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レヴオル・シオン  作者: 群青
第五部 「現世界の章」
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第224話 本部


「不味いなぁ…… てっきり壁に駐留してると思ってたのに、なんでこんなトコにいるのよ?」


 リリスが苦虫を噛み潰した様な顔をしている、突然現れたあの男のせいだ。

 確かに…… 守りの要ならなんでこんなトコに居るのか……

 いや、電波が使えないから下手に壁に張り付いてるより、情報が集まる本部に居たほうが都合が良いのかもしれないな。

 もし壁が破られたらすぐさま出向くために……


 …… そんな使命を帯びた奴がリーマンと子供3人に絡むなよ…… 暇人め。



 創世十二使・序列四位トリスタン・クールノー


 大地操作系最上級能力、『大地山廠(アーミー)』とかいうギフトを持つ。

 この分だとその内ネイビーの能力者も出てきそうだな。


 どっかの陸軍みたいな名前の能力だが、地形そのものを変えることが出来るとは、そんな強能力の持ち主とは設定資料集にも書かれていなかった…… いや…… さすがにチョット有り得ない、魔王クラスの能力値を持っていれば分からなくはない、しかし人の身で地形操作なんて……

 なにかズル…… と言うより裏ワザ使ったな?


「今は武器も燃料も貴重だ、それを無駄に捨てるような真似は見過ごせないな」

「文句は司令本部に言って下さい、コチラは正式に申請し受理されています。

 我々に言うのは筋違いだ」

「金にモノを言わせたんだろ?」


 おぉう、耳が痛いな…… 俺も最近はちょくちょく金にモノを言わせて強引に物事を進める。

 コレが一番簡単なものでね。


 だからといって俺達に絡んでくるのは筋違いだ、マネーの力を使ったからって悪いことは無い。

 文句があるなら使徒リーマンの言う通り、カネを受け取った司令本部に言うべきだ。

 まぁ今回はレイフォード財団の圧力もあったんだろう、きっとこの防衛線にも支援しているはずだし、嫌とは言えない、言える訳がない。


「このヘリの使用権は我々に有ります、異議があるなら司令本部へどうぞ。

 それが正式に認められたら、どうぞ我々の邪魔をして下さい。

 あなたの個人的な意見に付き合う理由はない」

「クッ!」


 お、論破した、結構口喧嘩強いのか…… やっぱり魔王(オヤ)に似たのか。


 俺より序列が上の創世十二使のクセに魔王の使徒ごときに負けるとは…… 情けない。


「それでは皆様、お乗り下さい」

「あれ? お前が操縦するの? てか出来るの?」

「当然です、私はお二人の先輩でもあるのですから」


 なに? それはどういう意味だ?

 もしかして…… 使徒リーマンって…… 元・創世十二使?


 あぁ、言われてみればその可能性めっちゃ高いじゃん。

 大先輩じゃん、気付かなかった…… ま、コイツの事なんかどうでもいいから気付かなかったんだろう。


 実際どうでもいいし。


「まて」

「まだ何か?」

「いや…… そっちの二人…… もしかしてキリシマ・カミナとアリスガワ・ルカじゃないのか?」


 チッ! 面まで割れてるのか! オリジン機関本部にはモラルは存在しなかったらしい、滅びて当然だな。


「あ……あのっ…… その…… えっと……」

「人違いです、その二人は半年以上も前に神隠しに遭ったと聞きましたが?」


 面倒なので人違いで押し通す、琉架はすぐに顔に出るから長引けばホントにバレるからな。


「しかしゲートが開放され多くの被害者が戻ったとも聞いた…… キリシマ・カミナとアリスガワ・ルカは自力で帰還した経験も持っている…… 戻っていてもおかしくは無い」


 なんで会ったことも無い後輩の情報にそこまで詳しいんだよ?


「はぁ…… 世界情勢を考えて下さい、仮に俺達がその噂の天才美少年と超絶美少女だとしても、どうやってここまで来たと思うんです?

 たまたまこの近くにワープアウトしたのなら、他の帰還者はどこに行ったんです?」

「む…… 天才? 超絶?」


 おっとイカン、思わず自画自賛してしまった。俺の事はともかく琉架を褒め称えるのはギャンブルにのめり込んだら破産するのと同じくらい当たり前の事だからな。こっちは仕方ない。

 そして琉架の顔が赤くなってる、コレはマズイ、バレるぞ? コチラに注意を引き付けつつ即刻離脱しなければ。


「もうよろしいですね? 貴方もこんな所でサラリーマンと子供に絡んでるヒマがあるなら、壁の警備にでも当たって魔族を一匹でも多く処理してください。

 それとも俺の知らない内に軍人の仕事は敵と戦う事から金持ちと戦う事に変わったんですか?

 どうしても文句が言いたいならこっちの用意した金額と同じ額を用意して、司令本部のお偉いさんの顔面に叩き付けたらどうですか?

 出来ないんだったらそれができる様な権力を持てよ…… 力も無い、金も無い、でも自分の意見は曲げたくない、そんなザコに付き合ってられるか!」

「……ッ……ッ!!」


 うむ、憎悪の視線が俺にロックオン! これで使途リーマンが裸踊りを始めても目には入らないだろう。

 しかしちょっと煽り過ぎたかな? この人には二度と会わない方が良さそうだ。


 何か言いたげな表情のトリスタン先輩を一人残し、ヘリに乗り込む。

 フハハハハ! その程度のトーク力で魔王に立ち向かうとは愚か成り! 100年早いわ! 自らの無力さを噛み締め、以後精進を重ねるがいい!


 こうして俺達は面倒臭い刺客の手を逃れ、リスパから飛び去ったのだった。



---



「カミナって普段からあんな感じなの?」

「あん? 何の話だ?」

「さっきのトリスタンとのやり取りよ、普段からあんな感じだからカミナの評判って悪いのね……」


 余計なお世話だ。


「アレってやっぱりルカの為? わざと自分に意識を集中させてたでしょ?」

「え?」


 コラ! 本人の前でそういうことを言うんじゃない!

 たしかに事実だけど、その事実を琉架が知ったら……


「そうだったの? 神那……」


 ほらぁ! 女神が申し訳無さそうな顔しちゃったじゃん!


「いや、いやいや、違うぞ? 単純に身の程知らずの先輩を論破したかっただけだ」

「神那……」


 そもそも今回の件は俺のミスから注目が集まったんだ、俺が処理するのは当然だ。

 だから琉架が気にすることはない。


「カミナって女の子には優しいんだよね~、男と女で態度が180度違うって報告もあったわ。

 私にも優しくしていいのよ?」


 コイツ…… 余計な事ばかり言いやがって、そんなだから優しくしたくないんだよ、お前、俺に似てるから。



 そんな話をしてる内に、ヘリは巨大な壁の上空に差し掛かる。


「おぉ……!」


 壁は厚さだけで20メートル以上ありそうだ、装飾などは一切無い岩壁で、高さも100メートルを超えている。

 これは例え巨竜(アークドラゴン)でも簡単には破れないぞ……

 壁の外側の建物はあらかた壊されているが地面は荒れてない、恐らく周辺の地面も硬質化してるんだ、これで穴を掘って侵入することも出来ないな。


 トリスタン先輩…… 器は小さいが、やることのスケールが超デカイ。

 さすがは序列四位、伊達じゃないな。


「この壁ってね、このあたりの住民から『救いの壁』って呼ばれてるそうよ?」

「救いの壁……ねぇ」


 この壁のおかげで全滅をまのがれたのならまさに救いの壁だが、実際には何も救ってない。

 いや、救ってないは言いすぎだが、やってることは現状維持の時間稼ぎにすぎない。

 いつの日かγアリアがやって来ても、この壁は救ってくれない。

 下手したら逃げ道を塞いでいるだけかもしれない……


 まぁ、いつ来るかわからないγアリアより、目の前に迫ってきてる魔物や魔族の対処を優先するのは当然か。


 よくよく考えればトリスタン先輩って俺と琉架の尻拭いで大和を助けてくれたんだよな……

 う~~~ん……

 今度あったら謝っとこうかな? でもそれはリズ先輩にも言える事だし……

 やっぱり恩着せがましい事を言われるまで知らないフリをしておこう、次こそは器のデカさを示して欲しいモノだ。


「さあ、観光気分はここまでよ」


 どこらへんに観光気分出してた? せいぜい大通りを歩かされただけだろ?

 はぁ…… せっかくリスパまで来たんだから、もっとデート気分を味わいたかった。


「ここからは魔族が出るかもしれないから警戒だけはしておいてね?」

「魔族……出るのか? 空の上にも?」

「飛行可能種も居るからね……

 もちろん飛べるやつは優先して落とすようにしてるから、滅多には出てこないと思うけど、念のため用心はしておいて」


 まぁそれくらいなら……


「あぁ、分かったよ」

「はい、リョーカイしました」


 一応このヘリにも武装はあるが、魔族相手にどこまでやれるか分からないからな。

 ドラゴンなんかに来られたらさすがに厳しい、ゲームならミサイル1~2発で落ちてタワーに突き刺さってバッドエンドなんだが……



---



 救いの壁を越えて2時間半……

 心配されてたドラゴンは現れなかった、ドラゴン自体が生態系の頂点に位置する希少な生物だから、元々の個体数が少ないらしい。

 シニス世界ではソコソコ見かけた気がするんだが……


 その代わり、ガーゴイルっぽい奴は群れを成して飛んでいる事がある、ヘリを見つけるとあっという間にに群がってくる、しかしガーゴイルはシニス世界では見かけなかったんだが…… 一体どこに住んでたんだろう?


 ガーゴイルはヘリに搭載されている通常兵器でも対処可能だ。

 しかしトリスタン先輩にも文句を言われたし、帰る時の為に弾薬等は節約したいそうだ。

 そこで我々の出番だ、てか、リリスがやってくれた。それくらいは働いてくれないとな、犯人なんだし……


 リリスは見たことの無い魔器を使用していた…… 何と言うか…… ビットだ。

 自由気ままに飛び回って敵を攻撃するファ○ネルっぽいヤツ。


「それは? 初めて見るけど……」

「これは『遠隔誘導飽和攻撃兵器(ハミングバード)』よ、オールレンジ攻撃ができるの」


 ほぅ…… 便利なモノがあるな、別にビームが撃てるわけじゃないみたいだが、空飛ぶナイフを自在に操り敵を攻撃できる兵器だ。ハチドリ(ハミングバード)とはよく言ったものだ。


「コレは誰にでも使えるものじゃないの、高い空間認識能力が必要なのよ…… ついでに言えば、カミナには無用の長物ね」


 何でだよ、俺がニュータイプじゃないからか? それとも強化人間じゃないからか?


「カミナは第二階位級魔術の分割で同様のことが出来るでしょ?」

「あぁ~……」


 確かにできる、てか、しょっちゅうやってる。こいつよく知ってるな……

 威力も数も俺のファン◯ルの方が上だ、ただし消費魔力は比べ物にならないほど多いが……

 それに空間認識能力が必要って…… それは実質テレポーターにしか使えないってことか? 欠陥兵器じゃねーか。


 だが…… よくよく考えればリリスはデクス世界で一番の権力を持っている。

 つまりデクス世界産の魔器・魔導兵器なんかは幾らでも入手可能ってことじゃないか?


 嫁たちの装備を最新・最高級魔器で揃えるのも良いかもしれない、特にミカヅキはせっかく魔力を手に入れ、最大10人分の仕事量をこなせるようになったんだ。今はまだ完コピ出来ないから10人分の魔器を用意する必要がある……

 いや…… いっそ全員に専用魔器を…… は、さすがに無理か、開発に時間が掛り過ぎる。


 だが、オリジン機関本部の金庫室にはもしかしたら俺が長年探し続けたモノが在るかもしれない!

 即ち、俺専用の武器だ!


 憂鬱だった探検隊が少しだけ楽しみになってきた。




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