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レヴオル・シオン  作者: 群青
第三部 「流転の章」
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第140話 討伐作戦


 琉架にホープを呼び出してもらう。

 無事だと仮説を立てたものの全く自信がない。あれは琉架に余計な心配を掛けないためのハッタリ要素が多分に含まれていた。

 大丈夫だとは思うんだけどね?


 呼び出して数秒、要塞龍・ホープはあっさりやって来た……

 消し飛んだ左の翼も何事もなかったかのように健在だ。

 それはもう本当に何事もなかったかのように普通に現れた……

 俺達を空中に放り出し自宅に逃げ帰った奴がだ……

 コイツ、どうしてくれようか……


「ホープ! 無事でよかったぁ!」


 琉架がホープに抱きついた…… 実際は壁に張り付いただけに見えるが。

 琉架の手前、制裁を加えるワケにはいかない。運が良かったな…… しかし次は無いからな?

 俺と琉架だから無事で済んだが、他の子達が同じ目に遭ったら最悪死んでたんだぞ。


「おぉぉ…… 要塞龍・ホープ…… おねーさんってもしかして勇者?」


 ホープを呼び出した琉架を見てリュドミラがとんでもない勘違いをしている。あんなホーケー勇者と一緒にするな、むしろ俺達は勇者の対局に位置する存在だ。

 どうにも要塞龍は勇者の乗り物って印象が強いようだな。

 別に専用ってことはないんだが……


「とにかく魔王討伐頑張ってください! もし機人族(イクスロイド)が開放されたら、アタシ、ガイアに遊びに行きます! そしたら泊めて下さい! 今度は覗きませんから!」


 厚かましい奴……

 その言葉は全く信用出来ない。コイツをウチに入れたら俺のお楽しみ部屋が白日の下に晒される気がする…… コイツは危険人物だ。適当に言葉を濁してお断りしておこう。


「気が早過ぎる、魔王は簡単に倒せる相手じゃないぞ?」

「いやいや、アタシ知ってますよ? 最近魔王討伐ブームじゃないですか、ココ最近で4人もの魔王が死んでるじゃないですか!

 きっとうまくいきます!」

「よく知ってるな…… てか4人?」

「魔王レイドと魔王ウォーリアス、そして魔王ミューズと魔王マリア=ルージュ!

 世はまさに魔王討伐時代! 勢いに乗ってガンガン殺りましょう!」


 なんて嫌な時代だ……

 討伐する方にも、される方にも堪ったもんじゃない。

 それどころかサラッとマリア=ルージュまで死んだことにされている…… 本当にそうならどれだけ良かったことか、世の中そんなに甘く無いだろ。


「しかしこんな僻地でよくそんな最新の噂を知ってるな? どこから仕入れてくるんだ?」

「え……えぇ、それは……まぁ……」


 リュドミラは目を逸らした。

 もしかして……


「魔法通信を傍受してるのか?」

「っ…………!」


 コイツ……覗きだけじゃなく盗聴までしてやがったのか。


「そんなことやってると、第10魔王の機密通信を傍受して命を狙われる! ……なんてイベントが起きるかもしれないぞ?」

「それは心配いりません、そもそも第10魔王は通信をしないんです。通信する相手がいないんです」


 何その寂しい人生、アドレス帳に一つも名前書かれてないみたいな…… 魔王たちが等しく有するボッチ属性か。

 少なくとも俺のアドレス帳には琉架と伊吹と自宅と美容室が登録されていた…… 俺の勝ちだな。


「魔王城・オルターに居る生物は魔王だけだと言われています。後は人工精霊の使途くらいでしょうか? 噂ですけど」

「その噂って根拠はあるのか?」

「さぁ? ただ食料を入手している形跡が無いとか、大氷河は元々食料を手に入れるのが困難な地ですから。

 食糧無しで生きていけるのは魔王くらいなモノです」


 多分そうだろうな…… 俺達はちゃんと三食摂ってるが、きっと喰わなくても生きていける。

 しかし配下が人工精霊の使途だけなら助かるな、人工精霊はプログラムで動く、それは使途になっても同じだろう。つまり自分の意思で動かない。

 あの鉄壁の守りなら、内側に強固な防衛プログラムを作る意味も無い…… いや、それは楽観視しすぎか。


 むしろ生物に有効な致死性の猛毒なんかもあるかも知れないな…… そこら辺の準備もちゃんとしといた方がいいな。


「では頑張って下さい! 期待してますから!」


 リュドミラの期待のこもった眼に見送られながら、サウスマシナリーを後にする……

 どいつもこいつも他人に期待しすぎだ。


---

--

-


 北方砦 ――


 なんだかんだでようやく戻ってこれた。

 本来は日帰りの予定だったのに無断外泊をしてしまった……

 ここで嫁達の出迎え態度で俺の将来が決まるだろう。


 みんなが心配していたら俺は禁域王に……

 みんなが怒っていたら俺は低姿勢、低リスク、低燃費王に……


 別に亭主関白になる気もないし、威張り散らす暴君になるつもりもない……

 みんなが幸せになれる禁域こそが我が望み! そのためならある程度の低姿勢、低リスク、低燃費は受け入れるつもりだ。皿洗いやゴミ捨てくらいやったって良い。

 そこら辺はミカヅキがやってくれそうだが、とにかく俺は良い夫を目指している!


 だからみんな…… 信じてるぞ!!


 いつものようにホープから飛び降りて砦に着地する、見慣れてない兵士たちが慌てていたが無視する。


 真っ先に駆け寄ってきたのは…… ジークだった……

 この未来は予想してなかった……

 俺のハーレムにクソ筋肉が追加され……て溜まるかぁ!!


「戻ったか、流石に少し心配したぞ。お前たち二人ならそのまま魔王討伐をしてくるかとも思ったが」

「何でお前が……いや…… それどころじゃなかった。報告はみんな揃ったらするとして……」


「おにーちゃん! 死ねぇぇぇーーー!!」


 ビュオオォォォ!!


 世界拡張(エクステンド)で瞬間強化された拳が頬をかすめる…… 伊吹…… おにーちゃんを殺す気か?


「お姉様を連れていながら無断外泊! 何か申し開きはありますか? 最後の言葉くらいは聞いてあげますよ?」


 ウソつけ、俺の弁明なんか最初から聞く気無いだろ? 殺す気満々だったじゃねーか。

 あと、目を光らせながら指をパキポキ鳴らすのは止めなさい。お前は一応乙女なんだから。


「お前の心配するようなことは何もなかったよ」


 残念ながらな……

 一人の覗き少女のおかげで…… いや、ヤツの所為と言うべきか?


「お姉様…… ホントですか?」

「う……うん、本当ですじょ?」


 琉架は噛みながら頬を染め、目を逸らした……

 この娘は嘘がつけないんだよな、その仕草はビッグイベントが発生した事を仄めかしているかの様だ。


「おにーちゃん! 地獄に落ちろぉぉぉーーー!!」

「だから止めろって」


 久しぶりに兄妹で仲良くじゃれ合ってみた。

 向こうは殺気を込めていたけど……



---



 会議室に主だった面々が集められた。

 因みに嫁達は俺達を心配するあまり夜も眠れぬ感じだったとか…… 愛を感じる…… 愛なんて全然わからないけど、なんとなく感じる。

 良かった…… 呪いの儀式とかしてなくて、つまりジークが真っ先に駆けつけたのは、心配などカケラもせず熟睡した結果なのだろう。

 そんなだからお前はいつまでも除外メンバーなんだよ、頼むからいつまでも変わらないお前でいてくれ。


 会議室にはD.E.M. メンバーの他に、ライオンキング以下 獣衆王国の軍指揮官クラス5名、北方砦に駐留しているギルドの代表たち、そしてクリフ先輩とシャーリー先輩もいる…… エセセレブのヤンキーがメッチャ睨んでくるけど文句は言ってこなかった、きっとクリフ先輩が根回ししてくれたんだろう、なんて頼りになる先輩! どっかの先輩とは大違いだ!


 ちなみにその頼りになるクリフ先輩は各ギルドの取り纏め役をやってるそうだ、かつての魔王討伐軍でのアーサーみたいなポジションだな。

 そういえばアーサーってどうなったんだろう? 大変革(レヴオル・シオン)の時に亡くなったのだろうか? 彼は精神的イケメンだったし善人だった、もし亡くなっているなら惜しい人を亡くした。

 まぁ死んだとも限らんし、後で誰かに聞いておこう。


「それでは第10魔王城について報告します。結論から言うと、アッサリ見つかりました」

「ここから近いのか?」

「そうですね…… 予想より遥かに近かったです、北方砦から直線距離で300kmといった所ですね。ただ…… いくつか問題があります」

「問題?」

「第10魔王城、名前をオルターと言うそうなのですが…… 歩いてるんです」

「歩いている? どういう意味だ?」


 いくらファンタジー世界でも歩く城は理解しがたいのか? しかし何百メートルもある巨大なゴーレムが歩き回り、空に浮かぶ大陸なんかも存在する世界だ…… 何があっても不思議はない気がする……


「移動要塞って感じでしょうか? イメージでは10000メートル級の超超巨大鉄機兵です。

 魔王城・オルターの上部は巨大な竜巻に覆われており空からの侵入は不可能、当然下部からの侵入も相当困難でしょう、更に北方砦の一部を破壊した荷電粒子砲っぽい兵器も配置されてます。

 そんなのが時速4~5kmでこちらに向かって移動中です。

 多少回り道をしても1ヵ月程でココに到達すると思います」


 …………


 誰も声を上げない…… この情報だけでは絶望的だからな。


「ただ魔王城・オルター潜入に関してはコチラに幾つかプランがあります。ですのでそれは任せて下さい、ただ魔王城・オルターには魔王以外の生物がいないという情報もあります。

 なので念の為、対BC兵器の用意をお願いします」

「BC兵器?」

「生物・化学兵器です、要するに毒ガスとかです。味方の生物がいないのなら使い放題ですから」


 ただ今までの魔王のパターンから無差別殺戮はして来ないような気がする……

 戦闘能力の高い者や、ギフトユーザーは自らの手駒として有効利用できるからな。


 もっとも第10魔王は何を考えてるか分からないから絶対じゃ無い。念の為用意しておいても損は無いだろう。


「こちらも潜入した訳じゃ無いので、これ以上詳しい情報を提示できないのですが、何か質問ありますか?」

「魔王城の名前や、生物がいないという情報はどこで手に入れたのだ?」

「たまたま機人族(イクスロイド)の集落を見つけたんです、ただ住民は避難していて二人しかいませんでしたが」

「その機人族(イクスロイド)は魔王の情報は持って無かったのか?」

「残念ながら有史以来、第10魔王プログラム・プロメテウスを直に見たヒトは居ないらしいです」


 これは神代書回廊(エネ・ライブラリー)の情報だけど…… ま、いいか。



 その後会議はお開きになる、手に入れた情報があまり多くないから大して話し合うことも無い。

 今はまだ準備段階だからな。


「ジーク」

「む? なんだ?」

「神聖域の正確な場所って知ってるか?」

「神聖域…… 知っているが何故だ?」

「要塞龍の力を借りる。何でも大昔の勇者が考案したプランらしい」


 勇者=バカのイメージがあるからな、果たして上手くいくかどうか……

 まぁ、今世代の勇者が果てしなくバカなだけで、歴代勇者全てがそうだったとは思えない。

 そもそも先代勇者はミラの父親だからな、例えバカだと思っても口には出さない。


「ちなみにジークはこのプラン上手くいくと思うか? もしダメなら第2プランを実行しなければならない。

 かなり荒っぽいプランだから出来ればやりたくない」

「何をするつもりだ?」

「核融合で吹っ飛ばす」


 もちろん足だけ吹っ飛ばすつもりだが、あまりオルターを壊したくない、あの城は未知のテクノロジーが詰まった宝箱のようなモノ、恐らく古代神族(レオ・ディヴァイア)の遺産だろう。

 何よりあそこには人工精霊のデータがある。壊したくない。


「ふぅむ…… 正直、未知数ではあるが、やってみるだけの価値はあるだろう」


 未知数か…… 仕方ないな、前回このプランが使えなかった理由もわからない。

 もしかしてアレか? また精霊集めとかやらされるのか?


 ダルいお使いイベントが無いことを祈りつつ新聖域へと向かうことになった。




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