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ダンジョンdeショートカット 〜そして学校へ…〜

作者: 草田蜜柑

「やべぇ!遅刻だ!」


 俺の朝は遅い。

 深夜までネトゲしてるから、起きるのがめっちゃダルい。


 しかし遅刻は厳禁だ。

 何故なら俺の担任教師はこの礼和時代にそぐわない正和の人間なのである。

 遅刻忘れ物は片っ端から拳骨、クラスメートの前で涙が出るほど怒鳴りつけられ、罰掃除までやらされる。


 何が何でも遅刻だけは勘弁だ!


 制服を着込むと、昨日のうちに準備していた学生カバンを持ち、寝癖も直さず窓を飛び出した。

 階段を降りるよりこっちがショートカットだ。


 玄関前に着地したら、玄関で靴を履く。あ、靴下忘れた。別に良いや。


 そういや今日は雨予報なので、傍にあった親父の使い捨て傘を勝手に拝借。

 まぁ、天気予報も忘れて会社に向かった親父が悪い。


 俺は走る。

 しかし、家から学校までまともに走っても20分は掛かる。

 なんでこんなに遠いんだ……!


 現在時刻は8:00丁度、このままでは学校に間に合わない……!

(うちの学校の登校時間は8:15である)


 しかし、俺には画期的な時短法がある。


「ショートカット突入!」


 近所の空き家近くのマンホールに己の身体をホールイン!


 中に入ればそこはどこぞのRPGに出てきそうな遺跡風ダンジョン、詳しい背景描写は時間が掛かるので省略!


 俺はダンジョンを掛けた。

 ダンジョンにはモンスターがいる。


 ベトベトした液で人の足を止めようとする憎きスライム、でかい図体で人の進路を妨害しようとするゴーレム、蜘蛛の糸で人を絡めて足止めを試みるスパイダー。


 最初はこいつらのせいで何度学校を遅刻した事か。

 しかし、ネトゲで鍛えたトライアンドエラー精神を舐めてはいけない。


 今の俺にはこいつらの行動パターンが手に取るように分かる。

 スライムが粘着液を吹き出す僅かなタメも、スパイダーの出現タイミングも、全て手に取るように分かる。


「この程度、ブラックワイバーンに比べれば止まって見えるぜ!」


 昨日ネトゲで戦った隠しボスの方がよっぽど手強い!

 俺はスライムの粘着液を回避し、その上を飛び跳ねて先へ進んだ。

 お前らに構ってる時間はないんだよ!


 続いてやって来るスパイダー。

 ケツを向けてピュンピュンピュンと、3方向に蜘蛛の巣攻撃をぶっ放す。


 俺は隙間を縫って回避、スパイダーを踏み潰して先へゴー!


 お次にやって来るのは三叉回路。

 間違えればトラップやモンスターハウスの洗礼待った無し。


 俺は右へ爆走した。

 奥のフロアは行き止まり。

 後ろの扉が閉まり、穴が開く。


 ここはトラップ落とし穴。

 侵入者を容赦なく奈落へ突き落とすダンジョンおなじみショートカットコースである。


 まぁ、落ちた衝撃で軽くダメージは受けるけど、それは必要経費だ。

 俺は、山本に叱られる方がよほど怖い。


 穴に落ちたらまた爆走。

 痛みなどアドレナリンで忘れてしまえ。


 奥の部屋にはゴーレムが鎮座。

 ムカつくことにこのダンジョンの主を気取るゴーレムは、倒さなければ背後にある転送魔法陣を使う事が出来ない。

 一度倒してもまた復活するのが殺意湧く。


 しかしゴーレムには弱点がある。

 胸のあたりに埋まってる赤いコアだ。

 これを壊せば一撃で死ぬけど、このコアもアホ硬い。


 前にテレビの検証でゴーレムのコアぶっ壊してみた企画があったけど、大の大人が数人がかりでハンマーで叩いてようやく壊れた。


 ぶっちゃけ、ゴーレムの関節部分を一つ一つ壊して動けなくしてしまう方が楽らしい。


 しかし俺にはそんな悠長な事をしている時間がない。


 俺はカバンから手製ナイフを取り出した。

 ……てか、ゴーレムの砕けた核に布を適当に巻いただけの代物だ。

 よく言うじゃん?

 ダイヤモンドを砕くにはダイヤモンドをぶつけろと。

 その理屈。


「死ねや木偶の坊!」


 俺は跳んだ。

 ナイフをコアへ突き立てる。

 ひび割れるコア。

 ゴーレムの身体が崩壊してゆく。


 魔法陣が光を放つ。

 俺は光へ飛び込んだ。


 転送されたのは校門前。

 まずい、時間が、あと2分しかない……!

 このまま上履きを履いて教室に上がってたんじゃ間に合わない……!


 いや、諦めるな!

 教室はたかが2階じゃないか!

 何故2階如きで階段を使わなければならない!

 そう、俺なら出来る、俺なら出来る……!


「うぉりゃあああああ!」


 俺は……飛んだ。


 ありったけの力で地面を蹴って、2階へ飛ぶ。

 あぁ、我が学び舎よ、俺は今、やって来た!


 パリィィィィィィィィィン!!!


 ガラス窓を突き破り、俺は己の教室へゴールイン!

 逆転サヨナラホームラン!

 あれ?これサッカーだっけ?野球だっけ?


 ま、良いや、これで俺は遅刻から免れた。

 さぁ、今日も人畜無害なモブとして学校生活を送ろうではないか。


「おい、吉沢ぁ?」


 ん?あれ?教師の山本が何故か眉間をヒクつかせてるぞ?

 俺、何かやっちゃった?


「てめぇ、窓ガラスぶち壊すたぁどういう了見だぁ!?あぁ!?」


 あぁ!そうだ!遅刻したくない一心で俺は思わずガラス窓ぶっ壊しちまったんだ!


「あ、あ〜、でも、ギリギリ遅刻しなかったんで、結果オーライですよね……?」


「んなわけあるかぁぁぁぁ!

 てか、遅刻したくないからって窓ガラス割るアホがどこにいやがる!?」


 ひぇぇぇぇ、そういえばそうだ、普通、人間は遅刻しそうだからって窓ガラス割ってショートカットしようなんて考えない。


 遅刻したくない欲が強すぎてその他はどうでも良くなってた!


 結局、俺は遅刻しなかったものの、器物破損でいつにもまして怒髪天な山本に延々説教された。

 ついでに教室どころか校内中の清掃を命じられた。


 陰キャの目立たない暮らしってのは難しいものだな、はぁ。

遅刻しそう!せや、ダンジョンでショートカットしよ!


思い込んだら吉日と言わんばかりに、昼間であるにも関わらず深夜テンション並の勢いで書き殴った怪作です。


短いしガチで勢いだけで纏めたのであまり語る事がない……。

とりあえず人物紹介でかさ増し。




吉沢彼方よしざわかなた

主人公。

ゲーム中毒。3度の飯よりゲームが好き、人付き合いが苦手なクラスに1人はいる陰キャボッチ。

……と本人は思い込んでいる。

実際は遅刻したくないからとダンジョンをショートカット装置に使うヤバい奴。

遅刻しない為なら窓ガラスも割るヤバい奴。

ヤバい奴なので誰も近付かないだけ。陰キャどうこうは関係ない。

この世界でダンジョンはそこら辺の空き家やマンホールの中など、人の手入れの行き届かない人工物の中にポンッと生まれる存在。

攻略して魔法陣を使うとそのダンジョンの地点の真上に転送される。

ダンジョン内は空間が歪んでいる為、体感10キロ程度の距離が実際は20キロだったとかザラとある。

主人公はそれを利用してあちこちのダンジョンをショートカットルートとして開拓している。

その過程で本職の探索者も及ばないレベルまで強くなっているが、主人公に探索者になる意思はない。

「だって探索者ってコミュ強御用達ジョブじゃん?痛いし臭いし辛いしやってらんねー」


山本剛やまもとつよし

担任教師。

吉沢が恐れる男。

礼和なのに感覚が正和。よく教師やれてんな。

尚、この作品は日本に限りなくよく似た別世界であり、元号も令和ではなく礼和、昭和ではなく正和。

誤字ではないので、念の為。

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