めるのに、その怒り1200年経った今でも衰えずだな。

 てか準備って何のだ? まさか処刑準備じゃないよな?

 中に入ったら断頭台とかファラリスの雄牛とか鉄の処女とかの処刑道具の見本市みたいになって無いだろうな?


 ふとリリスを見てみる、すると顔が真っ青だ。


 さすが俺と近い思考回路を持つだけのことはある、どうやら同じ想像をしたらしい。

 俺は人ごとだから冷静でいられるけど、本人は生きた心地がしないだろう…… 悪いコトってするモンじゃ無いな。

 俺も他人を小馬鹿にして煽るの控えた方がイイかな?


『それでは中へどうぞ……』


 動こうとしないリリスを引きずり塔の中へ入る、さすがにちょっと可哀相になってきた。



---


--


-



「ようこそカミナ君、よくぞお越しくださいました。

 そして……

 ようこそリリス・リスティス…… よくぞ…… お越しくださいました」


 同じ歓迎の言葉なのに随分と温度差を感じる。

 アーリィ=フォレストがちょっと怖い……


 そんな彼女は珍しく正装している、普段はダボT一枚とかのだらしない恰好を好むのに、今日はフル装備だ。

 右手には神器『神杖ケリュケイオン』、そして左手にはかつて俺が投げ捨てたバラ鞭が握られてる…… まさにフル装備だ。

 今からリリスを世界樹の根で縛り上げて鞭打ちしますって装備だ。

 しかし果たしてアーリィ=フォレストにSが出来るのだろうか? あの子ってドMだからなぁ……


 それに、そこまでするならボンテージの衣装も通販で買っといて欲しかった、まぁアーリィ=フォレストは妖艶要素0だから似合わないだろうが……


「まずはこの死刑囚を捕らえてきてくれたカミナ君に最大限の感謝を…… コレからは心の中でご主人様と呼ばせて頂きます」


 コラコラ、いきなり死刑囚にするな、まずは裁判からだろ?

 あとご主人様呼びは…… ま、いいか、口に出さないなら…… アーリィ=フォレストのこの性格はもう矯正できそうに無いな……


「そしてリリス・リスティス……! この日が来るのをどれ程待ち望んでいた事か……! フ…フフッ… フフフフフッ!」


 どれ程って1200年だろ?

 1200年…… 長いなぁ…… 気が遠くなるほどの時間だ…… やっぱりリリスは殺されても文句言えないな。

 でもリリスが殺されると俺が困る。

 後、笑顔が怖い……


「まぁちょっと落ち着け、刑の執行前にするコトがあるだろ?」

「刑!? ちょっ…ちょっとカミナ!?」

「カミナ? へ~…… ほ~…… カミナ君を呼び捨てにしてるんだ……」

「ぅえっ!? そこ!?」


 いや、アーリィ=フォレストも呼び捨てでイイって言ったんだがな…… くん付けは自分で決めたんだろ?


「だから落ち着けって、一番大事なコトを忘れるな」

「ふぅ~~~…… そうですね、怒りに囚われて思わずコイツを殺すトコロでした」


 そうそう、目的を見失ってはイカン、一番大事なコトは……


「リリス・リスティス…… 記憶書返せ! 3秒以内だ!」

「ぅえっ!! ちょ…まっ……!! コ…コチラになります!!」


 差し出された門を開きし者(ゲートキーパー)の記憶書をドリュアスが受け取りアーリィ=フォレストの元へ運ぶ…… あの精霊さん小さいのに力持ちだな……


「あぁ…… 門を開きし者(ゲートキーパー)の記憶書! 1200年の時を経てついに私の元へ帰ってきた!」スリスリ


 記憶書に頬擦りしてる…… うん、まぁ…… 何も言うまい。このまま自慰行為とか初めない限りは……

 しかしコレで俺もようやく完全版・門を開きし者(ゲートキーパー)を習得する事ができるな。


 長かった…… 具体的に言うと物語123話分くらい……

 ホントに長い時間が掛かったな…… それもこれも全部リリスの所為だ。

 ……うん、鞭でしばかれるくらい当然だな。


「ドリュアス、コレを在るべき場所へ……」

『畏まりました』


 アーリィ=フォレストは一頻(ひとしき)りハァハァした後、記憶書をドリュアスに渡した。神代書回廊(エネ・ライブラリー)の在るべき場所へ戻すのだろう。


「さて…… 記憶書が戻った以上、コイツにはもう用はない訳ですが……」

「え!? ちょっと……!!」


 あ、ヤバイ、リリスがマジで殺される5秒前だ。


「ほれリリス、教えてやったアレ(・・)やれ」

「ホ……ホントにやるの?」

「無理強いはしない、お前がホントに悪いコトをしたと思ってるなら誠意を見せるべきだが……」

「うぅ…… 私、第12魔王なのに……」


 リリスはゆっくりとひざまずき、額を低く地面に擦り付ける様に下げた……

 いわゆる土下座だ。

 実に憐れな魔王の姿がそこにはあった……


 多分歴史上初じゃないのか? 魔王の土下座って……

 俺が土下座を披露したのは魔王になる前だからノーカンだ。ただ何故かどっかどっかで土下座してた気がするのは何故だろう?

 DoGeZa Styleを披露するリリスに親近感を覚える、やはり俺達は似ているな……


 つくづくそう思いました。




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