74 ユーテス山脈
あれから一週間が経ち、私たちは白龍使いの騎士団本部に召集された。
召集されたのは魔物討伐祭で任務に当たった騎士と聖女、そしてその白龍たち。王都の騎士団からは唯一ケインズ団長が参加している。
討伐祭やその後の会議ですっかり見慣れた顔になったけれど、どうも様子が違う面々もいるようで……。
ガイル様はなぜかシキ様にべったりだし、シキ様は以前と変わらず無表情に見えて、でもガイル様へ向ける眼差しはとても優しい。あの二人、何かあったのかしら?
そんなことを考えていたら、ユーズ団長が真剣な顔で話始めた。
「急な連絡になってしまったが集まってくれて感謝する。どうやら誘拐事件の黒幕は一度サリ国に帰ろうとしているらしい。聖女ニオと白龍リオンも研究体として連れていこうとしているそうだ」
白龍ギール様の元へ白龍リオン様から逐一情報共有されていたが、今回どうやら急を要する状態らしい。国外に逃げられてしまえば追うことも聖女様たちを救出することも難しくなってしまう。
「もしかするとこれは我々を誘き出す罠かもしれない。白龍同士で遠隔でも意思の疎通ができることを向こうも知っているからな。だが、それでも行かないという選択肢はどこにも無い」
ユーズ団長の言葉に、一同が力強く頷いた。
「奴らは国境近くのユーテス山脈にいるらしい。支度が整い次第すぐに出発する!」
それぞれ白龍様の背中に乗りユーテス山脈へ向かった。ケインズ団長はユーズ団長とベル様と一緒にユイン様の背中に乗っている。
「ケインズ、大丈夫か?」
「お、おう……お前らいつもこんなのに乗って移動してんのか?すげぇな」
さすがのケインズ団長も白龍様の背中に乗っての移動にはやや驚きを隠せないらしい。
そんなこんなで大空を飛びながらユーテス山脈の近くまでやって来た。
「おい、なんだよあれ……!」
ケインズ団長が顔をしかめながら低い声で呟く。
地上がどす黒く覆われ、禍禍しい瘴気を発しているのがよくわかる。
「すごい瘴気……」
思わず呟くと、腰に回っていたランス様の手が強まる。
ユーズ団長が険しい顔で振り向き他の騎士様や聖女様たちに声をかける。
「やはり罠だったか。だが、あの近くに聖女ニオと白龍リオンがいるはずだ。降りるぞ」
白龍様たちがゆっくりと着地し、背中に乗っていた私たちは次々と地面へ降り立った。
「くっ、すごいな」
ユーズ団長が口元を腕で隠しながら言うと、白龍様たちが次々に光のドームを私たちの周りに作り始めた。
「私たちの周りから離れないように。無防備に瘴気に当たり続けると自我を失う」
白龍ギール様の言葉を聞いてみんな視線を合わせて頷いた。
すると突然、茂みから黒い物体が勢いよくこちらに突撃してきた!
「魔物か!」
咄嗟にランス様が剣を向け切りつける。魔物の体は真っ二つにわかれそのまま塵となって消えていった。
「どうやら囲まれているようだね」
ミゼル様がそう言うと、四方八方の茂みの陰から光る目がたくさんこちらをうかがっている。
「雷神光剣!」
ルル様が杖をかざして詠唱すると、周辺一帯に雷が落ち魔物たちに命中する。
だが、命中しなかった魔物たちが次々に茂みから飛び出してきた。
「はぁぁっ!」
すかさずベル様とシキ様が剣で応戦する。ランス様やロイ様、ガイル様やクロウ様も剣をふるって魔物に切りかかった。
「守護障壁!」
「小規模増幅!」
私とリラは魔法で援護する。
ここに到着する前に、白龍の力をギリギリまで消費しない戦い方をするように打ち合わせをしていた。白龍の力を使いすぎると力わけをしなければならなくなるし、そんなことをしていては隙だらけになってしまう。
きっと相手は白龍の力の消費を狙っているのだろう。もしくは、白龍の力そのものを狙っているのかもしれない。
なんにせよ、打ち合わせ通りの戦い方をして私たちを取り囲んでいた魔物たちは殲滅することができた。
「なんとか白龍の力を消費しないで倒せましたね」
クロウ様がホッとした様子で言ったその時。
「お見事。なんだ、この程度では力は使う必要がなかったか」
パチパチパチと軽い乾いた拍手の音がして、黒い瘴気の靄から人影が現れた。




