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レヴオル・シオン  作者: 群青
第四部 「転移の章」
181/375

第175話 インプルーブ


「刻印は成功ですね、10分もすれば定着すると思います」


 アーリィ=フォレストがロッテ○マイヤーさん風に眼鏡をクイッてしてる…… いや、あの人はモノクルじゃ無かったか……

 その仕草はアーリィ=フォレストに合って無いと思う。

 それはもっと冷静沈着なインテリキャラがやるべきで…… そう言えば彼女もインテリキャラって言われてたんだな…… 1200年前は。


「アーリィ=フォレストは『魔道具創造(クラフトクリエイター)』でどんな魔道具を創った事があるんだ?」

「そうですね…… この間も言いましたが「創造」と言ってもゼロから新しいモノを創れる訳じゃ無いんです、あくまでもカスタマイズスキルです。

 私の場合は効果の低い魔道具をカスタマイズして強力な魔道具に改造してます。

 表面的なちょっとした改変なら簡単にできますが、根本から大幅に改変するのはかなり大変なんです」


 そりゃ簡単に強力な魔道具をポンポン創れるワケ無いよな。

 そんな事が出来るなら要塞龍を撃退する魔道具をあの時創ってるハズだ。


「私が今まで創った魔道具で一番大変だったのは…… 4Dラボもかなり大変でしたが、やっぱり『超広域森林結界(フォレスト・ガード)』ですね」

「『超広域森林結界(フォレスト・ガード)』…… もしかして森の結界の事か?」

「はい、この古代都市全域を覆ている結界の事です、大変でした」


 そうか…… それじゃ気軽に「俺用の最強武器創って」なんて頼めないな。

 むしろ頼んだら年単位の時間を掛けて創ってくれそうだけど、それ故に余計に頼めない。それじゃ丸っきり奴隷だから……


「そろそろ良さそうですね? ちょっと見てみます」


 そう言ってアーリィ=フォレストに見つめられた……


「…………」

「…………」


 瞬きすらしない…… まさか『緋色眼機能拡張鏡(ミッシング・グラス)』には透視能力とか備わってないだろうな?

 イヤン♪ 胸と股間を隠した方がいいかな? いや、ココは堂々と仁王立ちで……

 まぁ、アーリィ=フォレストが俺の裸をガン見したら、絶対に変態的な心の声が漏れるからすぐに分かるが……


「…………」

「…………」


 あの…… アーリィ先生、あんまり沈黙が長いと不安になるんですが……

 もしかして俺の能力値じゃ習得できない? 確かに魔王の中では低いほうだと思うが……


「…………」

「アーリィ=フォレスト?」

「あ! ゴメンナサイ! その…… なんと言いますか……」


 もしかしてホントに駄目だったのか? だったらハッキリ言って欲しい、その時は才能が無かったんだと諦めるて空中庭園の隅っこで小さく目立たず生きていくから。


「カミナ君の刻印が見たこと無い形になってたもので……」


 おぉ? 見たこと無い形? もしかしてレアを引き当てたか?


「コレは困りましたねぇ……」

「ん? 何が困るんだ?」

「先程も言いましたが上位神術はカスタマイズスキルです、対象物を改変する能力です。

 その対象物が分からなければ、当然試すことも出来ないんです。

 それともこの世に存在するあらゆるものを端から試していきますか?」

「は?」


 oh…… そいつは問題だ、確かに大問題だ。

 ……が、そんなに心配することもないと思うぞ、何故なら俺の嫁には全ての真理を見通す目を持つ子がいる。

 白の『摂理の眼(プロビデンス)』なら答えを出せると思う、問題は今現在、絶賛制御訓練中って所だが……

 それはあくまで最終手段、訓練が完了するまで待つつもりはない。

 ちょっと推理してみよう。


「なぁ、アーリィ=フォレスト、その刻印ってのはどれくらいの種類があるモノなんだ?」

「そうですね…… 星の数とは言いませんが、多分億はくだらないかと……」


 億!? マジか…… そんなに細分化されてるのか。


「もちろん近似種や同系統でグループ分けは出来ます」

「例えば?」

「そうですね…… 例えば大気改変の下位に酸素改変や窒素改変などピンポイントのカスタマイズが有ります。

 それらは大気改変の刻印と近しい形となって現れます」


 げ! 上位神術の中でも上位能力と下位能力に別れるのかよ!

 あんまりショボかったり変なのだったらやだなぁ……

 人の鼻くそを改変する能力だったり、ホクロ毛の長さを改変する能力だったら…… このままアンノウンの方がまだマシだ!


「カミナ君の刻印は前例が無いんです、完全に未知の刻印です」


 この未知の刻印がレアかハズレか…… 100万EN注ぎ込んでもレアを引き当てたいトコロだ。


「そんなに違うモノなのか? 億もあれば似ているのだって幾らでも……」

「いえ、そういう問題じゃないんです、本来の刻印は円の中に比較的単純な図形と、その隙間を埋めるように細かな図形で埋め尽くされてるような形になります。

 つまり刻印は例外なく丸いんです。

 ところがカミナ君の刻印は三角形です。根本から違うんです」


 あぁ…… なるほど…… 何と言うかぐうの音も出ない感じだ……


「円の中に三角形は魔力改変系なんですが、カミナ君に現れた刻印は三角の中に円です」

「前例…… 前例無しか…… 古代神族(レオ・ディヴァイア)は神術を使いこの世界を創った…… 前例が無いってことは、古代神族(レオ・ディヴァイア)が創り出さなかったモノって事にならないか?」

「そう……とも言えますね」


 つまり古代神族(レオ・ディヴァイア)が創造していない…… 終末戦争の前には存在せず、戦後に存在しているもの……


 あ……


「魔王だ……」

「え? 魔王?」

「より厳密に言うと魔王因子、終焉の子の祝福…… つまり恩恵だ」

「恩恵……な…なるほど、確かにその可能性はありますね、つまり『恩恵創造(ギフトクリエイター)』ってことですね! ギフトをカスタマイズできる神術!」


 ギフトのカスタマイズ…… これ以上ない程のパワーアップ! ……ってワケでも無い。


 上位神術が物体のカスタマイズスキルだと聞いた時、真っ先に思い浮かんだのは俺のギフト『血液変数(バリアブラッド)』の事だ。

 このギフトは血液をカスタマイズする能力と言って良い。要するに上位神術と同種の力だ。

 上位神術の中には血液をカスタマイズする担当があるのかも知れない、いや、億を超える種類があるならきっと存在する。

 つまり『恩恵創造(ギフトクリエイター)』を使っても『血液変数(バリアブラッド)』を改良する余地が無いって事だ。何故なら上位神術を使わなくても自力でカスタムできるんだから……


 だが幸いにも俺にはもう一つギフトがある。

 『跳躍衣装(ジャンパー)』だ、ハッキリ言ってこのギフトは直したいトコだらけだ。

 この制限がキツ過ぎるギフトを直せれば、多少のパワーアップになるだろう。


 試してみる価値はある……



---



「対象が物質で無い場合は、頭の中でカスタマイズするイメージが重要になります。頭の中に積み木でも良いですし、粘土でも良いです、ディスプレイに映された画像でも良いです、とにかく自分がカスタマイズをイメージしやすいモノを思い浮かべて下さい」

「了解」


 真っ先に思い浮かんだのは、ゲームのキャラメイキングに似たステータス画面だった。

 ネフィリムの事を恋愛脳筋とか思ったが、あまり人のコトは言えないな…… 俺もしっかりゲーム脳だ。


「いきなり本命の改良をしようと思わず、まずは小さなカスタマイズで感覚を掴むのがコツです。

 物質だったら一部分の色を変えてみたり、魔法だったら敢えて消費魔力を増やしてみたり…… 簡単に改変できるカスタムがオススメです。

 一回感覚を掴んでしまえば、後はそんなに苦労しないと思いますよ?」


 なるほど、なかなかいいアドバイスをくれる。アーリィ=フォレスト侮りがたしだ。


「もしカミナ君の予想通り『恩恵創造(ギフトクリエイター)』の神術を習得していれば、改変は直感で理解ると思います。ただギフトの改変がどれくらい大変かは予想が出来ないので、どれだけ時間が掛かるか……

 だから今日は…… その…… と…と…泊まっていって下さい///」

「あ……あぁ……」


 元々そのつもりだったけど、顔を赤らめながら言うなよ……


 今日はギルドにジークも居ないから安心して外泊できる、まぁ、元々ジークは人畜無害だが。

 D.E.M. では男共が居ないからきっと女子会でも開いているのだろう。


 ……ん? 女子会?


---

--

-


『ねぇねぇ、第11魔王のコトどう思う?』

『あ~、アレ、絶対私たちより弱いよね?』

『弱い癖に禁域とか♪ マジ身の程知らずって感じよねぇ~♪』

『大体ハーレムってのは強い♂が♀を囲うモノでしょ? あの程度の実力でマジ片腹痛いって感じ?』

『笑止千万♪ 分不相応である♪』


-

--

---


 最後の誰だ?

 いやいや、ウチの子達はこんな事言わない、先輩や伊吹ならいざ知らず、ウチの嫁は絶対言わない!

 でも今すぐ帰ってD.E.M. の禁止事項に女子会を追加したい気分だ。


 大丈夫、落ち着け…… こんな未来を回避するために俺はココに来たんだ。

 俺に出来る事は一秒でも早く『恩恵創造(ギフトクリエイター)』を習得する事だ!


 コレで予測が外れて『鼻くそ改変能力』とかだったらどうしよう……?



---


--


-



 翌日 正午 ―――


「オファヨ~ゴジャィマ~フ」

「あぁ、おはやくないぞ? もう昼だ」


 アーリィ=フォレストが寝起きのダラしない格好で現れた。


「コレでも少しずつ生活リズムを治そうとしてるんです…… あれ? カミナ君、もしかして徹夜しました?」

「ん? よく分かったな?」

「はい、よく鏡の前で見かける顔色ですから」


 顔色に出てたか? 俺も徹夜には慣れてるんだが、こっちの世界では比較的規則正しい生活送ってるしな、その僅かな違いを見抜くとは、さすが引きこもりプロだ。


「もしかしてずっと上位神術の練習してたんですか?」

「あぁ、おかげで『跳躍衣装(ジャンパー)』のカスタマイズはほぼ完了した」

「え!? たった一晩で!? 『跳躍衣装(ジャンパー)』って魔王由来の恩恵ですよね?

 そんな簡単に出来るものなんですか?」

「簡単じゃないよ、結構苦労した。

 まだ満足いくデキじゃないけど、不満だった所は大体直せた」


 自分でカスタマイズしてよく分かったけど、『跳躍衣装(ジャンパー)』は制限がキツすぎる!

 主人公に苦労を強いる運命の悪意を感じる。

 そんな使い辛いギフトで2400年も魔王レイドは頑張ってきたんだなぁ…… さぞ苦労した事だろう。


「それじゃカミナ君の担当神術は本当に『恩恵創造(ギフトクリエイター)』だったんですね?」


 そういう事になる…… 本当は人体改造とかが良かったんだが…… ゴメンよ先輩、俺は先輩に巨乳を授けることはできそうに無い。


「あの…… 『跳躍衣装(ジャンパー)』のどこを改良したのか聞いてもイイですか?

 もともと魔王由来のギフトは神代書回廊(エネ・ライブラリー)に乗らないので、どんな性能か知らないんです…… 興味があります!」

跳躍衣装(ジャンパー)を?」


 普通なら自分の能力を他人に教えたりしない、しかし俺達は同盟を組んでいる。

 損得勘定は抜きにしても、ココは教えておくべきだろう…… それは信頼関係にも繋がる。

 彼女は以前、俺を信頼しその能力『世界樹女王(ユグドラ・シル)』を見せた、その信頼に答えるべきだ。


 更に言ってしまえば彼女には話す相手がいないから何の問題も無い。

 元々よく知らない相手にペラペラお喋りするキャラでも無いしな……


「そうだな…… 跳躍衣装(ジャンパー)には最大射程が21.48メートルという由来がよく分からないショートジャンプ制限があった、今回それを取り払うことに成功した。

 もちろん飛距離が伸びれば消費魔力も増えるが、理論上はどこまででも跳べるようになった。

 まぁ、実際は空間認識の限界距離、4800メートル程度だ、ただし目視できる範囲だったらもうちょっとイケる」

「ほぅほぅ、約5km弱ですね、てか、魔王レイドは20メートルちょっとしか跳べなかったんですね?

 テレポーターだからってビビッて損した」


 ビビってたんだ…… まぁ何時何処に現れるか分からないテレポーターは敵に回したくないよな。


「それともう一つ、イナーシャルキャンセラーのON/OFFを可能にした」

「いなー…… 何ですって?」

「イナーシャルキャンセラー、慣性無効化能力…… 運動エネルギー無効化と言った方が分かりやすいか」

「運動エネルギーの無効化…… そんな機能が備わってたんですか?」

「あぁ、便利な能力なんだが、テレポートを攻撃に使う時には邪魔だったんだ、それを取り払ってみたんだがココで一つ嬉しい誤算があった」

「嬉しい誤算?」

「イナーシャルキャンセラーをOFFにすると、消費魔力が大幅に減る、それこそ半分以下になった。

 運動エネルギー無効化は物理攻撃無効化とほぼ同義だ、消費魔力が大きかったのも納得だな」


 ただ全ての制限を取り払えた訳じゃ無い、生命を欠損させる転移は実現しなかった。

 つまり跳躍衣装(ジャンパー)を直接攻撃に転用する事は出来なかった…… 出来るのは鉄機兵の様な無生物に限られる。

 まぁコレが出来たらチートすぎるからな、仕方ない。


 一晩で改造できたのはココまでだ。

 後は一度訪れた場所なら距離無制限で転移できる超長距離テレポートが欲しい。コッチは今後の課題だな。


「これだけ大幅にギフトがパワーアップしたのなら名前も変わってるかもしれませんね?」

「は?」


 あぁ、確かにミラの『劣化歌姫(ノイズ)』が『神曲歌姫(ディリーヴァ)』に変わったり、白の『目口物言(ディープ・サイト)』が『摂理の眼(プロビデンス)』に変化した例もある……

 もしかしたら跳躍衣装(ジャンパー)も生まれ変わってるのかも知れないな。

 帰ったら白に見てもらうかな? 先輩にグチグチ言われるかも知れないが……


「残る疑問はカミナ君の『恩恵創造(ギフトクリエイター)』が他の人のギフト改造にも使えるのか? って点ですね」

「他の人のギフト改造?」


 そうか…… 恥ずかしながら自分の事しか考えてなかった。

 しかし相当な信頼関係が無ければ、コレは実現しないだろ? 下手したらギフトを全く使えなくすることも出来るんだから……

 今度勇者を拉致って改造台に縛り付けて、悪の組織っぽく改造手術してみようかな? 報酬としてデッカイ風車の変身ベルトをプレゼントしよう。後、首に赤いマフラーを……


「カミナ君…… 『世界樹女王(ユグドラ・シル)』で試してみませんか?」

「なに?」

「いえ、無理にとは言いませんけど……」


 俺、この子にここまで信頼されるような事したっけ?

 もちろん裏切るつもりは一切無い、だってアーリィ=フォレスト可愛いし……

 良くも悪くも純粋か…… ならばその信頼に信頼を持って応えよう。


「どこか『世界樹女王(ユグドラ・シル)』に直したい所があるのか?」

「はい、カミナ君には一度お見せした事がありますよね? 『血吸い蛇(ヨルムンガンド)』を……」


 あの生命を吸い尽くす凶悪な技か……


「アレで集めた生命力は一定量しか溜めておけないんです、『生命回帰(ヘル)』で攻撃に転化できますが余った分は最終的に放出して消え去ります。

 コレを何とか溜めておけないかと…… だって命ですよ? 勿体ないじゃ無いですか。

 何に使えるかは分からないですけど、何かに使い道があるかも知れない」

「ナルホド…… MOTTAINAIか…… 確かにな……」


 上手くすれば世界樹女王(ユグドラ・シル)の魔力消費を抑えられるようになるかもしれない。


 やってみるか、アーリィ=フォレストには何度も助けられてるし……

 まぁ助けてもいるが……




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