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45 王都騎士団長の気迫

 キィィン!カキぃィィン!


 中庭に剣のぶつかり合う音が響き、あちこちから野次が飛び交う。


 王都の騎士の剣から放たれる炎を、聖女シキ様はこともなく振り払い反撃している。


「すごいの……」

 ロイ様の袖をぎゅっと掴みながら、リラが不安げにつぶやく。


「怖くないか?怖いなら会議室に戻ってもいいんだぞ。俺も一緒に行くから」

 リラの様子を伺ってロイ様がそう聞くが、リラは首を横に振った。


「ううん、大丈夫なの。怖い、けど、気になる」

「……そうか、わかった。怖くなったり気分が悪くなったらすぐに言うんだぞ」

 ロイ様の言葉にリラが小さく頷き、ロイ様はそれを見て優しく微笑んだ。あぁ、こんな時にこんなことを思うのは間違ってるかも知れないけれど、この二人は見ているだけで癒されるわ……!


「セシルは大丈夫?」

 そっと隣からランス様が聞いてきた。

「大丈夫、ですけどなんと言うか……この状況がいまだによくわからなくて」

 なんでこうなってしまったのだろう。まさか聖女の一人が王都の騎士と剣を構えるだなんて、どんなに考えてもよくわからない。しかもその聖女様がやたらと強いのも驚いている。


 ずっと握られていたランス様の手が解かれて、スッと肩を抱かれた。

 え?え?え?ランス様???突然のことで思わずランス様の顔を見上げると、ランス様は真剣な表情だ。


「見るからに王都の騎士たちは俺たちの存在を疎ましく思ってるみたいだ。もしこれのせいで王都の騎士たちが騒ぎを起こしたとしても、セシルのことは俺が絶対に守るから安心して」

 肩を掴む力が強まった。その横ではミゼル様が優しく微笑んで頷いている。


 ランス様の言う通り、王都の騎士様たちはどうやら白龍使いの騎士と聖女、白龍のことを良く思っていないらしい。それがなぜなのかわからないけれど、どうも一筋縄ではいかない雰囲気があるのよね。


 この試合の結果によっては確かに王都の騎士様たちが黙っていないかも知れない。というか、そんな風に考えてしまうほど聖女シキ様は強いのだ。



 ギィィィン!!!


 王都の騎士様の剣が弾き飛ばされ、シキ様の剣が騎士様の首元に添えられている。


「か、勝った!?」

 思わず呟くと、シキ様と一緒にいた白龍使いの騎士ガイル様がこちらを見てふん、と鼻を鳴らした。その顔はまるで、当然だと言わんばかりの誇らしげな顔。


 え、まさかガイル様はシキ様が勝つことがわかっていたの?!でも始まる前はあんなに心配して……。



「さあ、あなたの負けよ。地べたに這いつくばって謝り、許しを乞いなさい。白龍使いの騎士、白龍、聖女に対して失礼な言葉を吐いたことを謝罪するのよ」


 王都の騎士様を見下ろしながらシキ様が冷ややかな瞳で言う。


「な、なんで俺がそんなこと……!」

 王都の騎士様は悔しげにそう吐き捨てると、シキ様の表情が歪んだ。


「お前は負けたんだ。騎士らしくきちんと謝れ」

 シキ様が何かを口にしかけた時、ケインズ団長の声がした。その声は面白がるような声と共に部下を叱責するような声音も含まれている。


「だ、団長!そんな……」

「元はと言えばお前の発言がことの発端だろ。それにお前はこの戦いを受け入れた。受け入れた以上、負けたんだから謝るのが当然だろうが。それとも」

 腕を組み、ケインズ団長は言葉を続ける。


「お前は団長の俺の顔に泥を塗る気か?」

 先ほどまでの楽しげな声音とは打って変わって、その声はドスの効いた低い声だ。それに表情も険しい。これが王都騎士団団長の姿……。



「うっ、くそ……」

 負けた王都の騎士様は悔しそうにうめきながらシキ様の方を向き、土下座をする。


「……俺が、間違っていました。……すみません」


 その場がシーンと静まりかえる。


「俺の顔に免じてこいつを許してやってくれ」

 ケインズ団長がそう言うと、シキ様は無表情でケインズ団長を見て、こう言った。


「聖女が足手まといでないとわかっていただけたのならそれでいいです。我々に対しての謝罪もいただきましたし」


 静かにお辞儀をしてフイッと踵を返すと、剣をガイル様に渡した。


 

 よかった、なんとか丸くおさまったみたい。そう、思ったのが間違いだった。



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