52 手合わせ(ロイ視点)
屋敷の外に出て、俺とクロウは中庭にある広場に来た。二人とも手には稽古用の模造剣を持ち、少し離れた場所でリラとルルが並んでこちらを見ている。
「よし、それじゃいつでもいいぞ、かかってこい」
「よろしくお願いします」
クロウは静かにお辞儀をして、剣を構えた。ほう、構えはなかなかにいいな。そう思った瞬間にクロウが走り出した。
速い!目にも止まらぬ速さでクロウは目の前にたどり着き剣を振り下ろす。既のところで剣を受け止めるが、予想に反して重い。騎士見習いにもなっていなかったであろうこの男が、なぜこんなにも強いのだろうか。
キィイン!
剣を跳ね返し反撃するがクロウも剣を受け止めするりと剣を滑らせて剣を打ち返してくる。本気を出しているわけではないが、気を抜けばこちらも危ういかもしれない、そう思えるほどの腕前だ。これは甘く見過ぎていたな。
力を強めて剣を跳ね返す。
「!!」
力の強さが変わったことがわかったのだろう、クロウが少し驚いた顔をするがすぐに真剣な面持ちになる。
何度か剣を打ち合い、クロウの剣を受け止める力がだんだんと弱まってくるのがわかる。そろそろだな。
キィィィン!
受けた剣を跳ね返し、それによってクロウが怯んだ一瞬を見逃さなかった。クロウの懐に剣を向け寸止めをする。
「終わりだな」
はぁ、はぁ、とクロウが息を切らせて項垂れる。
「ありがとう、ござい、ました……」
一礼するが表情は悔しそうだ。
「ロイ、強いの!」
リラが駆け寄ってきて俺の服にしがみついた。しかも満面の笑みで俺を見ている。その様子になんだか照れ臭くなってしまった。
「クロウもお疲れ様でした」
ルルがクロウの元に来て声をかける。ルルは持っていた水筒からお茶を注いでクロウに差し出す。クロウは微笑んでそれを飲み、ホッと息をついた。ルルは俺にもお茶を差し出してくれたが、そんなに喉は乾いていないので遠慮した。
「ロイは本当に強いですね。手も足も出ませんでした」
クロウが苦笑しながら俺に言う。
「いやいや、なかなかにいい腕をしていて驚いたよ。成人と共に白龍使いの騎士に任命されてすぐ聖女と会ったって言ってただろ、ってことは騎士見習いにはなっていないんだよな?それなのにその強さは一体どういうことだ?」
騎士見習いで稽古もしていないはずなのになぜこんなにも強いのだろう。気になって仕方がない。
「ギールに、稽古をつけてもらっていたんです」
息を整えてからクロウはそう言った。白龍が騎士に稽古?そんなことあるのか。ってか、白龍は剣の腕前も立つのか。白龍にできないことなんて何もないんじゃないか?そんな気がしてきた。
「そうなるとギールは相当強いんだな。なんだ、俺からクロウへ教えることなんて何もないんじゃないのか」
ふーむと腕を組んでそう言うと、クロウはそんなことないです!と慌てて両手を振る。
「ロイには色々と聞きたいことが……」
そう言ってルルの方を見ると、ルルは何かを察したのかクロウに微笑んだ。
「リラ、一緒にお菓子を作ってみない?簡単に作れるものがあるのよ。後でロイ達にあげましょう」
「お菓子!作ってみたい!」
ルルの言葉にリラは目を輝かせる。ルルは俺にお辞儀をしてリラを連れて屋敷の中に入っていった。
「ルル達には聞かれちゃまずいことなのか?」
クロウに尋ねると、クロウは真剣な面持ちになってこちらを見る。一体なんだろう、そんなに深刻なことなんだろうか。
「ロイとリラは歳が離れていますよね。しかもリラの見た目は実年齢よりも若い。それについてどう思われますか?」




