第101話 第6魔王 ~先客~
『カ……カミナ様? アレは……』ヒソヒソ
『シッ! まだ気付かれていない、様子を窺うんだ』ヒソヒソ
あれが『第6魔王 “歌姫” ミューズ・ミュース』…… 絶世の美女…… ミラによく似ている。正確にはミラが似ているのか。
整った顔立ち、長くキレイな金髪、完璧なプロポーションに美しい尾びれを持っている。
しかしそれら見た目の美しさだけならミラや琉架も持ち合わせているのだが、魔王ミューズから発せられるのはそれだけじゃない。
どう表現すればいいのか…… 何というか色っぽさ? 艶っぽさ? まだ年若いミラや琉架が持ち合わせていない大人の女の色気みたいなのモノ…… いわゆる艶やかさと言うヤツかな? そんなモノが過剰なほどに溢れ出している…… 大噴火だ! ムンムンだ! アイツから溢れ出したオーラの所為で部屋中がピンク色に見える。
紛れも無い絶世の美女…… 認めたくはないがミラや琉架より美人かも知れない…… だが不思議と惹かれはしない。
これは俺が魔王になったが為の影響だろうか? それとも個人的な好みの問題か?
確かに俺のエロ画像フォルダの中身は色気ムンムンのお姉様より、若いフレッシュな感じの娘が多い。ちなみに幼い子は含まれていません。
大丈夫、この程度なら余裕で耐えられる。霧島神那は浮気しない!
…………
フッ…… 禁域王にとってこれほど虚しい言葉は無いな……
とにかく心配していたほどではない。確かに殺すのは躊躇われるほどの美人だが、アイツとミラを天秤に掛けたら俺は間違いなくミラを取る。
しかし不安も残る…… 何せ相手は「世界一美しい」「美の極致」「男殺し」なんて異名を持っている。
もしかしたら魔王ミューズの意識がこちらに向いていないから…… 或いは、未だ本性を現していないから…… そんな可能性も大いにある。
ならば今は好都合、こちらに気付いていない今の内にじっくり余すトコロなく観察…… 見慣れておこう。
そうだついでに写メを…… しまった! 防水じゃ無い!! 魔神器から出した瞬間に水圧で潰れるんじゃねーか!? ガッデム!!
仕方ない、目に焼き付けておくか…… あれ? 俺少し惑わされてる? いや、コレが俺のデフォルトだ。
「うおおぉぉぉぉおお!!!!」
謁見の間に暑苦しい男の声が響く、相も変わらず「!」が多い奴だ。
魔王ミューズに目を奪われて存在を忘却していたが、居たんだよ…… 奴らが。
およそ一年ぶりの再会、愚かなる勇者と苦労の絶えない仲間達だ。
きっと今現在の状況も、勇者の愚かな行いが仲間達に苦労を掛けているに違いない。
「うおおぉおぉぉぉ!!!! 喰らえ魔王!! 『封魔剣技・音速剣』!!!!」
距離を詰めた勇者の一撃が放たれた。『封魔剣技・音速剣』…… 封魔剣技ってのは確か勇者のみが扱える対魔王剣術の事だ。これも代々の勇者に受け継がれ少しずつ研鑽を重ねてきたという。
しかし……
「アハッ♪」
ヒュン!
カスリもしない…… 魔王ミューズの回避は尋常じゃない動きだ。三次元的な動きで、正直そこまで派手に動かなくてもイイだろ? ってくらい…… まるで早送りで舞い踊っているが如くだ。
あの動きは例えるなら小魚の動きだ、人が素手で捉えられる動きじゃない。
あの俊敏性…… 人魚族はきっと白身魚なんだろう。
「あれ?」
今頃気付いたが、勇者たちも俺同様、海の底にも拘わらず地上と同じ格好で立ち回っている。
何故だ? 属性変化魔法は第7魔王のオリジナル、他に使える奴はいないハズだが……
分からない事があったら取り敢えず聞いてみよう、アルテナ先生出番です。
『ふ~む…… 確証は無いが、もしかしたらヒンデンブルクの加護かもしれん』ヒソヒソ
『ヒンデンブルクの加護?』ヒソヒソ
『うむ、ヒンデンブルクには契約者に海での自由を与えるという伝承があるのじゃ。眉唾物の伝説だと思っておったが、あながち真実なのかもしれんな』
何と! そんなモノがあったのか! 要塞龍・ヒンデンブルクは第6魔王攻略のキーアイテムだったんだ。そんな重要アイテムを自力で手に入れるとは…… 勇者よ! 成長したな!
まったく嬉しくないけど……
「くそぉぉぉ!!!! 『封魔剣技・改!! 音速剣・乱舞』!!!!」
一発では魔王を捕えられない音速剣を何発も不規則な剣閃で放つ!
「アハハッ♪」
ヒュン!ヒュン!ヒュン!ヒュン!ヒュン!
カスリもしない…… さっきの言葉は取り消そう。やっぱりアイツは成長して無い!
「くそっ!! 何なんだあの動きは!? 何故俺の音速剣がカスリもしない!?」
「落ち着いて下さい、勇者様!」
如何に加護を受けていようとも、ここは海の中だ。水の抵抗がある。
さっきから音速剣と連呼しているが、全然音速に達していない…… 遅すぎる。そして未だにその事に気付いていないアイツは真性のBAKAだ。
「勇者様、ここは海の底です! どうやっても水の抵抗をゼロには出来ません! つまり勇者様の剣は音速に達していないんです!!」
お、エルリアは冷静だった。
どうやら彼女はちゃんと成長しているらしい。もういい加減、勇者パーティーから抜けて余所のギルドへ移籍した方が良いと思うぞ? 今のお前ならきっと他のSランクギルドでもやっていけるさ。
「くそっ!! ならば……!!」
「『雷神剣』はやめて下さい。全員感電します」
「………… わ……分かってる!!」
その間は何だ? その間は……
「封魔剣技を使うって事は…… キミ、勇者なんだ…… ふぅん。
そう言えばその青い鎧、前にも見た事あるわ、確かブルーロザリオだっけ? 胸部の補修跡がみすぼらしいけど」
「ぐっ!! き…きさま!!」
「落ち着いて下さい勇者様! 怒らせて冷静さを失わせる作戦です!」
「作戦なんかじゃ無いわよ、本当に疑問に思っただけ。そんな事しなくても始めからその子冷静じゃないし」
「ぐぎっ!! く…… スゥーーー ハァ~~~!!」
おぉ! 持ちこたえた! しかし見透かされてるぞ勇者よ? お前はいっつも無駄に熱すぎるんだよ。
「それにしても勇者かぁ……」
魔王ミューズが渋い顔をしている、先代勇者の事でも思い出してるのか?
「暑苦しい男もたまには悪くないんだけど、先代勇者で色々実験したからね、もうやる事も残ってない。飽きちゃったのよ」
「ッ!!?」
ミラが俺の手をきつく握ってきた…… 僅かに震えている……
「先代勇者? 実験だと? 貴様まさか……っ!!」
「あぁそっか、歴代の勇者って直接的な繋がりが無いから知らないんだ…… そう、先代勇者…… 48代目だっけ? 名前忘れちゃったけど、そいつを仕留めたのは私よ♪」
「き……貴様がぁぁぁ!!!!」
「そんな訳で勇者のパーソナルデータは既に持ってるの、だから君を飼う必要もないワケ」
「か……飼うだと!? 貴様一体何をした!!?」
「フフン♪ 知りたい? だったら特別に教えて上げる。もっともそんな大層な事をしたわけでも無いんだけどね?」
「ハァッ!! ハァッ!!」
『落ち着けミラ、大丈夫だから』
『カ……カミナ様……』
ミラの肩を抱き落ち着かせる。こんな事で落ち着けるか分からないが、今の俺に出来る事はこれくらいしかない。
「まずは他の男たちと一緒、性感帯のチェックね。その後、性的な意味での耐久力チェック♪」
ッ!? 危ねぇ! 吹き出しそうになった!
「その後は勇者の戦闘力と命的な意味での耐久力チェック。
凶暴な海龍と素手で戦わせてみたり、肉食魚に食わせてみたり、思いつく限りの拷問を試してみたり……」
え?
「その実験で分かった事は、勇者とは人族の中から現れる突然変異のようなモノ。一般人よりも極めて丈夫で何度も死にそうになるけど中々死なない…… そういった特性を持ち合わせている」
コ…コイツ……!
「そこでちょっとした実験を思いついたの、勇者の子種で娘を作ったら勇者と魔王、双方の特性を受け継いだ子供が生まれるんじゃないか……って」
「貴様……まさか……!!」
「そう、2400年の人生の中で初めて妊娠ってのを体験したわ。最悪の経験だったけどね…… 気持ち悪いわ、苦しいわ、痛いわ、中でも男たちと自由に交われない時期があってね…… アレが一番苦痛だったわ」
……淫乱糞ビッチめ……
「そういった苦労を払って作った娘は欠陥品の失敗作。勇者の特性は何一つ受け継がず、私の特性も劣化版しか持っていなかった。あの時ほどガッカリしたことは無いわ、せっかく拾ってきた男が不能だった時より失望した」
…………
「でも折角あれだけ苦労して作ったんだし有効活用しないと勿体無いでしょ? そこで父親をしばらく生かしておいて「勇者は敵だ」って教え込む教材に使ったの。その目的は次代の勇者、つまり君と戦わせて遊ぶためよ」
「き……貴様それでも母親か!!!!」
「ハッ! 冗談ヤメテよ、私はアレを作るために多大な苦労を払ったのよ? その挙句生まれてきた欠陥品を廃物利用して何が悪いのよ? 一般的な倫理観で魔王である私を計らない方が良いわよ?」
……ヤバイ、今にもブチギレそうだ……
だがこんな時ほど冷静にならなければ、今ミラを支えられるのは俺だけなんだから。
「その上、アレ、逃げ出したのよ? 次世代の勇者であるキミと対峙しているこの瞬間の為に作ったのに! 失望を通り越して怒りが沸いたわ。
もっともどっかで野垂れ死んだみたいだけどね、首だけしか見つからなかったけど……」
「もういい! 十分だ!! それ以上喋るな!!!!」
「アラそう? 先代勇者の最後とか聞きたくない?」
「喋るなと言ったんだ!!!!」
何か嫌だが勇者と気持ちが同調した。
俺も未だかつて、ここまで他人に対して激しい怒りを覚えた事は無い!
狭い通気口の中で強引に体をひねり、ミラを強く抱きしめる。
色々掛けてあげたい言葉があるが、今はそれを口にしても意味が無い気がする。
「……ッ! ……ッ……!」
ミラは俺の胸の中で声を殺して耐えている。本当は今すぐ出ていってあの淫乱糞ビッチをブッ殺したい所だが、俺にとってはアイツを殺す事よりミラの方が大切だ。
あまり期待は出来ないが、今は勇者に任せよう。
「『幻想剣』!!!!」
「幻の剣ね…… 先代も同じコトしたわよ?」
「ならば知っているだろう! この幻の剣は実体を持たず敵の精神だけを切る強制暗示の剣!」
強制暗示の剣…… バカにしては良く考え付いたな。
強烈な暗示にかかった者は火だと言って別のモノを押し当てると、そこが火傷するという。
強制暗示の攻撃は一種の精神攻撃、テレパシー攻撃と言える。例え頑強な体を持っていても精神感応攻撃は防ぎようがない。重要になって来るのは精神の強さの方だから……
しかし……
確かに実体を持たない剣なら水圧の影響を受ける事は無いし、剣を伸ばす事も曲げる事も自在にできる…… だからと言って相手の回避力が落ちる訳でも無い。あの魔王相手にまともに剣を当てることが出きるのだろうか?
更に言えば、果たしてアイツにあの剣を使いこなす事が出来るのだろうか? 心が弱いアイツに……
ましてや相手は心を操る能力を持つ魔王。分が悪い気がする……
「喰らえぇぇぇ!!!! 『封魔剣技・改!! 幻想音速剣』!!!!」
勇者の放った音速剣は、勇者自身が水圧の影響を受けている為、相変わらず音速には達していないが、幻想剣の剣先が敵に向かって高速で変形していく…… その速さは音速を超えた。
「おっと♪」
魔王ミューズは、今度は必要最低限の動きで回避する。
またしてもカスリもしない…… ガッカリだ…… 残念勇者ここに極まれ……
しかし……
「どうだ外道!! 精神を切られる感触は!!」
は? 当たってねーじゃん……
いや…… 違う、これは精神感応攻撃? 魔王ミューズは逆に勇者の精神に攻撃を仕掛けていたんだ! バカな…… 一体いつの間に?
いや、勇者の幻想剣と違い、そもそも精神感応攻撃に明確な攻撃動作は存在しない。
「うふふ♪ バカな子たち」
“歌姫”…… 声、音、振動…… たったそれだけで幻を見せ、人を操るというのか?
少なくともあの外道魔王に勇者が魅了されている事は無い、あ~いや、アイツも男、100%DTだ。その可能性も無くは無いが、何か魔王ミューズの力を媒介するモノが存在するはずだ。それが分からなければ勝ち目は無いぞ?
魔王ミューズがその場で後方宙返りをする。その尾びれから発せられた強烈な水流が勇者たちを後方へ吹き飛ばし、謁見の間の壁に叩きつける!
「がはっ!!?」
「くっ!?」
「ぐおっ!!」
「ぎゃっ!!」
やはりダメだ…… ココは……海の中は魔王ミューズにとって正にホームだ。ココで戦う限り勇者たちに勝ち目は無い。
「くっ! 何故だ! なぜ反撃できる!?」
「だから言ったでしょ? 先代も同じことしたって。勇者ってだからダメなのよ」
「な……! んだと……」
「勇者は代を重ねる毎に確実に強くなっていく、でもそのの伸び幅はサンゴの成長より少ない。このペースじゃ魔王と対等に渡り合えるようになるには後1000年は掛かりそうね?」
「ぐっ……!! ぎっ……!! ぎぎっ……!!」
「そもそも勇者って勇者の力を過信っていうか、盲信しすぎよね? 未だかつて誰一人として魔王殺しを成し遂げたこと無いのに、どうしてそこまで勇者の力を信じられるの? もしかしてそう思い込むよう設定でもされてるの?」
ず……随分と煽るなぁ…… 俺も相手を煽って怒らせる戦術はよくやるが、アイツと似ているってのは不快だ。
「ぐ…ぎ… この腐れ外道女悪魔がぁぁぁ!!」
アレって、男悪魔はきっと俺のコトだな。
「勇者様落ち着いてください!」
「大丈夫! お……俺は冷静だぁぁぁ!!!!」
勇者がエルリアの静止を振り切り飛び出した。アレのどこが冷静なんだ?
「す~~~……」
魔王ミューズが息を大きく吸い込む…… いや、海水を飲み込んだのか?
「わっ!」
「!!??」
魔王ミューズから放たれた衝撃波のようなモノが勇者に当たる、すると勇者は動画の一時停止のようにその場に縫い止められていた。
勇者の姿がブレて見える……
「ふ~~~っ」
魔王ミューズが軽く息を吹きかける動作を取ると、勇者はまたしても後方へ吹き飛ばされていった。
「ぐあああぁぁぁーーー!!??」
「勇者様!?」
「ブレイド! 大丈夫か!?」
「小僧!!」
「あ…あぁ…… 大したコト…… グッ!? グハッ!?」
勇者が大量に血を吐いた…… 血は周囲の水に混ざり勇者とその仲間たちを赤い水で包み込む…… キモチ悪い……
見れば勇者ご自慢の鎧、ブルーロザリオには大量のヒビが入り所々欠け落ちてる。この症状……これは…… 超振動か!
「ハァ…… もういいや、飽きちゃった。そうだ♪ せめて最後に面白いショーを演じてよ?」
そう告げると、魔王ミューズは勇者たちから距離を取り数段高くなっている玉座の前に移動する。まるでステージに立つ歌手のようだ。
「歌姫人魚 『小夜曲』」
魔王ミューズが鼻歌で美しいメロディーを紡ぐ…… 思わず聴き惚れそうになる。まるで魂を引っ張られるような、一瞬意識が遠くなるのを感じた。
本人はド外道でも、“歌姫”の二つ名を持つだけはある。勿体無い才能だ。
『カミナ様…… 聴いてはいけません。コレこそがお母様の魅了の歌です』
『なに? それじゃ……』
「………………」
「ゆ……勇者様? まさかっ!?」
「ウガアアアァァァ!!!!」
勇者が突然暴れ出し、自分の仲間達に襲い掛かった!
「うっ!!」
「しっかりしろブレイド!!」
「ダメじゃな、完全に敵の術中にハマっておる」
「クスクス…… あなた達が全員勇者に殺されたら彼の洗脳を解いてあげる……って言ったらどうする?」
「あぁ! もう! このダメ勇者!!」
「何が「勇者には魔王の精神攻撃は聞かない!」だ! 簡単に惑わされおって!」
「いつも通りじゃ! 小僧を気絶させてから連れて逃げるぞ!」
手慣れてる…… 苦労の絶えない仲間達はこうなる可能性を考えていたらしい…… 本当に苦労してるな……
「ちょっとぉ、気絶させても元には戻らないわよ?」
「だったら戻るまで殴り続けます!」
エルリアの本音が漏れた…… よほど不満が溜まってるのだろう。だが方法は悪くない。時間が経てば洗脳は薄れる、そして殴り続ければ覚醒も早まるかも知れない。
ガイアの駅前に磔にしといてくれないかな? 俺も勇者タコ殴り治療に協力するよ。
「それはそれで面白そうだけど、私がいない所でやられても、私が楽しめないじゃない…… しょーがない、勇者君、あなたの大事な仲間たちと…… 「心中」して?」
「カシコマリマシタ……」
勇者は何の躊躇も無く魔王の命令を聞き、背中から勇者の剣ブレイブ・ブレイドを抜き放つ。
「歌姫人魚 『輪舞曲』」
魔王ミューズが先ほどとは別の曲を口遊む。その直後、勇者一行の周りにドーム状の空間の歪みらしきものが現れる。コレは精神感応じゃない、振動か?
『アレは結界です…… 誰も近寄らせず、誰も逃がさない……』
結界? まさかあの中で殺し合いでもさせる気か? いや…… 魔王は勇者に「心中」しろと命じた…… まさか! ヤバイ!!
「!! いけない!! グレイアクスさん、勇者様を落として!!」
「チィッ!!」
グレイアクスがバトルアックスの腹を遠慮無しのフルスイングで勇者の頭に叩き込む!
ゴイン!!
当然勇者は派手に吹き飛ばされる、本日3回目の光景だ。
しかしそれだけでは勇者の意識を刈り取る事は出来なかった。吹き飛ばされながらも絶え凌いだのだ!
心は弱い癖に、身体だけは人一倍頑丈だ!
「雷撃魔法『雷神剣』!!!!」
ガガッ!!!!
凄まじい閃光が一瞬だけ部屋の中を照らした! 結界で覆われていてなお、その衝撃は城全体に響き渡った。
『おい…… まさか……』
結界内の水が濁っていて中を見通せない…… 一体どうなった?
「さて…… どうなったかな?」
結界が解かれると、水は次第に透明度を取り戻す。
そこには勇者たちが力を失い、ゆっくりと床に沈んでいく…… そんな光景が現れた。
体が時折ビクビクと痙攣している…… 電撃の影響か? い……生きてるのか?
「かふっ!」
エルリアが小さく声を上げた! 生きてる! 微弱だが他の連中のオーラも見えた。
「勇者君詰めが甘いなぁ、電撃の致死量をちゃんと計算しなきゃ。もしかして頭悪いのかな?」
「モ……モウジワゲゴザイマゼン」
勇者も生きてた…… お前は死んでも良かったのに、てか、立ち上がった。マジで頑丈だな。
「じゃあ改めて全員殺しなさい、その後自刃して果てなさい」
未だに勇者一行のピンチは終わっていない。