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75 サリ国の男ベイル

 濃い瘴気の靄の奥から出てきたのは、短髪に無精髭、片側に大きな傷があり片目が塞がれている壮年の男だった。すぐ後ろには恐らく片目の男の部下であろう男にそれぞれ拘束された聖女ニオ様と白龍リオン様がいる。ニオ様は私たちの姿を見て驚愕し、キッと片目の男を睨んだ。


「ちょっと!これは一体どういうことよ!話が違うわ!早くこの拘束を放しなさい!」


 聖女ニオ様が片目の男にそう言うと、片目の男は後ろを振り向き片手を振り翳した。


 パァアアアン


 聖女ニオ様の頬が打たれる。その場の一同が思わず息を呑んだ。


「ニオ!貴様、ニオになんてことを!」


 白龍リオン様が拘束を振り解き男に掴みかかろうとするが、拘束が解かれることはなく拘束していた男に殴られ、そのまま崩れ落ちると脚で何度も蹴られてしまう。


「リオン!」

 ニオ様が悲痛な叫びをあげた。


「困りましたね聖女様、あなたが喚けば喚くほどこの白龍は痛い目を見るだけですよ。大人しく我々の言う通り大人しくしていてください。今はあなたたちに構っている場合ではないのでね」


 そう言って片目の男はこちらを向いてニヤァと笑った。気持ち悪い程の悪どい微笑みで思わず鳥肌が立つ。


「さて、アデル国の白龍と白龍使いの騎士、そして聖女の皆様。我々のことはこの白龍からもう色々と聞いているんでしょうね。自己紹介の必要はないかと思いますが、一応。私の名前はベイル。サリ国で銀龍の力の研究を行っているものです。見てお分かりの通り、我々の元には聖女ニオと白龍リオンがいます。今攻撃を仕掛けようとすれば二人の身が無事では済まされないのでおかしな動きは控えてください。まぁ言われなくてもわかっているでしょうが」


「貴様がこちらの聖女を誘拐し虹の力を奪っていた張本人か」


 ユーズ団長がそう言うと、ベイルはふふっと笑う。


「そうです。虹の力を奪ってこちらの研究に充てていました。聖女ニオにはリオンのためだと言っていたのでリオンにも力を少し与えてはいましたがね、リオンは受け取らずにすぐ力を奪われた聖女にお返ししていたようだ」


「だから力を奪われた聖女様たちは一時的に記憶を失いつつも力を取り戻していたというわけか。カラクリがようやくわかったぜ」


 ガイル様がベイルを睨みつけながら言うと、ニオ様が驚いた顔でリオン様を眺めた。


「リオン、そうなの?どうして?私はあなたのために……」


「ニオ、君の気持ちは嬉しかったし無碍むげにしたくなかった。だから黙っていたんだ、すまない」


 殴られ蹴られボロボロになったリオン様が静かにそう言うと、ニオ様は驚愕したまま何も言えなくなっている。それもそのはずだ、ニオ様は騙されていたことも知らず、リオン様のことだけを思ってただひたすらに聖女の誘拐へ加担していたというのに、リオン様はその力を受け取ってはいなかったのだから。


「ははは、無駄ではなかったですよ。聖女様のおかげで虹の力を奪い、アデル国内を混乱させることができた。……騙しやすい頭も心も弱すぎるお前のおかげだよ、ありがとな」


 ベイルはニオ様の顎を掴んで顔を近づけると、最後は丁寧な口調を崩し気味の悪い微笑みを浮かべそう言い放った。


「う、うそ……私、私は……」


 真実を聞かされたニオ様は両目からポロポロと涙を流している。見ているだけでも辛い、だけど今何かしようとすれば捉えられているニオ様とレオン様の身が危ない。どうしよう、どうすればいいんだろう。

 他の騎士様や白龍様、聖女様たちもみんな動きを封じられたようにもどかしい表情で立ちすくんだままだ。


「虹の力も回収してこっちの国を混乱させたならもうその二人は用済みだろ。返せよ」


 ケインズ団長のドスの効いた低い声がその場になり響く。するとその声に気づいたニオ様がケインズ団長を見て両目を見開いた。


「ケインズ……?どう、して」


「よう、お前、いつの間にか姿を消したと思ったら何騙されてんだよ」


「い、いや、見ないで!どうして、どうしてケインズが」


 動揺しオロオロとするニオ様をリオン様が辛そうな表情で見つめている。そして、そんなリオン様をケインズ団長が睨み、言った。


「おい、そこの馬鹿白龍、お前にもクソほど聞きたいことと言いたいことがあるから助かった後は覚悟しとけよ」


 リオン様がケインズ団長を見て悲しげに微笑むと、それを見ていたベイルが笑みを浮かべたまま口を開く。


「ははは、それは困りますね。この二人にはまだ我々の国でしてもらうことがあるのでね。お返しすることはできません」


 



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