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62 虹の力

 気づくと、ランス様の唇が自分の唇に重なっていた。そっと唇が離れるとランス様の顔が見える。その顔は切羽詰まったような表情だった。


「ランス様……?」

 心配になって名前を呼ぶと、ランス様は一度うつむいてすぐに私の顔を見つめた。


「ごめん、君にそんな風に言われてしまって……勝手に体が動いてしまったんだ。本当にそう思ってくれているんだとしたら嬉しすぎてどうにかなってしまいそうだよ。まさか本当にこんな気持ちになるなんて。君の体も心も全てを食べてしまいたい」



 何かをこらえるかのようにまたうつむきながらランス様はゆっくり深呼吸した。


「本当に、いいんだね?」

 ランス様の問いに、私はしっかりとうなずいて微笑んだ。それを見てランス様も嬉しそうに微笑む。


「なるべく優しく、大切にする。だから安心して」

 そういってランス様はゆっくりとまた口づけをしてきた。今度は何回も何回も唇が重なる。次第に口づけは激しさを増していって、そのままベッドに倒れこんだ。




 ふと目が覚めてすこし見上げると、寝息を立てているランス様の美しい顔があった。どうやらランス様の腕の中にいるようで、私はいつの間にか眠ってしまっていたみたい。


 キスの後のことは正直はっきりとは覚えていない。ただ、指輪から放たれる青白い光に包まれて、ずっと身体中に虹の力が沸き上がっていくのを感じていた。暖かくて優しくて心地よくてそのままどこかに飛んで行ってしまうのではないかと思うくらいだった。


 ただ、あとはなんとなく断片的にだけど覚えているような気が、する……?ふとそれを思い出して急に自分の体温が上がっていくのがわかる。あぁ、どうしよう恥ずかしい!あまり覚えていないとはいえ、ランス様とついにそういうことをしてしまったんだ!


「んん……」

 動揺して少し動いてしまったからなのか、ランス様もゆっくりと目を覚ましたようだ。開かれた目は私をとらえて一瞬驚き、そして嬉しそうに微笑んだ。


「おはよう、セシル」

 幸せそうな表情でささやかれる挨拶にくらくらする。

「おはようございます、ランス様……」

 恥ずかしくてうつむくが、ランス様の腕の中だということを思い出してまた動揺してしまう。


「体、大丈夫?どこか痛いところはない?」

「大丈夫です。それよりもランス様は大丈夫ですか?」

 白龍の力を使いすぎたせいで一時は相当危ない状態だったのだから心配になってしまう。ちゃんと力分けはできたんだろうか。


「あぁ、大丈夫。おかげですっかり良くなったよ。ありがとう」

 そう言ってランス様はぎゅっと強く抱きしめてきたので恥ずかしくなってしまう。でも、そんなことよりもランス様が無事で本当によかった。


「……よかったです。本当によかった!」

 嬉しさのあまり思わず見上げて微笑むと、すぐ目の前にランス様の顔がある。ランス様の手が髪の毛をゆっくり優しくとかしてくれているけれど、その手触りもなにかを思い出させるのか体の奥が熱くなっていく。


「セシル?」

 動揺して思わずすぐにうつむいたことを不思議に思ったのか、ランス様が顔をのぞき込んできた。目が合ってランス様が驚く。


「……セシル、その表情はずるいよ。無理させたくないしもうそんなつもりはなかったのに、そんな顔されたら正直まずい」


 ランス様が少し離れながら顔をそむける。ちょっとそれが寂しくて、無意識にランス様の腕を掴んでいた。


「セシル、だからこれ以上あおらないで。俺の自制心が保てなくなる」

 ランス様は困ったように言う。ランス様を困らせたいわけじゃないけれど、でもやっぱりまだ離れたくないと思ってしまうのはダメだろうか?


「とにかくいったん起きよう。ジョルジュたちも心配しているだろうし、ね」

 優しく微笑むランス様の言うことは確かにそうだ。少しだけ寂しい気持ちを抑えてうなずいた。




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