「君を愛することはない」と言った旦那様は光輝いていた件について
「君を愛することはない」
新婚初夜にそう言われた。旦那様は公爵ダグラス様32歳、私は学園卒業したばかりの18歳のエミリー。旦那様とは結婚式の時に初めて顔を合せた。
貴族当主は妻がいなければ継ぐ事が出来ない。
故に多額の資金援助と引き換えに貧乏伯爵家の令嬢の私と婚約を結ばれた。
「左様でございますか。失礼します」
原因は何だろう。意中の女がいる?
それはない。
婚約者時代、手紙のやり取りだけではあったが誠実ではあった。
男色家?それも違う。
私では性欲がわかない?いや、18歳だ。
インポ?
悩むところではあるが、理由は一目で分かった。カツラを被っていたのだ。
「あら、エミリー、昨晩は眩しかったかしら」
お義母様だ。ダグラス様にとっても継母に当たる。
お母様はダグラス様の御頭の御髪が薄いことを嫌み言う。
「はい、お義母様、さほどでも」
「まあ・・・」
ダグラス様の腹違いの弟は結婚して屋敷に住んでいる。
いつも3人でダグラス様の御頭がスマートな事を笑い合う。
「母上、ハーゲン公爵家でハゲはいかがなものかと社交界で噂されていました」
「フフフフフ、ロバーツが公爵だったら良かったのに」
「そうよ。もうすぐよ。跡継ぎがいなければ貴方たちがハーゲン公爵夫妻よ」
腹違いの弟夫婦は美男美女だ。
継母も歳相応に美しい。
この3人は主に社交を担当している。
旦那様は引きこもって仕事をしている。
私は茶髪にブラウンの瞳、一言で言えば地味だ。
旦那様は中肉中背、太っているほどではない。
だが、帳簿や手紙を見るとしっかり書かれている。人柄は良いのだろう。
あら、視線を感じる。
旦那様が見ていた。
ニコッと会釈をすると、慌ててそそくさとする。
「・・・君、何か不足な物があれば言うように用意させよう」
「旦那様、有難うございます」
これは何とかしたい。
方法は簡単だ。
私は新婚3日目で、義母の寝室に忍び込んだ。
手には鋏を持つ。
☆次の日
「ヒィ、キャア、誰か、いえ、誰も来ないでーーーー」
「奥様!」
朝、お義母様の寝室から悲鳴があがった。
私がお義母様の御髪を根元から切ったのだ。
これで頭がスマートな方の気持が分かるだろう。
私は鋏をチョキチョキしながら屋敷を歩き回る。
「・・・もしや、エミリー様が?」
「これ、使用人ごときが話しかけないで下さる。私が公爵夫人よ。奥様と呼びなさい」
「し、失礼しました」
田舎者でも王都でも使用人は変わらない。
そのままダグラス様がいる執務室に向かう。
「旦那様・・・今夜の社交界、夫婦で出席しましょう」
「しかし、いつもは義母とロバーツが・・」
「お義母様は御髪が抜けていけませんわ」
「な、何だと」
「ええ、髪がスマートになりました」
社交界に出席したら、皆はガヤガヤ言うが気にしない。
旦那様はカツラを気にしているがそれは構わない。
社交界にいるハ・・・頭がスマートな方を探して挨拶をする。
「ゲーリング卿ご夫妻、ハーゲン公爵家夫人エミリーでございます」
「ハハ、眩しくないか?」
「いいえ。ご冗談を」
「あなた、若い方にくだらない自虐ネタはやめなさい」
旦那様は目を白黒されている。
やはり、義母によって社交を制限されていたから外の世界は分からなかったのだろう。
社交界が終わり馬車の中で告発を受けた。
「エミリー、すまない私は、ハ『それは言ってはなりませんわ』」
言葉を被せた。
「光頭・・・と呼びましょう」
「ああ、私は光頭だったのだ」
「それはようございます」
それから旦那様はみるみる自信をつけ。社交界も出るようになった。
そして、
「おい、ロバーツ、見ろ。眩しいか?眩しいから、カツラ被ってやっていたんだ!感謝せい!」
「義兄上!」
「ヒィ、やめて下さいませ!」
カツラを取って弟夫婦を追いかけ回している。
私はお腹をさすりながら見守るのが日課だ。
「エミリー光頭会社交クラブを作るぞ。光頭限定だ」
「旦那様、それはようございます」
やり過ぎたか?
最後までお読み頂き有難うございました。




