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40 ランス様とお出かけ

「そういえばここに来てから街に行ったりしてなかったよね。出かけてみようか」


 討伐祭の打ち合わせまであと数日というとある朝、ランス様から突然そう言われた。


 そういえば来てからすぐに色々なことがあってバタバタしていてユーズ様のお屋敷と王都の白龍使いの騎士団本部、任務先の森しか行っていなかったな。


 確かに、街がどんな風なのか見てみたい気がする。でも聖女誘拐事件の話を聞いたばかりだし、何より討伐祭も近いのにいいのかしら……。


「もしかして、誘拐事件のことを気にしてる?大丈夫だよ、セシルのことは俺が守るから」


 考えこんで返事をためらっていたら、まるで心を読まれたかのようにランス様がそう言ってきた。


「討伐祭も近いし余計色々と気にはなるかもしれないけど。でも大きな任務の前だからこそ、二人で出かけたいって思うんだ。もちろん、セシルの気が乗らないならもちろんやめるよ……」


 少し遠慮がちなランス様。そんな子犬みたいな瞳で見つめないでください……!


 確かに大きな任務前だからこそ二人で出掛けたいという気持ちはなんとなくわかる。任務の後は力を使って疲れるだろうし、力分けを行って回復したとしても任務後の事務処理にだって追われるはず。


 何より、任務後の方が誘拐犯が接触してくる確率が高いのだ。もし何かが起こって二人でゆっくり出かけることができなくなるとしたら……考えたくないけど、どちらにしても二人で出かけるなら今がベストな気がする。


「……そうですね、せっかくだからお出かけしましょうランス様!」


 そう言うと、ランス様の顔がぱぁぁっと明るくなってとっても嬉しそう。さっきまでしょげた子犬みたいだったのに、今はブンブンと大きく振るしっぽまで見えてくる。ランス様ってたまに可愛い犬みたいになるんだわ。

 なーんてそんな風に思っていたのに。


「初めてのデートだね」

 フフッと頬笑むその顔は、さっきまで可愛い犬みたいだったのに急に男らしくてドキッとしてしまう。

 しかも、デ、デートだなんて……!



 朝食を食べてから馬で街中へ繰り出した。ミゼル様に乗って行くのかと思ったら、街中にはわざわざ白龍には乗っていかないらしい。


「小さな街だからね、街中には白龍が降り立てる広場がないんだ。だから街に白龍を連れていくような場合には人の姿になって着いてきてもらうんだよ。ただすごい目立つからめったに連れていくことはないけどね」


 確かにあの尋常じゃない美しい姿だと目立ちそう。ランス様も色々と大変なんだな。


 街中に着いてからは色々な店を見て回ったのだけど、ランス様はずっと手を繋いだままなのですごく恥ずかしい……!


「おや、ランス様!もしかして隣にいるのは好い人かい?」

「ランス様!結婚したって噂は本当だったんだな!」


 出会う人達に口々にそう言われてその度に

「俺のお嫁さんになってくれたとっても大事で大好きな人だよ」

 ランス様がそんな風に言うものだから、顔から湯気が出てしまいそう。


「ランス様、結婚したことは秘密にしていないんですね?」

 白龍使いの騎士が結婚するのは虹の力を持つ聖女だ。でも聖女には「白龍の生贄になる」という偽りの事実を突きつけて連れてくる。聖女が生きているということは矛盾にならないのかしら?


「白龍使いの騎士の結婚する相手が聖女だってことは公表していないよ。あくまでも一般の人ってことになっている。騎士として身を固めたってことになってるんだ」


 なるほど、ということは街の人達にとって私は本当になんの力も持たないただの人間でランス様の結婚相手というわけだ。


「ちゃっかりこんな可愛らしい人を奥さんにするなんて、ランス様もすみにおけないねぇ!いつどこで出会ったの?ランス様との生活はもう慣れた?」


 ランス様に連れられたアクセサリー屋さんではそんな風に言われてしまった。


「あんまり質問責めしないでくれよ。彼女はまだここに来て日が浅いんだ、行く先々でそんな風に言われたら恥ずかしがってしまうよ」


 ごめんね?そう言いながらそっとこちらを覗いてくる。距離が、近い近い近い!

 い、い、いえ、むしろそんな風にされる方が恥ずかしいです……。


「あらやだ、顔が真っ赤だよ、初々しい!」

 店員さんが嬉しそうにはしゃいでいる。


「セシル、何か欲しいものはない?」

 欲しいもの、と突然言われても……特に何も思い浮かばない。

 初めての街で色々な物を見てるだけでめちゃめちゃ楽しいからそれだけでじゅうぶんな気がする。



「わぁ、キレイ!」

 店内をキョロキョロと見渡していたら、一粒の石が輝くネックレスに目を奪われた。その石はまるでランス様の瞳の色のようでとてもキラキラしている。


「気に入ったの?気に入ったならプレゼントするよ」

 え、プレゼント?


「あら、ランス様の瞳の色と同じね。これにひかれるなんてお目が高いわ」

 確かにランス様の瞳の色のようだと思ったから、店員さんに言われて思わず顔が赤くなる。


「それなら尚更プレゼントしたくなるな」

 ランス様、なんだかとても嬉しそう。


「せっかくだから着けてあげたら?」

 店員さんにそう促されて、ランス様がネックレスを手に取った。

 ランス様が私の首に手を回してネックレスを着けてくれる。距離が近くてドキドキする。


「ふふ、とっても似合うね」

 ランス様が嬉しそうに目を細めて見つめてくる。




「ネックレスをプレゼントする意味って、『ずっと一緒にいたい』とか『束縛・独占』の意味もあるのよ」

 店を出る直前に、店員さんが耳元で囁いてからウィンクしてきた。




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