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44 聖女シキと騎士ガイル

 先ほどまで大会議室で会議をしていたはずなのに、今はなぜか会議室にいた全員が中庭にいる。


「剣、貸して」

「本当にやるのか?めんどくせぇからやめろよ」

 聖女様と白龍使いの騎士様が話をしているのが聞こえるが、どうやら剣を借りようとしているらしい。え、聖女様が剣を使うの?


「いいじゃないかガイル、シキはやる気満々なんだよ。それに王都の騎士達に聖女が足手まといではないということの証明もできる。一石二鳥じゃないか」

「いやいや、何言ってるんだよ正気か?相手は一応王都の騎士だぞ。それが聖女とやり合うなんて……」


 今度は白龍様と白龍使いの騎士様が会話している。どうやら白龍使いの騎士様は聖女様を心配しているらしい。そりゃそうよね、王都の騎士と剣を向け合うなんて危険すぎると思うのだけれど、白龍様には心配のしの字も見当たらない。


「いちいちうるさいわね。いいから早く貸しなさいよ」

 聖女様が不機嫌そうに片手を白龍使いの騎士様に出す。


「……はぁ〜、どうなっても知らないからな」

 白龍使いの騎士様はそういうと渋々剣を聖女様に渡した。えっ、本当に渡しちゃうの?!驚いて思わずランス様を見ると、ランス様も心配そうな顔をしている。でもその横では白龍ミゼル様がニコニコと笑顔で聖女様を見つめていた。なんでそんなに笑顔なんですかミゼル様?




「王都の騎士と剣を向け合うなんて正気ですか?痛い目を見る前にこんなことはやめた方がいい」

 聖女様に指名された王都の騎士様が半笑いをしながら聖女様、シキ様と呼ばれていたかしら、そのシキ様にそう言い放つ。


「あら、怖気付いたの?聖女をあまり見くびらないほうがいいわ。本気で来ないと恥をかくわよ」

 ふん、と鼻であしらうように無表情でシキ様が言うと、二人の周りを取り囲んでいる王都の騎士達が騒ぎ出した。


「いいからそんな生意気な聖女様、やっちまえ!」

「かわいそうだが後悔させてやれよ、王都の騎士を馬鹿にするとどうなるか思い知ればいいんだ」


 ワーワーとヤジが飛ぶ。


「そうだな、かわいそうだけど痛い目を見てもらおうじゃないか」

 剣を構えて王都の騎士様がそう言うと、聖女様が初めて口角の端を上にあげた!



「よし、一本勝負といくか。はじめ!」

 ケインズ団長の声で勝負がはじまった。すぐに王都の騎士様が走り出し聖女様に剣を向ける。


 キィン!カキィィン!


 剣のぶつかり合う音が中庭に響き渡る。


 王都の騎士様から振り下ろされる剣を、シキ様はこともなさげに振り払っている。何これ、王都の騎士様と互角だわ!


「手加減してくれるなんて王都の騎士様はお優しいのね。でもそんなことでは私のことは倒せないわよ」

 キィィィン!と大きく剣が弾かれて、王都の騎士様が後ろに吹き飛ばされる。


「チッ、ただ守られるだけ、力を分けるためだけに白龍使いの騎士とやることやるだけの聖女のくせに!」

 騎士様が悪態をつきながら剣に力を込めると、剣に炎が宿った。


「これに俺が勝ったら聖女様、俺とも一晩寝床を共にしてくださいよ。もちろん添い寝だけでは終わりませんけどねぇ!いいでしょ、それくらい」

 ゲスイ笑みを浮かべて王都の騎士様がそう言うと、周りからいいぞ!やれやれ!と野次が飛ぶ。あまりの光景に居た堪れなくなって白龍使いの騎士ガイル様の方を見ると、片手で顔を覆って盛大にため息をついている。


「だめだ、それを言ったら終わりだ、もう終わりだ……」

 ガイル様はブツブツと独り言を言っている。シキ様の心配をしている、と言うよりもむしろ……?


「……へぇ、いいわよ。そのかわり私が勝ったら地面に這いつくばって許しを乞いなさい。白龍使いの騎士と白龍、そして聖女を馬鹿にしたことを心の底から謝りなさい」


 無表情だったシキ様の表情が変わる、いや無表情のままなのだけれど、なんというかこう、禍々しいものを発しはじえめているような気がするのは私だけだろうか?






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