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レヴオル・シオン  作者: 群青
第四部 「転移の章」
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第176話 引っ越し準備


 俺が微パワーアップしてから2週間経った。

 しかしルー◯開発は難航している、一度訪れた場所ならドコからでも飛んでいける便利呪文、現実世界で一番使いたい呪文№1によく選ばれるアレだ。

 あの魔法を開発しようと思うのが悪いのかもしれない、俺のギフトは転移であって超高速飛行ではない。


 カスタマイズはイメージが大事だ。

 余計なイメージが付いてるせいで上手く行かない気がする……

 別に◯ーラに罪はない、俺が一途すぎるのがいけないんだ。

 ハーレムとか本気で考えてるクセにどうしてココだけ一途なのだろう?


 いずれ空の上の魔王城に住むことになるんだ、超長距離瞬間移動はあったほうが良い、もちろんホープでも良いんだが、アレは目立つ……

 ホープがしょっちゅう空中庭園に出入りしてたら、新世代魔王の正体を喧伝して回ってるようなものだ。


 だからホープの所有権のことは隠しておきたかったのに…… クソッ! 全部ジークの所為だ!

 今度空中庭園からヒモ無しバンジーさせてやろうか? 大丈夫、アイツなら粉々になっても復活する……かな? カケラ一つ一つがミニジークになって復活したら気持ち悪いから止めておこう。


 そうそう、俺が新たに得た能力……と言うより技術と言った方がいいかな? 『恩恵創造(ギフトクリエイター)』は他人のギフトを改造することも出来るようだ。

 先日、アーリィ=フォレストの『世界樹女王(ユグドラ・シル)』をカスタマイズしてみた。

 奪った生命力を溜め込める様にしたいとオーダーが出たので、世界樹が実を付けるようにしてみた。

 世界樹の実…… 死んだ人間がダース単位で蘇りそうなパワーを感じる。もちろんただのイメージだ。

 そもそもまだ試してないし、相手の生命を奪う=相手を殺すということだ…… 容易には試せない。

 まぁ、いつか試す機会が…… あるかは不明だが、問題があったらその時修正すればいい。


 それはともかく。せっかく手に入れた力は有効活用しなければ勿体無い、なので深い信頼関係で結ばれている俺の未来の嫁達のギフトをより良く改良してみよう…… と、思ったのだが……


 琉架のどチ~ト能力『時由時在(フリーダイム)』…… 直すべきところが見当たらない。

 『星の御力(アステル)』にしてもそうだ、特に不便はない……


 ミラの『神曲歌姫(ディリーヴァ)』は? これが『劣化歌姫(ノイズ)』だったら改良の余地はあっただろうが、今は直すべき所がない……


 白の『摂理の眼(プロビデンス)』も同様だ、『目口物言(ディープ・サイト)』だったら直す所もあっただろう……


 後は『事象破壊(ジエンド)』と『鏡界転者(レプリカント)』か……

 しかし白とミカヅキは未だギフトを使いこなしていない、しばらく待ちだな。

 ココを直した方がいいとか、ココを変えたほうがいいとか、俺の勝手な考えを押し付けたくはない、案外本人には使いやすかったりするかもしれない。


 …………


 なんだよ…… 結局『跳躍衣装(ジャンパー)』だけじゃねーか! なんで跳躍衣装(ジャンパー)だけこんなに制約が厳しかったんだよ! みんな直す必要のない優秀な能力で羨ましいよ。


 ちなみに伊吹の『世界拡張(エクステンド)』の時間制限&機能拡張の限界を取っ払おうと思ったが出来なかった。

 どうやら能力の根幹付近のプログラムは容易には変更できないらしい。或いは俺の腕が未熟な所為か……


 ………… なんか……

 何気に役立たずな技術だなぁ……

 制限が多いところが俺にピッタリだよ。

 ハァ……


 そうそう、白に調べてもらったんだが、俺の『跳躍衣装(ジャンパー)』はパワーアップして名前が変わっていた。

 その名も『超躍衣装(ハイ・ジャンパー)』!!


 …………


 なんか…… 中途半端な変化だ……

 ミラや白みたいに外的要因によるパワーアップじゃ無く、跳躍衣装(ジャンパー)を改良して使いやすくした程度だから、名前も超躍衣装(ハイ・ジャンパー)とか中途半端なパワーアップに留まったのかも知れないな……

 この分だとアーリィ=フォレストの『世界樹女王(ユグドラ・シル)』には名前の変化は起こらなかったかもしれないな、あったとしても世界樹女帝とかその程度だろ。


 ……女帝? あの奴隷願望丸出しの娘が? ないない。


 そんなワケで俺のパワーアップ計画はなんとも中途半端な結果に終わった。

 確かに使いやすくなったし、戦術の幅も広がった。制限を完全に取り払えれば恐ろしい能力になる可能性もある。

 今後も研究は続けていこう、そして結果を出さなければ! 悪夢の女子会が現実のものとなる前に……



---



 先日、4回目の異世界間ゲート開放を行った。

 その時に異世界間ゲート自動制御システム、通称「阿吽」を設置してきた。この名称に深い意味は無い、そもそも自我を持たない無機物使途に名前は不要だ。

 何となく門番と言ったら阿吽の像かな? そんなノリで名付けた、当然戦闘能力は皆無だ。


 これで以前立てた計画だと次回、5回目の異世界間ゲート開放で我々は帰還する事になる。


 それに伴い我々のギルド『D.E.M.』を解散しようかと思ったら、リルリットさんに止められた。

 今回は公式ルートで帰還するため、誰もいないギルドを残しておいても意味が無いのは分かっているハズ、なぜに止めるのか?


「いえ、貴方はまた絶対に戻ってきます。その時までD.E.M. は休止としておきます」


 だってさ…… 相変わらず優秀なオペレーターだ。完璧に見抜かれてる。

 確証など無いハズなのに確信していた…… 確かに短期間に3回も神隠しにあったヤツだ、4回目があってもおかしくない。

 まぁ、D.E.M. を残しておけるならその方が都合が良いかも知れない。せっかくのSSランクギルドだ、休止にしておいてくれるというならお言葉に甘えよう。


 しかしそれとは別に引っ越しの準備を始めなければならない。

 さすがに名前だけ在籍しているギルドに、ギルドセンターの最上層部を貸し続ける訳にはいかない。

 帰還までの約3週間、ホテル暮らしも悪くないが、昨日とうとう空中庭園ティマイオスの劇的大改装が完了したとの知らせが届いた。

 良かった…… 俺の女神像はデクス世界に持って行くにはデカすぎる、どこかに預けて行くにしても不安が残る。しかし防御力に定評のある空中庭園になら安心して置いておける。


 そんなワケで新居に引っ越しだ。

 その作業中の事だった……


「空中庭園かぁ、私どの部屋にしよっかなぁ? やっぱり見晴らしのいい部屋?」


 なんてコトを言いながら先輩がご機嫌で荷造りしていた。


「先輩、空中庭園に引っ越すつもりなんですか?」

「え?」


 俺がそう聞くと、先輩は地球が滅亡したかの様な顔をした…… とても情けなく悲しい顔だ…… この世の全てに裏切られた人間がする表情ってきっとこんな感じだろう。


「え? それは無いでしょ? ここまで来て私を放り捨てるって言うの? やっぱり私が後輩になったから? だからそんな事言うの? ねぇ?そうでしょ? 私が後輩になったからなんでしょ? そうなんでしょ?」

「いやいや! 超ネガティブな誤解しないで下さい! 先輩は帰るんでしょ? 3週間後にデクス世界へ」


 今にも包丁を取り出して刺してきそうなくらい、落ち込んだ表情の先輩をなだめる。目のハイライトを消すな! 怖いから!

 ちょっと情緒不安定になってる?


「先輩は俺と違ってこっちの世界に帰ってくる理由が無いから、引っ越し荷物は全部持ってデクス世界へ戻ると思ってたんですけど?」

「あぁ…… そう言う意味か……」


 フゥ…… 落ち着いてくれたか……


「私だって異世界に別荘の一つも欲しいよ! 私は魔王を5人も倒した世界最強ギルド発足人の一人だよ? それくらいイイでしょ?

 デクス世界に帰ればまた忙しい受験戦争とか待ってるんだよ!? タダでさえ私は巨大なハンデを背負ってしまったのよ!

 学校を卒業して社会人となり、死ぬ時まで安らぐことのない忙しい日々を過ごさなければならない……

 そんな時、ふと思うかもしれないじゃない? 『そうだ 異世界、行こう。』って!

 神那クンに頼めば向こうとコッチを自由に行き来できるんだし……」


 そんなちょっと古都へ行ってみようみたいなノリで言われても…… 第11魔王を足代わりにする気満々だし…… 俺は新幹線じゃないんだからな?

 しかし先輩が社畜として生きる未来を受け入れているなら、少しくらいは応援してあげよう、俺と先輩の仲だ、一回500ENでイイよ。


 しかしそうか…… やっと実感が湧いてきた……

 神隠しはいつも突然だったから、心の準備も感慨にふける暇も無かったが……


 俺たちは帰るんだな…… 最初の神隠しから早二年…… 慣れ親しんだこの部屋ともお別れだ。

 辛いことも…… 楽しいことも…… 悲しいいことも…… たくさんの思い出が走馬灯のように蘇る……


 ………… あれ?


 ギルドホールって引っ越ししてるから、俺がこの部屋に住んだのって半年にも満たないじゃないか?

 辛い思い出も楽しい思い出も特に思い出せない…… せいぜい夜中にソロプレーに励んでいたらハゲ暗殺者が邪魔しに来たことくらいか…… むしろギルデロイの宿で女神の裸を目撃したラッキースケベ事件のほうが鮮烈な思い出と言える。


 じゃあイイや、さらばギルドホールよ! 禁域王宮(ハーレムパレス)に引っ越しだ♪ ヒャッホゥ!



---



「おにーちゃんコレも持ってって!」


 伊吹がさっきから小物を押し付けてくる、引っ越しは我がギルドが保有している4つの魔神器を駆使して行われる。

 引越し先が空中庭園では業者に頼むわけにも行かないからな。


 それにしてもこの世界にきて半年も経ってないのに伊吹の荷物が異様に多い…… こんなにお小遣い上げてたっけ? もしかしてお前一人でクエストとか受けてないだろうな?


「おにーちゃんコレも!」


 真空パックされた獣の群れが襲いかかってきた、違った、ヌイグルミだ。きっと膨らんでいれば野犬の群れってくらいの数が居るだろう。それを投げつけられた。


「なぁ伊吹、お前も引っ越す気なのか? もうすぐ帰るんだぞ?」

「おにーちゃんもお姉様もまたコッチに戻ってくるんでしょ? だったら私も戻ってきていいじゃない」


 いや、戻ってきても良いんだけど、お前には戻ってくる理由がないだろ?

 俺と琉架は人に戻る方法が見つからなければ、いずれコッチに移住することになる。


 そう言えば三回目の神隠しに遭ってから『両用時流(リバーシブル)』を使用した成長をしてなかったな…… ミラが…… 白とミカヅキが魔王化したから俺達だけ歳を取るのもおかしなものだし……

 しかし琉架とミラはまだまだ伸びしろがある、白は将来有望だし、ミカヅキがどれだけ実るかも知りたい。

 俺自身、もう少し成長したい所だ。妹に身長越されたりしたらショックだし……


「おにーちゃんコレも!」


 俺自身、もう少し成長したい所だ。何となく妹に見下されてる気がするし……



---



 空中庭園ティマイオス


 その外観は以前とさほど変わらない……

 しかし中央の神殿付近にはオルターからパクってきた昇降機が取り付けられ、各階層を繋いでいる。

 これで足腰の弱いお爺ちゃんお婆ちゃんも安心だ。


 我々の居住の中心となる第四層へ向かう、昇降機で移動も楽々だ。


 美しい庭園を抜け、俺達の愛の巣である屋敷に至る。

 屋敷の前でジークとネフィリムが並んで出迎えてくれた…… まるでホームステイしに来た学生を迎える夫婦のようだ…… お前等、もしかして結婚した?


 外壁等に多少の手直しの跡が見えるが、大きな変化は無い、しかし内部は嫁達の希望を全て叶えるよう頼んでおいた。

 その結果、屋敷内部に住みついていた精霊たちは出ていってしまったかも知れないが、監視されなくなったと考えればむしろプラスだ。


 てか、入り口の脇にオルターに置かれていた大型レトロ家電の山がある…… こっちに持ってきちゃったのかよ! 仕方ない、アーリィ=フォレスト専用の部屋を作ってブチ込んどくか、正直粗大ごみにしか見えないからな。


「取りあえず屋敷の中の事はみんなに任せる、部屋割りとかも自由に決めてくれ、俺はちょっと神殿に行ってくるから」

「あれ? 神那は希望とか無いの?」

「あぁ、任せる」


 本当は希望はある、が、それを口に出すほど俺は愚かじゃ無い。

 希望というよりは願望、願望というよりは欲望だからな。

 なのでココは嫁達に任せ、その全てを受け入れる。

 前回のギルドホールの件からも、俺に割り当てられるのは一番いい部屋の可能性が高い。本当は隅っこの狭い部屋でも構わないんだが、全て任せる。


 とにかく住居の事はみんなに任せて、こっちはティマイオスの中枢システムを完成させる。

 と言っても、アーリィ=フォレストに改良してもらった人工知能をセットするだけだ。


 ちなみにこの人工知能、アーリィ=フォレストのアドバイスに従い新しい名前をつける事にした。前の主人である能無し魔王の事は記憶領域から削除し、新しい主の元、新しい魔王城を管理するために、新しい名前を与える……

 要するに生まれ変わったのだ。


 今日からお前は魔王城オルター操作支援インターフェイスシステム・KⅡ改め……

 新・魔王城『禁域王宮(ハーレムパレス)(仮名)』 操作支援インターフェイスシステム・プラトンだ。




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