41 騎士の独占欲(ランス視点)
討伐祭の打ち合わせがあと数日後に迫り、俺はセシルを街へ誘ってみた。
セシルが聖女としてやってきてから、まだ一度も街を案内したことがないことに気づいたんだ。本来なら来てすぐにでも案内すべきだったけれど、なんだかんだ忙しくて結局できていなかった。
討伐祭の任務が始まったらきっと二人で出かけるなんてできなくなる。もしかすると任務後に誘拐犯から接触があるかもしれない。
そうなったら、誘拐犯を確保するためにさらに忙しくなるだろう。
出かけるなら今しかない。もっともっとセシルと二人の時間を、二人で色々なことを共有したいと思ったから。
街に出てからもずっとセシルの手を繋いでいたけれど、セシルはちょっと照れてるようだった。
でも嫌がっている様子はなかったし、何よりちょっと照れたセシルの様子が可愛くてたまらない、だからつい手を繋いだままにしてしまう。
行く先々で街の人達からセシルをほめてもらえて、俺はとっても嬉しかった。むしろもっともっと自慢したいくらいだけどそれはセシルが困るだろうし、セシルの良さは俺だけが知ってればいいという矛盾した気持ちもある。
ほめられて照れるセシルも、俺がちょっと自慢すると顔を赤らめてこちらを見てくるセシルも、どれもこれも可愛くてたまらない。どうしよう、こんなにもセシルのことを好きすぎていいんだろうか。
好きすぎて気持ち悪い態度をとったりしてないかな。セシルの前ではできるだけかっこいい俺でいたいのだけど。
アクセサリー屋で、セシルが気に入ったネックレスの石の色が俺の瞳の色と同じなのは偶然なのかもしれないけど、めちゃめちゃ嬉しかった。
店員に促されてネックレスを着けてあげたけれど、その時の距離が近すぎて正直ドキドキしたし、何よりセシルが可愛すぎてどうにかなりそうだった。
俺からプレゼントしたネックレスをセシルが着けてくれている。俺の瞳と同じ色の石が付いたネックレス。
輪っかになったアクセサリーをプレゼントするのは自分だけのもの・独占欲の証だと聞いたことがあるし、そんなことで独占欲を満たそうとするなんてバカらしいとさえ思っていたけれど。
まさか自分がまさにそんな気持ちになるとは思いもしなかった。どれだけセシルは俺の心を掴むのだろう。
店を出る直前、店員がセシルに何か話しかけてセシルが顔を真っ赤にしていたけれど一体何を言われたんだろう。
「ランス様、似合いますか?」
店から出てくるり、と振り返ってそう言ってくるセシル。
「とっても似合ってるよ」
そう言うと、目を輝かせて嬉しそうに笑う。あぁ、なんて可愛らしいんだ!
「ありがとうございます、大切にしますね」
風が優しく吹いてセシルの髪の毛がなびく。太陽の光に照らされてセシル自身がキラキラと輝いて見える。なんて美しいんだろう。胸がギュッと締めつけられる。
飛びきりの笑顔でそんな風に言われたら、今すぐにでも抱き締めてしまいたくなるじゃないか。
「ねぇ、セシル、抱き締めてもいいかな?」
「え?え?ここで?突然なんでですか?!ダメです、皆に見られてしまいますよ!」
わたわたと慌てるセシルは可愛いけれど、皆に見られたくないと言われるのはなんだか不服だな。
「じゃあ屋敷に帰ったら抱き締めてもいいんだね」
耳元でそっと囁くとセシルは顔を真っ赤にして俺を見てきた。
ほら、そんな顔したら余計抱き締めたくなるだろう。




