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第12話 鬼畜な作戦

アンファング王国の港に、再びイージス艦が停泊した。

その光景を見る人々の目線は、決して良いものではなかった。

街の人々は噂する。

「勇者が何者かに殺されたんですって」

「日本は魔王の使いだとか…」

「勇者は今、日本に幽閉されてるらしいぞ」

悠真はそんな人々の目線を見て察した。

「結構歪曲してますが、種まきはしっかりと完了してるみたいですね」

これならソルド国にもバッチリ噂が伝わっていることだろう。

悠真はイージス艦から伸びる階段を降り、港へ足をつけた。

そんな悠真の様子を確認したからだろうか。

噂をする群衆の中をかき分け進む1つの影があった。

その影は群衆からついぞ抜け出したと思うと、その瞬間、思いっきり悠真の顔へダイブしていたのだった。

バランスを崩した悠真は腰を強打する。

「いってぇ」

と声を上げつつ、目の前の者が一緒に転ばないように持ち上げる。

その者の特徴的なのは耳と尻尾。

従来の人の位置に耳はなく、頭の上に猫耳がついていた。

更には、おしりの辺りに長いしっぽが付いている。

これは、コスプレとして猫耳や尻尾をつけているわけではない。

猫属という種属らしいのだ。

年は子供。髪は銀髪。

丈の合わないボロボロの白い衣服を着用してた。

悠真はその子に話しかける。

「怪我は大丈夫だったか?」

するとその子は、ニコッと笑う。

「プレギーレンスリハセヨ!」

うん、言葉は通じていなかった。

そんなやり取りをしているところに、アニャ、ソルドス、ヒスト、外務大臣、通訳人の5人が現れる。

アニャは始めて見る悠真を観察した。

「この人が日本国の王に値する人?王って感じの服装ではないんだけど。どう思うヒスト?」

「うーん、伝統衣装って奴でしょうか。王とはいっても様々な種類がありますしね。佐藤さんも同じ衣装なことから位の高い人は、その衣装を身につけることが定められているのかもしれません」

どうやら、この世界ではスーツは舐められる対象になってしまっているらしい。

まぁ、シンプルだもんな。

とりあえず、初対面なので挨拶から始めることにする。

目の前の子を地面に置き、立ち上がる。

「お初にお目にかかります。日本の内閣総理大臣、朝倉悠真です。どうぞよろしくお願いいたします」

悠真は頭を下げた。

それを見て、アニャ達も自己紹介を始める。

「レオンのパーティーの魔法使い、アニャだよ」

「僧侶のヒストです」

「戦士のソルドスだ」

なるほど、勇者パーティの方々であったか。

港まで迎えに来てくれたのだろう。

そして、猫属の子がぴょんぴょん跳ね始める。

「ケルセルンルンニーシャ!」

何言ってるか分からないが、とりあえず頭を撫でる。

ヒストがそんな悠真の様子を見て微笑んだ。

「子供に懐かれるというのは、いい人であるという証です。実際に見て信頼に足る人物だと分かって安心しました」

アニャは合意する。

「そうだよね!そもそも、あの子を助けてあげてる時点でいい人だよね!」

そう、アニャの言う通り、この子は俺が助けた子だ。

話はダンジョンから抜け出した時に遡る。



───初めのダンジョン入口

ボロボロになった悠真達は、眠っている兵士達を何とか入口まで運び込み、馬車へ載せる作業を行っていた。

誰もが疲弊している最中だった。

しかし、悠真だけは少し余裕を持っていた。

なぜなら、攻撃力+200を持つため、兵士を持ち運ぶのが少し楽になっていたからだ。

だとしても、楽ちんに運べるという訳ではなく、疲労を感じてはいた。

だが、周りの人よりも体力を温存していたのは確かだった。

だからだろうか。

悠真だけが右の森の方から少女の泣き声が聞こえるのに気がついた。

居てもたってもいられなくなった悠真は、泣き声の方向へ走り出す。

少し森に入った時、すぐに少女を見つけた。

その子が、さっき悠真にダイブしてきた銀髪猫耳少女である。

その子は、木の根元まで追い込まれてしまったそうで、牙の長いイノシシのような魔物に殺されそうになっていた。

恐らく、魔王の影響による魔物だろう。

ここら辺にいる魔物よりも数倍強い。

そのイノシシがその子に向かって突進しようとする。

だが、勿論そんなことはやらせない。

悠真はイノシシの背後から飛び出た。

そのことにイノシシは気づいていたかったようで、背後から忍び寄る鉄の短剣を持った悠真によって真っ二つに切られたのであった。




───てなことがあった。

助けた後は、悠真に泣きついてきたかと思えば、その後すぐ寝てしまった。

王聞いた事なのだが、なぜあんな所に子供がいると聞けば、

「捨て子だろう。猫属は子供を捨てる際、誰の目のつかない場所で捨てる習慣があるようだ。その被害者だろう」

そう言っていた。

つまり、この子は親に見捨てられた子だから正直扱いには困っているが、悪いようにはしないつもりでいる。

「ニーシャ!」

可愛いしな。そう思ってまた頭を撫でた。

「とりあえず、城へ行きませんか?王も待っておられますよ」

ヒストが提案してくる。

「そうですね。直ぐに出発しましょう」

悠真達はそそくさと待機してい馬車に乗り王城を目指した。




───王城に着いた悠真達は、いつもとは違う場所に案内された。

そこは豪華絢爛な椅子、丸いテーブルが揃えられており、まさに会議にうってつけの場所であった。

アニャ、ソルドス、ヒスト、外務大臣、総理の秘書の千秋、悠真、通訳人、そして王がそれぞれ席に座る。

猫の子は一旦外務大臣に預からせている。

王はみなが座ったことを確認し、この場所の説明を始める。

「ここは会議室。城にも結界を貼ってはいるが、ここは2重に結界を貼ってある。だから、ここで話した内容が外部に漏れることはありえない。安心して全てを話し合おうではないか」

そう言った王は、では早速と話を進める。

「魔王軍との最前線国の1つであるヘルシア王国と連絡をとったのだが、すでに魔王軍の攻勢は激しくなっているとの事だ」

王の目が鋭くなる。

「この状態では、いつソルド国が攻めてきてもおかしくないだろう」

そう言って、王は日本国達の方を見る。

「出来るだけ準備は早い方がいい。日本国はどれほど戦争に対する準備は終わっているのだ?」

その質問に、悠真が代表して答える。

「戦争の正当化は終わりました。アンファング王国と正式に安全保障条約を結んだこととなっています」

「戦力は?」

「まだ準備中の段階です。ですが、空母の配置などは終わりましたので、作戦を実行しようと思えばいつでもできる状態にはしてあります」

「なるほどの」

そう言いながら、王は顎髭を触る。

「アニャ、ソルドス、ヒスト、貴様らはどうだ?」

「バッチリです!」

「問題なし」

「ポーションとかも大量に買い込んでおきました」

どうやら、勇者パーティの方は準備が万全みたいだ。

後は、我ら日本国がどれ程準備出来るかにかかっている。

「では、より詳細な戦略を練っていこうではないか。ヒスト、どこまで理解しているかも含め、ここで現在の戦略を説明せよ」

「承知いたしました」

そう言って頭を下げると、ヒストは解説を始める。

「ソルド国の軍隊が、アンファング王国領内に侵入してから戦争が本格的に始まります。編成されている兵士達を第三防衛線即座に送り込み、第三防衛線で持久戦を図ります。私達は、ソルド国の大統領シルドのお抱え冒険者、闇のドンクスが現れるまで待機します。現れた際は、全力でドンクスを沈めます。日本国はその間の夜に、敵城まで接近します。そして、城内に朝倉国王と自衛隊が侵入し、シルドを捕獲します。そして、アンファング王国スパイがシルドに恨みを持ったソルド国民を誘導し政権打倒させます」

ヒストが解説し終わると、王はその通りだと頷く。

「では、この作戦の肝は?」

ヒストは少し俯き、低い声で言う。

「日本国がシルドを捕獲出来るかに全てがかかっています」

ヒストは相当心配そうにしている。

まぁ、正直当然である。

なんたって、俺が直々にシルドを拘束しに行くのだから。

「戦闘機?でしたっけ。それは本当に空を飛べるんですか?魔法でも一部の人しか使えない難しい技術が要求逸れるんですよ?」

悠真は微笑む。

「そこは安心してください。私たちの国では機械ありきですが飛ぶことは割と日常です」

「魔法使えないのに、そういうことが出来ちゃうのちょっとドン引き」

アニャが信じらんなーいって顔をする。

丁度いいので、悠真は自身のバッグからパソコンを取り出す。

異世界の人達が一斉にこちらに集中する。

「なにそれー?」

アニャの体が前のめりになる。

「今から実際に、戦闘機の映像をお見せしましょう」

そう言って、パソコンを裏返し戦闘機の映像を再生する。

「な、なにこれー!?」

戦闘機が飛ぶ様子を見てアニャが驚愕した。

「こんな早いの!?もっとぷかぷか浮くものだと思ってた!」

ヒストは顎に手をあてる。

「機動力もバカになりません。耐久力は無さそうですが、その他の面ではドラゴンにすら勝っているかもしれません。これが本当に魔力を持たないのですか?魔力が溢れいでてそうにしか見えないです」

悠真は笑う。

「安心してください。"科学"の産物なので、一切魔法は使ってません。魔力探知されることはないので、誰にも気付かれずにソルド国に侵入することが可能でしょう」

(まぁ、実際はオスプレイで向かうから、こんなに早くもないし、音がすごいんだけどね)

「これで、城の傍で着地して侵入するということですか?」

「いや、これではなくもっと大きなものでいきます。それと、着地ではなく、パラシュートというものを使い、城へ降ります」

とても興味深いですね、とヒストは戦闘機から目を離さなかった。

「という訳で、侵入に関してはお任せ下さい」

そう言って、一旦パソコンを回収した。

アニャとヒストはもう少し見たそうな顔をしていたが、話を進めなければ行けないのでご勘弁を。

では、次に何を話さなければならないのか。

それは、侵入出来るかという課題ではないとても大きな問題である。

その点に王も気づいているのか、問うてくる。

「一番の問題は、日本人達の力でシルドを捕縛できるかだ」

そう、そこなのだ。

アニャは確かにと納得する。

「シルド自身の力は未知数だけど、周りに置いてる兵士達が弱いわけないもんね」

「それに銃は確かに強い武器ではありますが、使っている人のステータスが低いから先手を打たれたら容易に負けてしまいますね」

我々の弱点、それは打たれ弱すぎること。

なんかよくわからない範囲魔法みたいの食らったら、全滅してしまう。

だから、

「そこで、職業の出番なわけです」

悠真は堂々と言い放った。

しかし、予想に反し王以外の人は困惑の表情を浮かべていた。

「え、なんかおかしなこと言いましたかね?」

悠真は不安に駆られた。

アニャは深刻そうに言う。

「え、待って、気づかなかった。だからなのね」

「あの、教えていただきたいです。何にそんな引っかかってるのかを」

「だって、あなた」

アニャはジト目で悠真を見つめる。

「職業って、5歳ぐらいからもうついてるものなのよ?道理で貧弱なステータスをしてると思ったわ」

え、そうなのか?

「ヴァイセ国王からは、5レベ以上じゃないと職業につけないと」

「5レベなんて、5歳になってればとっくに達成してるわよ」

「えぇ!?だって、始まりのダンジョンに5レベの魔物なんて沢山いましたよ?5レベって割と高い方ではないんですか?」

「あそこは、子供用のダンジョンよ…」

俺らは子供以下だったのか…?

悠真は膝から崩れ落ちそうになる。

「まぁ、それはいいとして。なんの職業に着くわけ?」

「あぁ、はい。私が剣士、自衛隊はアーチャーになってもらうと」

「それはなんで?」

「近接攻撃が必要なので私が近接要因として、自衛隊はアーチャーの固有能力目当てです」

その言葉に、えっ!?とヒストが飛び込んでくる。

「アーチャーの固有能力って、飛び道具に自身のステータス分の攻撃力がのるやつですよね!?」

悠真は引き気味に頷く。

「銃にその能力が適用されるってことですか!?」

再び頷く。

「あれにステータス分の攻撃力がのるんだったら誰も手がつけられなくなりますね…」

ヒストは興奮していた。

ソルドスも同じ意見のようだ。

「そうだな。攻撃力よりも連射力が厄介な武器になる。それをあの速度で打たれれば俺でも勝てるかどうか」

悠真は話をまとめる。

「てなわけで、職業につけばステータスも上がるし、固有能力も得れるしということで、何とか貧弱さをカバーしようということです」

悠真が話をまとめると、そこにアニャが手を挙げてくる。

「どうしたのですか?アニャさん」

「アニャでいいよ!そもそも、なんで王自らが赴いちゃうの?」

まぁ、最もな疑問だ。

正直俺もあまり前線には出たくないのだが、

「これです」

そう言って指輪を見せる。

アニャはその指輪を見て驚いた。

「すご!それって絢爛な指輪じゃん!めっちゃレアモン!」

えっ、そんなにすごいものなのか?

王を思わず見るが、王は手をグッドにして返してきた。

「確かに、とんでもない性能だなとは思っていたんですが、この世界においても凄いものだったんですね」

「そうだよ〜。で、なんでそれがなんで戦う理由になるの?」

悠真は、指輪を抜く動作をする。

「これ、抜けないんです」

「え、なんで???」

「呪いです」

「呪い!?」

アニャは後ずさる。

王が補足する。

「それは、ワシが友好の印として授けた宝具だ。しかし、何らかの影響により呪いにかかってしまっていたようだ」

「なるほど。そういうことだったんですね。だから指輪のお陰で強くなってる朝倉国王が行かなきゃ行けないんだ」

アニャは納得したようだ。

「という訳で、後で職業剣士になってきます。次いでに、ソルド国が来るまでにレベルを上げられたら上げておきます」

王は頷く。

「そうしといてくれ。では次の課題、ドンクスについてだ」

アニャの表情が固くなる。

「あいつは手強いよ」

ヒストも同様に真剣な表情をしていた。

「私達は1度戦ったことがあるのですが、4対1であったのにも関わらず苦戦を強いられました」

4対1。

つまり、勇者が居ても苦戦を強いられたということか。

それほどに強敵。

「とは言っても、それは少し昔の話。今の私達の実力があれば、1対1でもいい勝負ができると思います」

「相手も成長してるのではないですか?」

「シルドに気にいられてからは、彼の活躍をあまり耳にはしません。恐らくぬるま湯に浸かっています。私達の成長速度には叶わないでしょう」

随分な自信である。

しかし、それほど死線をくぐり抜けたとも言える。

「奴の厄介さは、オリジナル魔法"闇の支配者(ダークエンペラー)"です」

「随分厨二臭い名前ですね」

「厨二?」

伝わらなかった。

ヒストは悠真のことを無視して続ける。

「"闇の支配者(ダークエンペラー)"は一定の範囲内の暗い場所ならどこでも瞬間移動を可能にする破格の性能を誇ります」

瞬間移動…!!

確か、勇者でもアイテムを使わないとなし得なかった魔法ではないか。

「弱点は?」

「んー。悪魔で予測にはなりますが、ポイントを定めないと使えない事ですかね」

「具体的には?」

「以前戦った時は、自由自在に瞬間移動する、そんな便利な能力では無さそうに感じました。予め、マーカーのようなものを設置し、そこになら瞬間移動出来る、そんな感じがします。つまり、自身が行ったことない場所には、瞬間移動出来ないと考えられます」

流石に、規格外れな魔法だけあって制約は厳しいのか。

「暗いところの定義、言わばマーカーを設置したところに瞬間移動出来る為の条件は?」

「私達が戦った時は夜だったんですけど、勇者が覚えていた無駄な魔法、ボディハイライトで周囲を照らしたら急に瞬間移動しなくなりました」

「でも、それで勝てたんだよね〜」

「そうなんです。つまり、ある程度の光源さえあれば瞬間移動をさせなくできるかもしれません」

ふむふむなるほど。

その条件なら案外すんなりとその"闇の支配者(ダークエンペラー)"とやらを封じられるかもしれない。

「ヒストさん、もしマーカー設置型の魔法だとして、ヒストさんがソルド国側の人間だったらどこに設置しておきますか?」

「うーん、やはりソルドを護衛するため、ソルドに何かあった時すぐ駆けつけられる場所、つまり城内でしょうか」

「そうですよね」

悠真の謎の問いに、ヒストは怪訝な顔をしている一方、王は悠真のことを期待した目で見ている。

その期待に答えるかのように、悠真は自身の考えている作戦をみなに言うのであった。

「ソルド国の城を爆撃して全部壊した後、巨大な懐中電灯で城の跡地全体を照らします」

今ここに、もっとも畜生な野郎が誕生した。

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