第11話 時計の針が動き出す
魔法の源の解明。
日本がこの世界に転移してからというもの、それほど時間は経っていない。
更には、魔法という存在が知れ渡ったのは、第1調査隊の持ち帰ってきた情報によるものだ。
「詳しく説明できますか?」
悠真は研究職の男の話を催促した。
「えぇ。魔法の源、異世界では魔素と呼ばれているもの。それは光子と似たような性質を持つ粒子でした」
メガネを整えながら話を続ける。
「魔素は、波にも粒子にもなり得る性質を持ちます。ここは光子と同じ性質です。違う点は、質量が0では無いことです。魔素は質量を持ちます。しかも、重い。更に、光子以上のエネルギーを魔素は持っています。つまり、魔法とは、魔素のエネルギーを魔力に変え、物質化する過程のことを表します。もし魔法を活用したいのであれば、魔法を使う際の人体構造を明らかにすることが先決でしょう。エネルギーから物質を生み出す行為は、理論上では可能ですが我々の技術力ではなしえません。そのため、異世界へ赴き、1度魔法の使用を観察する必要があります」
以上です、と研究職の男は頭を下げる。
悠真は目をつぶった。
(うん。全部聞き取れたのにさっぱりだ)
悠真はあんまり理解していなかった。
「魔素は光子?と同じ性質で、魔法の実用場面を観察しなければならないことは分かりました。実用化には到れるのですか?」
「分からないですね。先程も申し上げた通り、アインシュタインの一般相対性理論により、エネルギーから物質が生まれることは認められていますが、決まった性質を持つ原子、例えば金なんかを具現化できるのかは分かりません。全ては、物質化の際の魔素、魔力、人体などの挙動を観察しなければなりません」
「なるほど」
1度しゃべらせると話が長いが、要約すると異世界に連れてってくれということだろう。
「現在、異世界で土地を買おうとしている状態です。また、アンファング王国とも良好な関係を築いています。よって、アンファング王国敷地内に研究所を建設出来ると思うので、そこで研究いたしましょう」
ありがとうございます、とその男は頭を下げた。
「では、魔法の研究の件はまた後で深く議論するとして、今からは石油の話に移ります。経産大臣。報告を」
はっ、と経産大臣は返事をし、報告する。
「石油備蓄は、予定通り半年程度で枯渇するでしょう。新潟の油田の件は調査させましたが、埋蔵量が少なく、長くは持ちません」
悠真は現状を再確認する。
「ありがとうございます。では後1ヶ月以内にはソルド国との石油交渉を終えている必要がありますね」
悠真がそう言うと、防衛大臣が待ったをかける。
「ソルド国とは、相当危険な国なのでしょう?話すことすらままならないとも聞く。1ヶ月以内に石油を確保することはいくらなんでも無茶ですよ総理」
防衛大臣の指摘はごもっともである。
ソルド国との対話は困難だ。
もし、勇者がいれば未知の技術を対価に交渉は出来たのかもしれない。
しかし、勇者のいない今、ソルド国は確実に暴走する。
未知の技術を知りたければ、言葉ではなく力で解決するのがかの国のやり方というものだろう。
だが、
「1つだけ方法があります」
その言葉に、誰もが耳を傾ける。
ちなみに、勇者を蘇生させるということではない。
「勇者の死という情報は既に広まっていることでしょう。城門で少し騒いだため、確実に噂になっている。もし、それをソルド国が耳にしたらどうでしょう?」
防衛大臣はその問に堂々と答える。
「戦争だ。戦争で大きくなった国は、戦争に絶対的信頼を置いている。勇者によって抑圧されてた軍事力は、溜まりに溜まった鬱憤を糧に隣国を攻め入るでしょう」
「ソルド国の隣国はどこでしたっけ?」
「…そのうちの1つはアンファング王国」
正解。
「アンファング王国は、冒険者の始まりの国です。弱い魔物しか出現しない国の軍事力は果たしてどれぐらいのものなのでしょうか。ソルド国の隣国の中では、最も魔王の生息地から離れています」
故に、ソルド国にとっては絶好の狙い目。
「ソルド国は確実にアンファング王国に攻め入るでしょう。しかし、それこそが日本の勝つための1つの条件です」
その悠真の発言の意味を防衛大臣はあまり理解していなかった。
だからこそ、悠真の次の発言に驚愕することとなる。
「アンファング王国と事前に安全保障条約を結びます。そして、アンファング王国が攻め入った際、安全保障条約により日本も戦争へ参加します」
防衛大臣は思わず立ち上がった。
「な、何を言ってるんですか総理!!日本に戦争する体力は残っていませんし、魔法という化け物地味た現象を相手どらなければならないのですよ!?冷静になってください」
悠真は至って冷静だった。
「そうですね。真っ向勝負だと勝てる見込みは薄い。長期化すれば、日本は滅びます」
悠真の目を見た防衛大臣はこれは本気であると感じ取る。
「何か狙いがあるんですね?」
悠真は頷く。
「一瞬でソルド国の戦意を削ぎ、政権交代をさせる方法があります」
それは…
「大統領拘束作戦です」
──ソルド国大統領室。
黒い軍服に幾つもの宝石をつけた小太りの男は、ニヤニヤと笑い続けていた。
「勇者がついに死んだか…」
笑みが止まらない。
そんな男の前で、膝まづく若い男が情報の補足をする。
「噂ではあります。しかし、我が国のスパイが実際に勇者が死んだことを仄めかす現場を目撃していたとのことです」
「で、死因は?」
「それはまだ分かっ…」
突然、膝まづいてた男の顔が見えない力に潰された。
男はその場で倒れ、周りにいた黒服の者達が即座に掃除を開始する。
「分かってから報告に来ることだな」
死体に向けてそう言った後、小太りの男は虚空に向かって
「ドンクス!!」
と叫んだ。
すると、その虚空から半目の気だるげな男が出現する。
「あぁ、シルド総帥ですかい。なんの御用で?」
ドンクスと呼ばれた男は欠伸をしながら要件を聞く。
「その態度は貴様の活躍に免じて不問としてやろう。時に、」
シルド総帥と呼ばれた男は、頬杖をつく。
「貴様はなぜ勇者は死んだと思う?」
ドンクスは頭をかく。
「あぁ、随分と難しいことを聞きますね。まぁ、十中八九魔王でしょう」
「ほう、その心は?」
「あぁ、魔王は今まで大人しすぎやした。何か企んでいたんでしょう。魔王の気配も少し感じやしたしね」
シルド総帥は感心する。
「ふむ。貴様はつくづく頭が回る。そばに置いといて正解だった」
「あぁ、お褒めに預かり光栄です」
ドンクスは少しだけ頭を下げた。
シルド総帥は微笑み言う。
「ドンクス、この局面、アンファング王国を落とすのが最適だと思わないか?」
「あぁ、魔王軍の攻勢は激しくなり、軍事力的に脅威の国たちはソルド国に手出しできなそうですかい。ただ、」
そう言うと、ドンクスは腕を組む。
「あぁ、きなくせぇ話があります。魔力感知出来ない船に乗ってきた、魔力のないやつら、日本という国がアンファング王国に接近してるそうですかい」
「日本…?聞いた事ないぞ」
「あぁ、同じです。新興国の類でしょうが、魔力を感じれないのは些か疑問ですや。ステータスも貧弱の有様ですかい」
シルド総帥は高笑う。
「はっははははー!魔力もなくてステータスも貧弱とはなんと取り柄ない部族なこと。そんな国が例えアンファング王国に居ようとも何も問題はないだろう」
ドンクスは人差し指で頭をかく。
「あぁ、そうとも言えるんですかいね?未知の存在ほど怖いものはあらへんと思うんですがね」
そう言うドンクスに対し、シルド総帥は愚痴る。
「だいたい貴様はいつも慎重すぎる。お前の慎重な策が何度無駄になったことか」
そもそも問題はそこじゃない、とシルド総帥は話を戻す。
「いちばん厄介な存在は勇者パーティさ。勇者ほどでは無いが、勇者パーティとだけあってアンファング王国を落とすには邪魔な存在だ」
シルド総帥は勇者パーティの厄介さを知っていた。
「恐らく勇者の意思を継いでるだろう。戦争をふっかけたら、アンファング王国側の味方をして参戦してくるに違いない」
「あぁ、そうなりやすね」
んー、と頭を悩ませるシルド総帥。
すると、突然シルド総帥の頭に電流が走った。
「これだ!!」
シルド総帥は椅子から立ち上がる。
「あぁ、いつものやつですか」
ドンクスは慣れたようにあしらった。
「新兵器を使う時が来たようだな!!」
「あぁ、あの新兵器ですかい」
「そうだ。魔物の特性を利用した兵器、通称魔物爆弾だ」
ぐははははは!と大声で笑うシルド総帥。
しかし、ドンクスは未だに概要が分からない。
「あぁ、魔物爆弾を使うとして、一体なんの目的で使うんですかい?」
「単純さ、勇者パーティの誘導さ」
「あぁ、なるほど。勇者パーティが民衆助けに必死になっている隙に、ヴァイセ国王を攫うって戦法ですかい」
「流石だな、ドンクス」
「あぁ、ですがまだ疑問はありますや」
ドンクスは指摘する。
「あぁ、ヴァイセ国王を攫おうと、民衆が戦意を喪失しなきゃ土地は手に入んないですかい。勇者パーティがいれば指揮が下がることはありませんで」
「まだまだだな、ドンクス」
チッチッチッと指を振る。
「ここで勇者パーティも処分するんだよ」
「あぁ、それはまた大胆で。勝てるんですかい?」
「魔物爆弾を都市内で爆破させ、三日三晩魔物と戦わせる。アンファング王国にはまともな冒険者が居ないからな。勇者パーティが魔物対応することになるだろう。それで疲労した所を我が軍事力でぶち止めす」
これなら勝てる、とシルド総帥は拳を握った。
──アンファング王国の城内、王室の間。
王の前には、膝まづく勇者のいない勇者パーティがいた。
赤い頭巾が特徴の魔法使いのアニャ。
大きな大剣を携えた戦士のソルドス。
プリーストらしい丈の長い白衣を着た僧侶のヒスト。
「頭をあげて良い」
王がそう言うと、アニャ、ソルドス、ヒストはそれぞれ立ち上がった。
アニャが第1陣を切る。
「レオンに何があったのか詳しく教えてください」
「もちろんだ」
王は詳細に話した。
日本という国が訪れたこと。スキル付与の為にダンジョンへ赴いたこと。そして、魔王が襲撃してきたこと。
その全てを聞いた上でアニャはその事実に納得できなかった。
「魔王がここに来るなんて有り得ません!!ここはほぼ反対側に位置する場所なんですよ!?」
声を荒らげるアニャに対し、ヒストは落ち着くよう促す。
「冷静になってくださいアニャさん。王様が嘘を仰られるわけないでしょ?」
「それはそうだけどさー!」
アニャは不敵される。
「正直、ここ数年魔王の活動が緩やかだったのに合点が行きました。対勇者の為に魔力を貯め続けていたのでしょう」
「ん…。そう言われると確かにそうか」
アニャは納得した。
「しかし、私達は日本国についての情報を持っていません。それ故、全て日本国が仕組んだものであるとしても、なんら可笑しく、疑っても仕方ない状態です」
ヒストは王の方へ顔を向ける。
「そのため、もっと日本国についての情報を知りたいです」
その要望に王は応える。
「勿論だ。その為に、既に日本国の者を呼んでいる。キクト、呼んでこい」
キクトと呼ばれた王の側近は、即座に横のドアを開けて、日本国の者を呼んだ。
少しすると、ドアの方から頭を下げながら王の方へ向かうスーツ姿の男性と、その男性の通訳者が現れた。
王は紹介する。
「彼は、日本の大使である佐藤だ」
佐藤は再び頭を下げる。
「ご紹介預かりました、日本の外務大臣の佐藤誠です。本日はよろしくお願いします」
アニャは佐藤を睨みつけ、
「お兄さん、本当に人?弱すぎない?」
いきなりあまりにも失礼なことを言い始めた。
それに対し、ヒストが起こる。
「こらっアニャ!大変失礼いたしました。…しかし、確かにステータスが貧弱すぎますね。ステータス詐称にしてはやりすぎじゃないですか」
詐称を疑われた佐藤は即座に首を振った。
「いえ、ステータス詐称などしておりません。私達日本人は、魔法の存在しない異世界から赴きました。それ故に、ステータスが貧弱なのだと思われます」
アニャは目尻を立てる。
「んー。まぁ、魔力がないって聞いてたんだけどここまでとはね。魔力探知にも引っかからなかったから、本当に人かって疑っちゃったよ」
ヒストはその発言を聞き、アニャの頭を引っぱたいた。
「アーニャ!そんな態度をしてちゃダメでしょ!」
ヒストは頭を下げた。
「すみません、レオンの死への恨みを魔王ではなく日本に転嫁しちゃってるみたいで。普段はもっと優しい子なんです」
そんなヒストの様子を見た佐藤は、同じく頭を下げた。
「こちらこそ、大変申し訳ございません。勇者様を間接的に危険な所へと赴かせてしまいました。更には、魔王には手も足も出なかった。何もお役に立てずに申し訳ございませんでした」
佐藤の頭を下げる様子を見たアニャは少し気まずそうにする。
「謝る必要はないわよ!魔王なんて私達でも手も足も出ないんだから」
ぷいっと顔を逸らしたかと思うと、すぐに本筋に入る。
「それよりも!!レオンの蘇生の件はどうなってるの!!貴方たちならお金を出せるかもしれないんだよね!?」
アニャの顔が前のめりになる。
佐藤は、非常に気難しい顔をする。
「確かに、不可能ではありません」
アニャはその言葉を聞き無邪気に喜んだ。
しかし、ヒストは何か事情を察する。
「何かお金を払えない事情があるんですか?私達としては、今すぐにでもレオンを蘇生させていただきたいのですが」
佐藤は、彼女達の気持ちを理解していた。
蘇生が出来るなら、誰だって何としてでも蘇生させたいと考えるだろう。
だから、これを言うのは心苦しいが、言わなければならない。
「最低でも1年間は勇者の蘇生にお金を使うことは出来ません」
「なっ!なんでよ!」
アニャの目が鋭くなる。
しかし、次の佐藤の言葉にアニャは睨むことが出来なくなっていた。
「我が国はもう時期滅びます」
国が滅びる。
そんな事実を知った後に、佐藤にしつこく迫ることが出来るであろうか。否、出来ない。
「皆さんとは異なる世界では、日本は経済大国として名を馳せていました。そう、経済大国なのです。日本は他国との貿易があってこそその地位を保っていました。時には、他国の一存で大恐慌が訪れたことだってあります。他国が居てこそ、日本は成り立っていました」
外交の基本は弱みを見せないこと。
しかし、この場ではその弱みをさらけ出すことこそが最適であると、佐藤は理解していた。
「現在の日本は、食料不足、石油不足、薬不足、水不足、製品の過剰在庫、脅威の失業率などなど、深刻すぎる問題が渦を巻いているのです」
アニャは大きく目を開ける。
「こ、こんなところにいる場合じゃないじゃない!早く自国に戻って対策しないと!!」
佐藤は首を振る。
「自国だけではどうにもならないんです。他国あってこその日本なのです」
ヒストはつぶっていた目を開ける。
「事情は承知いたしました。レオンの蘇生は日本の再建が終わったあとにいたしましょう」
「ヒスト!?」
その発言にアニャが驚く。
「日本が再建されれば、レオンの蘇生なぞ容易い。そうですよね?佐藤さん」
容易いわけではないんだけどなぁ、と佐藤は頭を搔く。
「日本が安定すれば、勇者様を蘇生すると約束いたしましょう」
アニャは頬を膨らませる。
「ソルドス!貴方はどうなの!?」
ここまで一向に喋っていなかった大剣を持つソルドスに話を振った。
「日本再建後で、一向に構わぬ」
腕を組みながら堂々と言い放った。
「ソルドスまでぇ」
アニャはガクッと項垂れる。
それから、佐藤へ向けて人差し指を指した。
「分かったわよ!お金稼げたらちゃんとレオンを助けてあげるんだからね」
佐藤は頷いた。
そんな所で、王が話に割り込み話題を変える。
「レオンの件が一件落着したところで、ソルド国の件について話そう」
ソルド国というワードが出た瞬間、全員の表情が変わった。
「ソルド国がどうかしたのですか?」
ヒストは疑問を投げかける。
「ああ。奴らは時期にこの国へ戦争をふっかけてくるだろう」
「戦争…!?」
ヒストは思わず後ずさりをしてしまった。
戦争という言葉にアニャが吠える。
「戦争ってどういうこと!?ソルド国って、あの悪いやつが仕切ってる国だよね??でも、私達のお陰で戦争はもう辞めたんじゃないの…!?」
王は首を振る。
「正しくは、戦争を一時中断してただけ。勇者無き今、戦争を再開し、我が国を攻めてくる」
「そんなの、他の国が黙っちゃいないよ…!!」
「魔王は攻勢を激しくするだろう。まさしく、勇者が死んで混乱しているこの時期を狙い」
「そ、そんな…」
アニャは空いた口を手で塞ぐ。
王は、一旦咳払いをする。
「だからこそ、そなたらに力を貸してほしい」
王は頭を下げた。
アニャは
「もちろん!」
と拳を掲げ、宣言する。
「魔王がいてどこも大変だって言ってるのに、戦争ふっかける国なんてボコボコにしてやります!」
そこに、ヒストが待ったをかけた。
「待ってください。私達が協力するのは構わないのですが、勝算はあるのでしょうか。ソルド国は、軍事力においてアンファング王国よりも圧倒的です」
ヒストの心配もごもっともであった。
だからこそ、佐藤が前に出る。
「そこで、我々日本国の出番という訳です」
全員の目が佐藤に集中する。
アニャが渋そうな顔をする。
「確かに、味方になってくれるのは心強いと思うんだけど、魔力がないんでしょ?どうやって戦うの?」
ヒストが追撃をする。
「正直、参戦しない方が良いのではないですか?我々のステータスを1回確認した方がよろしいかと」
正気を疑われているが、こっちは至って真面目に発言しているのだ。
「そう言われると思いまして準備はしてあります。私達の力を一部お見せしましょう」
キクトさんにある人を連れてこいと合図を出した。
すると、扉から迷走服を着て銃を携えた自衛官が入場してきた。
「これがこの世界で言うところの兵士です」
自衛官を見たアニャは堂々という。
「色で視認させずらくしてるのは面白いんだけど、他にそれほど特質したところはないんだけど?佐藤さんと同じくらいの強さだよ?」
佐藤は苦笑する。
「見て欲しいのは、これから起こる攻撃です。皆さん、魔力探知を発動させといてください」
アニャもヒストもソルドスも、なぜ魔力探知をしなければならないのか疑問に思いつつも、魔力探知を発動させる。
「では、あの壁に向かってお願いします」
そう言われると、自衛官は壁に向かって銃を構える。
そして、
だだだだだっ、と銃声が鳴り響いた。
銃先から煙がふく。
「な、なにこれ」
「これは…」
「ふむ、脅威」
その攻撃に誰もが驚愕した。
アニャはヒスト達に問いかける。
「魔力探知発動した…?」
「いえ、全く」
「何も感じぬ」
佐藤は、勇者パーティの全員が驚愕したという事実によって、日本がまだまだやれることの確認ができ安堵していた。
「ご覧の通り、一切魔力を使わずにこれぐらいの威力を出せます」
アニャは冷や汗をかいている。
「ヒスト…。現代魔法戦の定石ってなんだっけ?」
「魔力探知の精度が高いほど強いです」
「なんでだっけ?」
「魔力探知で、どこで、どの向きに、どれくらいの強さで攻撃されたかが分かるためです」
「この武器の対処法は?」
「強いて言うなら、音でしょうか」
「そもそも、魔力のない人達の気配ってどうやって感じ取るの?」
「………」
どうやら効果は絶大みたいだ。
「私達が望むのは短期決戦です。即ち、一瞬の隙をつき、ソルド国大統領を捕縛したい。ご協力願いますか?」
アニャは唾を飲み込んだ。
(不可視の人間と攻撃。この2要素があれば、確かに不可能では無い。日本はレオンの命を握っている。私達が協力しない為に、ソルド国に崩壊させられては困る)
そう考え
「任せてちょうだい」
アニャは胸に手を当て、全面協力する構えを見せたのだった。




