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レヴオル・シオン  作者: 群青
第四部 「転移の章」
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第209話 会談


「はぁ? なに言ってんの? だって髪の色がぜんぜん違うじゃん、おにーちゃん忘れちゃったの?」

「そ…… そうだよ、だってオーラも普通の人と変わらない……し……」


 確かに…… 以前見たリリス・リスティスとアイリーン・シューメイカーは全く違う。

 あまりにも一瞬の出会いだっため細部までは覚えてないけど、一番目立つ場所が違う…… 髪の色だ。

 魔王リリスは美しい灰銀色の長い髪をしていた、色合い的には白に近い。

 しかしアイリーンは明るめのベージュブラウン、髪を纏めてるから長さは分かり辛いが恐らくかなり長い。


 だがソレは大した問題じゃない。


「多分『擬態魔法(ミミックヴェール)』を使ってるんだろ?

 コレで見た目はいくらでも変えられる」

「擬態魔法…… でも……」

「……その証拠にサングラスだ、何故か緋色眼(ヴァーミリオン)だけは擬態魔法で変化させることが出来ない。

 つまりそのサングラスの下には朱い左眼がある筈だ」


 もっともカラーコンタクトとかで幾らでも誤魔化せるんだが……


「まさか…… じゃあオーラは!? 明らかに魔王とは違うよ?」

「これは予想だが、何らかの魔術でオーラを変質させて偽装してるんだ」

「え? でもそんな事したって……?」


 確かにオーラを偽るなど普通はそんなことはしない。する意味が無い。

 オーラを肉眼で確認できるのは魔王だけ、魔王に会わないようこんな所に引きこもっているならば無駄以外の何物でもない。

 しかし……


「当然俺達と会談するためだ、その為にわざわざ創ったんだよ…… その魔術を」


 そうリリス・リスティスは新しい魔術を創れる、しかし俺が鋭すぎる為にその苦労は僅か10秒で無駄になってしまった…… ソレもコレも俺が天才すぎるせいだ。チョットだけ悪いコトしたと思ってる、切れ者でゴメンね?


「…………」


 みんなの視線がアイリーン・シューメイカーに集中する。

 もう逃げられない、なにせこの空間には魔王殺しが5人もいるんだからな。


「ハァ……」


 彼女はくたびれたような息を吐き、意を決したようにサングラスを外した。

 その下から予想通り朱い左眼が現れる…… 間違いない魔王の緋色眼(ヴァーミリオン)だ。

 それと同時に纏めてあった髪が解かれるとあっという間に色が変わっていく、髪の揺れが収まる頃には長く美しい灰銀色の髪に変わっていた……

 あの瞬間に見た美女が現れた。

 いや…… 美女というより美少女か…… 目元が隠れてた時は年齢までは分からなかったが、俺達と同年代って感じの見た目だ。


「よく…… 分かったわね?」

「以前から予測してた、デクス世界は魔王リリスの新しい支配領域だ、つまりこの世界で一番偉い者こそ第12魔王だと……

 そしてこの世界で一番高い権力を持っているのがレイフォード財団の会長だ。

 思った通りだったな」

「へぇ…… それだけで確信したの?」

「それともう一つ、以前俺と琉架がオリジン機関の幹部会で受けた尋問の時、あの時アンタはモニター越しに数秒俺たちを見ただけで魔王が倒されたと判断した。

 最初は心を読むギフトかなんかかと思ったけど、アレは俺達の緋色眼(ヴァーミリオン)を確認したんだろ?」


 結果的に俺たちが魔王を継承したことはバレてたわけだが……

 まぁバレた相手が同じ魔王でよかった、これがもし師匠やダラス校長にバレてたらどうなっていたことか…… 碌な事にならなかっただろう、地下室に閉じ込められて朝から晩まで師匠と戦わされたり…… 生き地獄だな。


「なるほど……」

「ん?」

「どの報告が正しいのか分からなかったのだけど…… どうやら馬鹿では無いらしいね」


 ムカッ

 誰が馬鹿だ、いや、彼女に怒るのは筋違いだ、問題なのは馬鹿と報告した奴だ…… あの使徒リーマンじゃねーか?

 アイツは見つけ次第罰してやる。


「それにしても…… 大きくなったわね……」


 な……なんだ? その子どもの成長を喜ぶ親のような生暖かな眼差しは?

 はっ!? ま……まさか…… そうなのか?

 ココに来てようやく俺の隠された血筋の謎が解けるのか?

 少年漫画の主人公は90%が偉大な血を引いているという…… とうとう俺にもそれが来たのか?

 父親が死神だったり母親が滅◯師だったりご先祖様がラスボスだったりするアレか!?

 もしかして…… もしかして…… あなたがママン?


「初めて会ったのは貴方が10歳の頃…… まだ5年程しか経っていないのに、よくぞここまで大きくなりました」


 うん、まぁ、分かってたんだけどね、期待もしてないし…… もし俺が養子だったり孤児院育ちなら偉大な血族だったのだろう。


 てか、5年前に会ってる?

 生憎そんな記憶はない…… なにか魔王と対面するイベントとかあったっけ?

 心当たりが全く無い…… いや、まてよ?



「そして有栖川琉架…… 貴女とは貴女が生まれてすぐの頃に一度会ったいるのよ?」

「え? ウチに来たことが……ある?」


 琉架のほうが俺より第12魔王との付き合いが長かった。

 生まれてすぐじゃあ当然覚えてないだろうが、有栖川家の第三子誕生ならアルスメリア大統領がお祝いに駆けつけても不思議はない…… いや、流石に無いか。


 俺が10歳の頃…… 琉架が生まれてすぐ…… もしかしてギフトの発現時期か?

 あの頃の俺はスカしてたんだよな…… 自分を特別と思い周りを見下してた、それはそれは増長しまくっていた…… ハッキリ言って糞ガキだった。

 その当時の俺に出会ってたのかぁ~…… それじゃ馬鹿だと思われてても仕方ない。


「あなた達には……」

「チョット待った!」

「?」

「こっちの質問が先だ、俺達は請われてここまで来た、ならばそれくらい認められるよな?」


 相手が話し始める前にそれを制する。


 会話の主導権を得るんだ、少なくとも相手に握らせてはいけない。

 魔王リリスに話させたら、あれよあれよと言う間に第3魔王討伐の話に持っていかれるに決まってる、その話が出てからでは情報を聞き出せない、何故なら断る気満々だからだ。


「むぅ…… 分かった…… あなた達の質問を一つだけ聞いてあげる」

「一つだけ?」


 ケチくせぇ…… 確かに回数を限定しなければエンドレスに質問し続けることになるが……

 更に「聞いてあげる」……か、答えにくい質問には「聞くといっただけで答えるとは言ってない」とか言い出さないだろうな? 俺じゃあるまいし……

 一応確認はしておくか。


「質問に答えてくれるのは一つだけか?」

「えぇ、一つだけよ………… ッチ!」


 今 舌打ちした!?

 まさかホントに小学生みたいな言い訳を使うつもりだったのか?

 この魔王、見た目は冷徹なクールビューティーっぽいのに中身が…… あ、そう言えば旧世代魔王は大体こちらの予想をぶち壊していくんだった……

 あの綺麗な顔の下には一体どんな素顔が潜んでいることやら…… 出来れば先代・第6魔王と同種の顔だと嬉し……ゲフンゲフン。


 それで? 何を聞く?


 デクス世界で魔科学を発生させた理由?

 なぜ神隠しを起こすのか?

 神代書回廊(エネ・ライブラリー)から盗み出された記憶書はドコか?

 俺と琉架にいつから目を付けていたのか?

 禁域王のハーレムに入るのか?


 聞きたいことが多すぎる……


 少し仕掛けてみるか。


「だったらアンタの理由を話してもらおうか」

「理由?」

「あぁ、デクス世界に来た理由、神隠しを起こす理由、魔科学を生み出した理由、門を開きし者(ゲートキーパー)の記憶書を盗んだ理由、こんな所に引きこもっている理由……

 そして第3魔王を放置している理由、それを話してもらおう」


 ちなみに大半の理由は予想ができている、これは答え合わせだ。


「その質問の仕方はズルい…… 答えが一つじゃない……」

「答えを一つに限定しなかったのはそっちだろ? ただ「聞いてあげる」と言っただけだ」

「その後に「答えてくれるのは一つだけ」ってキミが明言したでしょ? 私はそれに同意した」

「あぁ、だから俺の質問は「アンタの理由」一つだけだ、答えが複数あるのを想定して出した質問だ、アンタはそれに同意したんだ」

「そんな話は聞いてない」

「確認しなかったそっちが悪い」

「情報を出さなかったそっちはフェアじゃない」

「フェアとかどうでもいい」

「その結果、わたしが敵に回ってもいいの?」

「ほぅ? そっちは七大魔王同盟を敵に回す気か?」

「キミは分かってない…… わたしを敵に回すってことはデクス世界全てを敵に回すって意味よ?」

「分かってないのはそっちだ、俺達は世界征服とか(する気は無いが)余裕で出来るんだ、それは取引材料にならない」

「世界中で自分の顔写真が土足で踏まれたり、燃やされたり、ラクガキされたりするのよ? アレって結構心に来るのよ?」

「やった奴を端から粛清していけばすぐに収まるだろ? 旧共産圏ではよくあった光景だ」

「それはまんま独裁者の思想よ、そういった人物はいずれ討たれる運命にあるのよ、この世に悪の栄えた試しは無いわ」

「それを魔王のアンタが言うか? だったら第3魔王はどうなる? 2400年も栄えてるじゃねーか、憎まれっ子世にはばかるってヤツだな」

「アイツも何れ滅ぼされるわ…… 永遠なんてあり得ない……」

「……それはアンタにも言えることじゃ無いのか? 1200年前からデクス世界で好き放題やらかしてきたんだろ?」

「それこそわたしの「理由」が達成された時、その報いを受ける覚悟はある、そしてその時こそデクス世界が真の独立を果たすのよ」

「だったらその「理由」をさっさと話せ、こんな問答どうでもいいから」

「それは嫌、わたしが答えるのはあくまでも一つだけよ、そうじゃないとわたしが損する」

「損て…… ガキじゃないんだから……」

「わたしにそれだけの情報を出させるなら、そっちにもそれ相応のリスクを負ってもらわないと」

「何でこっちがリスクを負うんだよ? こっちは呼ばれてやって来て、質問する権利を一つ貰って行使しただけだ」

「そうねぇ…… この情報の対価は……」

「無視かよ」

「アナタにもわたしの願いを一つくらい叶えてもらわないといけないわね」

「あ、じゃあイイです、門を開きし者(ゲートキーパー)の記憶書の在り処だけ教えてくれれば十分です」

「えぇぇ…… そこで引いちゃうんだ……」

「あ、もちろん門を開きし者(ゲートキーパー)の記憶書は盗ませてもらうけど、コレは本来の持ち主に返すんだから文句は言わせないぞ」

「わたしのお願い叶えてくれたら、素直に渡すんだけど……」

「結構です、ドコにあろうと自分で取ってこれるから、てか、アーリィ=フォレストがメッチャ怒ってたぞ? いずれ殺しにやって来るかもしれない」

「いや…… 彼女は自分ン家から出てこないでしょ?」

「そんな事はないぞ? 実際半年前、アルスメリアのフリストーでテリブルを始末したのはアーリィ=フォレストだからな」

「! 『セレスティアの神樹』って『世界樹女王(ユグドラ・シル)』!? なんてこと…… あの引きこもりは絶対に出てこないと踏んでたのに……!」

「その引きこもりの原因もアンタのせいだからな? さぁどうする? アーリィ=フォレストは七大魔王同盟の一翼、彼女の敵は俺達の敵と成り得る」

「ッチ!」

「舌打ちヤメろ、さあ選ぶが良い! 屈服かギブアップか!」

「意味どっちも一緒じゃない……」

「諦めろって言ってるんだ」

「………… イヤ」

「ガキじゃないんだから……」

「わたしにはまだ奥の手がある……」

「あ?」

「あなた達の情報を第3魔王にリークする」

「ちょっ! おまっ! それ自爆攻撃じゃねーか!」

「フフン! 死なば諸共よ!」



---


--


-



「ねぇ伊吹ちゃん……」

「何ですか? お姉様」

「私…… 神那と魔王リリスのやり取り見てて思ったんだけど、なんて言えば良いのか…… あの二人って…… ドコとなく似てない?

 顔とか雰囲気じゃなくって…… え~と、なんて言えば良いのか……」

「……キャラが似てる?」

「そう! そんな感じ!」

「奇遇ですね、私も全く同じことを考えてました、今日初めて会ったのに…… 正確には4回目らしいけど、ほんの数分間喋ってるだけでもう友達みたい……

 まぁ、喋ってる内容はお互いへの牽制だらけだけど……」


 第11魔王と第12魔王の言葉の応酬はその後も続いた……

 だが次第に交わす言葉は子どもの喧嘩みたいになっていったという……




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