表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
レヴオル・シオン  作者: 群青
第四部 「転移の章」
171/375

第165話 顔合わせ


「神那クンがまた女の子を手籠めにした」


 失礼な事を言うな! 誰がそんな事するか! しかも「また」ってなんだ!? 「また」って!! ンな事したコトねーよ!!


「おにーちゃん、死ね!!」


 伊吹の剛速球レベルの心無い言葉が俺の心のHPをガンガン削る…… 俺のステータス画面が赤く染まる前にこの攻撃を止めさせなければ。


「うぅ…… 無理矢理なんてヒドイです、初めての時はもっと優しくしてくれたのに……」


 おい! 捏造するな! 初めての時、お前バラ鞭渡してきて「容赦なくぶって下さい」とか言ってたじゃねーか。妙な小芝居すんな!

 もしかして仕返しのつもりか? 結構シャレにならないからヤメテ。


「それでカミナよ、そちらの少女は誰なのだ? まぁ予想はついているのだが……」


 ジークはマイペースだ、たまには俺の肉壁になって先輩と伊吹の攻撃を止めろよ。



 ギルドD.E.M. は突如襲来した第7魔王の攻撃で大混乱していた。

 俺がリーダーやってるギルドの一室なのに、なぜ俺の味方が一人もいないんだ?



「一体どうされたんですか? 廊下まで声が…… アラ?」

「? お客様ですか?」


 そんな混沌とした場へ、日課の訓練を終えたミラとミカヅキが現れた。


『うぉぉお!!? アーリィか!? 何でこんな場所におるんじゃ!?』


 そんな中、いち早く反応したのはアルテナだった。

 この公開処刑じみた法廷に頼れる弁護士が現れた気分だ! 頼む! 俺の無実を証明してくれ!


『あのアーリィが自分のテリトリーから自ら出てくるとは……とても思えん!

 よもや主殿…… 拉致ったのか?』


 俺に味方は居なかった…… 現れたのは場をさらなる混沌に導く嘘情報端末だった…… お前等いい加減にしろよ?


「ア……アーリィ=フォレスト様ですか? 以前はまともに挨拶も出来ずに申し訳ございませんでした」

「!!」


 そんな中、今にも集団リンチでも始まりそうな場の状況を動かしてくれたのはミラだった。

 アーリィ=フォレストはミラを見た途端、俺の陰に隠れて威嚇し始める…… 以前、魔王同盟の顔見世に行った時からずっとこんな感じだ。

 ミラは謝っていたが、前回、ちゃんと挨拶はしてるんだよな…… 相手が聞く耳持た無かっただけで……


「あ……あの、アーリィ=フォレスト様?」

「うっ……がるるるるる……!」


 相変わらずこの有様だ、しかし一瞬、アーリィ=フォレストの威嚇に葛藤が見えた気がする。

 多分本人も分かっているのだろう、ミラとミューズは違うという事を……


 とにかくアーリィ=フォレストが俺の陰に隠れた事により、俺が性犯罪者じゃない事は分かって貰えたようだ。

 やはり魔王の味方は魔王だけだな、他のメンバーはみんな敵だ! 言ってみれば勇者みたいなモノだ…… うむ、バカばっかだ。

 アーリィ=フォレストがどちらのグループに属するか、非常に難しい所だが……


「もしかして…… この方が第7魔王アーリィ=フォレスト様なのですか?」

「あぁそうだ、この俺の陰に隠れてミラを威嚇している少女こそが『第7魔王 “探究者” アーリィ=フォレスト・キング・クリムゾン・グローリー』だ」



---



 突然の魔王来訪により、ギルドメンバー全員が談話室に集まっている。

 ただしミカヅキの分身体は腹ペコ魔王のために料理と買い出しを同時に行ってくれている、急な来客の時に便利な能力だ。

 そしてその魔王さまは相変わらず俺の陰に隠れている。


「やはりこの少女がそうなのか…… 余りにもイメージと違うモノだから容易には信じられんが……」


 ジークが第7魔王にどんな幻想を(いだ)いていたのか知ら無いが、魔王って案外こんなモンだぞ?

 旧世代魔王は変わり者が多いイメージだ。


 幼女アイドルだったり……

 生意気な糞ガキだったり……

 超絶ブサイク生物だったり……

 淫乱糞ビッチだったり……

 狂ってたり……

 脳みそ無かったり……


 イメージ通りの魔王をやってたのは第2魔王くらいかな?

 少なくともアーリィ=フォレストにアトランティス水没事件の犯人の印象は無い。


「え~と…… 俺と琉架とミラ以外は初めてだと思うから改めて紹介しておく、彼女が第7魔王 “探究者” アーリィ=フォレスト・キング・クリムゾン・グローリーだ」

「………… どうも……魔王です」


 魔王の威厳の欠片すら無い挨拶…… アーリィ=フォレストを見てると俺の方が遥かに威厳溢れる魔王の気がする。

 そもそも紹介されて「魔王です」は無いだろ? 某戦闘民族に名前を聞いたら「オッス、おらサ◯ヤ人!」って返されたようなものだ。名乗れよ……

 それとも魔王と精霊以外には心を開け無いのだろうか? なら何で来た?


「それでこっちが我がギルドのメンバーだ。端から俺の先輩の佐倉桜」

「あぁ…… D.E.M. のギャグ担当の方ですね?」


 どうやらアーリィ=フォレストは神代書回廊(エネ・ライブラリー)で下調べをしてきたらしい、それなら顔と名前を一致させる程度の紹介で充分だろう。

 しかしあまり迂闊なことは言わないで欲しい。

 先輩の笑顔が引き攣ってるから。


「その隣がリアル妹の霧島伊吹」

「カミナ君の妹…… 正直彼女のことは「キリシマ・カミナの妹」ってこと以外、よく知らないです」

「あ……そっか…… 私って知名度低いんだなぁ……」


 落ち込むなよ、コチラに来て間もない伊吹は、神代書回廊 (エネ・ライブラリー)にも記述が少ないだろうからな。


「隣の琉架とミラは知ってるな? 飛ばしてその隣が如月白だ」

「え? このちっちゃい娘が “神眼” 如月白!?

 こんな子供が魔王ジャバウォックを倒したんですか?」


 ほう、白の二つ名まで知ってるのか? ギルド内でしか噂になってないのに。

 そして白を知っているなら当然……


「その隣がミカヅキだ」

「うっ…… この大っきい娘が “夜叉姫” ミカヅキ…… なんて不条理な大きさ……」


 白に対してちっちゃいって言ってたのはそっちの意味の小さい大きいだったのか?

 確かにアーリィ=フォレストとミカヅキは、背丈は殆んど変わらないのに体積が随分違う。

 カッティング・ボード平原 VS マウント・フジ×2だな。

 彼我の戦力差は圧倒的だ。


「それでこの筋肉の塊がジーク・エルメライだ」

「おい、以前から思っていたが、もう少しマシな紹介の仕方はないのか?」


 別に良いんだよ、向こうはこっちのこと知ってるんだし。


「ジーク…… ジーク? ドコかで聞いたような? いや、カミナ君のギルドメンバーだってコトは知ってたんですけど…… 以前にもドコかで?」


 あぁ、ジークは賢者の王としてその名を世界に轟かせていたからな…… ある意味我がギルド一番の有名人だ。


「それよりアーリィ=フォレスト、そっちは何でこんな所に来たんだ? 普段なら例え天変地異が起こっても自宅から出てこない、筋金入りの引きこもりだろ?」

「そうですね…… 普通なら絶対出てこないです……」


 あ、否定しなかった。かなり大袈裟に言ったのに、肯定されてしまった……


「今回はドリュアスが『自ら相手の家族に挨拶に伺うのが常識です』って言うから…… そう言われると出ないワケにはいかなくて……」


 やはりあの精霊さんの入れ知恵か…… それより家族に挨拶ってどういう意味だよ? 魔王同盟の顔見世か…… 或いはウチの嫁達への挨拶か……


「それに例の記憶書の解析の目処が立ったので……」

「? 目処が立った? 解析できたのか?」

「はい、目処が立った時点で箱に入って向こうを出発、計算通り今朝方に解析が完了しました」


 解析にかかる時間を逆算したのか……

 この娘のこういう所はスゴイ優秀なんだよな、普段からそれをもっと全面に出してイイんだぞ?

 それはともかく、解析が完了したってコトは……


「ゲートの自動制御が可能になるって事か?」

「はい、理論上は可能なハズです。ただし必要なモノが二つと、交換条件が一つあります」

「必要なモノはいいとして、交換条件って?」

「あのドロボー女の抹殺……では無くって、生け捕りですね。記憶書を取り返さなくては! でっど おあ あらいぶ!!」


 あぁ、第12魔王リリス・リスティスの事か…… いや、殺すな。

 生け捕りって言ってるクセに殺したくて仕方ないって感じだな…… まぁ、俺もアイツに用があるし、出来れば完璧な門を開きし者(ゲートキーパー)を習得したい。


「分かった、その交換条件は飲もう。それで? 必要なモノの二つって?」

「人工精霊の“(コア)”になる宝石です。金剛石か石英か緑柱石…… 今回のケースだとマナと相性がいいエメラルドですかね? 出来るだけ大きくて透明度が高い物がイイです、最低でも500カラット」


 カラットって言われても大きさが分からん…… ピンポン玉くらいか?


「ウチの宝物庫にそれくらいのヤツあったっけ?」

「そんな巨大なエメラルドある訳ないでしょ」


 先輩が即座に答えてくれた、どうやらウチの財宝は先輩が管理しているらしい……

 …………

 先輩って結構守銭奴だったような……? すでに幾つか無くなってるんじゃないか?


「仕方ない、仕入れに行くか。うまい具合にちょうどイイのが手に入ればいいが……

 それで? もう一つの必要なモノって?」

「レーザー術式刻印装置です」

「は?」

「レーザー術式刻印装置です」


 どうやら聞き間違いじゃ無いらしい、随分とファンタジーっぽく無いのがキタな。


「これは魔王城オルターにあるハズですから、それを頂戴しちゃいましょう」


 なるほど、確かにオルターにならあって当然だな。しかしそうなると、またあの極寒の地へ行かなければならないのか? せっかく女の子たちの生足の季節に戻って来たのに……

 いや…… ナニも俺が行く必要ないよな? ジーク辺りを派遣して……


「カミナ君! 私オルターに行ってみたいです! その為にわざわざココへやって来たんです!」


 挨拶に来たんじゃ無かったのかよ? まぁ理由が複数あっても別に構わないんだけど……

 もしかして、俺…… 行かないとダメか?



---



 結局、魔王城オルターへ行くのは俺とアーリィ=フォレスト、そしてアルテナの二人+一冊のデクス世界日帰りツアー参加者トリオになった。

 当初、寒さに強いミラを連れて行こうと思ったのだが、アーリィ=フォレストが苦虫を噛み潰したような顔をした、二人の間のわだかまりを解消するためにも必要な事だと思ったのだが、時期尚早だったらしい。

 確かにまだ二回しか会って無いし、一緒に出掛けたくらいで解消される程度のわだかまりだとは思えない……

 もっと根の深い問題の様な気がする、同盟を組んでる以上、出来れば仲良くして欲しいのだが…… 焦りは禁物だな。


 残りのメンバーは大空洞へ行き、巨大エメラルド探しだ。あそこなら探せば見つかりそうな気がする。

 俺以外では唯一大空洞へ足を踏み入れた事のある琉架が案内役としてエメラルド探索隊の隊長をしてもらう。

 足を踏み入れたと言ってもほんの数日間だけで、詳しいワケでも無いんだが……


 しかし納得がいかない…… ジークに俺のハーレムが寝取られた気分だ! やはり……そろそろ始末するべきか?


 本当は白に、こっちについて来てもらって俺を温めて欲しかったんだが、寒さに弱い白を極寒の地へ連れて行くのは可哀相だから諦めた…… 俺は嫁を大事にする男だからな。



---



 全員ホープに乗り出発、途中『黄泉比良坂』でみんなを降ろし、俺とアーリィ=フォレストとアルテナだけを載せたホープは、現在真冬の大氷河へ向けて飛び立つ…… 雪で埋もれてなければいいんだが……


 そういえば大空洞の炭鉱族(ドワーフ)達はどうなったんだろう?

 新・第8魔王 “女神” が支配者になったのは第二次魔王大戦終結までの間だ。

 その後、アイツ等がどうなったのか全然知らなかったな…… 興味がなかったからだが。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ