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7 部屋と食事と胸の高鳴り

 ジェシカさんに案内された自室は、思っていた以上に広くて綺麗だった。インテリアも素敵だし、私なんかがこんな素敵な部屋で過ごしていいんだろうか。


「白龍であるミゼル様が聖女様を選ばれてからというもの、聖女様のためにと部屋のものをランス様が色々と取り揃えたんですよ。好みに合うかわかりませんが……」

 教会にいた頃の部屋とは全然違うけれど、むしろグレードが高くなっていて嫌がる要素がどこにもない。


「ありがとうございます。とっても素敵なお部屋です、ジェシカさん」

「あらあら、私めのことはジェシカと呼び捨ててくださいませ。これからセシル様の身の回りを担当しますので、何なりとお申し付けくださいね」

 頬に手を添えてウフフ、と微笑む。ご年配なのにすごくチャーミングだわ。いいな、こんな風に可愛く年を取ってみたい。


「夕飯の支度が整いましたらお呼びしますので、それまでゆっくりお寛ぎくださいませね」


 パタン、と扉が閉まる。

「ふあ〜!」

 思わずソファに腰掛けると、ふわふわで柔らかく埋もれてしまいそう。

「すごい、高級そうなソファ……」


 家具も寝具も上等そう。わざわざ揃えてくれたなんて、どれだけ期待されていたんだろう。そんなことも知らず、私は生贄として食べられるかもしれないと怯えていたんだ、数時間前までは。


「なんだか、夢みたいだな」

 ぽすん、とソファに横になる。あんな素敵な騎士様と結婚して、こんな素敵なお屋敷に住めるだなんて誰が予測できただろうか。

 でも、浮かれている場合じゃない。ここに来た以上、私は虹の力を持つ聖女として白龍のミゼル様や騎士のランス様のためにお役に立たねば。


「頑張らなきゃ……」

 考えてるうちに、私はいつの間にか意識を失ってしまっていた。




 なんとなく、目の前に人の気配がある気がする。

 ゆっくり目を開けると、目の前にランス様の美しいお顔がある。あれ?これ夢かな?


 目があって、ランス様が急に跳ね上がるように遠ざかった。あれ?夢じゃない?


「ご、ごめん。夕飯ができたと呼びに行っても部屋から返答がないから見に行ってくれとジェシカに言われたんだ。見に来たらぐっすり眠っていたから、起こすに起こせなくて……」

 後ろを向きながらランス様が慌てたように言う。耳が真っ赤になってるけど、どうしたのだろう。


「すみません、いつの間にか眠ってしまってたみたいで」

 ゆっくり起き上がって目を擦る。そうだ、ここはランス様のお屋敷で、私ってば自分の部屋でうっかり寝てしまっていたようだ。


 まだ頭がぼーっとしてる。でも夕飯の支度ができて呼びに来てたと言っていたから、いい加減に起きないと。


「起きれる?もう少し寝てようか?」

「いえ、大丈夫で……」

 ゆっくり立ち上がったつもりが、思わず体勢が崩れて前のめりになってしまう。


「危ない!」


 気づいたランス様がうまいこと抱き止めてくれた。ランス様にこうして助けられるのは2回目だ。あぁもう、なんで私はこうなのかな。


「すみません、ありがとうございま」

 す、と顔を上げると、そこにはランス様の顔が間近にあった。近い、ものすごく近い。体はランス様に抱えられていて、触れ合う箇所が熱い。


 ランス様は私の目を見て固まっている。だんだんランス様の顔も赤くなってきているような……。


「ごめん、大丈夫?」

 そっと優しく体を離してくれる。

「こ、こちらこそすみません!」

 恥ずかしくて俯いてしまった。あぁ、どうしよう、顔が熱い、というか体全体が熱い。


「それじゃ行こうか」





 食事をする広間に通されると、テーブルの上に美味しそうな食事が並んでいる。


「わぁ!すごい、美味しそう!」

 席に座ると、スープやお肉など温かいものが運ばれてくる。

「さ、冷めないうちに食べようか」


「いただきます!」

 一口食べてその美味しさに思わず頬がとろけてしまいそうになる。どれもこれも美味しい!夢中で食べていたけれど、途中でふとはしたないかな、と我に返る。


 真正面に座るランス様の方を見ると、ランス様がニコニコと微笑んでいた。

「どうしたの?気にしないで食べていいよ」

「いえ、なんかお恥ずかしい姿を見せてしまって……」


 ランス様はくすくすと楽しげに笑っている。

「すごく美味しそうに食べるのを見てるのは楽しいから大丈夫だよ。それに、今までこうして誰かと一緒に食べるってことがあまりなかったから、嬉しいし」


 そうか、ランス様はご家族がいなくて、ジョルジュとジェシカと今まで暮らしていたんだっけ。

「これからは色々なものを一緒に食べられますね」

 思わず言うと、ランス様は私の顔を見て目を見開いた。何か変なこと言ったかな。


「そう、だね。うん、これからは君も一緒だ。嬉しいよ」




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