第173話 D.E.M. 女子会2 ~女魔王の集会編~
さあ引越しだ!
この先永遠に住む事になるかも知れない終の棲家に……
…………
言葉にするとちょっとげんなりする…… 本当に永遠に生き続けなければいけないのだろうか?
現状、人に戻る手段は見つかって無い。
だからと言って自殺するのも誰かに殺されるのも真っ平ゴメンだ。
可愛い嫁達に囲まれてずっと暮らす…… コレは素晴らしい。
しかもみんな歳を取らない! 永遠にもぎ立てフレッシュ瑞々しいままだ!
ウィンリーを見てると精神だけ年を取るという事も無さそうだしな。ずっと初々しい少女のままのだ。
しかしそれは言い換えれば永遠に停滞していると言えるのでは無いか?
進歩の無い生物は生命として終わってる…… 古代神族が衰退していった理由もそれだった。
魔王という生物は発生と同時に滅びに向かっている? 誰も近づけない空の上に引きこもっていれば、何れ滅びるのでは無いか?
しかも滅びると言っても死ぬ訳じゃ無い、只々何をするでもなく無為に時間を過ごすだけの生きる屍状態だ。
ココは先人たちを見て生き方を考えよう、何もしなければ第1魔王 カオスや第7魔王 アーリィ=フォレストみたいになるコト請け合いだ!
元々神の一部であり不老生物、龍人族出身の第1魔王 カオス・グラン・ドラグニア……
1200年前から眠りに就いているという…… 何か理由が有るのかも知れないが、精神が耐えられないなら眠りに就くというのも一つの手だ。
第7魔王 アーリィ=フォレストは引きこもっていたが、ずっと研究していた。要するに生きる目的があった。
第10魔王 プログラム・プロメテウスはよく分からん…… しかし次代神族の元へ馳せ参じるという目的は持っていた。ジャバウォックを捕えていたのもその目的を達成するためだ。
他の魔王達も自らの領域を持ち支配をしている。目的は色々だろう、ただの暇つぶしかも知れない。
重要なのは目的だ! それが無ければ生物として成り立たない!
そこで俺が注目したのは第6魔王 ミューズ・ミュースだ。
そう、ミラの母親であり世界に名を轟かす淫乱糞ビッチだ。
彼女に倣って子作りとかシテみちゃったらどうだろう?
コレは生きる活力になる! 何より禁域王に相応しい!
今はまだ準備段階だが、何れは天空の楽園で互いの身体を貪り合う爛れた関係になってみたいモノだ!
そんな日が一日でも早く訪れる事を願って今日を精一杯生きよう!
……と、言うワケで、新たな拠点を手に入れた禁域王の所信表明演説とさせてもらう。
だけどまだ引っ越しは出来ないんだよなぁ……
まずはリフォームだ、女の子たちの希望を全て取り入れた屋敷が完成してからだ。
俺は特に希望を出す気は無い、男子禁制とかにされない限りは…… 例え屋敷の中が蛍光ピンクに塗られていても受け入れる。
まぁ、ウチの子達はそんな事言いださないだろうけど…… 信じてるからな!
人族の10倍の体格を持つ巨人族の工夫を目の前にニンジンを吊るした馬車馬のように働かせ、短期間でリフォームを終わらせる。
細かい所までは流石に無理だろうが、それはこっちでやろう。
学院の研究室を夢の休憩所に魔改造した俺のDIYスキルを披露してやる!
しかし他にも問題はある、ティマイオスの聖遺物制御の問題だ。
常に誰かが居ないといけないというのは都合が悪い。
今はジークに留まってもらい、リフォームの現場監督をしてもらっている。
しかしずっとこのままと言う訳にもいかない、何せ今もネフィリムが護衛とか言ってティマイオスに入り浸っているらしい…… 超防御力を誇る空中庭園で護衛とか不要だろ、ましてジークは不能不死者だ!
豚に真珠、猫に小判、ジークに鋼の鎧だ!
俺の禁域王宮を穢すな……
今のままジークを残してデクス世界へ帰還とかしたら、戻って来た時にはティマイオスにネフィリムの部屋とか出来てそうだ…… 勘弁してくれ…… そういう事はラグナロクでヤッてくれ。
そこで思い出した、俺、人工知能持ってるじゃん。
聖遺物で動くティマイオスの管理者は魔力を持つ必要が無い。つまりあのケツとかいう人工知能でもイケるんじゃないか?
もちろん人工知能に聖遺物を使えるかは微妙な所だ、しかし試してみる価値はある。
そんなワケでキング・クリムゾンへお出かけだ。なんだか最近アーリィ=フォレストとばかり一緒に居る気がする…… ウチの嫁達が嫉妬しないと良いんだけど…… 自惚れ過ぎかな?
---
--
-
---霧島伊吹 視点---
私たちは新たな本拠地を手に入れた。
しかし引っ越しはまだ先になりそうなので、一時的にガイアに戻ってきた。
今、D.E.M. のギルドホールには女子しかいない……
おにーちゃんは聖遺物の制御がどうのこうの言って大森林へ向かった、つまり第7魔王のトコロだ、あのおにーちゃんの陰に隠れていたボカロっぽい子だ…… 魔王の威厳ゼロだったなぁ……
まぁ私が知る女の子魔王の中で威厳が溢れ出ている人物なんて一人もいないから今更か……
それよりも最近おにーちゃんとアーリィさんの仲がイイのが気になる…… その内『禁域王争奪! 女だらけの魔王大戦!』とか始まらないよね? そんなの始まったら本当に世界の終りだ……
おにーちゃんには一応警告しておこう、まったく世話の焼ける鈍感おにーちゃんだ。
そしてD.E.M. もう一人の男性、ジークさんはティマイオスにお泊りしてる。
あのビキニアーマーの女戦士ネフィリムさんと一緒にだ! やっぱりそうなのかな? デキれるのかな? あの二人……! 今頃空中庭園で二人っきりの甘い時間を過ごしているのかな?
しかしその姿がどうしても想像できない、私の頭の中ではどうしても二人が交互にお互いの足を押さえて腹筋しているイメージしか湧いてこない……
本当にありそうだから困る。
そして普通に考えると十代女子しかいないギルドホールは防犯面で少し不安が残る所だが、全く不安を感じない。
何せ世界最強の魔王様が四人も居るんだから……
むしろ禁域王とか呼ばれているゲス魔王がいない事の方が安全な気がする…… ジークさんというストッパーが無いし……
そんなワケで今日は十代女子だけでギルドホール貸切状態だ。
まぁ、自宅みたいなモノだし貸切って言うのもおかしなモノだが……
みんなと一緒にお風呂に入って、みんなと一緒に寝る。おにーちゃんのハーレムを寝取ってやるゼ!
邪魔者がいない今がチャンスだ!
……なんて思ってたんだけど……
「それではただ今よりD.E.M. 女子会を開催したいと思います」
女子会が始まってしまった……
ミカヅキさんが開会を宣言する、女子会ってアレだよね? 前回、禁域王の魔王ハーレム伝説を解明した……
世界の行く末を決定づける様な重大事項が軽いノリで決められた……
なぜ妹の私が兄のハーレムについて話し合わなければならないのか……!
高まっていたテンションが一気に下がっていくのを感じる…… もう、私だけ自室で静かに寝ようかな?
「まず、当初の予定と順番が違ってしまいましたが、私と白様の魔王継承が無事成功しました」
「ん? 予定? もしかしてミカヅキさんと白ちゃんって最初から魔王になるつもりだったの?」
「はい、すみませんでした…… お嬢様とミラ様には内緒にしていましたが、私と白様は最初から魔王になるつもり満々でした」
「え? 何で? だって魔王って……」
「全て覚悟し、自分達で決めた事です。それに予言されていた事ですから……」
「予言?」
そういってミカヅキさんが取り出したのは、例の魔王伝説が描かれた壁画の写真…… あんなアホな壁画が存在しなければ、こんな事には成っていなかった……
「あ、コレって確か魔宮で見た……」
「あぁ、そうか…… そういう事だったんですね?」
「え?え? ミラさんどういう事?」
「この壁画はカミナ様と私たちの未来を描いたものだったんです」
「私たちの未来…… そっか、七大魔王同盟……」
あぁ…… お姉様は天然……じゃ無くて純粋だなぁ……
でもね? 違うんだよ、その壁画に描かれてるのは魔王同盟じゃ無くて、ある一人のゲス男の醜い欲望そのものなんだよ……
「お嬢様違います、七大では無く八大魔王同盟です」
「え? 八大? だって…… え~と…… 神那と私とミラさんと白ちゃんとミカヅキさん…… それとウィンリーちゃんと…… アーリィさん?
あれ? ホントだ、もう一人いる……」
そう、壁画に描かれてるのは全部で八人、つまり……
「そうなんです、つまりもう一人…… 私たちの仲間になる魔王が存在するんです。
それが本日最大の議題です」
「もう一人増える…… また増える…… 女の子が増える……」
そう、これだけ色とりどりの花が咲き誇っているのに、更にもう一本花が増えるのだ…… マジでおにーちゃん死なないかな? なんなんだよアイツ!
「今現在、可能性があるのは……
第3魔王 マリア=ルージュ・ブラッドレッドと第12魔王 リリス・リスティスの二人です」
「でも第3魔王 マリア=ルージュって……」
「そうです、行方不明です。しかしいつか復活して再び現れる可能性が高いと思われます」
正直帰ってきて欲しくないんだけど…… 最凶の魔王がおにーちゃんのハーレムに入る可能性は限りなく低い。アシカの群れにシャチが混ざって仲良く暮らしてるくらいあり得ない。
「う~ん…… 復活しても魔王同盟には参加しない気がするなぁ……」
「だとすると一番可能性が高いのは第12魔王 リリス・リスティスですね。
もちろん誰かが私たち七大魔王同盟以外の魔王を倒し、その力を継承し、新たな女魔王になる…… そんな可能性もありますが……」
「そんな事が出来そうな女性…… 師匠…… とかかな? 魔王リリスはデクス世界に居るし有り得るかも……」
師匠って王連授受じゃ無くて元・創世十二使のシルヴィア先生…… シルヴィア・グランデ先生の事だよね?
これだけは言える、絶対に有り得ない!
確かにあの人なら魔王を倒せそうだけど、問題はそこじゃ無い。
シルヴィア先生がおにーちゃんのハーレムに入る事が絶っ対に有り得ない!!
この際、年齢は考慮に入れない、ウィンリーちゃんやアーリィさんは2400歳越えなんだし…… それでもやっぱり有り得ない! おにーちゃんとシルヴィア先生はどう考えても相性が悪い。
「それ以外で魔王を倒せそうな女性って言うと…… あ」
お姉様が何かに気付いたように視線を走らせる…… その先に居るのは……
私とサクラ先輩だ……
…………
無い無い!! 絶対に無い!!
確かにD.E.M. ならそれも可能でしょう! しかしマンガやゲームじゃないんだから、血の繋がった兄のハーレムに入るとか天地がひっくり返っても有り得ない!! くっそ気持ち悪りーよ!!
お姉様! 天然も大概にして下さい!!
「いや、琉架ちゃん、それは無いよ…… 前にも言ったかもだけど、私は神那君に恋愛感情とか抱いてないから、生意気な親戚の男の子って感じだから」
「え?え? な…なんで恋愛感情が出てくるんですか!?」
あぁ…… お姉様は本気で魔王同盟の事を考えてたのか…… マジで純粋だ…… 穢れ無き女神だ…… それに比べて私ときたら……
「あぁ、うん…… ゴメン、確かに関係無かったよね? でも私が魔王になるコトは無いから」
「私もです…… 魔王になるコトは無いでしょう」
てか、多分最後の一人は魔王リリスだよね?
神隠しに遭う直前、一瞬だけだけど相見えた魔王リリスは…… 超美人だった!
あの美しい灰銀色の髪とか絶対におにーちゃんの好みだよ、ドストライクだよ! 妹の私が言うんだから間違いない。
ただ一つだけ問題があるとすれば、魔王リリスは確実に私たちの敵だって事だよね?
いくらあの女誑しでジゴロでゲスなおにーちゃんでも、明確な敵をハーレムに入れるだろうか?
それともやっぱり私たちの知らない誰かが魔王リリスを倒すのだろうか?
この謎は近い将来、解明されるだろう…… 私の義理の姉が更にもう一人増えるのかぁ……
今度はちゃんと年上っぽい人が良いなぁ……




