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43 王都騎士団と白龍使いの騎士団

「よーし、全員そろったか。そろそろ始めるぞ」


 王都騎士団団長であるケインズ団長の一声でその場に緊張感が走る。


「今日は魔物討伐祭の顔合わせを兼ねた打ち合わせだ。例年であれば王都の騎士団だけで行われる討伐祭だが、ニケ大森林の魔物がいつもよりも凶暴化し、そのせいで既に下見に行った騎士が怪我を負っている。懸念した王から今回は白龍使いの騎士に援護してもらうようにと直々に通達を受けた」


 ケインズ団長の言葉に王都の騎士達がざわつき、不愉快そうにこちらを見て小声で話をしている。どうも王都の騎士と白龍使いの騎士には目に見えない因縁のようなものがあるみたい……?


「不満なのはわかる。俺だってそうだ、白龍使いの騎士の力なんざわざわざ頼りたくないね。だが、実際にニケ大森林で負傷した騎士がいる。正直かなりの深手だ。討伐祭で王都の騎士が何人もそんな状態になったとしたら、その後の王都は一体誰が守る?王都の騎士が手すきだからと諸国が攻めてくるかもしれない」


 会場のざわつきがおさまった。ケインズ団長は満足げに言葉を続ける。


「かといってニケ大森林の魔物たちををそのままにしておくわけにもいかない。凶暴化した魔物が増えている以上、対応しなければより増加する一方だ。もしかするともっと凶暴化する恐れもある。これは俺たち王都の騎士団の仕事だ。白龍使いの騎士達ときちんと連携をとって必ず魔物を討伐してほしい」


 その言葉に、会場の空気がより一層引き締まった気がした。


「白龍使いの騎士団からの応援についてはユーズ団長から説明してもらう」

 ケインズ団長が促すと、白龍使いの騎士団団長のユーズ団長が席を立ち、ケインズ団長の隣に並んだ。


「白龍使いの騎士団団長、ユーズだ」

 低くよく通る迫力のある声で挨拶をすると、王都の騎士達はその静かな迫力に息を呑んだ。


「今回、王都の騎士の援護ということでこちらも人員を振り分けた。俺を含め前衛に3組、後衛と救護班に合わせて2組だ。救護班以外は王都の騎士の背後に着き、何かあれば白龍と共に援護する」


「こちらの陣営に合わせて配置してもらう。どのペアがどの配置につくかはユーズに一任する。当日はそれぞれの陣営でこちらの隊長が指揮をする、白龍使いの騎士はそれに従事してもらうからよろしくな」


 ケインズ団長が白龍使いの騎士達を見てそう言うと、ランス様やロイ様を含め白龍使いの騎士達は皆はい!と威勢よく返事をした。


「ケインズ団長、ひとつよろしいでしょうか」

 王都の騎士の一人が挙手をした。


「どうした」

「白龍使いの騎士団には聖女様も含まれていますね。今回の打ち合わせにいるということは、当日も現地に足を運ぶということでしょうか」


 発言した騎士はこちらを冷ややかな目で見つめている。


「そうだ、聖女様たちも一緒に任務に当たってもらうことになる」

「女性が、しかも見るからにか弱そうな聖女様が現地にいては足手まといになるのではないでしょうか。ただでさえニケ大森林の魔物は凶暴化していると聞きます。もし聖女様に危険が及ぶとしてもこちらとしては対応しかねますが」


 騎士の言葉に周りの騎士達も大きく頷き、賛同の声を上げるものもいる。


「だとよ、ユーズ団長」

 ケインズ団長がニヤリと笑いながらユーズ団長に言うと、ユーズ団長はつまらないという顔で白龍たちの方を向いた。


「それならば心配はいらないよ。聖女たちのことは我々が必ず守る」

 フワッと清らかな空気がその場に広がると、一番前の席に座っていた白龍の一人が隣に座る聖女の片手をとって優しく口付けた。


「いいかい、僕たち白龍にとっては君たち騎士達よりも聖女の方が断然大切なんだ。君たちは我々が参加することが不服だろうが、こちらとしても君たちのような騎士のお守りは正直ごめん被りたいものだよ」


 白龍の言葉に王都の騎士達が思わず立ちあがり抗議の声を上げる。だが、それはすぐに静まり返った。なぜならば、その場にいた白龍全員が王都の騎士達へまっすぐに視線を向けたからだ。その視線を向けられたものは思わず動けなくなるほどの神々しさだった。


「こちらとて不服だが、王の一存であればその命に背くわけにはいかないからね。君たちのお守りもきちんとするさ」


 フイッと白龍達が視線を逸らすと、動けなかった騎士達は見えない拘束が解けたかのようになる。中には呼吸まで止まっていた騎士もいたようで、あちこちから咳き込む音がする。


「こちらもひとついいかしら」

 突然、聖女の中の一人から声がする。会議が始まる前に目があった艶やかな長い黒髪の聖女様だ。


「なんだ、聖女様か。どうぞ」

 ケインズ団長が面白いものを見るかのように聖女様を見つめる。


「女性で、見るからにか弱そうな聖女というだけでなぜあなた達に危惧されなければいけないのか納得がいかないわ。本当にか弱いかどうか、確認してみればいい」


 琥珀色の瞳で先ほど発言した騎士を真っ直ぐに見つめる。その姿もまた聖女としての威厳と美しさを兼ね備えていた。


「剣を持って、中庭に来なさい。ユーズ団長、ケインズ団長、かまいませんか」

 長い黒髪をひとつに束ねながらその聖女様はそう尋ねた。


「おう、楽しそうだな」

「ケインズが構わないならこちらも問題ない」


 二人の返事に聖女様は真顔で頷き、隣の白龍使いの騎士様を一瞥してから席を立って会場を立ち去った。


「はぁ、マジかよ……くそめんどくせぇ」

 聖女様の隣に座っていた白龍使いの騎士様はため息をついて聖女様の後を追う。


「ご指名されたんだ、さっさとお前もいけよ」

 楽しそうに笑みを浮かべながら、ケインズ団長は先ほど発言した騎士へそう吐き捨てた。





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