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レヴオル・シオン  作者: 群青
第四部 「転移の章」
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第183話 第一魔導学院1 ~真相編~

 ― 魔導都市デルフィラ ―


 この世界には『魔科学都市』と呼ばれる場所は幾つもある、魔導学院が置かれている場所がそうだ。

 俺の実家がある高天(たかま)市も魔科学都市の一つだ。


 そんな中、何故ココだけが魔導都市と呼ばれるのか…… その理由は単純だ。

 このデルフィラこそが魔導発祥の地と言われているからだ。

 魔法全盛の時代に突如現れた一人の天才『魔導の祖(オリジン・ルーン)』、そいつが初めて歴史に名を刻んだのがここデルフィラだ。


 しかし歴史の真実は予想を簡単に覆す。

 実際には魔導の祖(オリジン・ルーン)とは第12魔王 リリス・リスティスの事であり、彼女はこの地でチートツールの神術を用い、魔導魔術を作り上げたのだ。

 そんな真実を知ってしまうと、有難みも一気に減衰してしまう……

 もっともコレはあくまで予想でしかないが。


 天瀬先輩の話では魔導学院は旧魔法宗教の聖地跡に建てられたと言われている、しかしココだけは別だ。

 この地は言ってみれば「魔科学」という名の宗教の聖地に当たる。

 それ故に魔導都市、今もなおこの街は魔導の中心地なのだ。


 ……と言っても、他の魔科学都市と何ら変わりは無い、別に空に飛○艇が飛んでたりとか、黄色いダチョウの様な鳥が歩いてたりとか、クリスタルを崇めたりしてるワケじゃ無い。

 街の外観も、魔導学院も、ぶっちゃけ高天と変わらない。

 まぁ魔科学研究が一番進んでいる街であることに変わりはないが……


 だから……


「どう? ココこそが魔科学の最先端! 魔導の中心地! 我が故郷『魔導都市デルフィラ』よ!!」


 リズ先輩に「スゴイでしょ!!」……と、ドヤ顔をされても俺には……


「はぁ……」


 ……としか返せない。

 だって魔科学の最先端も、魔導の中心も、ヘリからじゃ見えないし……


 デクス世界出身組はそんな御座成りな返事しか返せないが、シニス世界出身組は全く違う。


「わぁ…… スゴイ…… 街が地平線の彼方まで…… 広がってる……」

「先の廃墟と大して離れてないのに、人で溢れてますね」

「ほう、これが本当のデクス世界の姿か……」

「ローレライより大きな建物が幾つも…… それも壊れてないです!」


 みんなデクス世界の真の光景を見て興奮気味だ。

 そう言えばアーリィ=フォレストもこんな感じだったなぁ…… 最初の1分くらいは……


「それでリズ先輩、このヘリはどこに向かってるんですか?」

「ん? もちろん本部のある第一魔導学院だよ」


 本部? 本部ねぇ……

 魔物の対策本部と考えるのが妥当か。

 俺も第一魔導学院に足を踏み入れるのは初めてだ。あ、そう言えば……


「リズ先輩、ザックとノーラはどうしてますか?」

「あれ? 後輩クン、ザックとノーラの事知ってるの?」

「はい、以前に一度……」


 わざわざ海を越えて会いに来てくれました…… ケンカを売りに。


「実はあの二人にはここ半年ほど会って無いんだ」

「! まさか……」


 死…… いや、まさかな……


「ああ、無事だとは思うけど二人は半年前、アウスレイリアに行ってたんだ…… それっきり連絡も取れないの」


 アウスレイリアと言えば、大和の遥か南の大陸か…… 何だってあんな所に?

 もしかして南極の調査か? だったら南アルスメリア大陸の最南端からの方が近いハズだが……

 いや、その話も後でまとめて聞こう。


 そうこうしている内に、ヘリは第一魔導学院に到着した。

 全部で三つある大きな校庭は臨時ヘリポートになっており、大量の軍用ヘリが停まっている。

 その内の一つ、正面の一番大きな校庭にヘリは着陸した。


 ヘリを降り真っ先に目に入ってきたのは、街中にも拘らず迷彩服を着こみ、魔導突撃銃(アサルト)を装備したガチの軍人さん達だ。

 その様子はさながら最前線基地だ。

 実に物々しい雰囲気が漂っている……


「おに~ちゃん…… 臭い……」

「うぐっ!!」ズキッ


 白の言葉にダメージを受ける…… 俺がじゃ無くって空気が臭いんだよな? NY辺りじゃ気にならなかったが、この辺りは文明の香りがきつく異世界人には臭く感じる……

 頼むから俺が臭いみたいな言い方しないでくれ…… それ地味に心を抉られるんだよ……


「それじゃあ貴方達は私について来て、他の人達はそこの兵隊さんの指示に従ってね」

「ついて行くのは俺と琉架だけですか?」

「え? あぁ、ん~…… さすがに部外者さんはマズイよね? ゴメンね? 他の人達と一緒に兵隊さんの指示に従って」


 それだけ言うとリズ先輩は俺達を先導する様にさっさと歩き始めた。


「おに~ちゃん……」

「大丈夫だよ、でも一応、全員固まっていてくれ」


 やはりガーディアンの部外者は連れてけないか。

 …………仕方ないな。



---


--


-



 第一魔導学院の造りは第三魔導学院と殆んど変わらない、全ての魔導学院はココ、第一魔導学院を参考に造られている。第二から第七まで基本的に変わらないらしい。

 東西南北に校舎があり、中央に大時計塔、大講堂、学院運営関係の部屋が詰め込まれた建物がある。

 俺達はその中央校舎の大型エレベーターに乗った。

 地下へ向かっている。


「ずいぶん潜りますね?」

「うん、一般には知られて無いけど、第一魔導学院の地下にはちょっと特殊な空間があってね……」


 特殊な空間? まさか魔宮じゃないよな? ここに遺跡は無いハズだし……


「…………」


 どうやら説明はしてくれそうに無いな。ソレについても後で説明してくれるのだろうか?



 チーーーン!



 到着しエレベーターの扉が開く、そこには想像と違う光景が広がっていた。

 まるで神殿内部のような場所だ、天井は見上げるほど高く、そしてすべてが真っ白だった…… とても神聖な雰囲気が漂っている…… ただし其処彼処に銃を持った兵士がいる…… この空間で迷彩服を着てると物凄く目立つぞ? せめて雪原使用の迷彩服にしろよ…… どのみち外に出たら目立つか。

 しかし以前にも似たような光景を見た…… 細部は違うがラビリンスの最下層に似ている。ここもダンジョンの一種なのだろうか? 俺が知らないだけでデクス世界にもこういった場所はたくさん有るのかもしれない。


 そのままリズ先輩に案内され、一つの部屋に辿り着く、扉も取っ手も真っ白だ…… 緋色眼(ヴァーミリオン)が無ければココに部屋が有ったことにさえ気づかなかっただろう。


「コチラで校長がお待ちです、それではど~ぞ」


 扉の先も相変わらずの白さだ、唯一白くないのは部屋に一つだけ置かれたやたら豪華な机、まるで大統領の執務机のようだ。

 そしてその机に着く一人の人物…… アレが校長か…… 更にその背後、部屋の奥の壁が発光していて顔が見えない、演出が第2魔王の時と被ってる、但し校長は被ってない…… 後頭部のあたりに後光が見える、有り難さ倍増だな。

 俺の母校の教頭と比べて実に潔い。


「ダラス校長! お客様をお連れしました!」

「ご苦労、エリザベス・カウリー特佐」


 ダラス校長…… アルベルト・ダラスか……


 かつて創世十二使・序列第一位だった男、師匠の師匠だったらしい。

 シルヴィア師匠が脳ミソまでパワー系近接アタッカータイプだったのに対して、アルベルト・ダラスは全属性魔術と頭脳を駆使した遠距離・指揮官タイプだった。

 そのため定年の30を過ぎても、長いコト序列一位の座に君臨し続けた天才魔術師だ。


 こんな天才師匠から、ナゼあんな脳筋(シルヴィア)が育ったのか謎だ……

 まぁ脳筋(シルヴィア)から俺の様な天才魔術師が育った例もある、イレギュラーってのは案外身近にあるモノだ。


「六位の霧島神那と七位の有栖川琉架だな?」

「はい」

「は…はい!」


「色々と聞きたい事はあるが、その前に今我々が置かれている状況を少し説明しておこう」

「お願いします」

「うむ、まず半年ほど前、南極に突如、超巨大質量体が現れた、その広さは実に2万4千平方キロメートルにも及ぶ……」


 その話は聞いた、南極で何かが起こったと…… しかし質量体? しかも広さ?


「その後、αテリブルが大量発生し世界中の都市を襲い始めた」

「αテリブルが…… それは大丈夫だったんですか?」


 答えは大体知ってるが一応聞いておく。


「被害は最小限に抑える事が出来た、ただ一ヵ所だけαテリブルが唐突に消えてしまった都市もあったが…… それに関しては未だに謎だ、現地では神樹の奇跡とか呼ばれているらしいがな」


 アーリィ=フォレストがやった奴だ。

 神樹より世界樹の方が正しいが…… どちらにしても魔王の仕業とは思われないだろう。


「αテリブルの被害は一ヵ月程で落ち着いた、しかしその間にも異常は続いていた。

 衛星との通信が途絶え、海底ケーブルの切断に南半球での磁気異常、そして魔物の目撃情報が相次いだ。

 そしてある日突然、南極の超巨大質量体が三つに分かれたのだ」

「三つに分かれた?」

「そう、遠距離光学観測の計算によると、その三つの質量体の内、元の50%の質量を持つモノはその場に留まり、残りの25%の質量を持つモノ二つが動き出した」

「!? ちょ…ちょっと待って下さい! 動き出した? 質量体が?」

「そうだ、動き出したのだ、その内の一つはこの世界を目的も無く彷徨っているように見えた……

 しかし注目すべきはもう一つの方の動きだった」

「もう一つの方?」

「その一つは真っ直ぐにある場所を目指し進んでいた、ランスとシスの国境付近だ」


 ランスとシスの国境付近? それって……


「もしかして…… オリジン機関本部?」

「そうだ…… その質量体は僅か6時間でオリジン機関本部を滅ぼした」


 は? え? 滅ぼした? 意味不明……


「あの…… 師匠は? シルヴィア・グランデは? オリジン機関本部に居たはずですよね? か……彼女は?」

「生死不明だ、オリジン機関本部の地下都市は完全に破壊された、生存は絶望視されている」


 あの師匠が簡単に死ぬとは思えない…… しかし地下都市の中にいたのだとしたら……


「いったい何が起こってるんだ?」

「お前は分からないのか? その質量体の正体が?」


 そんなの分かるハズ無いだろ、こっちは南極に現れたってヒントしか貰ってないんだぞ?

 いや待て、2万4千平方キロメートルとか言ってたな…… そんなチョットした島より遥かに大きい質量体なんて……


「あ」

「? 神那、分かるの?」


 2万4千平方キロメートル…… 超巨大質量体…… 半年前…… 第6魔王討伐直後…… ウソだろ?


「神那? ねぇ大丈夫? 顔色悪いよ?」

「ウソだ…… 有り得ない…… 物理的に有り得ない!!」

「ちょっ……神那?」



「浮遊大陸アリア……」



「え?」

「我々の見解も同じだ、帰還者たちが持ち帰った情報、半年前に消息を絶った浮遊大陸アリアが、何らかの理由でデクス世界に現れたのだ」

「え? え? ……えぇ?」


 そんなバカな…… 一体どうやって? そりゃ確かにアイツも魔王だから『門を開きし者(ゲートキーパー)』を使えてもおかしくは無い、だが2万4千平方キロメートルもある浮遊大陸を異世界間転移させるなんて不可能だ!

 それともただの偶然、天然トラベラーだとでもいうのか?

 それこそ有り得ない! 第6魔王を倒したのと同じタイミングで…… そんな偶然あってたまるか!


「その後、浮遊大陸アリアは大型テリブルと同じく南極に現れた事に倣って、α(アルファ)β(ベータ)γ(ガンマ)と呼称するようになった。

 南極に残った一番大きなアリアがαアリア、その他二つを世界を彷徨っている島をβアリア、オリジン機関を破壊した島をγアリアと名付けた」


 そんなしょーもない呼称とかどうでもイイよ! てか6時間…… 『アリアの雨』を降らせたのか。

 つーか、今の話マジなの? ドッキリじゃ無くて? もしかしてその机の下に師匠が隠れてたりしないの? ヘルメット被って「ドッキリ大成功!」とか書かれたプラカード持ってるんだろ? 今なら怒らないから素直に出てこいよ。


 …………


 分かってる、現実逃避しても事態は好転しない事は…… あの破壊し尽された世界最大の都市を見れば、ただの冗談じゃ無いのは分かるが…… 信じたくない。



「その後…… どうなったんですか?」

「目的も無く世界を彷徨っていたかに思われたβアリアは、何の偶然かNYに辿り着き、蹂躙し尽した…… 犠牲者は100万人を超える……

 γアリアはランスの第七魔導学院に真っ直ぐ向かった…… そして破壊し尽したらしい」

「? ……らしいとは?」

「βとγの通った後にはあの赤いオーロラが現れ電波が使えなくなる、当然レーダーも衛星もな」


 そのβの方がNYを魔都に変えやがったのか…… そしてγは……


「さて、まだ話しの導入部分だけではあるが、これが現在のデクス世界の状況だ。

 全12魔王の中で最恐、最悪、最凶の最も好戦的な魔王が現れてしまった」


 知ってるよ、シニス世界歴の長い俺達の方が、現状の危険度を正確に把握できてると思う…… シニス世界に帰ろうかな?


「しかしココで幾つか疑問が発生した」

「疑問?」


 なんでアイツがデクス世界に現れたかなんて分かるハズ無い、例え魔王の叡智を持ってしても……


「第3魔王が何故この世界に現れたのかはこの際置いておこう、むしろ問題なのは……

 『奴は何故真っ先にオリジン機関を攻撃したのか?』だ、他に目もくれることなく一直線に……だ」

「は?」


 言われてみればもっともだ、しかし理由は推測できる、オリジン機関は魔王殲滅の為の組織、真っ先に潰すのは道理だ。

 重要なのは何故それを知っているのか? ってコトだ……


 あれれ? ちょっと嫌な予感がするぞ?


「我々は考えた、誰かが第3魔王 マリア=ルージュ・ブラッドレッドに情報を流したのでは無いか……と」


 あ~~~…… うん、ヤバイ、俺達疑われてるんだ。

 フザケンナ!




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