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レヴオル・シオン  作者: 群青
第三部 「流転の章」
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第142話 集結


 俺達は一足先に北方砦へ帰還した。

 要塞龍・ガーランドは後からやって来る。到着は二日後の予定…… かなり足が速い。

 乗り心地が不安だ…… 酔わなければいいんだが……


 とにかく要塞龍・ガーランドがいれば敵の主砲など恐るるに足らず、難攻不落の魔王城・オルター陥落はもはや確定事項だ。

 もっとも魔王本人はどうか分からないが……

 情報の無い魔王だ、簡単にはいかないだろうが今回は仲間が充実している。

 特に磁力使いのクリフ先輩には期待大だ。


 他にも色々な人材が今回の魔王討伐戦に参加するらしい。

 中途半端な戦力なら必要ないのだが、この一年間北方砦を守ってきた人たちらしい。

 つまり対鉄機兵のエキスパートだ。


 それなら期待できそうだ、ある程度の実力が無ければクリフ先輩が切り落とすと言っていた。

 要するにレベル不足は砦で待機ってことだ。


 今回、急遽第10魔王に打って出る為、現在獣衆王国・王都に滞在しているギルドなどにも召集が掛かった。

 更にホープを使ってガイアからも応援が駆けつけるとか……


 あまり人が増えすぎるのも考えものだ、魔王の戦いを堂々と見せつける訳にもいかないからな。

 まぁ最悪の時はミラの『神曲歌姫(ディリーヴァ)』で記憶をチョチョイと弄らせてもらおう。


 そんなワケでホープを取り上げられてしまった為、どこかへ遊びに行く事すら出来ず、北方砦に閉じ込められることになった。

 防衛? 敵なんか来るわけねーじゃん、魔王城探しの時に粗方ぶっ壊したんだから。


 結局、二日間お休みになった。

 空いた時間に砦の外で雪だるま作ったり、カマクラ作ったり、そこで餅焼いて食ったりした。

 暇だったのもあるが、最前線で遊び呆けていた。当然そんな事をしていれば砦に駐留している軍人や他のギルドから睨まれるかと思っていたが、そんな事にはならなかった。


 何故か俺達と一緒にライオンキングが遊び呆けていたから…… まぁ、暇だもんな。


 むしろオルフェイリアの父親のクセに良く雪遊びなんかできるモノだと感心した。

 娘はコタツで丸くなってたのに……


 ちなみにこの雪遊びの期間中に、生命の神秘を目撃する事になった。

 第12領域はこれから夏に向かう、気温もどんどん上がり、それに伴い白に変化が出てきていた。

 夏の白、小麦色白の季節だ。

 最近順調に小麦色に変化していた白だったが、この雪だらけの北方砦に来て三日ほど過ごしていたら、冬の白、真っ白白に変わってた…… 変化が早過ぎる。


 白は元々『白弧(ハクコ)』と呼ばれる特別な狐族だ。その名の通り色白バージョンの方がデフォなのかもしれないな…… 個人的にはどっちの白も可愛いので、どっちでもイイが、名前のイメージからすると真っ白白の方が似合ってるのかもな。


---

--

-


 二日後……

 北方砦にガーランド到着。

 その巨大さに駐留軍がドン引きしてる。


「これが要塞龍・陸上種か…… バカみたいな大きさだな」

「いやいやクリフ先輩、海洋種にはもっと大きいのがいますからね。むしろ頭からシッポまでが視界内に収まる程度ならまだまだですよ」


 現在ガーランドには物資の積み込みが行われている。

 コイツの足なら魔王城・オルターまで一週間掛からないだろう。その往復に必要になる水や食料などを積み込んでいるのだ。


「それでクリフ先輩、今後の予定は?」

「あぁ、今日中にすべての準備を終わらせ、出発は明日の朝の予定だ。今夜討伐参加メンバーの顔合わせを行う、サボるなよ?」


 うぇ~ クギ刺された……


「それから神那、お前に……お前達に期待しているぞ」

「? どうしたんですかクリフ先輩?」

「一年前の大変革(レヴオル・シオン)の…… 魔王討伐軍壊滅の悲劇が繰り返されないよう頼む!」

「………… 大丈夫ですよ、あの時とは状況が違います。先輩こそあまり戦闘以外の事で気負い過ぎないでください、俺も先輩の磁力操作には大きな期待を寄せてるんだから」

「フッ…… そうだな、お互いベストを尽くそう」


 もはや詐欺フラグの事など信じていないのだが、それでもあまりフラグは立てないでほしいモノだ。

 前回とは違い軍は出ない、全滅したって数十人だ。もちろん犠牲は出したくないがな……



---



 日没後 ――

 中央要塞会議室


 そこに数百人もの人が集まっている。しかし全員が魔王城に殴り込みを掛けるワケでは無い。大半は付き添いや関係者だろう。


 中には見覚えのある顔もチラホラ見える。

 例えば今俺の目の前でふくれっ面をしているネコ耳金髪癖毛のお姫様とか……

 てか、オルフェイリアだ。


「え~と…… オルフェイリア、なんでココに居るんだ? お前は国で国王代理をやってるんじゃなかったのか?」

「じ……陣中見舞いよ! 私はこの後すぐにとんぼ返りするのよ!

 そ……それよりあなた! 無事だったなら顔くらい見せに来なさいよ! 私がどれだけ心配したと思ってるのよ!」


 あらあら、可愛らしい事を言ってくれる。もしかしてわざわざ俺の顔を見にここまでやって来たのか? 愛を感じるね、さすがオルフェイリア! そのツンデレっぽく見せてデレデレな台詞もグッドだ!


「すまない…… ただオルフェイリアと再会する時は戦争が終わった後…… 平和な時が良いと思ったんだ」


 キラッ!


 久しぶりに歯を光らせてみた、ちゃんと光ったかな?


「バ……バカ…… そんなの気にしないわよ///」


 反応は上々、どうやらちゃんと光ったらしい。


「おい小僧! 王女殿下にツバをつけるなと言ってるだろ!」


 ネコ耳オヤジが俺達の間に割って入る。誰だっけコイツ…… 確か…ダ…ダ~…ダッ…… 忘れた。


「ダルストン、何の話をしてるの? だからツバってなに?」


 あぁ、そんな名前だったな。

 只々邪魔な奴って印象しか残って無い。


「もう会議が始まります、王女殿下はコチラへ」

「ちょっ……ちょっと、もう、あの……また後で……///」


 俺の第三夫人候補がネコ耳オヤジに攫われた…… ちっ! いつかオルフェイリアにアイツを辺境に飛ばさせよう。

 オルフェイリアが席についた所でミーティングが始まる。


「俺が今回魔王討伐軍の指揮を執る事になったクリフ・フーパーだ。

 隣は俺のコンビのシャーリー・アスコット。

 一応指揮は俺が取るが、第10魔王は情報が殆んど無いため何が起こるか予測がつかない。

 不測の事態が起こった時は各人の判断に任せることになってしまうがよろしく頼む」


 クリフ先輩は大まかな指揮を執るだけか…… その方が良さそうだな、プライドの高そうなのが多いし。

 てか、クリフ先輩とシャーリー先輩はどっかのギルドに所属してたよな? 独立したのかな?


「右から順に紹介していく、ギルド『剣王連合』の『剣王』レヴィン・C・シルバーソード。

 彼らのギルドからは他に4名が今回の作戦に参加する」


 お! あれが『剣王』レヴィン・C・シルバーソードか……

 思ってたよりは若いけど50代くらいのオジサンだ。だが参加メンバーは四人とも若い、あの中から次代の剣王が生まれるのかな? 一人だけ可愛い女の子がいる、ぜひ彼女に頑張ってほしいモノだ。


「その隣がギルド『槍王騎士団』。そして『槍王』シュタイナー・A・アッシュランスだ。

 槍王騎士団からは彼の他に3名参加してもらう」


 あれが『槍王』シュタイナー・A・アッシュランス……

 やはりオッサンだ…… こっちは全員オッサンのパーティーだ…… だからどうでもイイや。


「そして次が『魔法王団』の『魔法王』ラケシス・W・ネクロノミコン。

 魔法王団からは5名参加してもらう、治療や援護が主任務になる、出来るだけ優先的に彼らを守って欲しい」


 見覚えのある顔 其の2。元魔法少女のラケシスたんだ。

 未だにお元気そうで何よりだ。後50年は生きそうだな。


「そしてギルド『D.E.M.』の霧島神那だ。

 前回の魔王討伐の立役者。世界唯一のSSランクギルドで有名だから知っているだろう。彼らはギルドメンバー全員に参加してもらう」


 「あんな若造が?」とか「まだガキじゃねーか!」って声が聞こえる。別にイイけどね? 慣れてるし……

 問題なのは「アレが噂の……?」って声だ、どうせロクな噂じゃないんだろうな。

 慣れてるけど……


「その隣が『エルヴン・アロー』の『弓王』シルヴィア・G・スナイプアローだ。

 こちらからも5名参加してもらうが、魔法王団と同じく治療や援護が主任務になる」


 『弓王』シルヴィア・G・スナイプアロー…… 彼女は違う、師匠と同じ名前だけど、あんな痛い女じゃ無いハズだ!

 実年齢は分からないがさすが耳長族(エルフ)、美人のお姉さんだ。そして巨乳だ。

 メンバーの女性たちも全員巨乳だ…… なんで同じ種族なのにアーリィ=フォレストはあんなにペッタンコなんだろう?


「次がギルド『レジェンド』の二宮……ッ 二宮伝説(レジェンド)だ。

 彼らのギルドは全員がギフトユーザーという期待の新星だ、4名に参加してもらう」


 見覚えのある顔 其の3。伝説君とチーム・レジェンドだ。

 つーか、なんでお前らココに居るんだよ、コッチに来てまだ3ヵ月だぞ? いくらなんでも魔王討伐は早すぎると思うんだが……

 あとクリフ先輩、気持ちは分かるが笑わないであげて……


「そしてその隣が……その……」


 クリフ先輩が言いよどむ…… 当然の反応だ。


「はぁ…… えっとギルド『ブレイブ・マスター』の『勇者』ブレイド・アット・ホーム・アグリアスだ」

「ブレイド・アッシュ・キース・アグエイアスだ!!!!」

「あ……あぁスマン、え~とブレイド・アッ…… だ」


 あ、諦めた…… 気持ちはよぉ~~~く分かる!


 見覚えのある顔 其の4。バカ勇者と苦労の絶えない仲間達だ。

 要するに勇者御一行様の参戦が決定した。そう言えば「第10魔王は俺が倒す!!」みたいな事言ってたっけ? ホントに来たんだ……


「それと…… 最後なんだが……」


 ? またしても言いよどんでる、勇者以上に厄介な味方なんているのか?


「あ~~~…… ソロで戦ってる『勇者』ネヴィル・アーヴィン=セス・エンフィールドだ」


 ………………は?


「…………」「…………」「…………」

「…………」「…………」「…………」


 百人以上がつめ込まれている会議室が沈黙で支配される。

 は? 勇者? 何で二人目? 勇者って世界にたった一人、唯一無二の存在だろ?


 二人の自称勇者を見比べてみる。


 片や勇者ネヴィルは……

 金髪碧眼のイケメンだ。表情は自信に溢れ、実に堂々としている。


 一方勇者ブレイドは……

 相変わらずの2.5枚目、呆然としポカ~ンと開けられた口がアホっぽい。


 片や勇者ネヴィルは……

 青い鎧と豪華な剣を背中に差し、真っ白なマントを纏っている。アレはブルーロザリオとブレイブ・ブレイドなのだろうか? その立ち姿からは高貴さが溢れ出しているかの様だ。


 一方勇者ブレイドは……

 青い鎧は胴体部分しか残っておらず、肩や腕といったパーツは別の安物の鎧から流用したものだろう、胴体部分にも思いっ切り補修跡がある。ハッキリ言ってボロボロだ、全身から貧乏臭さが滲み出てる。


 …………


 俺は直感した。

 真の勇者が現れたのだと!

 魔王である俺の不倶戴天の敵! いずれ決着を付けなければならない宿敵! 永遠のライバル!

 彼こそが真の、正真正銘本物の、正規品の勇者だったんだ!

 どこぞのまがい物とは輝きが違う! ガ◯ダムとガ◯ガルくらい違う!

 あの二人を街頭に立たせて「どちらが勇者に相応しいか?」と質問したら、きっと100対0でネヴィルが勇者だと言われるだろう。


 今まで俺の視界をブンブン飛び回っていた羽虫は真の勇者が覚醒するまでの繋ぎだ、神が遣わした暇つぶしだったんだ!

 どうりで俺の与えた試練にことごとく挫折する訳だ、偽物なら納得だ。

 全く、神様も酔狂なことをする。しかし暇つぶしならもう少し上質な者を寄こして欲しいものだ。


 こっちの格まで下がりそうだ。


「ガーランドが魔王城に辿り着くまで一週間程度かかる、それまでの間に親交を深めといてくれ」


 こうして総勢40名にも及ぶ第二次魔王討伐部隊の顔合わせが終わった。

 第一次の時より確実に兵の質が上がってる…… きっとあの時は魔王を倒せるなんて思って無かったんだろう。前回一人もいなかった王連授受の有名ドコロが全員揃ってるのがその証拠だ。


 ちなみにライオンキングと炭鉱族(ドワーフ)たちは砦に残る。現国王のライオンキングは当然だな。

 炭鉱族(ドワーフ)鋼鉄人形(スチール・ゴーレム)を連れて行けないので防衛に回ってもらったのだ。敵なんか来ないと思うけど、ここは最終防衛ライン、備えは必要だな。

 その他にも多数の上級ギルド、AランクやSランクまでも居残りになっている。

 北方砦は幅100kmにも及ぶため、大部隊が必要なのだ…… と言うのが名目だ。実際は少数精鋭にして無駄な犠牲をできるだけ押さえたい…… それが本音だ。


 それも仕方が無い、前回の討伐軍は数千人の犠牲を出してほぼ壊滅だからな……


 果たして今回は何人生き残れるのか……




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