表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
レヴオル・シオン  作者: 群青
第五部 「現世界の章」
221/375

第215話 開廷


 ―― シニス世界 ――


 第12領域・北西・グラネウス大地



 第3魔王 マリア=ルージュ・ブラッドレッドを殺す――


 リリス・リスティスがそんな事を言った……

 思い返せばどいつもこいつも魔王を倒せ、魔王を討て、魔王を滅ぼせ…… 要求してくるばかりで、自らが倒すと言い切った人など見たことがない気がする……

 あ~いや、そういえば魔王を倒すと毎回デカイ口叩きながら連戦連敗、そんな奴が知り合いに一人いたな…… アイツは除外していいか。

 あの有言不実行男にも、もう少し頑張って欲しい所だが……


「本気か?」

「もちろん本気よ、デクス世界は私の支配領域なんだから私が何とかしなきゃいけない……」


 ずいぶん真面目だなぁ……

 アーリィ=フォレストにコイツの爪の垢を煎じて飲ませてやりたいよ。

 もっとも俺達、新世代魔王は自分の支配領域などほったらかしだからな、唯一例外なのがミラだけだ…… 余り人のコトは言えない。


「他人事みたいに言ってるけど、キミにも手伝ってもらうからね?

 私の胸を揉みしだいたんだから、嫌とは言わせないわ///」


 oh…… マジかよ……

 たった一つの事故でエライ代償を支払わされる羽目になった。

 まるで893の黒塗りベンツに傷を付けて、骨の髄までしゃぶられてる気分だ。


 割に合わねぇ! ちょっとオッパイ揉んだくらいで第3魔王戦に参戦決定とか……

 こんなことなら胸に顔を埋めてパフパフでもしておけばよかった! 挟むにはちょっと足りないが…… 大丈夫! イケるさ!

 七大魔王同盟の女の子たちは大きい娘と小さい娘が極端に分かれてるが、彼女はちょうど中間、平均的だ。

 こう上手いこと頑張れば…… なんとか……


 こんなこと考えてる事がバレたらガチギレされるな。

 いかんいかん、この魔王様かなり強いんだから気を付けないと、本気出されたら勝てるかどうかわからん。


 しかしなぁ…… 第3魔王と戦わされるのは本当に割に合わない。

 彼女の価値観からすると、乙女のオッパイは地球一個分くらいの価値があるということか、だとしたら俺は琉架にどれほどの対価を払わなければならないのだろうか?

 きっと宇宙を支配して献上するくらいしなけりゃいけないな。


「ハァ…… 分かったよ、第3魔王を倒すのに手を貸せと言うなら手伝おう。

 元々アイツを放置するわけにはいかなかったからな。

 ただし手伝うのは俺だけだ、他の娘たちに指図することは許さん」

「分かってるわよ…… でもキミが動けば彼女たちも動くんじゃないの?」


 その可能性は大いにある。

 うは♪ 俺ってモテモテじゃん♪ とは言え……


「みんなは『血の力』とやらを持ってない、危険な目に合わせる気はないぞ?」

「それももちろん分かってるわ、今この世界にあの女と対峙して無事でいられるのはキミと私のたった二人だけなんだから」


 第3魔王マリア=ルージュってそんなに危険な能力持ちなのか?

 詳しく聞く必要があるが、それは皆が居る時が良いな。

 コイツには聞きたい事が山ほどあるんだからな。


 そんなワケでデクス世界へさっさと帰る事にする。

 決闘中、何となく誰かの視線を感じた気がするが気のせいだろう、こんな僻地に人が居るハズ無いからな。



---



 ―― デクス世界 ――


 タミアラ


 俺達は数時間前まで居た場所に戻ってきた。


「おぉ、同じ場所だ! これが本物の門を開きし者(ゲートキーパー)!」


 神隠しは例外なく屋外にワープアウトするんだが、アレってやっぱりワザとやってたのか……

 この技術を完璧に修めれば瞬間移動の代わりになるな、ただし純粋魔力を消費するから何度も使える物じゃないし、少々時間もかかる、そして何より目立ち過ぎる。

 この技術を上手いコト『超躍衣装(ハイ・ジャンパー)』に融合できないだろうか? ココは『恩恵創造(ギフトクリエイター)』の腕の見せ所だな。

 コレが上手くいけば念願の超長距離テレポートが実現するぞ。将来的にティマイオスに住むのならこの能力は是が非でも欲しい。


「それじゃ…… 始める前にお風呂行ってきてもいいかしら?」

「あ?」


 始めるって何を? 始める前に風呂ってもしかして女の子のいちばん大事なものをくれるのか?

 いや違う、俺はそんな要求出してない。そうだよ、今から勉強会(質問タイム)だ、契約通り俺には無限に質問し続ける権利が与えられたんだ。

 その前に一風呂浴びたいと…… まぁそうだな、土埃と血の粒子が大量に付着して汚れていらっしゃる。

 美少女はかく美しくあるべきだ、それくらいの時間ならいくらでも待とう。

 ただし風呂場の窓から逃げたりすんなよ? 窓の外で張ってようかな? 俺のラッキースケベ特性なら何かの拍子に覗けるかもしれないし……

 いや…… 止めておこう。次は命がないかもしれない。


「神那も入ったほうが良いよ?」


 琉架に混浴を勧められた!? バカな!?

 いや、別に一緒に入れとは言ってないか、確かに俺も同じ場所に居たから薄汚れている。

 美少年はかく美しくあるべきだ、俺も一風呂浴びてくるか。


「ダッ…! ダメよ!! そんなの……まだ早い!///」


 魔王リリスは俺の入浴を却下して、顔を赤くしたまま走り去っていった…… まだ早いってなんだよ? 来週くらいなら混浴してもイイのか?

 さすが俺に近い思考回路を持っているだけのことはある、どうやら彼女も混浴を想像したらしい、惜しむなら男女の違いのせいか…… キャッキャウフフの混浴は実現しなかった。

 チッ! チキンめ…… そんな所まで似てなくていいのに。

 いや、チキンは言い過ぎか、きっと淑女なんだろう。だって俺は紳士だからな。


「神那クン…… 彼女と何かあった?」

「…… 何の話ですか?」

「いやぁ~…… あの様子は明らかに何かあったでしょ? デレるの早すぎ、コレだから禁域王は……」


 先輩は相変わらず無駄に鋭いなぁ、でもアレってデレてるのか? デレるなら脅迫とかしないで欲しいんですケド……



---



 その後、風呂上がりのリリス・リスティスに風呂を勧められた。

 混浴じゃなくていい事にようやく気付いたらしい、まぁ例え混浴の許可が出ても実行しなかっただろうが…… 下手したらココで小規模な第三次魔王大戦が勃発する。


 女の子を待たせて長風呂するつもりはないのでシャワーだけで済ます、リリス・リスティス成分が溶けだした湯に浸かるのも悪くはないが、俺は変態じゃないからソコはどうでもいい。

 てか、風呂広いな、普通にリゾートホテルの大浴場レベルだ、お勉強会で意図的に質問を長引かせれば、必然的に今日はお泊りになる…… コレは…… 久々にチャンス到来か?

 しかしこれだけ広いと成分が薄まってて意味がない……いや、関係ないけどね?


 風呂上がり…… その時点でようやく気付いた、着替えがない。

 この屋敷にはメイドさんの一人も居ないから誰も用意してくれてない。リリスはココに一人で暮らしてるのかな? その割には掃除が行き届いているが……

 汚れだけ『強制転送(アスポート)』しようかと思ったが、服が穴だらけになりそうなので止めた。俺の体についた汚れなら飛ばせただろうが、無生物の服に付着した物だけを飛ばすのは難しいだろう。


 せめてバスローブの一つでもないのか? 普段アイツが着てるやつでも可だぞ?

 しかしそんなモノは見当たらない、コレだから人を招いたことがないボッチ魔王は…… せめてドリュアスくらい有能のな助手がいれば……


 仕方ないので第4階位級 流水魔術の超小型『大渦潮(メイルシュトローム)』で洗濯し、超小型合成魔術『風神風(トルネイド)』で脱水し、超小規模合成魔術『暖気空間(プラスフィールド)』で乾燥させた。

 こんな真似ができるのは世界で俺だけだ、なんて才能の無駄遣い……


 仕上げに血液変数(バリアブラッド)でファ○リーズでも作ろうかと思ったが、そんな事で自傷行為をするのが馬鹿馬鹿しいので止めておく。



---



「神那にしてはお風呂長かったね?」


 部屋へ戻るとそんな感想を言われた…… そう、俺達は同棲して長いしもう殆ど夫婦みたいなものだよな? 互いの風呂の時間だって把握してる、そろそろ次のステップに進みたいものだ。


「ちょっと洗濯してたら遅くなった」

「洗濯? そう言えば服装が変わって無いね」


 まぁ、男の服装なんてどうでもいい。


「それで…… リリスは?」


 魔王リリス・リスティスの姿が見当たらない、まさか逃げたんじゃないだろうな?


「庭にいるよ、ほら、あそこ」


 窓の外にはリリスがこちらに向かってゆっくり歩いてくる姿が見える、散歩でもしてるのだろうか? とうの昔に見飽きたであろうこの庭で?

 まさか風呂場を覗いていた訳じゃないだろうな? 俺ですら我慢したのに!


 キィ……


 リリスが部屋の中へ入ってくる……が、俺と目を合わそうとしない、何か後ろめたい事がある顔だ。


「えぇと…… 食事を……」

「喰いながらでも別に構わん」

「あ……そう……」


 どうもさっきから、質問タイムを先延ばしにしたいって雰囲気を漂わせてる。

 まぁ理由は大体理解る、この魔王様、暗躍大好きだもんな…… そしてデクス世界出身組は全員この魔王様の暗躍のおかげで多大な苦労を被った。

 質問とその答え次第で、制裁を喰らわされる可能性だってある。


 もっとも俺は恨んではいない。


 もちろん苦労はさせられたが、琉架との距離が縮み、嫁達と出会わせてもらった。

 僅かながら友達もできたし、一生遊んで暮らせるほどの財産も築いた。

 もっともそれらはリリスのおかげじゃ無く自分が頑張ったからだ、しかし切っ掛けをくれたのは確かに彼女だ。


 まぁ、ヒト以外の者になってしまったのは少々ショックだったが、永遠にハーレムを維持できると思えばそれもまた良し。


 ただしコレは俺個人の意見であり、琉架や先輩、伊吹がどう感じているかは別問題だ。

 琉架は魔王になった時泣いてたしなぁ…… 伊吹は比較的被害が少ないからまぁいい、問題はサクラ先輩か…… 彼女…… 後輩になっちゃったからね。

 幸い、コレは権力を駆使すれば取り戻せるが、貴重な高校時代という時間は戻らない。

 まぁトラベラー体験の方が、滅多に味わえない更に貴重な体験ともいえるが。


「さて…… それでは始めようか」


「……ッ!」ビクッ


 う~ん…… まるで弁護士無しの裁判のようだ。

 さしずめ俺は裁判官 兼 検察官だな。

 別にそんなつもりは無かったんだが被告人が小さく見える…… ココで有罪判決を受けたら魔王同盟にフルボッコにされるからな。

 それって要するに死刑判決だよね?


 まぁ、彼女の自業自得なんだけど。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ