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レヴオル・シオン  作者: 群青
第三部 「流転の章」
165/375

第160話 終戦

 ドクン!!


 ニセモノのシャーリー・アスコットが…… いや、魔王城・オルター自体が一瞬大きく震えた。

 それと同時に塔内の光も明滅し、シャーリーの姿にもノイズのようなモノが走る。


『何故だ…… どうして…… こんな……』


 その姿はもはや風前の灯火といった印象だ。

 少なくともピンチを演出しているようには見えない。


 実体を持たない魔王なら限界突破(オーバードライブ)の最大の特典、超速再生の恩恵も受けられないと思っていたが、どうやらうまく事が運んだらしい。

 予想通り心臓だけは再生できないんだ。

 しかしそれは自分にも言える事だ、思い返せば魔王ミューズも魔王ジャバウォックも心臓だけは守っていた。


 俺も気を付けよ……


『そんな筈は無い…… 負けるハズなど無かったのだ…… 何故こんな事に……』


 うわ言の様に呟いている偽シャーリー…… エセ・エセセレブだな。


 最も重要視したのは琉架とミラの証言、敵の中にオーラをもつ者がいた事。

 俺もキラキラ鉄機兵を見た瞬間、パワードスーツの様なものを想像した。しかし内部に人が入り込めるようなスペースは無かった。

 その時気付いた、機人族(イクスロイド)は生まれながらに肉体の一部が魔力による仮想体で構成されている事を…… そして機人族(イクスロイド)の村で覗き少女・リュドミラが言っていた事を……


『おじーちゃんの場合は後天的にその処置が加えられただけで、普通は脳に影響が出るコトは無いそうです。大昔にはそういったケースもあったらしいですけど……』


 今では生まれなくなったらしいが、大昔には脳を持たずに生まれてきた機人族(イクスロイド)も居た。

 2400年前…… まだ魔人と呼ばれていたころに生まれた魔王プロメテウス……

 コレは推測だが、空中城塞プロメテウスの動力源がコイツだったんじゃないだろうか?


 機人族(イクスロイド)は身体の欠損が多ければ多い程、膨大な量の魔力を宿すと言われている。

 空中城塞プロメテウスの魔力を補うほどの機人族(イクスロイド)ならば、心臓だけで生まれて来たとしても不思議はない。

 それならば人が乗り込むスペースなど無い鉄機兵を操っていた事にも説明が付く。


 あの如何にもフルCGっぽいイケメンヴィジョンもこの説を裏付けている気がした。

 もちろん自分で打ち立てた説ではあるが、容易には受け入れがたかった……


 最大の要因は『脳が無いならヤツの人格はどっから来たのか?』……という点だ。


 コレに関してはかなり強引に納得せざるを得なかった、都市伝説だが心臓移植を受けた人は提供者の人格も移植されるという…… 心臓には生前の記憶や性格が宿っているなんて説もある。

 本当にそんなモノがあるのかは不明だが、魔王の力を得た心臓が自己進化を遂げて擬似人格を作り出したのではないか?

 或いは魔王となる前から擬似人格を持っていたのか…… 『プログラム・プロメテウス』なんて名前だしな。


『何故…… 何故だ? 一体どうやって?』

「………… 最後の手向けとして教えてやる、お前がなぜ負けたのかを」


『何故…… 何故だ?』

「目も耳も鼻も無いお前がどうやって俺達を知覚していたのか? それはきっとお前の有り余る能力値を使って魔力探知を行っていたからだろう?

 鉄機兵に自分の分身を忍ばせていたのも、その知覚範囲を拡大するのが目的だったんじゃないか?

 お前はそれに頼り過ぎた…… それがお前の敗因だ」


『一体どうやって……? 一体どうやって……?』

「俺達の中には一人だけ、魔力探知から逃れる事が出来る人物が含まれていたんだ。

 ここまで言えば流石に分かるだろ?」

『まさか…… 鬼族(オーガ)?』


 そう、魔力を持たない種族、鬼族(オーガ)のミカヅキは魔力探知に掛からない。

 今でこそ慣れたモノだが、初めて会った時は物凄い違和感があった…… 目の前にいるのにその気配を感じる事が出来ないから。


 如何に魔王プロメテウスの本体の場所が分かっても、普通に近づけば何かしらの対策が取られるのは必至。

 だからこそヤツの意識をこの場に引き付けて、魔力探知を逃れる事が出来る唯一の存在ミカヅキを一人で向かわせた。

 その代償はミカヅキが魔王を継承する事……

 正直迷ったんだが、本人が乗り気だった…… そう言えば第10魔王を討つことにも一番強く同意していた気がする。


「そう、機人族(イクスロイド)並みに他領域では見かける事が殆んど無い鬼族(オーガ)だ。

 それだけにその対策を怠ったお前の負けだ」

『負け…… 負…け…… 負……』


 フッ―――


 エセ・エセセレブが消滅した……

 それと同時に塔内の明かりが消え、非常灯のような小さな赤い光に変わる。出入り口からも光が射さない所を見ると、いつの間にか夜になっていたらしい。


 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……


「な……なんだ?」


 城全体が小刻みに揺れている…… コレってまさか……?

 魔王を倒したら魔王城が崩れる、確かにお約束イベントだ。しかし今までそんな事なかっただろ? 何で今回に限って…… あ、そう言えばこの城、機械の足に支えられていた動く城だった……

 その動力が失われたらどうなるか…… ちょっと待て!


 ゴ!ゴ!ゴ!ゴ!ゴ!ゴ!ゴ!ゴ!……


 揺れはどんどん激しくなる、もはや立っているのも覚束ない、どこかに掴まりたいがそんな場所はドコにも無い。

 そんな時、一瞬だが唐突に身体にかかる重力を感じなくなった…… まるで落ちているかのような……



 ドドドドオオオォォォォォォオン!!!!



 魔王城・オルターは大地に落ちた……



---



 目を開ける事が出来ない…… 息苦しい…… ラストダンジョンが崩壊しても何の不思議も無い、最後の最後で油断した……

 俺は死んだのだろうか? 呼吸もまともに出来ないほど苦しい…… しかし不思議といつまでもこうして居たいと思えるのは天国に来たからかな?

 なんか柔らかくて暖かい…… なんて言うか、こう…… フニって感じ?


「んぅ!」


 ? 今一瞬女神の声を聞いた気がする…… それもすぐ近く、頭の上の方から…… 神託が下ったのか?


「ん……」

「う~ん……」


 そして左右からは俺を涅槃に導く天使たちの声…… 間違いない! ここは俺のニルヴァーナ!

 ずっとココに居たい…… てか、ここで死にたい……


「おにーちゃん…… 死ねばいいのに……」


 そしてドコからか俺の死を望む妹の声……

 どうやらココは天国と地獄の狭間らしい、おぉ我が最愛の妹よ、お前は下に逝ってしまったのかい? 待っていろ、今引き上げてあげるからね? 間違っても他の人を蹴落としちゃイケないよ? え~と、すみませ~ん、どなたか蜘蛛持ってませんか? 鉄機兵アラクネのケツにワイヤーウインチとか付いてないかな?


「神那クン…… ホント死ねばいいのに……」


 この声はサクラ先輩? やっぱり先輩も地獄(そっち)逝きか…… 大丈夫、俺と先輩の仲だ。たとえ無間地獄に突き落とされようとも助け出してみせるよ!

 ってアレ? 考えてみればココが天国と地獄の狭間なら、それはつまり…… 現世って事か?


 目を開いても相変わらずの暗闇、しかし鼻孔をくすぐる香しきかほり…… ココで深呼吸したらさぞかし気分爽快だろう。

 しかし堪える! グッと我慢する!

 何故なら俺の顔面に押し付けられてる柔らかなモノは琉架のルカだからだ! ソレをやったら俺はゴリラの仲間入りだ。

 例え魔王に身を落とそうとも、ゴリラステージにまで降りるつもりは無い。

 なけなしの理性を振り絞って堪える事に成功した。


「プハァー!」

「あ! ゴ…ゴメンね神那、潰しちゃった!」

「いや、ありがt大丈夫だ」

「?? ありが?」


 琉架の胸の圧力が失われた…… 俺の上に乗っかっていた琉架が立ち上がったのだ、それと同時に俺の左右に控えていた天使たち、白とミラも離れていった…… 何だかとっても寂しい、ココってこんなに寒かったっけ?


 塔の中は殆んど真っ暗だ、非常灯も殆んど壊れてしまったのか(まば)らにしか光を発していない。そもそも魔王プロメテウスは目を使ってなかったから非常灯の整備とかしてなかったのかも知れないな。


「琉架、明かりを」

「うん、ちょっと待って…… 第7階位級 光輝魔術『光源』ライト チャージ5倍」


 パァァァ……


 琉架の作った光源により周囲が照らし出される。

 床は15度くらい傾き、全員壁際まで滑り落ちてる。何人かは鉄機兵の残骸を喰らい怪我を負っているが流石に死人は出てないだろう。

 アラクネをバラバラに破壊しておいてよかった、あの巨体が滑り落ちてきたら運の悪い奴は潰されて死んでいたかもしれない。

 例えばそう、俺が斬り落としたアラクネの前足に潰されてる勇者みたいに……


 コレは流石に俺は悪くないだろ? 悪いのはアイツの運だけだ。

 ま、勇者は頑丈だし平気だろう。


 外では他の塔がいくつも倒れているようだ、あぁ……折角壊さないようにやってたのに……

 もっともこの城の重要な施設は下側に集約されているらしい、上の城が飾りってコトはよくあるパターンだ。


「クリフ先輩、全員連れて一旦ガーランドに戻っていて下さい。

 魔王が死ねば使徒は支配から開放されますが、ここには自動人形(オートマタ)が居ますから、アイツ等はきっと襲ってきます十分注意して下さい」

「あぁ……ん? お前はどうするつもりだ?」

「ウチのメイドさんを迎えに行きます、第10魔王討伐の立役者ですから」


 魔王城の下層が潰れてないか心配だ。

 魔王の本体が居た場所だから頑丈に作られているハズだけど……


「そうか…… いや、しかし……」

「シャーリー先輩の捜索もしてきますが、あまり期待しないで下さい。本当に生きているかどうかは分かりませんから」


 俺の予想では生きている、しかし無事かは微妙なトコロだ。


「神那が行くなら私も行くよ」


 ……と、琉架が名乗りを上げる、琉架が行くと言えば当然……


「お姉様が行かれるのでしたら私もご一緒します!」


 まぁ当然、伊吹もご一緒するわな…… あれよあれよとD.E.M. 全員参加になった。

 まぁ、メンバー以外がついてこなければ何でも良い。



---



 執行官断罪剣(エクスキューショナー) 砲身最下層……


 琉架に重力制御してもらい、ゆっくり降りていく。

 光源(ライト)に照らされて、底が見えてきた…… ミカヅキが出迎えてくれた。


 良かった…… チョット不安だったんだ……

 実は魔王プロメテウスは仕留め切れて無くて、俺が辿り着いた時にはワイヤーやらケーブルやらに雁字搦めにされた囚われのミカヅキが待ってるんじゃないかと……

 エロ同人みたいに……


 フゥ~…… そんな事はなかったぜ。


 てか、床下に裸のおね~ちゃんがたくさん居る…… 目のやり場に困る。


「皆様お待ちしておりました」

「良かったミカヅキ、無事みたい……アレ?」


 ミカヅキには魔王継承者特有の症状が見られない…… 要するに目から出血するアレ(・・)だ。

 魔王討伐からそこそこの時間が立っている、本来ならとっくに始まってても良いはず…… これは……


「マスターとどうしてもお話したいと先方がお待ちです」

「先方?」

「アチラです」


 ミカヅキに促された方を見ると、そこには一人の人物が立っている。

 男か女かよく分からない中性的な見た目…… と言うか、全身にボカシでも掛かっているかのような姿、きっと学生時代のあだ名はモザイクだろう。


「アチラの方が『第10魔王 “災器” プログラム・プロメテウス』……様です」

「魔王プロメテウス……」


 立体映像ではない、もしかしてコレが魔王プロメテウスの本当の姿、生まれ持った仮想体か?

 生まれながらのモザイクマンかよ…… 存在自体が18禁みたいなヤツだ、本来ならあのモザイクの向こう側には夢と希望が詰まっているんだが、全く期待が持てない…… グレるのも納得だな。


 そのモザイクマンの胸の部分にはザックリ斬られた心臓が浮いている、アレでまだ生きてるのか? 仮想体を持つ機人族(イクスロイド)特有のしぶとさだろうか?


「ご覧のとおり死にかけです。止めを刺そうとも思ったのですが、マスターは何か聞きたいことがあると思い、止めておきました」


 おぉ! ミカヅキさんGJ! さすが優秀なメイドさんだ!


『お前がリーダーか…… そうか…… 魔王だったのか……』


 何だ、今まで相手が魔王だって気付いてなかったのか、魔力探知じゃ分から無いモノなのか? 頭の悪いプログラムだな。まぁいい……


「第10魔王 “災器” プログラム・プロメテウス、お前に聞きたい事はただ一つ、人工精霊のデータ……」

『何故だ? 何故お前は魔王の力を集めている?』


 …………


「その答えが欲しければまずこちらの質問に……」

『何故だ? 何故お前は魔王の力を集めている?』


 …………


「だから……」

『何故だ? 何故お前は魔王の力を集めている?』


 この野郎、人の言う事全く聞いてねぇ…… エロサイトのウィンドウみたいに勝手に自分の主張を繰り返してやがる。

 そもそも別に集めてなんかいねぇよ、気付いたら全魔王の半数が同盟になってただけで……

 さて、どうしたモノか…… 適当に話を合わせた所でコイツから情報を引き出せるとは思えない…… だってコイツもうじき死ぬし、脅しも意味が無いからな。


 ならば取れる手段は1つだけだな。

 即ちコイツの気に入りそうな事を言って満足させる。

 ミラと先輩から得た証言を元に、コイツの思考を推理してみるか。


「ふぅ~……決まってるだろ? 神の元へ至るためだ」


 メンバー全員が「え?」って顔をしている…… 俺自身もそう思うが顔には出さない。


『神の……元へ…… お前は……どっちだ?』

「俺はデクス世界出身だ、聞くまでも無いだろ?」


 恐らくコイツは未だに次代神族(ネオ・ディヴァイア)に忠誠を誓っているのだろう。魔王種になる前、魔人と呼ばれていたころの記憶だ。

 そして俺の予想では次代神族(ネオ・ディヴァイア)はデクス世界から来た。


『ぉ……ぉぉ……』


 なんか歓喜に打ち震えてる感じだ、イケるか?


「お前の知識が必要だ。差し当たって人工精霊の……」

『オルターの全てをお前に譲渡する……』

「へ?」


 別に次代神族(ネオ・ディヴァイア)に味方するとも言ってないのに勝手に勘違いしてくれた…… 何だが騙したみたいで心苦しい…… なんて思う訳ないか、だって俺だもん、ラッキー♪

 それ以前に次代神族(ネオ・ディヴァイア)の最後の一柱ってまだ生きてるのか? さすがにそれは無い気がするんだが…… いや、そう言えば魔王グリムが『運命の刻』がどうのこうのと言ってたな……


 ガコン!


 突然フロアの中央部分、水晶の台座の床がせり上がってきた。そこには一冊の本が収められている。


「これは…… 記憶書か?」

『エネ・イヴェルトに栄光を……』


 魔王プロメテウスはその言葉を最後に、唐突に消滅した……

 ちょっと待て! エネ・イヴェルトってなんだ? この本の事か? いきなり死ぬな! 死ぬ時は「ぐふっ」とか「ぬわ~」とか「我が生涯に一片の悔い無し」とか言えよ!


 その時、魔王の心臓から赤いモヤが出た。

 それは音も無く移動し、ミカヅキに吸い込まれていった……


「ミストが継承された……のか? ホントに死んだのか?」

「?」


 結果的に「3分以内に死ぬ」という予言は外れてしまったな…… まぁいいか……



---



「取りあえずシャーリー先輩を探します。多分ココに居る」


 そう言って足元を指差す、床下には裸のおねーちゃんがたくさん沈められてる。


「え? この中に?」

「ココに居る人たちは恐らく魔王城・オルターの補助動力に使われていたんだろう」

「補助動力? 人間を動力源にしてたの? 信じられない……」


 更に言えばココに居るのは全員女だ、女性の方が能力値が高いからな。

 どこぞのコメンテーターが聞いたら「女性を燃料扱いにするなんて許せない!!」とか、大騒ぎしていたトコロだ。ああいう人って女・女言うけど、男だったら燃料扱いされても構わないってスタンスなのかな? それも立派な男女差別だと思うんだが……


「それじゃ神那は向こう行ってて」

「え?」


 唐突に琉架から拒絶の言葉を投げかけられる…… oh…… 神は死んだのか……


「ココに居る人たちはみんな女性で…… みんな裸だから! 神那は見ちゃいけません!」


 あぁ、そういう事ね、俺もエセセレブの裸に興味は無い。

 更に言えばシャーリー先輩の裸を見たら後で絶対殴られる。

 ここは女性陣にお任せしよう。


「……と、そうだ、もしシャーリー先輩を見つけても、取りあえずそのままにしておいてくれ」

「え? どうして?」

「どんな処理が施されてるか分からないからだ、恐らくココに沈められてる女性は1200年前の大戦時に攫われてきた人たちだ、引き摺り出したら即蘇生できるとは限らないからだ」

「そ……そっか、出した途端に死んじゃったら困るもんね……」


 どちらにしても原初機関あたりに任せるしかないだろう……

 この場ではどうする事も出来ない。



「カミナよ、ちょっとこっちに来てくれ」


 この女性の人口密度が異様に高い場所に居るもう一人の男、ジークに呼ばれる。

 ジークは部屋の隅で何かを見ている…… 足元にあるのは水晶の塊だろうか?


「コレは何だと思う?」

「ん?」


 水晶の中にはレイピアの様な武器が封じられている、しかし刃渡りは10cm程で刃先が丸い、尖って無い果物ナイフって感じかな?


「コレはもしかして…… 執行官断罪剣(エクスキューショナー)?」

「やはりそう思うか?」


 見た目は小さい…… 簡単に持ち運びできる…… もちろん使用条件は色々と有りそうだが……


「よし、コレは隠匿させてもらおう」

「おい、まさか自分で使うつもりか?」

「まさか、そもそも簡単に使えるモノじゃ無い。きっとこの中央塔くらいの巨大な砲身が無ければ発射できない代物なんだろう。

 しかし俺ももうじき浮遊島の主となる身だ、こんな危険な兵器を放置しておくことは出来ない」

「ふむ…… まぁ確かにその通りかもしれないな」


 そもそも前提として使う相手がいない。

 アリアはどっか行っちゃったし、仮に健在でもアイツとは敵対したくない。



「マスター見つけましたよ、シャーリーさんです」


 そんな時、声を掛けられた。どうやらミカヅキが見つけてくれたらしい。


「そうか、やっぱりココに居た……って? うぉ!?」


 声を掛けてきたミカヅキは、目から出血しているにも拘らず平然としていた。


「ミ……ミカヅキさん大丈夫ですか!? それって……アレですよね? 痛くないんですか?」

「えぇ、かなり痛いです。しかし我慢できない程では無いので……」

「が……我慢しなくてイイんですっ、神那ぁ!」


 とにかく診察してみる、魔王継承現象を見るのは自分を除いても既に4人目、この世に俺以上に魔王継承現象に詳しい奴は存在しない。

 まぁ詳しいと言ってもメカニズムとか全然分からんけど……


 ミカヅキに見られる症状は、今までに見てきた琉架、ミラ、白、と同じに見える…… つまり本日二人目の嫁魔王の誕生だ。

 ただし今までと一つだけ違う点がある……


「右眼……なんだな」


 鬼族(オーガ)のミカヅキが継承すれば、或いは左眼に移るかもと思っていたが…… あくまでも第10魔王からの継承って事か。


「もしかして…… 私、仲間ハズレですか? 左右の眼を穿り出して入れ替えた方がイイですか?」

「いやいやいや、怖い事しないで、仲間ハズレじゃないよウィンリーも右眼が緋色眼(ヴァーミリオン)だから」


 とにかくこれで第10魔王 “災器” プログラム・プロメテウスの死亡が確定し、新たな魔王が誕生した訳だ……







 その日、第二次魔王大戦は終結した―――


 第9魔王 “破壊獣” ジャバウォック

 第10魔王 “災器” プログラム・プロメテウス


 人に仇なす2魔王が討たれた事により、一時的にではあるが魔王の恐怖から解放され、有史以来初めてシニス世界に平穏が訪れたのだった。




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