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第四話.はじめてのデートは、手をつないで


「デ、デート、する?」

放課後の教室。

凛が、やたら真面目な顔で言った。

「え、今なんて」

「デート。嫌ならいい」

「嫌じゃない!」

食い気味で答えると、凛は少しだけ満足そうに目を細めた。

「じゃあ今週の日曜。駅前集合」

「了解です」

こうして、俺たちの“はじめて”が決まった。

日曜日。

駅前の時計の下。

凛はすでに来ていた。

白いワンピースに薄いカーディガン。

いつもの制服姿とは違う、少し大人びた雰囲気。

思わず見惚れる。

「……なに」

「いや、可愛いなって」

一瞬固まる凛。

それから顔を真っ赤にして視線を逸らす。

「当たり前でしょ」

声が小さい。

そして、数秒後。

「……あんたも、まあ……悪くない」

遠回しすぎる。

でも嬉しい。

「で、どこ行く?」

「映画」

凛は俺の袖を掴んだ。

そして自然な動きで――指を絡める。

恋人つなぎ。

「え」

「嫌?」

「全然」

むしろ心臓が限界。

映画館までの道。

凛は一度も手を離さなかった。

むしろ、信号のたびに握る力が強くなる。

例の交差点に差しかかる。

一瞬、凛の足が止まる。

俺は何も言わず、手をぎゅっと握った。

凛も握り返す。

そして、小さく笑った。

「今日は、怖くない」

その言葉が嬉しくて、胸が温かくなる。

映画の後。

少し暗くなった帰り道。

「楽しかった?」

聞くと、凛は少し考えてから。

「……うん」

それから、俺の肩にそっと寄りかかる。

「でも」

「ん?」

「映画より、あんたといる時間のほうが好き」

不意打ち。

顔が熱い。

「それ反則」

「反則じゃない」

凛は真剣な顔で言った。

「あの日、失いかけてわかったの」

立ち止まる。

夕焼けが、街を染める。

「私は、あんたがいないとダメ」

その言葉は重い。

でも、甘い。

俺はそっと凛を抱き寄せた。

「俺もだよ」

凛は一瞬驚いて、それから静かに目を閉じる。

「……キス、する?」

顔が近い。

距離、ゼロ。

俺はゆっくり頷く。

唇が触れた瞬間。

春の風が、優しく吹いた。

短くて、不器用で。

でも、確かに恋人のキスだった。

離れたあと、凛は真っ赤になって言う。

「これからも、隣にいる」

「うん」

「絶対、いなくならないで」

「約束」

指切りみたいに、小指を絡める。

塩対応だった幼馴染は、

今は俺だけに、とことん甘い。

でもきっと。

この甘さは、

一度失いかけたからこそ、生まれたもの。

俺たちは、ゆっくり歩き出す。

手をつないだまま。

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