表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
レヴオル・シオン  作者: 群青
第四部 「転移の章」
168/375

第162話 新・第10魔王


 さて、新生魔王の通過儀礼、暗黒の病が疼きだす恥ずかしい二つ名チェック、次の被験者は……

 俺のメイド! ミカヅキさんです!


 彼女はガイアでは非常に珍しい鬼族(オーガ)である。

 機人族(イクスロイド)程ではないが鬼族(オーガ)も滅多に第4領域から出てこない事で有名だ。

 実際俺はミカヅキ以外の鬼族(オーガ)を見たコトが無い。


 そんな彼女を言い表す二つ名は一体どんな感じだろう?

 やはり「鬼」か「メイド」か?

 或いは白の様に全く予想外のが来るのか?


 俺の独断と偏見による予想では…… やはり王道“鬼冥途”だ! 多分ハズレてると思うけど。

 周囲では先ほどと同じく本人置き去りのまま、自分の予想を好き勝手述べている。


「ミカヅキさんの二つ名…… “女中”さんじゃ二つ名とは言わないよね?」

「ミカヅキは今までの傾向からすると…… “鬼姫”……かな?」

「…… “角王”……とか?」

「ふむ、“鬼女”だな」

「う~んミカヅキ様なら… “百鬼夜行”?」

「ミカヅキさんは…… “萌え萌えキュン”でしょ?」


 みんな全体的に酷い…… これも鬼という言葉の持つイメージの所為か。

 先輩の“鬼姫”が一番まともだ、てかこの中では一番有りそうだ、それとジーク、それはダメだ、それだけは絶対にダメだ、お前はミラの時からロクな予想を出さんな。

 それと伊吹…… お前真面目に考えてないだろ?


「それじゃ白、見てやってくれ」

「うん…… 見てみる……

 えっと……新・第10魔王 “夜叉姫” ミカヅ…… アレ? ミカヅキ・センヤ?」

「!?」


 “夜叉姫”か…… 桃太郎の隣でアシスタントでもしてくれそうな二つ名だな。

 鬼で来ると思ったが夜叉だったか。コレは先輩がニアピン賞だな。

 いや、それよりも…… センヤ? センヤってナニ?


「白様…… 本当にその名が見えましたか?」

「ん…… 間違いない…… 初めて会った時は見えなかったけど…… なんで? 能力が変わった所為かな?」

「ミカヅキ、説明してもらえるか? もちろん嫌なら無理にとは言わないが……」


「あ……いえ、それは構わないのですが、少々予想外だったもので……

 えっとですね…… それは本当の名前といいますか…… センヤは以前の名前です。

 私は第4領域に居た頃、千夜三日月と名乗っていました」


 千夜三日月…… つまりセンヤは苗字、ファミリーネームって事か、てっきり鬼族(オーガ)にはファミリーネームっていう概念が無いのかと思ってた。

 第4魔王もスサノオだけだし……


「皆さんご存知の通り、私は鬼族(オーガ)のタブー、異質な力を持っており第4領域を追放されました。

 その時に姓をはく奪…… 名乗ることを禁じられたのです。

 それ以来私はただのミカヅキと名乗ってきました」


 なるほど…… 追放者故に名乗ることを禁じられた……か。

 ミカヅキにこんな重たいエピソードがあったとは予想外だった。本人はあまり重くとらえていない様だが……

 そして今回、ミカヅキの本名、千夜三日月が発覚した、その理由は単純に白のパワーアップのおかげか、或いは……


「私が国へ戻るための条件は、この身に呪いを受ける事…… という事も皆様ご存知と思います。

 しかし私は呪いを受け継いでいません、誰かさんも未だに生きていますし……」チラ

「うむ、おかげですこぶる健勝だ」

「チッ! コホン…… もしかして魔王の力とは呪いの一種なのでしょうか?」


 ミカヅキの元雇い主は今日も元気いっぱいだ、きっと明日も明後日も100年後もご健勝のことと存じ上げます。そもそもアイツから呪いを受け継ぐこと自体、無謀だったんだ。


 しかし魔王の力が呪いか…… ある意味そうなのかもしれないが、恐らく違う。

 創世神話では魔王の力は祝福と呼ばれていた。呪いとは対極に位置する言葉だ。

 だが確かに魔王の力は呪いとしての側面もある、第9魔王の娘の暴走なんかがそれだ、きっと魔王の力に耐えきれなかったんだろうな……

 そう考えれば同じ年頃の白が無事に魔王になってくれて良かった。恐らく肉体的な強度の他に精神面も影響したんだろう。


「恐らくだが…… ミカヅキは魔王種へと進化した事により、鬼族(オーガ)という種族の枷から解放されたんじゃないだろうか?」

鬼族(オーガ)の枷……」


 俺達は魔王という種族であって、人型種族(オールセトラ)とは別物なのかもしれない。

 ただしこの推測は以前立てた仮説から外れる…… もしこの推測が正しかったらミラは人魚族(マーメイド)では無く魔王種だったという事になる。

 それは無い。少なくとも以前のミラは人魚族(マーメイド)だった、そこはオーラで確認した……

 結局…… 実際の所は何も分からない。


「もしかして…… 私は国に帰れるのでしょうか? いえ、別に帰るつもりも無いんですが」

「それは~…… 分からないな、第4魔王スサノオは過去に第3魔王や第9魔王と戦ったという、それはつまり魔王が第4領域に侵入する事を良しとしないって意味だろう」

「あぁ……なるほど……」

「ただしそれは相手が明確な敵だったから…… なのかもしれない。少なくとも第2魔王は説得には赴けるみたいだし」

「敵でなければ…… ですか」


 本人は帰るつもりは無いと言っているが、やはり帰りたい気持ちもあるのだろう。

 俺だってこっちに移住しても全然構わないけど、一度は帰って親に挨拶くらいはしておきたい……

 嫁を紹介して孫が生まれたら抱かせてやるくらいはしたい。


 もしミカヅキが帰りたいなら協力しよう、ミラの時みたいにご両親に挨拶はしなきゃいけないよな。



「ミカヅキよ…… お前はアノ(・・)千夜一族の出なのか?」


 お? ウチの物知り王・ジークはミカヅキの実家の事を何か知ってるのか? さすが賢王と呼ばれるだけのコトはある!


「そうですね…… 確かに千夜一族の出ですけど…… ナニか知ってるんですか?」

「俺も詳しくは知ら無いが、それでも千夜一族は有名だからな」

「そうなんですか? 追放されてからこっち、千夜の名前を聞いたコトは無かったのですが……」

「うむ、千夜一族といえば鬼族(オーガ)の中でも最も古い一族で守護者の家系だ、第4魔王スサノオも千夜一族の出自だと言われている」


 なに? それじゃ魔王スサノオも本名は千夜須佐之男って言うのか?


「それじゃ千夜一族ってのは第4領域の王族みたいなモノなのか?」

「まさか、そんな事はありませんよ? 第4領域の王は2400年も前からスサノオ様だけですから…… 言ってみれば遠い遠い親戚みたいなものです」


 そうか、もしかしたらお姫様なんじゃないかと思ったが、普通に考えれば魔王スサノオの直系なんて存在しないか、どこぞの淫乱糞ビッチじゃあるまいし……


「それじゃミカヅキはどうするんだ?」

「? どう……とは?」

「白の摂理の眼(プロビデンス)に映った以上、本名の千夜三日月を名乗っても良いと思うんだが?

 魔王になるってコトは生まれ変わるのと同義だと思うぞ」

「本名を……ですか…… いえ、止めておきます。

 例え鬼族(オーガ)の枷から解き放たれたのだとしても、私自身が赦された訳では無いのですから……

 いつか赦される日が来たら、その時改めて千夜三日月と名乗る事にします」


 そうか、まぁ本人が決める事だしな。

 それにこれが鬼族(オーガ)の掟破りになって、第4魔王が出刃包丁片手に「掟破りの子はいねがぁー」とか奇声を発しながらウチのリビングに突撃かまされても困る。

 ウチの良い子たちが泣き叫ぶぞ……


「あの…… 私からも白様にお願いがあるのですが……」

「ん?」

「私に継承されたギフトを調べて頂けないでしょうか? せっかく受け継いだものなのですが、その名前もどういった力なのかも、そもそも私はギフトの使い方がわからないから調べようがないのです」


 そうだった、第10魔王戦での敵能力は推理しただけで完璧な把握には至らなかったんだ。


「ん…… 見てみる…… ピントが合わせづらい…… え…と…… 『鏡界転者(レプリカント)』……?

 あ、スゴイ、能力はおに~ちゃんの言った通りだ。魔力で限りなく本物に近い分身を作り出せる能力…… それを自由に操れる」

「『鏡界転者(レプリカント)』……ですか」


 鏡界転者(レプリカント)か…… 自由に操れるってことはドッペルゲンガーよりバイロケーションって感じか。


「それはつまり私と同等の能力を持つ分身を作り出し、掃除・洗濯・料理等の家事全般を全て同時にこなすことが出来るって事ですか!」


 能力の使い方がとても所帯じみてる…… メイド基準と言うべきか……

 間違ってはいないし、確かに可能だろうけど…… 仮にも彼女は新・第10魔王 “夜叉姫” ミカヅキだ。

 いつ迄もメイドをさせといてイイのだろうか? だって“姫”だよ?


「え~とミカヅキさんや、一応俺達は同格の魔王だ。だから…… メイド辞めてもイイんだよ? 何だったら新しいメイドさんを雇ってもイイ」

「辞めてもイイってコトは、辞めなくてもイイってコトですよね? でしたら今まで同様メイドとしてお仕えさせて頂きます」

「………… いいの?」

「はい、何より私はまだ望みを叶えておりませんので…… その望みが叶った時に改めて身の振り方を考えることにします」


 ミカヅキの望み? ジークの呪いを受け継ぐことじゃないよな?

 よもや俺との爛れた主従プレイ(駄メイドと変態ご主人様プレイ)の事じゃあるまい?

 まぁ、ある日いきなり退職するワケでも無さそうだし保留にしておこう。陰ながら応援しているぞ。



「とにかく二人には緋色眼(ヴァーミリオン)の制御と、新たに手に入れたギフト、事象破壊(ジエンド)鏡界転者(レプリカント)の訓練をしてもらう」

「ん……」

「畏まりました」


「それと一応聞いて置かなければならないんだが、二人は五大魔王同盟に参加するかどうか?

 もちろん強制じゃないし、参加しないからといって放り出したりもしない。

 あくまでも自分の意志でどうしたいか決めてくれ」


「参加……します」

「私も参加致します」


 ほぼノータイムで参加表明が帰ってきた、最初からそのつもりだったのだろう。

 そもそも断る理由もないからな。


「分かった、コレで七大魔王同盟だな」


 七大魔王同盟…… 全魔王の過半数をとった。

 これで大統領にだって成れるぞ! 取りあえずギルドセンターには魔王さまのガイア駐留費用を全額出してもらおうか。特に何にもしてないけど……

 しかしいつの間にか女魔王の比率が増えたな、魔王プロメテウスは性別不明だったけど旧世代魔王の男女比はほぼ半々、今は完全に男魔王の方が少ない…… スバラシイ! コレも全て俺の働きによる成果だな。


「それで神那クン、今後の私たちの予定は? ぶっちゃけ私はいつ帰れるのかな?」


 先輩からの質問、彼女の最大の関心事だからな。


「そうですね…… 一応アーリィ=フォレストには記憶書の解析の中でも人工精霊と無機物使途の項目を優先してもらうよう頼んであります」


 しかし“探求者”であるアーリィ=フォレストは、解析に夢中になりすぎて忘れている可能性もある。やっぱり今度一回様子を見に行こうかな?


「まぁ解析時間は無視しても、人口精霊と無機物使途の仕込み、無人実験と有人実験…… 早ければ秋頃には帰れると思いますよ? ただ解析に1年掛かれば当然帰還は1年後になります」

「1年……」


 本当に1年掛かるなら先に帰るべきだな、少なくとも伊吹は先に帰すつもりだ、他の人に混じって行けばいい、無理に俺達と一緒に行く必要は無いんだ。


「先輩、何度も言いますが帰りたければ言って下さい。先輩の為だけに特別にゲートを開きます……500ENで……」

「カネ取んのかよ!!」


 親しき仲にも礼儀ありって言うだろ?

 ゲートを開けば俺は疲れる、その疲労に対する対価としての500ENだ。ハッキリ言ってコレは破格の代金だ。

 もし仮にコレが勇者一行なら内臓を売り払ってきてもらうトコロだ。或いはエルリアのパンツ…… は要らないか。


 そんなワケで、ギルドD.E.M. の…… というより、新魔王の今後の方針が決められた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ