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54 魔物討伐祭開催

 王都騎士団や他の白龍使いの騎士、聖女様たちとの顔合わせが終わってあれやこれやと日々は流れ、あっという間に魔物討伐祭の日がやってきた。


 討伐祭まではほぼ毎日のように白龍ミゼル様と特訓漬けだったな。討伐祭に参加する聖女の中で私だけが何の取柄もないとわかってしまったから、自分の力を最大限に発揮できるよう特訓せざるを得ないんだもの。ランス様も一緒だったから何とかなったけど、結構スパルタで何度心が折れそうだったことか……。

 でも、これで私も王都の騎士団やランス様達の足を引っ張ることなく胸を張って討伐祭に参加できる。


 数日前にはロイ様とリラが一緒に屋敷に遊びに来てくれた。その前日にリラ達はクロウ様とルル様の屋敷に遊びに行ったらしく、ルル様と一緒にお菓子を焼いたそうだ。

 焼いたお菓子を持ってきてくれたんだけど、これがまたすごく美味しくて!私もルル様と仲良くなりたかったなとぼやいたら、リラはきっとすぐに仲良くなれると太鼓判を押してくれた。

 そうよね、人見知りの強いリラがベル様以外の聖女様と仲良くなったんだもの、きっとルル様もとても良い方なんだわ。討伐祭中に私も仲良くなれたらいいんだけど。





「わあぁ!ここがニケ大森林……!」

 王都から転移魔法でニケ大森林に移動していたけれど、目の前の光景に圧倒される。まさに森、まさに自然!緑しかないといっても過言ではないくらい。ここに、王都の騎士様達でさえ圧倒されたという魔物がたくさんいるのだと思うと思わず足がすくむ。


「セシル、大丈夫?」

 思わずその場にふらつきそうになる私の体を、ランス様が後ろからそっと支えてくれた。


「は、はい、なんとか……」

「緊張するだろうけど大丈夫だよ、俺がちゃんと守るから」

 私の体をしっかりと支えながら、ランス様が優しく微笑む。その微笑を見ただけでなんとなく安心してしまうから不思議だ。でも。


「ありがとうございます。でも、大丈夫です。私も特訓しましたし、ランス様達のお役に立って見せますから!」

 思わず鼻息を荒くしてそう言う私を見て、ランス様は目を丸くしすぐに嬉しそうに笑った。あ、これ私の好きな笑顔だ。太陽のひだまりのような、咲き誇る向日葵のような。暖かくて力強くて、でも優しいそんな笑顔。この笑顔に私はめっぽう弱いのだ。


 思わず顔が赤くなると、ランス様は急に私を抱きしめてきた。え?な、なに?なんで?


「君がとっても強くて逞しくて、なのにものすごく可愛いのがいけないんだよ」

 抱きしめながらランス様は耳元でそっと囁いた。


「フフ、仲がいいのはよろしいことだけれど、場をわきまえた方がいいんじゃないかな」

 近くでミゼル様の声がして周りを見渡すと、周囲の王都の騎士様達の視線が冷たい。慌ててランス様と離れるけれど、あちこちから野次が飛んでくる。あぁ、恥ずかしい!


「これから討伐祭だってのにあんたたち気が緩みすぎだろ。あ、シキ、せっかくだから俺たちもやってみるか?少しは緊張がほぐれるかもしれないぜ」

 近くにいた同じ前衛部隊のガイル様がシキ様にそういうと、シキ様はお前は何を言っているんだという冷めた目でガイル様を見つめる。この二人、仲が悪そうに見えるけど大丈夫なのかしら?


「その冷ややかな瞳もやっぱりそそるな、シキには敵わないよ」

 フッと楽しげに笑うガイル様を見るシキ様の表情が一瞬だけ柔らかくなった、気がする……?あれ?でも次の瞬間にはもういつもの真顔に戻っていた。気のせいだったのかな……?


「君がミゼルのところの聖女様か、私はウェズ。よろしくね」

 ガイル様とシキ様の白龍、ウェズ様が私に挨拶をして手を差し出してきた。美しい金髪のセミロングを靡かせ、少したれ目の人懐っこそうな瞳でこちらに微笑みかけてくる。人外級の美しさなのは当たり前なのだけれど、他の白龍様よりも親しみやすそう。


「はい、セシルと申します。よろしくお願いします」

 握手かと思いこちらも手を差し出すと、ウェズ様はその手を掴んで跪き手の甲へそっと口づけた。って、えぇっ?!


「白龍なりの聖女に対する挨拶だよ、そんなに警戒しなくても大丈夫。ミゼルだってきっと他の聖女にしていただろう?」

 ウェズ様に言われてそういえば……ユーズ団長のお屋敷へ伺ったとき、ベル様にも同じようなことしてたっけ。


「確かにそうだけれど、その手をずっと握ったままなのは関心しないな」

 いつの間にかミゼル様がウェズ様の手を掴んでそっと私の手から引き離した。そして気づいた時にはランス様が私の手を掴んでいた。なんだかすごいコンビネーション……!


「なんだ、まだ少ししか触れ合っていないのに。ミゼルもランスもずいぶんと焼きもちやきなんだな。うちのガイルにも見習ってほしいくらいだよ」

 ウェズ様がチラッとガイル様を見るとガイル様は何処吹く風という顔をしている。


「シキにももっと素直になってほしいものだ。セシルをご覧よ、こんなにも素直で可愛らしいというのに」

「セシル様のように素直でもなく可愛らしくもなくて大変申し訳ありません、ウェズ様」

 シキ様が棒読みでそう言うと、ミゼル様は声をあげて楽しそうに笑った。


「ウェズ、ずいぶんと大変そうだけど楽しそうじゃないか」

「あぁ、まったく退屈しないよ。二人の進展も見ていて飽きない。これからがますます楽しみだ」

 フフフ、と白龍二人が嬉しそうに話しているのを、ガイル様とシキ様は少し不服そうに、そして不思議そうに眺めている。




「そろそろ全員転移してきたか、全体の打ち合わせを開始するぞ」

 王都騎士団のケインズ団長の声がして、皆一斉にそちらに顔を向けた。



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