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第13話 ソルド国の策略

戦争戦略会議から5日後、突如アンファング王国に異変が起こる。

最初の報告は、とある農民からの報告だった。

「壁内に魔物がいた」

その報告を受けたため、壁内に魔物が現れることがあるのかと疑心を持ちつつも、王は兵士をそこに派遣した。

暫くすると、防具は酷く汚れ、とても疲弊した様子の兵士達が帰ってきたのだった。

恐らく、本当に魔物が侵入してきていて戦闘になったのだと推察される。

しかし、おかしい。

いくら、アンファング王国の兵士といえど、ここら辺の魔物程度に苦戦するほどの雑魚ではなかった。

「そこまで疲弊しとる理由を報告せよ」

「はっ!魔物が異様に強かったであります。その魔物がいた場所は魔素濃度が異様に高かったため、その濃度相応の魔物が現れたと推察します」

「なぜ、そんなに魔素濃度が高くなっておる」

「原因は不明です。ですが、近くの住民によると夜中になにか爆発したような音が聞こえたとの事です」

「爆発か…」

王に思い至る節はなかった。

「とにかく、急いで原因を追求せよ」

「はっ!」

兵士が走ってドアから出ていく。

と思ったら、別の兵士がドアから走ってきた。

その兵士は酷く焦っていた。

「今度はなんだ?」

只事ではないと王は感じとる。

「大変です!各地で魔物の目撃情報が上がっております。しかも、その魔物は大変強いとの事です。実際に被害の報告が何件も上がっており、大変危険な状態です!!」

王はこの報告で、自国に今何が起きようとしているのかを察した。

「夜中に爆発音がしたという報告はあったか…!?」

「はい!何件かその報告も上がっております」

王は頭を抱えた。

これは、只事ではない。恐らく何者かによる悪意。即ち、

「兵長に厳戒態勢を取るよう命じよ!ソルド国による攻撃が始まっているかもしれぬ。直ちに、国民を避難させ安全を確保させよ」

「はっ!」

兵士がドアへ向かって走っていった。

王は即座に勇者パーティに連絡を取ろうととあるアイテムを使い始める。

"通信水晶"

これは、遠くにいる人とも会話ができる画期的な魔法アイテムである。

「アニャ、ソルドス、ヒスト、朝倉殿、聞こえておるか!」

それぞれが返事をする。

「今現在、都内各地で魔物が出現しているらしい。しかも、なかなかその魔物は手強いどのこと。それらの魔物を討伐し、強いては原因の特定をして欲しい。出来るか?」

「まっかせてよ!」

「任せろ」

「任せてください!」

「承知いたしました」

それぞれが快く快諾してくれた。

「何かあれば、いつでも連絡するように」

そう言ってから水晶を切ろうとしたが、日本国の王が止めてきた。

「すみません!我々の軍隊を壁内で運用し、発砲しても構わないでしょうか?」

それは、日本国の軍隊をアンファング王国内で暴れさせてもよろしいかという問いだった。

そんなの答えは決まっている。

「もちろんだ。正直兵力が足りていない。貴国の力を貸していただきたい」

「ありがとうございます。では、失礼いたします」

通信を切ってから、王は少し項垂れる。

「もし日本国が居なければ今頃どうなっていただろうか」

と。

我が国の兵士も十分に訓練を受けた強い兵隊なのだ。

しかし、環境が悪い。

勇者のお陰で戦争は起きず、魔王とはほぼ反対に位置しているため強い魔物が居ない。

そんな環境で、どう兵士の力を保てようか。

とにかく、王も王でやるべき事がある。

王は、久しぶりに自国の伝家宝刀である"王の大剣"を取り出した。

「久しぶりじゃのう。ワシが剣を取るのは」

王は、自身の身長程度ある剣を軽々と振り回す。

「我が国内に蔓延る害虫どもめ。ワシが直々に処分してくれよう!!」

そう宣言し、王は王室の間から出て行くのだった。



───アンファング王国内はパニック状態に陥っていた。

無理もない。

ここの国民たちは魔物とあまり触れてこずに育った国民も多い。

そんな国民たちが、そこそこの強さを持った魔物と出くわした際、逃げるしか方法はなかった。

そんな国民が混乱している最中、悠真は自衛隊と無線でやり取りしていた。

「王から発砲許可を頂きました」

「了。各班状況報告せよ」

「1班A区に向かっています。どうぞ」

「2班B区に到着しています。どうぞ」

……

指揮は、俺ではなく陸軍大将が担当する。

しかし、相手は人ではなく魔物であるため、俺のアドバイスや指示も必要とのことで、時たまに指導しろとのことらしい。

無線で現状を確認しているところに、銀髪の猫の子が抱きついてきた。

この少女は、俺がダンジョンの帰り道で拾った子。

名前はニーシャと言うらしい。

まぁ、問題はそこじゃないよな。

…こんな混沌とした危険な状況の中で、どうしてこの子まで着いてきているのか。

それは、

「何が起きてる?」

何と日本語を喋れるようになってしまったからである。

あっははー、子供の成長って早いから日本語すぐ覚えちゃったんだなぁって、訳ではない。

どうやら、スキル"相互理解"の下位互換。

スキル"日本語理解"を身につけてしまったらしいのだ。

相互理解は、どんな言語の人とも、それが人である限り意思疎通できるスキルであり、日本語理解は、単に日本語のコミュニケーションが取れるスキルである。

そんなスキルを、汎用性の低さを犠牲に直ぐに身につけてしまったらしいのだ。

今では、普通に通訳役として重宝させてもらっているため、一緒に行動することが多かった。

しかも、

「ひぇー!!魔物だ!!」

逃げてる国民がそう叫んだ。

そのコンマ数秒。

ニーシャは真上に飛び上がっていた。

そして、銃を構え、

ばんっ。

空中で発砲したのだ。

魔物が一瞬で倒れ込む。

そう。なぜこんな状況でも一緒にいるのか。

この子が強いからである。

「褒めて〜」

そう言ってきたので、とりあえず頭を撫でる。

あんな技を繰り出すとは、自衛隊涙目だ。

この世界の住人に銃は渡しては行けないと深く誓ったのであった。





───アニャ達勇者パーティはそれぞれ別行動を取っていた。アニャは東、ソルドスは西、ヒストは北である。

アニャは魔法使いではあったが、1対1でも十分に戦える実力を持っていた。

2本のツノを持った鬼が四足歩行でアニャの方へ突進してくる。

しかし、アニャは冷静であった。

杖を構え

「ファイアボール」

そう唱えた。

ファイアボールとは初級中の初級魔法である。

攻撃魔法としては一番最初に覚える魔法であり、汎用性は高いがその分威力は弱い。

しかし、アニャが使うファイアボールは一味違う。

特段、何の変哲もないファイアボールであったが、鬼に直撃した瞬間、鬼が激しい炎とともに爆ぜた。

それを目撃していた村人は、後にどっちが鬼だか分からなかったと語っている。

ファイアボールで魔物を片付けながら進んでいると、家の物陰からこちらを見る目線を感じた。

普通なら、逃げ遅れた村人かなと判断するところであったが、今は違う。

この目線には、明確な悪意があった。

アニャは躊躇しない。

魔力探知で居場所を特定し、

「ファイアボール」

物陰に向けてファイアボールを打ち込んだ。

しかし、なかなかの手馴れであるようで一撃では仕留めきれなかった。

物陰に潜んでいた黒の衣装に身をくるんだ者がのこのこと出てくる。

アニャは杖を構える。

「貴方がこの事件を起こしてる黒幕ね。目的を言いなさい」

その黒き者は何も答えない。

「ならいいわ。大人しくしててちょうだいね。バイ…」

魔法を唱えようとした瞬間だった。

その黒き者は自身の心臓を自身の指で貫いたのだ。

アニャはその意図を察した。

自爆…!

恐らくトリガーが発動してしまった。

もう自爆を防ぐことはできない。

そう判断したアニャはワンチャンスにかけることにする。

「スティール」

そう唱え終わる頃には、既に黒き者を中心とした爆発が起き、砂煙がアニャを包み込んだのだった。




───アンファング王国の城の頂点にひっそりと、疲れた顔の半目の男が立っていた。

そう、ドンクスである。

ドンクスは"通信水晶"を虚空から取り出した。

「ドンクス、今どんな感じだ?」

「あぁ、シルド総帥。アンファング王国内はとてもカオスですぜ。とても効いてるみてえですよ」

「…………そうだろ!そうだろ!!我が戦略に負けはないのだよ!!」

シルドは大きな高笑いを決めた。

「それにしても、流石にこれだけ遠いと声が届くのが遅いし、聞き取りずらいな」

シルドは通信環境について不満を言う。

だが、こればっかりは仕方ない。

そもそも"通信水晶"の本来の通信距離は一国同士を結べるほど長くは無い。

しかし、"通信水晶"を何百個も経由させるという力技でその問題を解決していた。

それ故に、声が届くのは遅いし音声はガビガビなのだ。

「特に問題は起きて無さそうか?」

「あぁ、問題ってほど問題ではないんですがね。ちょっと厄介なことが起きてやりやす」

「…………問題?」

「あぁ、えぇ。例の日本という国ですな。ステータスは貧弱でございやすが、使ってる武器が強力でありやした」

「…………その武器とは?」

「あぁ、いまいち遠くからじゃ分からんのですけどね。魔法の杖の亜種のようなものだと思いやす」

「…………脅威か?」

「あぁ、そこまでではなさそうですや。あの魔物相手に苦戦している威力じゃあそこまでの脅威にはならないでしょう」

「…………そうかそうか。話は変わるが、こんだけ通信しといて、場所はバレないんだろうな?」

「あぁ、安心してくだせぇ。魔素濃度が高すぎて、どれが通信の魔力か判別出来ないでしょう」

「…………だな。あれを使うタイミングはお前に任せる。また連絡してくれ」

「了解いたしやした」

そう言って、アイテムを虚空へと戻した。

ドンクスはじっくりと全体を俯瞰する。

「あぁ、魔物爆弾の効果は覿面ですな。アンファング王国の兵士はとても苦戦している様子。いくら勇者パーティーが居ようとも、勇者が居ない上に、3人で国全体を守らなければ行けないんでしょう。それを3日3晩続ければどうなるんでしょうか」

アンファング王国の城の頂点で、ドンクスは深い笑を零すのだった。




───王は"通信水晶"で、アニャから報告を受けていた。

「爆発を起こしていたと思われる人物と接触しました」

「本当か!?」

王は短い期間で成果をあげたアニャに驚く。

「はい。しかし、追い詰めたところ自爆してしまい、本人から情報は得ることができませんでした」

「そうか」

「ただ…」

アニャは本人からではないが、ある重要な物的証拠を得ていた。

「ソルド国の紋章を手に入れました」

王は驚愕する。

「自爆前に、何か物的証拠を掴めればと思いスティールを発動させました。そしたら、紋章が手に入ったので、恐らく、この事件はソルド国が起こしたものと見て、間違えないです」

「良くやった、アニャよ」

王は心からアニャを賞賛する。

自爆を防ぐことよりも、証拠を得ることを選び、真正面から衝撃を受け止めた。

まさに、勇者パーティの1人と言えよう。

「どうやら、既にソルド国の者たちが我が国の壁を突破し潜んでいるようだ。皆の者、十分に気をつけるように」

水晶を持つ全員が返事をする。

その直後、王の前にいた兵士が叫んだ。

「王、魔物です!!」

王は咄嗟に兵士の叫んだ方を見る。

そこには、家と家の間からその巨体を覗かせる植物性の魔物が居た。

兵士達は即座にその魔物に向けて槍を構えるが、

「辞めておけ」

王はそう言って、大剣を携え魔物に向かって闊歩する。

「ワシも久々での。力試しをさせてもらおうではないか」

そう言いながら、魔物に1人で向かって歩いていく王に対し、1人の兵士が止めにかかった。

「王待ってください!あれぐらいの魔物、私達でも十分に戦えます」

忠誠心ゆえの発言だろう。

しかし、それは悪手である。

王は、その発言をした兵士を睨む。

「分かってないな。お主達の敵はあいつではない」

そう言って、周りを指さす。

すると、王が指さした周りからぞろぞろと小型の魔物が出現してきたのだ。

「お主たちは、そこの雑魚の相手をしろ。お主たちにとって、強い魔物であるアヤツとは戦わせないぞ」

兵士達を無駄消耗させる訳にはいけなかった。

あの魔物は強い。

恐らく、我が兵士達は苦戦する。

故に、ワシが切る。

王は号令した。

「かかれ!」

兵士たちは、周りの魔物達に襲いかかる。

「では行こうか。全力を出すまでもあるまい」

植物性の魔物が、王に向かい何本もの触手を突き出してきた。

しかし、

「遅い」

王は向かってきた全ての触手を切り落とした。

そして、王は魔物の方へ歩いて向かってゆく。

植物性の魔物は近づけさせまいと、触手による攻撃を激しくするが、

「居合切り」

王がそう唱えた瞬間、

植物性の魔物は呆気なく真っ二つとなり、青い粒子状となって消えていくのだった。





───ドンクスは、そんな王の様子を遠くから眺めていた。

「あぁ、流石は王。強いですね」

ドンクスは素直に賞賛する。

「あぁ、ですが、前線に出てしまったのは失敗でしょうか。体力を消耗しては、私に捉えられてしやいやすのにね」

まぁ、既にソルド国の最高戦力がアンファング王国に乗り込んでいるとは想像も出来ないことであろう。

故に仕方ない。

それにしても、

「あぁ、日本国の人はあれだけの魔法を連射できるんでしょうかね。確か魔力が0との報告を受けていたはず。"魔鉱石の指輪"で擬似的に魔法を使えるようにしているのでしょうかね」

考えても答えは出ない。

「あぁ、まぁ、アレを使えば、日本国の人も落ちるはず。アンファング王国の崩壊は目前ですな」

ドンクスは、アンファング王国はもう打つ手がない、そう判断していたのだった。

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